いたずらはため息と共に

常森 楽

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4.踏み込む

206.文化祭

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3人で駅近くのスーパーに寄った。
小学生のときはなかったと思うけど、最近は3合分のお米が売っていて、便利だ。
今日は梅おにぎりと卵焼きと、牛肉とごぼうのしぐれ煮を作ることにした。
味噌汁はインスタント。
野菜が少ないのがネックだけど、ブロッコリーを茹でることにして、誤魔化す。
調味料も買って、これは、明日持ち帰ることにした。
「そ、空井そらいさんの、手作り…ですか…」
森山さんの鼻の下が伸びている。
「えっと…食べていく?」
「いいいえ!い、いけません!…大丈夫です!はい!」
「…そっか」
森山さんって、どんな人なんだろう…?
「じゃあ森山さん、またね?」
千陽が言う。
「は、はい。また…」
千陽の家は、綺麗な戸建てだった。
森山さんの家が千陽の家から見えて、かなり近い距離に住んでいたのだとわかる。
「千陽…森山さんのこと“あんな子いたんだ”って言ってなかった?」
「んー…そうだっけ?」
私は苦笑して、家にお邪魔する。

真っ白な室内。
足元はフローリングではなく、タイル調だった。
大きなソファがリビングにあって、思わず「わぁ」と声が出た。
ほとんど無駄な物が置かれていない。
お掃除ロボットが目に入って「すごい!」と言うと「そお?」と返ってくる。
広いダイニングテーブル。
「これ、大理石…じゃ、ないよね?」
「知らない」
家具1つ1つが高級そうで、なんだかモゾモゾしてしまう。
「たまにパパの会社の人が来て、パーティを開いたりするの。だから、無駄に広くて、あたしは好きじゃない」
「…そっか」
「穂、お腹すいた」
「ああ、うん。ちょっと待ってね」
…す、すごい。
高そうな冷蔵庫…というか、冷蔵庫の横にワインセラーがあって、目が回りそうだ。
フライパンは新品そのもので、これも、高そう…。
本当に使っていいのかな…。

でももう夜も遅いし、早く作っちゃわないと…と、ご飯を炊いて、他のものを作る。
お皿も全部ブランド物で、正直触るのが怖い。
千陽は楽しそうに私のそばに立っていた。
だから、彼女にお皿を運んでもらう。
…お皿が違うだけで、いつものご飯がいつものご飯に見えないから不思議だ。
「いただきます」と言うと、千陽も小さく呟いた。
そのことに驚きを隠せずにいたけれど、彼女がおいしそうにご飯を食べるから、心がふわふわする。
ご飯を食べ終えると、千陽が雑に食洗機にお皿を入れた。
その扱いに恐怖を感じつつも、私は見守ることしかできない。

「お風呂、入る?」
「ああ…うん」
千陽が私の手を引いて、浴室に連れて行ってくれる。
お風呂は2階にあった。
高級なホテル…泊まったことはないけれど、イメージする高級なホテルの浴室って感じがした。
脱衣所とお風呂場の仕切りは全体が磨りガラスになっていて、お洒落に一部が普通の透明のガラスで…なんか、すごい。
…ちょっと、説明できない。
千陽が服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょ…ち、千陽!?」
「なに?」
「あ…えっと…私、1回出るね…」
「なんで?」
「え!?…だって、千陽…服、脱ぎ始めてるし…」
「一緒に入らないの?」
心臓がドッドッドッドッと音を鳴らす。
「は、入らない…よ…」
「なんで?」
「いや…さすがに…」
俯きながら、目だけ彼女に遣ると、「ハァ」とため息をつきつつ、彼女は服を着直した。

「わかった。じゃあ、穂、先入って?…あたし、ルームウェア持ってくる」
「あ、ありがとう…」
彼女が浴室から出ていって、大きく息を吐いた。
「私、大丈夫かな…だ、大丈夫だよね?」
胸に手を当てる。
制服を脱ぐ。
永那ちゃんに“着けて”と言われたマイクロビキニ…。
こういうときのためだったのかな…なんて。
制服のスカートの中に忍び込ませて、隠す。
ネックレスとアンクレットを取って、畳んだ制服の上に置く。
恐る恐るお風呂場に入ると、広々していてソワソワする。
シャワーが天井にもあるし、普通の物もある。
一般家庭に2つもシャワーって必要なの!?
…ああ、そっか。だから2人で入れるのか…。
怖い…。
どうすればいいのかわからなくて、適当にハンドルを回す。
天井からシャワーが降ってくる。
眉頭に力を入れながら、ボタンを押すと、普通のシャワーに切り替わる。

「穂」
心臓が飛び跳ねる…し、体もちょっと飛び跳ねた。
「は、はい」
「ここに、置いとくね」
「あ、ありがとう…」
磨りガラス越しにも、彼女の影が見える。
…これって、私の体も千陽に見えてるってことなのかな。
お風呂場のドアは、透明のガラス部分が縦に1本伸びていて、そこから中を覗こうと思えば、覗けてしまうようになっていた。
そろりそろりと、そこから体が見えないように移動した。
結局そんなのは杞憂で、千陽はすぐにパタンとドアを閉めて、浴室から出ていった。
なぜかシャンプーとコンディショナー、ボディソープがうちの物と一緒で、びっくりする。
他にも高そうな物が置かれていたけれど、当然使い慣れた物を選んだ。
ドキドキしながらのお風呂を終えて、彼女が用意してくれた服を着た。
ブラは、今日着けていたストラップレスのマイクロビキニを…ショーツはさっき買ったものを着た。
本当は汗をかいたから、ビキニはつけたくなかったけど、理性を保つためにも必要だと判断した。
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