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4.踏み込む
244.爆弾発言(236.先輩と同時進行)
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「お祭りのときに付き合い始めたんだよね?」
「はい」
「1ヶ月ちょっと経ったんだ…」
「はい。土曜日と、たまに学校帰りに…デートはしているんですけど…手を繋ぐというのもなくて…」
私は、全部永那ちゃんからしてくれたから、ただそれを受け入れるだけで良かった。
「先輩は、前に話したとき、1ヶ月経ってない状態でキスを済ませたと言っていましたよね?…友達の話を聞いても、1ヶ月前後でキスは済ませていることが多いらしくて…」
「あくまで、私の考えだけど…まだ1ヶ月ちょっとなら、キスは…焦る必要はないと思う。手を繋ぐのは、金井さんからしてみてもいいんじゃないかな?」
「…そうですか。やっぱり、手も繋がない…というのは、恋人らしくないですよね…」
「ど、どうかな…」
金井さんが首を傾げる。
「“恋人らしく”って、なんなんだろう?とは、思うよ。それぞれに、それぞれの形があると思うから」
金井さんの目が細まる。
…睨まれてない、睨まれてない。
「私…永那ちゃんと付き合ってからデートらしいデート、したことがないんだよね」
「そう、なんですか?」
「今まで…家が、多かったから。公園にも、行ったりはしたけど…話すために会ったって感じが強くて。何人かと、みんなでどこかに行くってこともあったんだけど…2人きりでのデートは、たぶん、ない。…そう考えると、土曜日と学校帰りにデートをしている金井さん達のほうが、よっぽど恋人らしいとも言える気がして…」
「…なるほど。…少し、安心しました」
「そう?」
「はい。…やっぱり、両角先輩は…レベルが高いですね…」
「え、どういうこと?」
金井さんは目をそらして「なんでもありません」と答える。
…怪しい。
「ともかく…ありがとうございました。とりあえず、私から手を繋いでみることにします」
多目的室に戻ると、千陽が囲まれていた。
「どうしたの?」
私が話しかけると、みんなが逃げるように散っていく。
「空井さん、遅い」
仏頂面の千陽の頭を撫でて、私はご飯をお皿によそう。
「なんだったの?」
「べつに…“佐藤さん、可愛いよね”とか…そういう、くだらないこと」
「…そっか」
千陽は机に寄りかかりながら、髪をいじってる。
私には“可愛い?”とよく聞いているけれど、他の人に言われることは“くだらない”んだ。
そんなもの、なのかな?
「空井さんは、なに話してたの?」
「相談に乗ってただけ」
「ふーん」
「森山さんと塩見君は?」
「森山さんが鼻血出したから、顔洗いに行った」
「え!?大丈夫なの!?」
千陽はニヤリと笑って「平気でしょ」と言う。
…全然笑えない。
「ねえ」
千陽の顔が近づく。
「今日、泊まりに行きたいな」
彼女が上目遣いに言う。
「今日!?…そ、それは、急だね…」
「だめ?」
「千陽」
「違う」
「あ、佐藤さん…あの、さ?第二ボタン…留めて…ほしい、な」
「空井さんは、そればっかり」
「だ、だって…ほら…目のやり場に困るというか…」
「そんなに見てるのは穂だけだよ」
耳元で囁かれる。
すぐに離れて、彼女が片手をテーブルについて、私の顔を覗き込んだ。
「見せたくない人には、見せないし?」
顔が熱くなる。
下腹部が疼いて、モゾモゾしてしまう。
「ねえ、泊まってもいい?…永那のことも、話したいし」
永那ちゃん…。
私も、話したい。
「わかった」
「楽しみ」
千陽の“楽しみ”は何かの合図みたいに思えて、変に緊張する。
その後、ビンゴ大会が開かれた。
ちゃんと景品も用意されていて、1番豪華なのは、遊園地のペアチケットだった。
生徒会長、副生徒会長は主催者側なので、不参加。
千陽が1番だった。
特段喜びもせず、遊園地のペアチケットを選ぶ。
2番目の人がモバイルバッテリーを選び、3番目の人は加湿器を選ぶ。
後の景品はお菓子だ。
入っている量が違うから、多い物から捌けていく。
鼻血を出していたらしい森山さんも楽しそうにしていたから、安心した。
声をかけたらどぎまぎされてしまったけれど…。
私が終わりの挨拶をして、文化祭の打ち上げは3時に終わった。
生徒会メンバーで片付けと掃除をする。
千陽はイヤホンをつけてスマホを見て、私を待っていた。
学校を出て、一応お母さんに電話した。
すんなりお泊まりのオーケーが出て、苦笑する。
家が近づくと、千陽が腕に絡んでくる。
「穂」
肩に頭を乗せられて(なんだかこれも慣れたなあ…)と、自分の柔軟さに驚く。
私は、もっとピシッとしている人間だと自負していたのだけれど…最近それも崩れつつある。
玄関のドアを開けると、千陽が離れる。
“空井さん、佐藤さん”モードだ。
…もう良くない?と、本当に思う。
誉が走ってきて、「千陽!」と笑う。
オンラインで2人でゲームをしているからか、やたら仲が良くなっている。
