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「お母さん、穂のこと信じてる。こんなに頼もしい子、他にいないって思ってる。だから、そんな穂が好きになった人が困ってるなら、お母さんも助けになりたい」
涙が溢れ出て、止まらない。
「よしよし」
お母さんがまた抱きしめて、頭を撫でてくれる。
「ありがとう」
「うん」
「ねえ、俺は?」
誉がちょこんと横に座っていた。
お母さんがアハハッと笑って「誉も本当に良い子!素直で優しい、私の自慢の子!」と私達を抱きしめた。
その後、私は永那ちゃんに連絡した。
永那ちゃんのお母さんが入院するのは3ヶ月くらい。
正確には近くならないと、いつ退院できるのかはわからないみたいだけど…。
ただ、ずっと家に泊まるのは申し訳ないし、家が心配だからと、1週間置きに永那ちゃんの家と私の家を行き来することにした。
お母さんもそれで了承してくれる。
明日からの1週間は、永那ちゃんの家に泊まることになった。
私は1週間分の荷物をボストンバッグに詰める。
1週間分と言っても、永那ちゃんの家に洗濯機とかもあるし、実質3日分くらいの準備だ。
「誉、しばらくひとりにさせちゃうけど…」
「平気だよ。姉ちゃんは過保護!」
「えー…そうかな」
「そうだよ!俺だって、料理もできるようになったし、友達だっているし。最悪、千陽と通話する」
千陽の名前が出てきて、思わず笑ってしまう。
「そっか」
「うん」
「何かあったら、連絡してよ?」
「わかってるよ」
月曜日の朝、何度も誉に大丈夫か確認すると「姉ちゃんウザい!」と怒られてしまった。
学校につくと、永那ちゃんが起きていて「穂!」と抱きしめられた。
「永那ちゃん、おはよう」
「おはよー、穂、おはよー」
私の首筋に顔をうずめて、左右に振っている。
「千陽も、おはよう」
「おはよ。…永那がまたテンション高い」
「ホントだね」
「暴走はしないよ?…たぶん」
永那ちゃんが顔を上げて、頭をポリポリ掻く。
私が席につくと、永那ちゃんも千陽もついてくるから、おかしくて笑ってしまう。
「永那ちゃん、眠れた?」
「うん、すごい寝た」
「良かった」
「うん…正直、ホッとしてる」
「そっか」
昼休み、森山さんも連れて、みんなで学食に行った。
「修学旅行のときは、ホント、迷惑かけてごめん」
永那ちゃんが伏し目がちに言う。
「結局…お母さん、3ヶ月くらい入院することになった。その間は、一応、ひとり暮らしする予定」
「そうなんだ!…大丈夫?ひとりで」
優里ちゃんが言って、永那ちゃんがチラリと私を見る。
「穂が、一緒にいてくれるから…まあ、本当は、ひとりではない」
ニシシと永那ちゃんが笑うと、「イチャラブかよー!」と優里ちゃんがテーブルに顔を突っ伏した。
「みんなも遊びに来てよ」
「行く行くー!!」
優里ちゃんが勢い良く顔を上げて、両手も上げた。
「でもまあ、とりあえず…今週は、穂が家に慣れるまで?待ってもらいたいけど」
「うん!それは全然!」
優里ちゃんはキリッとした顔をして、親指を立てる。
千陽を見ると、無表情にサンドイッチをモグモグ食べていた。
中間試験が終わったから、席替えがあった。
最初に、目の悪い人が最前列に。
その後はクジだ。
私の目の前で、千陽が頬杖をつく。
「嬉しい。運命かも」
なんて微笑んで、谷間が強調される。
「千陽…第二ボタン…」
彼女がフフッと楽しそうに笑う。
「穂にだけ、特別だよ?」
私はそっと目を閉じた。
「なんで私が穂の近くじゃないんだー!めっちゃ遠いじゃん!」
永那ちゃんの叫び声が教室中に響いて、みんなが笑う。
「マジ誰か替わって」
「両角、クジはクジだからなー」
先生が言う。
私の前の席に千陽、右隣に森山さんが座っていた。
前回も窓側だったけど、今回も窓側だ。
外の空気が吸えて、私はけっこう窓側を気に入っている。
永那ちゃんは廊下から2列目の、前の方の席だった。
優里ちゃんは真ん中あたり。
授業が終わって、永那ちゃんと2人で私の家に行く。
誉は友達と遊んでいるのか、まだ帰ってきていなかった。
荷物を取って、手を繋いで、永那ちゃんの家に向かう。
「ハァ」と永那ちゃんがため息をつくから「どうしたの?」と彼女の顔を覗き込んだ。
「いや、なんか…嬉しくて」
永那ちゃんが眉根を下げて、優しく笑った。
「嬉しいなんて、思ったら…ダメなのかもしれないけど…」
ギュッと、繋ぐ手を握る。
「お母さんのことは、心配だけど…きっと、大丈夫。“大丈夫”なんて、無責任かもしれないけど…でも、お母さんみたいな人を助けるために、いろんな制度があるんでしょ?…今まで永那ちゃんは、ずっと、ひとりで頑張ってきた。後は、大人に任せればいいと思う」
永那ちゃんはジッと私を見た後に、小さく2回頷いた。
「そうだね」
もう一度深く息を吐いて「せっかくなんだから、楽しむぞー!」と両手を上げる。
「暴走列車はだめだよ?」
私が笑うと、永那ちゃんが両眉を上げて歯を見せて笑った。
