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185.文化祭準備
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「空井さん」
千陽が私の肩に触れる。
しゃがんで、私の机に頬杖をつく。
「生徒会の手伝いって、何するの?」
また第二ボタンがあいてる…。
「…あぁ、学校の入口でパンフレット配ったり、校内の見回りをしたり、毎年体育館でダンス部とか軽音部が何か発表するから、その時間の管理だったり椅子の出し入れをするよ」
「ふーん。…あたし、空井さんと一緒にいられる?」
上目遣いに言われて、ドキッとする。
「ど、どうかな?…私は、たぶん当日放送室にこもることになると思うから」
「放送室?」
「うん。いろんなことを…放送するんだ。校内でどんなことが行われているかとか…迷子のお知らせとか…」
「なんだ、つまんない」
心底つまらなさそうに言う。
放送は生徒会長と副生徒会長の役目だ。
事前に生徒会長から、次の生徒会長を私がやるように言われている。
副生徒会長は、同級生1人と、日住君だ。
だから今回の文化祭は、生徒会長になる私の初めての仕事と言える。
来週の火曜日に生徒会があって、そこで正式に発表される。
一応、今日、全校生徒に生徒会長に立候補するかどうかのプリントが配られたけれど、だいたい、みんな文化祭に夢中で見られもしない。
もし候補者が現れたとしても、今回の文化祭に限っては、私が仕切ることになる。
「…でも、放課後、たくさん一緒にいられるんでしょ?」
…どうしてそういう、可愛い言い方をするの。
「ま、まあ…それは、そうだね」
「よかった。…楽しみ」
「空井さん」
千陽の横に、森山さんが立った。
千陽よりも少し身長が低くて、丸い眼鏡をかけている。
か細い声なのは、体育祭のときも一緒。
しゃがんでいる千陽が彼女を見上げる。
「ぶ、文化祭の候補の紙、来週の木曜日の集まりで提出すれば、いいんですよね?」
「うん」
私が頷くと、森山さんはぺこりと頭を下げて、パタパタと走って席に戻った。
「あんな子、クラスにいたんだ」
「…いたよ」
千陽はいつもの、愛想のない顔で、彼女の背中を見ていた。
「千陽、なんで急に」
鞄を肩にかけた永那ちゃんが、私の肩に手をついて寄りかかる。
急に触れられて、心臓が跳ねる。
「ホントだよ~、びっくりしたー!」
優里ちゃんが千陽に抱きつく。
「いいじゃん。どうせ暇だし」
千陽は立ち上がって、私を見下ろしながら微笑んだ。
「私もしたかった…」
「永那ん家、どんだけ門限厳しいの」
優里ちゃんが哀れみの目を永那ちゃんに向ける。
「うっせー」
「…そういえば、永那ちゃんは文化祭、参加できるの?」
そう聞くと、急に顔を覗きこまれる。
顔が近くて、鼓動が速くなった。
「少しだけ、ね」
頭をポンポンと撫でられる。
「穂と、回れる?」
胸がキュゥッと締めつけられる。
「それ、は…」
「生徒会で忙しい?」
「…なんとか、あける」
永那ちゃんが優しく笑う。
「ありがと」
優里ちゃんは体育館に向かって、私達3人は校門に向かった。
「じゃあ、穂、また月曜ね」
永那ちゃんが抱きしめてくれるから、心臓がドクドクと大きく鳴る。
思えば学校で永那ちゃんに抱きしめられるなんて初めてで、帰宅する生徒の視線が刺さって、恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。
彼女に見つめられて、まるでキスしそうな雰囲気に、慌てて距離を取る。
「う、うん。また、月曜」
永那ちゃんが私の考えていることを察したのか、楽しそうに口角を上げた。
千陽が永那ちゃんの腕に、自分の腕を絡める。
その光景に、胸がチクリと痛んだ。
…やっぱり2人はお似合いだな。なんて、思ってしまったから。
「穂」
2人に見つめられる。
「穂は、私の彼女だよ」
「あたしは、穂の」
風が吹く。
…私、こんな美女2人に、なんてこと言われてるんだろう。
冷静にそう思ってしまうほど、2人が綺麗だった。
「ねえ、それどういう意味?」
「聞いてないの?」
「聞いてない、言え」
「やだ」
永那ちゃんの目の下がピクピク動く。
「あ、永那ちゃん…」
ボーッとしている場合じゃなくなって、私は慌てて永那ちゃんに説明した。
なんとか納得してもらって、2人の背中を見送る。
何度か永那ちゃんが振り向いて手を振ってくれるから、振り返す。
いつまでも永那ちゃんが千陽に怒っているみたいだった。
微笑ましい気持ちのまま、私も家に帰った。
月曜日、永那ちゃんの髪が短くなっていた。
6月はマッシュヘアだったけど、夏休みを経てかなり髪が伸びていた。
ハンサムショートになっていて、クラスの女子から抱きつかれていた。
「永那かっこい~」「夏全然会えなかったから寂しかった~」
キャーキャー騒がれて、永那ちゃんも満更でもなさそうな顔をする。
