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4.踏み込む
203.文化祭
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■■■
永那ちゃんが帰って、私は放送室に戻った。
本当は、もっと一緒にいたかった。
金井さんのおかげで、少しは長く一緒にいられたけど、それでも…悔しい。
本当は、一緒に校内を歩きたかった。
そのために、事前にどこにどんな出店があるか、頭に叩き込んでおいたのに。
体育館で演劇をしていたクラスの生徒が怪我をしたという情報が入って、急いで体育館に向かったのが12時前。
大きな怪我はなくホッとしたけど、念のため保健室に連れて行った。
放送室に戻ろうとしたら、校門に人が殺到してパニックが起きていると連絡が入り、それをなんとか鎮めた。
その時点で12時半をとうに過ぎていて、焦った。
ようやく永那ちゃんの元へ…と思ったら、今度は1年生の作ったオブジェが倒れたと連絡があった。
一度生徒会室に寄ってから、オブジェの詳細がわかる資料を取って、オブジェのある場所に向かった。
怪我人の確認や、修復可能か、先生との相談や1年生の文化祭委員との話し合いで大幅に時間が取られた。
永那ちゃんのことを不安に思っていたら、金井さんから連絡が来て、顔が熱くなった。
生徒会メンバー全員に聞かれていることを知っていたから。
トランシーバーからの連絡を聞いていたのか、なぜか先生にも「悪いな」と謝られた。
…先生にまで知られてるなんて…恥ずかしすぎて心臓がもたない。
でも、そのおかげか、心なしか早めに話し合いを切り上げてくれたようにも思えた。
私は走って生徒会室に行った。
それでも、もう2時の10分前で…。
こんなに頑張ったのに、永那ちゃんとの時間がたった10分…?と絶望した。
なんとか2人の時間は確保できたけど、何も食べていなかった私はお腹がペコペコで…永那ちゃんがたこ焼きを私のために買ってくれていたのが、嬉しかった。
…エッチを、してあげたかったけど、やっぱり、私には、学校でするのは無理だった。
ただでさえ待たせたというのに、傷ついた、悲しそうな顔をされるのは胸がズキズキと痛んだ。
月曜日…月曜日…月曜日!
落ち込んでる場合じゃない。
今は目の前のことに集中!
そして、月曜日を楽しみに、頑張るんだ。
そっとネックレスに触れる。
足元のアンクレットも確認して、フゥッと息を吐く。
「2人とも、ごめんね」
「いえ、おつかれさまでした」
副生徒会長の2人に謝って、マイクを交代する。
文化祭は4時まで。
その後、片付けや修復作業がある人達は学校に残って作業をする。
そのまま問題なく帰れる人達は帰れる算段になっている。
私達生徒会は最終下校時刻の夜8時まで残って、校内全体の確認をしてから、帰る。
ちなみに文化祭委員の人達は、特に用事がなければ、4時に帰っていいことになっている。
ただ音楽を流している間は、私達はひと息つける。
「先輩、本当に、おつかれさまでした」
日住君が言う。
もう1人の副生徒会長は休憩だ。
「ありがとう」
「両角先輩からの差し入れ、美味しかったです。ごちそうさまでした…」
「…よかった」
永那ちゃんは“クラスメイトに買わされた”と言っていた。
…なんだか、苦虫を噛み潰したような気持ちだ。
“そのくらいの関係がちょうどいい”という、彼女の友人との距離の取り方は、私にはわからない。
口出しすることでもないのはわかっているけれど、腑に落ちない。
「そういえば、先輩」
「ん?」
「明日は、佐藤先輩は、隔離したほうが良さそうですね」
「…ああ」
千陽が校門でパンフレットを配っていたら、男子生徒や遊びに来たOB、その他の男性陣が殺到したのだった。
そのなかにチラホラ女子も混ざっていて、物凄い人混みになっていた。
なんとか千陽を隠して、とにかくみんなの興奮を鎮めるのは大変だった。
まるでニュースで見た、アイドルの握手会だ。
でも、隔離と言っても…1番隔離しやすい体育館の作業は、千陽には重労働で、全く当てにならない。
問題が立て続けに起きて走っていたとき、優里ちゃんに会った。
そのときにも“千陽がいると、教室が人で溢れ返って大変だった”と言っていた。
去年は、永那ちゃんが参加しないから、千陽も参加しなかったらしい。
それでパニックが起きなかった…ということらしい。
「隔離…どこに隔離すればいいんだろう」
椅子の背もたれに寄りかかって、フゥッと息をつく。
「ここが、ベストじゃないですか?」
「放送室?…それは、そうかもしれないけど」
「俺、佐藤先輩と交代しますよ。音楽の放送とかなら、教えれば佐藤先輩もできますよね?」
じゃあ、もう1人の副生徒会長にも交渉しなきゃいけないな。
たぶん了承してくれると思うけど。