「外ではしないよ?」
その言葉に、背筋がゾワリとした。
涙が溢れ出て、止まらない。
「よしよし」
お母さんがまた抱きしめて、頭を撫でてくれる。
「ありがとう」
「うん」
「ねえ、俺は?」
誉がちょこんと横に座っていた。
お母さんがアハハッと笑って「誉も本当に良い子!素直で優しい、私の自慢の子!」と私達を抱きしめた。
その後、私は永那ちゃんに連絡した。
永那ちゃんのお母さんが入院するのは3ヶ月くらい。
正確には近くならないと、いつ退院できるのかはわからないみたいだけど…。
ただ、ずっと家に泊まるのは申し訳ないし、家が心配だからと、1週間置きに永那ちゃんの家と私の家を行き来することにした。
お母さんもそれで了承してくれる。
明日からの1週間は、永那ちゃんの家に泊まることになった。
私は1週間分の荷物をボストンバッグに詰める。
1週間分と言っても、永那ちゃんの家に洗濯機とかもあるし、実質3日分くらいの準備だ。
「誉、しばらくひとりにさせちゃうけど…」
「平気だよ。姉ちゃんは過保護!」
「えー…そうかな」
「そうだよ!俺だって、料理もできるようになったし、友達だっているし。最悪、千陽と通話する」
千陽の名前が出てきて、思わず笑ってしまう。
「そっか」
「うん」
「何かあったら、連絡してよ?」
「わかってるよ」
月曜日の朝、何度も誉に大丈夫か確認すると「姉ちゃんウザい!」と怒られてしまった。
学校につくと、永那ちゃんが起きていて「穂!」と抱きしめられた。
「永那ちゃん、おはよう」
「おはよー、穂、おはよー」
私の首筋に顔をうずめて、左右に振っている。
「千陽も、おはよう」
「おはよ。…永那がまたテンション高い」
「ホントだね」
「暴走はしないよ?…たぶん」
永那ちゃんが顔を上げて、頭をポリポリ掻く。
私が席につくと、永那ちゃんも千陽もついてくるから、おかしくて笑ってしまう。
「永那ちゃん、眠れた?」
「うん、すごい寝た」
「良かった」
「うん…正直、ホッとしてる」
「そっか」
昼休み、森山さんも連れて、みんなで学食に行った。
「修学旅行のときは、ホント、迷惑かけてごめん」
永那ちゃんが伏し目がちに言う。
「結局…お母さん、3ヶ月くらい入院することになった。その間は、一応、ひとり暮らしする予定」
「そうなんだ!…大丈夫?ひとりで」
優里ちゃんが言って、永那ちゃんがチラリと私を見る。
「穂が、一緒にいてくれるから…まあ、本当は、ひとりではない」
ニシシと永那ちゃんが笑うと、「イチャラブかよー!」と優里ちゃんがテーブルに顔を突っ伏した。
「みんなも遊びに来てよ」
「行く行くー!!」
優里ちゃんが勢い良く顔を上げて、両手も上げた。
「でもまあ、とりあえず…今週は、穂が家に慣れるまで?待ってもらいたいけど」
「うん!それは全然!」
優里ちゃんはキリッとした顔をして、親指を立てる。
千陽を見ると、無表情にサンドイッチをモグモグ食べていた。
中間試験が終わったから、席替えがあった。
最初に、目の悪い人が最前列に。
その後はクジだ。
私の目の前で、千陽が頬杖をつく。
「嬉しい。運命かも」
なんて微笑んで、谷間が強調される。
「千陽…第二ボタン…」
彼女がフフッと楽しそうに笑う。
「穂にだけ、特別だよ?」
私はそっと目を閉じた。
「なんで私が穂の近くじゃないんだー!めっちゃ遠いじゃん!」
永那ちゃんの叫び声が教室中に響いて、みんなが笑う。
「マジ誰か替わって」
「両角、クジはクジだからなー」
先生が言う。
私の前の席に千陽、右隣に森山さんが座っていた。
前回も窓側だったけど、今回も窓側だ。
外の空気が吸えて、私はけっこう窓側を気に入っている。
永那ちゃんは廊下から2列目の、前の方の席だった。
優里ちゃんは真ん中あたり。
授業が終わって、永那ちゃんと2人で私の家に行く。
誉は友達と遊んでいるのか、まだ帰ってきていなかった。
荷物を取って、手を繋いで、永那ちゃんの家に向かう。
「ハァ」と永那ちゃんがため息をつくから「どうしたの?」と彼女の顔を覗き込んだ。
「いや、なんか…嬉しくて」
永那ちゃんが眉根を下げて、優しく笑った。
「嬉しいなんて、思ったら…ダメなのかもしれないけど…」
ギュッと、繋ぐ手を握る。
「お母さんのことは、心配だけど…きっと、大丈夫。“大丈夫”なんて、無責任かもしれないけど…でも、お母さんみたいな人を助けるために、いろんな制度があるんでしょ?…今まで永那ちゃんは、ずっと、ひとりで頑張ってきた。後は、大人に任せればいいと思う」
永那ちゃんはジッと私を見た後に、小さく2回頷いた。
「そうだね」
もう一度深く息を吐いて「せっかくなんだから、楽しむぞー!」と両手を上げる。
「暴走列車はだめだよ?」
私が笑うと、永那ちゃんが両眉を上げて歯を見せて笑った。
「外ではしないよ?」
その言葉に、背筋がゾワリとした。
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