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5.時間
282.一緒
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私が先にシャワーを浴びて、永那ちゃんが続く。
永那ちゃんは一緒に入りたがったけれど、「これから真剣にみんなに話すんだから、ふざけちゃダメ」と言うと、素直に応じてくれた。
ドライヤーをかけ終えた辺りで、永那ちゃんがあがる。
「早いね」
永那ちゃんが頷いて、触れるだけのキスをする。
「大丈夫」
私がまっすぐ彼女を見つめると、永那ちゃんはもう一度頷く。
2人で部屋に入ると、3人のお喋りが止む。
「おかえりー!」
「ただいま」
優里ちゃんの明るい雰囲気が、緊張をやわらげてくれる。
永那ちゃんは頭をポリポリ掻いて、千陽の前に座った。
私はその横に座る。
「千陽、ホント、ごめん」
「なにが」
「一昨日のことも、今日のことも、全部」
「一昨日のは、腹立ったけど…昨日の朝蹴ったので許したから…。今日はべつに、何もされてないし」
「じゃあ…ありがとう」
千陽が俯く。
「千陽がいなかったら私、完全に嫌な奴だった。穂に、嫌われてたと思う。千陽がいてくれたから…ずっと、なんとか、やってこれた。ありがとう」
永那ちゃんにチラリと見られて、私が笑うと、ポリポリと頬を掻いて優里ちゃんに向き合った。
「優里も、ごめん…ひどかったよな、ホント」
「え…!え、いいよいいよ!そんな!…な、なんか調子狂う!」
「森山さんも、巻き込んじゃって、ごめんね」
「わ、私は…何も…」
「こんな話されたって、困るかもしんないけど…お母さんが入院して」
「え!?大丈夫なの!?」
優里ちゃんが手を床につく。
「うん…たぶん、大丈夫。…その、お母さん、私がいないとパニック起こして、よく死のうとするんだ」
永那ちゃんが辛そうに笑う。
「今回の修学旅行も、ずっと不安だったんだけど、やっぱ…ダメだった」
優里ちゃんの瞳にはもう涙が溜まっていた。
「で…私のせいで、お母さんが死ぬかもって、思ったら…不安で…上手く、みんなに、言えなくて」
ため息をつきながら、永那ちゃんが頭を掻く。
「永那、帰らなくて大丈夫なの?」
優里ちゃんがポタポタと涙を零しながら言う。
「あー、まあ、どうせ明日帰るし」
「そっか。そうだね…!大丈夫なら、明日楽しんで、お母さんのところに行ったらいいね!」
「…おー」
永那ちゃんが私を見る。
私が首を傾げると、永那ちゃんはまた頭を掻いた。
「それで、暴走は止まったの?」
千陽が冷たい目で永那ちゃんを見る。
「暴走…。うん、まあ、たぶん」
「あっそ」
「よーし!暴走列車永那が止まったのを祝して!乾杯だ!さあ!永那!お詫びにジュースだ!」
優里ちゃんが両手を広げる。
「はいはい。みなさん、何がよろしいですか?」
「グレープソーダ」
「リンゴジュース!」
「紅茶を…」
「私も一緒に行く」
立ち上がって、永那ちゃんと手を繋ぐ。
ドアを閉めると、ギュッと抱きしめられた。
「穂、ありがとう。好き。大好き。…一生、大事にする」
「へへへ、嬉しい…」
「お母さんのこと、詳しくわかったら、また言うね」
「うん。1人で抱え込んじゃダメだからね?」
「はい」
また手を繋いで、自販機の前まで行く。
永那ちゃんが、みんなに言われた飲み物と、隣にあったお菓子の自販機で適当にお菓子を買った。
「穂はどれがいい?」と聞いてくれたから、お茶をお願いした。
みんなで消灯時間までお喋りをしながらお菓子を食べて、楽しく過ごした。
電気を消した後、永那ちゃんと千陽に手を繋がれて、びっくりする。
2人が私のそばに寄ってきて、なんだかすごく、照れくさい。
森山さんが起きているのか寝ているのかはわからなかったけど、優里ちゃんは「まんじゅうは赤でしょ!」と寝言を言っていたから、寝ているのがすぐわかった。
「穂、お礼してよ」
千陽に上目遣いに見られる。
「なに?お礼って」
永那ちゃんが言う。
「いろいろ、私に気遣ってくれたの」
「ふーん」
私は上半身を起こして、千陽の唇に唇を重ねた。
「あ、ずるい」
「永那はダメ」
「は?なんで?」
「永那は反省して?」
千陽に言われて、永那ちゃんが頭をポリポリ掻く。
「穂、もっと」
もう一度重ねる。
彼女のやわらかい舌が入ってきて、心臓がぴょんと跳ねた。
アイスクリームを舐めるように、彼女が私の舌を撫でる。