「そうだね。じゃあ、佐藤さんには放送室に来てもらおうか」
「はい」
永那ちゃんが帰って、私は放送室に戻った。
本当は、もっと一緒にいたかった。
金井さんのおかげで、少しは長く一緒にいられたけど、それでも…悔しい。
本当は、一緒に校内を歩きたかった。
そのために、事前にどこにどんな出店があるか、頭に叩き込んでおいたのに。
体育館で演劇をしていたクラスの生徒が怪我をしたという情報が入って、急いで体育館に向かったのが12時前。
大きな怪我はなくホッとしたけど、念のため保健室に連れて行った。
放送室に戻ろうとしたら、校門に人が殺到してパニックが起きていると連絡が入り、それをなんとか鎮めた。
その時点で12時半をとうに過ぎていて、焦った。
ようやく永那ちゃんの元へ…と思ったら、今度は1年生の作ったオブジェが倒れたと連絡があった。
一度生徒会室に寄ってから、オブジェの詳細がわかる資料を取って、オブジェのある場所に向かった。
怪我人の確認や、修復可能か、先生との相談や1年生の文化祭委員との話し合いで大幅に時間が取られた。
永那ちゃんのことを不安に思っていたら、金井さんから連絡が来て、顔が熱くなった。
生徒会メンバー全員に聞かれていることを知っていたから。
トランシーバーからの連絡を聞いていたのか、なぜか先生にも「悪いな」と謝られた。
…先生にまで知られてるなんて…恥ずかしすぎて心臓がもたない。
でも、そのおかげか、心なしか早めに話し合いを切り上げてくれたようにも思えた。
私は走って生徒会室に行った。
それでも、もう2時の10分前で…。
こんなに頑張ったのに、永那ちゃんとの時間がたった10分…?と絶望した。
なんとか2人の時間は確保できたけど、何も食べていなかった私はお腹がペコペコで…永那ちゃんがたこ焼きを私のために買ってくれていたのが、嬉しかった。
…エッチを、してあげたかったけど、やっぱり、私には、学校でするのは無理だった。
ただでさえ待たせたというのに、傷ついた、悲しそうな顔をされるのは胸がズキズキと痛んだ。
月曜日…月曜日…月曜日!
落ち込んでる場合じゃない。
今は目の前のことに集中!
そして、月曜日を楽しみに、頑張るんだ。
そっとネックレスに触れる。
足元のアンクレットも確認して、フゥッと息を吐く。
「2人とも、ごめんね」
「いえ、おつかれさまでした」
副生徒会長の2人に謝って、マイクを交代する。
文化祭は4時まで。
その後、片付けや修復作業がある人達は学校に残って作業をする。
そのまま問題なく帰れる人達は帰れる算段になっている。
私達生徒会は最終下校時刻の夜8時まで残って、校内全体の確認をしてから、帰る。
ちなみに文化祭委員の人達は、特に用事がなければ、4時に帰っていいことになっている。
ただ音楽を流している間は、私達はひと息つける。
「先輩、本当に、おつかれさまでした」
日住君が言う。
もう1人の副生徒会長は休憩だ。
「ありがとう」
「両角先輩からの差し入れ、美味しかったです。ごちそうさまでした…」
「…よかった」
永那ちゃんは“クラスメイトに買わされた”と言っていた。
…なんだか、苦虫を噛み潰したような気持ちだ。
“そのくらいの関係がちょうどいい”という、彼女の友人との距離の取り方は、私にはわからない。
口出しすることでもないのはわかっているけれど、腑に落ちない。
「そういえば、先輩」
「ん?」
「明日は、佐藤先輩は、隔離したほうが良さそうですね」
「…ああ」
千陽が校門でパンフレットを配っていたら、男子生徒や遊びに来たOB、その他の男性陣が殺到したのだった。
そのなかにチラホラ女子も混ざっていて、物凄い人混みになっていた。
なんとか千陽を隠して、とにかくみんなの興奮を鎮めるのは大変だった。
まるでニュースで見た、アイドルの握手会だ。
でも、隔離と言っても…1番隔離しやすい体育館の作業は、千陽には重労働で、全く当てにならない。
問題が立て続けに起きて走っていたとき、優里ちゃんに会った。
そのときにも“千陽がいると、教室が人で溢れ返って大変だった”と言っていた。
去年は、永那ちゃんが参加しないから、千陽も参加しなかったらしい。
それでパニックが起きなかった…ということらしい。
「隔離…どこに隔離すればいいんだろう」
椅子の背もたれに寄りかかって、フゥッと息をつく。
「ここが、ベストじゃないですか?」
「放送室?…それは、そうかもしれないけど」
「俺、佐藤先輩と交代しますよ。音楽の放送とかなら、教えれば佐藤先輩もできますよね?」
じゃあ、もう1人の副生徒会長にも交渉しなきゃいけないな。
たぶん了承してくれると思うけど。
「そうだね。じゃあ、佐藤さんには放送室に来てもらおうか」
「はい」
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