千陽は誉の頭をポンポンと撫でて、自分の家みたいにリビングに行く。
誉は嬉しそうに千陽の後をついていった。
「はい」
「1ヶ月ちょっと経ったんだ…」
「はい。土曜日と、たまに学校帰りに…デートはしているんですけど…手を繋ぐというのもなくて…」
私は、全部永那ちゃんからしてくれたから、ただそれを受け入れるだけで良かった。
「先輩は、前に話したとき、1ヶ月経ってない状態でキスを済ませたと言っていましたよね?…友達の話を聞いても、1ヶ月前後でキスは済ませていることが多いらしくて…」
「あくまで、私の考えだけど…まだ1ヶ月ちょっとなら、キスは…焦る必要はないと思う。手を繋ぐのは、金井さんからしてみてもいいんじゃないかな?」
「…そうですか。やっぱり、手も繋がない…というのは、恋人らしくないですよね…」
「ど、どうかな…」
金井さんが首を傾げる。
「“恋人らしく”って、なんなんだろう?とは、思うよ。それぞれに、それぞれの形があると思うから」
金井さんの目が細まる。
…睨まれてない、睨まれてない。
「私…永那ちゃんと付き合ってからデートらしいデート、したことがないんだよね」
「そう、なんですか?」
「今まで…家が、多かったから。公園にも、行ったりはしたけど…話すために会ったって感じが強くて。何人かと、みんなでどこかに行くってこともあったんだけど…2人きりでのデートは、たぶん、ない。…そう考えると、土曜日と学校帰りにデートをしている金井さん達のほうが、よっぽど恋人らしいとも言える気がして…」
「…なるほど。…少し、安心しました」
「そう?」
「はい。…やっぱり、両角先輩は…レベルが高いですね…」
「え、どういうこと?」
金井さんは目をそらして「なんでもありません」と答える。
…怪しい。
「ともかく…ありがとうございました。とりあえず、私から手を繋いでみることにします」
多目的室に戻ると、千陽が囲まれていた。
「どうしたの?」
私が話しかけると、みんなが逃げるように散っていく。
「空井さん、遅い」
仏頂面の千陽の頭を撫でて、私はご飯をお皿によそう。
「なんだったの?」
「べつに…“佐藤さん、可愛いよね”とか…そういう、くだらないこと」
「…そっか」
千陽は机に寄りかかりながら、髪をいじってる。
私には“可愛い?”とよく聞いているけれど、他の人に言われることは“くだらない”んだ。
そんなもの、なのかな?
「空井さんは、なに話してたの?」
「相談に乗ってただけ」
「ふーん」
「森山さんと塩見君は?」
「森山さんが鼻血出したから、顔洗いに行った」
「え!?大丈夫なの!?」
千陽はニヤリと笑って「平気でしょ」と言う。
…全然笑えない。
「ねえ」
千陽の顔が近づく。
「今日、泊まりに行きたいな」
彼女が上目遣いに言う。
「今日!?…そ、それは、急だね…」
「だめ?」
「千陽」
「違う」
「あ、佐藤さん…あの、さ?第二ボタン…留めて…ほしい、な」
「空井さんは、そればっかり」
「だ、だって…ほら…目のやり場に困るというか…」
「そんなに見てるのは穂だけだよ」
耳元で囁かれる。
すぐに離れて、彼女が片手をテーブルについて、私の顔を覗き込んだ。
「見せたくない人には、見せないし?」
顔が熱くなる。
下腹部が疼いて、モゾモゾしてしまう。
「ねえ、泊まってもいい?…永那のことも、話したいし」
永那ちゃん…。
私も、話したい。
「わかった」
「楽しみ」
千陽の“楽しみ”は何かの合図みたいに思えて、変に緊張する。
その後、ビンゴ大会が開かれた。
ちゃんと景品も用意されていて、1番豪華なのは、遊園地のペアチケットだった。
生徒会長、副生徒会長は主催者側なので、不参加。
千陽が1番だった。
特段喜びもせず、遊園地のペアチケットを選ぶ。
2番目の人がモバイルバッテリーを選び、3番目の人は加湿器を選ぶ。
後の景品はお菓子だ。
入っている量が違うから、多い物から捌けていく。
鼻血を出していたらしい森山さんも楽しそうにしていたから、安心した。
声をかけたらどぎまぎされてしまったけれど…。
私が終わりの挨拶をして、文化祭の打ち上げは3時に終わった。
生徒会メンバーで片付けと掃除をする。
千陽はイヤホンをつけてスマホを見て、私を待っていた。
学校を出て、一応お母さんに電話した。
すんなりお泊まりのオーケーが出て、苦笑する。
家が近づくと、千陽が腕に絡んでくる。
「穂」
肩に頭を乗せられて(なんだかこれも慣れたなあ…)と、自分の柔軟さに驚く。
私は、もっとピシッとしている人間だと自負していたのだけれど…最近それも崩れつつある。
玄関のドアを開けると、千陽が離れる。
“空井さん、佐藤さん”モードだ。
…もう良くない?と、本当に思う。
誉が走ってきて、「千陽!」と笑う。
オンラインで2人でゲームをしているからか、やたら仲が良くなっている。
千陽は誉の頭をポンポンと撫でて、自分の家みたいにリビングに行く。
誉は嬉しそうに千陽の後をついていった。
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