永那ちゃんの視線を感じて、目線だけ横に遣ると、彼女が真横にいて、私達のキスを観察していた。
「エロ」
ニヤリと笑って、白い歯が見える。
永那ちゃんは一緒に入りたがったけれど、「これから真剣にみんなに話すんだから、ふざけちゃダメ」と言うと、素直に応じてくれた。
ドライヤーをかけ終えた辺りで、永那ちゃんがあがる。
「早いね」
永那ちゃんが頷いて、触れるだけのキスをする。
「大丈夫」
私がまっすぐ彼女を見つめると、永那ちゃんはもう一度頷く。
2人で部屋に入ると、3人のお喋りが止む。
「おかえりー!」
「ただいま」
優里ちゃんの明るい雰囲気が、緊張をやわらげてくれる。
永那ちゃんは頭をポリポリ掻いて、千陽の前に座った。
私はその横に座る。
「千陽、ホント、ごめん」
「なにが」
「一昨日のことも、今日のことも、全部」
「一昨日のは、腹立ったけど…昨日の朝蹴ったので許したから…。今日はべつに、何もされてないし」
「じゃあ…ありがとう」
千陽が俯く。
「千陽がいなかったら私、完全に嫌な奴だった。穂に、嫌われてたと思う。千陽がいてくれたから…ずっと、なんとか、やってこれた。ありがとう」
永那ちゃんにチラリと見られて、私が笑うと、ポリポリと頬を掻いて優里ちゃんに向き合った。
「優里も、ごめん…ひどかったよな、ホント」
「え…!え、いいよいいよ!そんな!…な、なんか調子狂う!」
「森山さんも、巻き込んじゃって、ごめんね」
「わ、私は…何も…」
「こんな話されたって、困るかもしんないけど…お母さんが入院して」
「え!?大丈夫なの!?」
優里ちゃんが手を床につく。
「うん…たぶん、大丈夫。…その、お母さん、私がいないとパニック起こして、よく死のうとするんだ」
永那ちゃんが辛そうに笑う。
「今回の修学旅行も、ずっと不安だったんだけど、やっぱ…ダメだった」
優里ちゃんの瞳にはもう涙が溜まっていた。
「で…私のせいで、お母さんが死ぬかもって、思ったら…不安で…上手く、みんなに、言えなくて」
ため息をつきながら、永那ちゃんが頭を掻く。
「永那、帰らなくて大丈夫なの?」
優里ちゃんがポタポタと涙を零しながら言う。
「あー、まあ、どうせ明日帰るし」
「そっか。そうだね…!大丈夫なら、明日楽しんで、お母さんのところに行ったらいいね!」
「…おー」
永那ちゃんが私を見る。
私が首を傾げると、永那ちゃんはまた頭を掻いた。
「それで、暴走は止まったの?」
千陽が冷たい目で永那ちゃんを見る。
「暴走…。うん、まあ、たぶん」
「あっそ」
「よーし!暴走列車永那が止まったのを祝して!乾杯だ!さあ!永那!お詫びにジュースだ!」
優里ちゃんが両手を広げる。
「はいはい。みなさん、何がよろしいですか?」
「グレープソーダ」
「リンゴジュース!」
「紅茶を…」
「私も一緒に行く」
立ち上がって、永那ちゃんと手を繋ぐ。
ドアを閉めると、ギュッと抱きしめられた。
「穂、ありがとう。好き。大好き。…一生、大事にする」
「へへへ、嬉しい…」
「お母さんのこと、詳しくわかったら、また言うね」
「うん。1人で抱え込んじゃダメだからね?」
「はい」
また手を繋いで、自販機の前まで行く。
永那ちゃんが、みんなに言われた飲み物と、隣にあったお菓子の自販機で適当にお菓子を買った。
「穂はどれがいい?」と聞いてくれたから、お茶をお願いした。
みんなで消灯時間までお喋りをしながらお菓子を食べて、楽しく過ごした。
電気を消した後、永那ちゃんと千陽に手を繋がれて、びっくりする。
2人が私のそばに寄ってきて、なんだかすごく、照れくさい。
森山さんが起きているのか寝ているのかはわからなかったけど、優里ちゃんは「まんじゅうは赤でしょ!」と寝言を言っていたから、寝ているのがすぐわかった。
「穂、お礼してよ」
千陽に上目遣いに見られる。
「なに?お礼って」
永那ちゃんが言う。
「いろいろ、私に気遣ってくれたの」
「ふーん」
私は上半身を起こして、千陽の唇に唇を重ねた。
「あ、ずるい」
「永那はダメ」
「は?なんで?」
「永那は反省して?」
千陽に言われて、永那ちゃんが頭をポリポリ掻く。
「穂、もっと」
もう一度重ねる。
彼女のやわらかい舌が入ってきて、心臓がぴょんと跳ねた。
アイスクリームを舐めるように、彼女が私の舌を撫でる。
永那ちゃんの視線を感じて、目線だけ横に遣ると、彼女が真横にいて、私達のキスを観察していた。
「エロ」
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