…私も、永那ちゃんに触れたい。
そんな気持ちを隠すように、本で顔を隠す。
千陽が私の肩に触れる。
しゃがんで、私の机に頬杖をつく。
「生徒会の手伝いって、何するの?」
また第二ボタンがあいてる…。
「…あぁ、学校の入口でパンフレット配ったり、校内の見回りをしたり、毎年体育館でダンス部とか軽音部が何か発表するから、その時間の管理だったり椅子の出し入れをするよ」
「ふーん。…あたし、空井さんと一緒にいられる?」
上目遣いに言われて、ドキッとする。
「ど、どうかな?…私は、たぶん当日放送室にこもることになると思うから」
「放送室?」
「うん。いろんなことを…放送するんだ。校内でどんなことが行われているかとか…迷子のお知らせとか…」
「なんだ、つまんない」
心底つまらなさそうに言う。
放送は生徒会長と副生徒会長の役目だ。
事前に生徒会長から、次の生徒会長を私がやるように言われている。
副生徒会長は、同級生1人と、日住君だ。
だから今回の文化祭は、生徒会長になる私の初めての仕事と言える。
来週の火曜日に生徒会があって、そこで正式に発表される。
一応、今日、全校生徒に生徒会長に立候補するかどうかのプリントが配られたけれど、だいたい、みんな文化祭に夢中で見られもしない。
もし候補者が現れたとしても、今回の文化祭に限っては、私が仕切ることになる。
「…でも、放課後、たくさん一緒にいられるんでしょ?」
…どうしてそういう、可愛い言い方をするの。
「ま、まあ…それは、そうだね」
「よかった。…楽しみ」
「空井さん」
千陽の横に、森山さんが立った。
千陽よりも少し身長が低くて、丸い眼鏡をかけている。
か細い声なのは、体育祭のときも一緒。
しゃがんでいる千陽が彼女を見上げる。
「ぶ、文化祭の候補の紙、来週の木曜日の集まりで提出すれば、いいんですよね?」
「うん」
私が頷くと、森山さんはぺこりと頭を下げて、パタパタと走って席に戻った。
「あんな子、クラスにいたんだ」
「…いたよ」
千陽はいつもの、愛想のない顔で、彼女の背中を見ていた。
「千陽、なんで急に」
鞄を肩にかけた永那ちゃんが、私の肩に手をついて寄りかかる。
急に触れられて、心臓が跳ねる。
「ホントだよ~、びっくりしたー!」
優里ちゃんが千陽に抱きつく。
「いいじゃん。どうせ暇だし」
千陽は立ち上がって、私を見下ろしながら微笑んだ。
「私もしたかった…」
「永那ん家、どんだけ門限厳しいの」
優里ちゃんが哀れみの目を永那ちゃんに向ける。
「うっせー」
「…そういえば、永那ちゃんは文化祭、参加できるの?」
そう聞くと、急に顔を覗きこまれる。
顔が近くて、鼓動が速くなった。
「少しだけ、ね」
頭をポンポンと撫でられる。
「穂と、回れる?」
胸がキュゥッと締めつけられる。
「それ、は…」
「生徒会で忙しい?」
「…なんとか、あける」
永那ちゃんが優しく笑う。
「ありがと」
優里ちゃんは体育館に向かって、私達3人は校門に向かった。
「じゃあ、穂、また月曜ね」
永那ちゃんが抱きしめてくれるから、心臓がドクドクと大きく鳴る。
思えば学校で永那ちゃんに抱きしめられるなんて初めてで、帰宅する生徒の視線が刺さって、恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。
彼女に見つめられて、まるでキスしそうな雰囲気に、慌てて距離を取る。
「う、うん。また、月曜」
永那ちゃんが私の考えていることを察したのか、楽しそうに口角を上げた。
千陽が永那ちゃんの腕に、自分の腕を絡める。
その光景に、胸がチクリと痛んだ。
…やっぱり2人はお似合いだな。なんて、思ってしまったから。
「穂」
2人に見つめられる。
「穂は、私の彼女だよ」
「あたしは、穂の」
風が吹く。
…私、こんな美女2人に、なんてこと言われてるんだろう。
冷静にそう思ってしまうほど、2人が綺麗だった。
「ねえ、それどういう意味?」
「聞いてないの?」
「聞いてない、言え」
「やだ」
永那ちゃんの目の下がピクピク動く。
「あ、永那ちゃん…」
ボーッとしている場合じゃなくなって、私は慌てて永那ちゃんに説明した。
なんとか納得してもらって、2人の背中を見送る。
何度か永那ちゃんが振り向いて手を振ってくれるから、振り返す。
いつまでも永那ちゃんが千陽に怒っているみたいだった。
微笑ましい気持ちのまま、私も家に帰った。
月曜日、永那ちゃんの髪が短くなっていた。
6月はマッシュヘアだったけど、夏休みを経てかなり髪が伸びていた。
ハンサムショートになっていて、クラスの女子から抱きつかれていた。
「永那かっこい~」「夏全然会えなかったから寂しかった~」
キャーキャー騒がれて、永那ちゃんも満更でもなさそうな顔をする。
…私も、永那ちゃんに触れたい。
そんな気持ちを隠すように、本で顔を隠す。
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