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3.成長
177.まだまだ終わらなかった夏
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1人になって、大きくため息をつく。
お母さんのこと…本当に何かできないのかな?
いつまでも永那ちゃんがいないとダメ、なんて…それじゃあ、永那ちゃんの人生はどうなるの?
依存関係。
スマホで調べると、色々出てくる。
…それを永那ちゃんに伝えたところで、どうすることもできないだろうし、ありがた迷惑だろうから、何も言わない。
でも、絶対に、このままでいいわけがない。
どうにかできないのか…。
考えても答えは出ず、家につく。
3人が人生ゲームで遊んでいた。
「あ、穂ちゃん!おかえりー!」
「ただいま」
「永那大丈夫だった?」
優里ちゃんは眉をハの字にさせて聞く。
「うーん…どうかな」
「なんか、申し訳ないことしちゃったな…」
「べつに、いつものことでしょ?」
佐藤さんがルーレットを回している。
「そう、だけど…」
「次、優里だよ」
誉が俯く優里ちゃんに声をかけた。
テーブルに何もないから、私は4人分のお茶を用意する。
ボーッとボードを眺める。
なんだかんだ優里ちゃんも、申し訳ない気持ちを横に置いて、楽しそうにしていた。
勝敗は、1位が佐藤さん、2位 誉、3位 優里ちゃんの順だった。
優里ちゃんが「もう一回!」と言って、今度は私も参加することになった。
この回は、1位 私、2位 誉、3位 佐藤さん、4位 優里ちゃんだった。
優里ちゃんが「もう一回!!」と言ったけど、私は遠慮した。
1人で買い物に行こうとしたら、佐藤さんも行きたがった。
優里ちゃんも来ようとしたけど、誉がゴネて、2人は家に残ることになった。
今日は、3人で屋内型のアトラクション施設に行ってきたらしく、誉は“もう歩けない”と寝転んだ。
エレベーターに乗ると、佐藤さんに壁に押しやられた。
「キス、したい」
ズキズキと胸が痛みながら、彼女の唇に唇を重ねる。
エレベーターが1階について唇が離れると、彼女は満足げだった。
佐藤さんのも、依存なのかな。
…永那ちゃんのお母さんに、似てるのかな。
だから永那ちゃんは、佐藤さんを放っておけない?
手を繋いで、スーパーに行く。
「今日、ご飯なに?」
「んー…何も考えてないんだよね。何か食べたい物ある?」
「特には…」
野菜を見つめても、何も浮かんでこない。
「佐藤さんは」
「千陽」
「ああ…千陽は、トマト以外に嫌いなものある?」
「野菜は、全般的に苦手だけど…食べられないわけじゃない」
「そっか。じゃあ…まあ、お肉系かな」
適当な、使えそうな定番の野菜をカゴに入れてから、お肉コーナーに移動する。
「穂」
「なに?」
「そんなに永那が心配?」
私の腕に抱きつく佐藤さんと、見つめ合う。
彼女は無表情だ。
「うん、心配だよ」
唐揚げ用の鶏肉を手に取る。
「永那…帰る理由は、門限じゃないの?他に、理由があるの?」
私は口角を上げて、内容量の多い鶏肉に変える。
「私は、何も言えないよ。永那ちゃんに、聞いて?」
「…聞いても、あたしには言ってくれない」
佐藤さんを見ると、その横顔がすごく寂しげで…彼女が1歩永那ちゃんに踏み込めない理由が、わかった気がした。
私にはキスしたり、胸をさわらせたりできるのに、永那ちゃんにはできない、理由。
永那ちゃんが、佐藤さんに心を開いていないのか。
…開いていないというより、永那ちゃんは佐藤さんを守る立場だから、自分の悩みなんて言えないのかもしれない。
本当に、問題が山積みだ。
「千陽は、どうしてそんなに寂しいの?…昔、いじめられてたから?」
おやつを買うために、お菓子コーナーに行く。
なんとなく優里ちゃんは、夜にお菓子パーティーをやりたいとか言い出しそうだったから。
「それも、あると思う」
私が彼女に目を遣ると、クッキーを見ていたから、それもカゴに入れた。
彼女が、少し嬉しそうな顔をする。
「あたし、昔、ストーカーされてたの」
驚きのあまり、立ち止まる。
彼女の瞳が、酷く冷たい。
「母親にね、小さい頃、写真を勝手にSNSにあげられてて…それを見た男に、襲われそうになった」
彼女はもう1つ別のクッキーの箱を取って、カゴに入れた。
「母親には、言えなかった。もちろん、父親にも。2人には、あたしよりも大事な人が、他にいるから」
私が首を傾げると、彼女に手を引かれて、飲み物コーナーに連れて行かれる。
「誰かに守ってもらいたくて、適当に彼氏を作ったの」
彼女は、炭酸飲料をカゴに入れていく。
「その彼氏には、元々女がいたらしくてね…あたし知らなくて、奪っちゃったの」
ジッと私を見つめる。
「そしたら、その女に、顔を便器に突っ込まれた。…笑えるよね」
彼女は、全く笑っていない。
…私は、イジメを受けたことがない。
距離を置かれることはあっても、無視をされたことすらほとんどない。
「結局、その男には捨てられたし。…あたし、男にさわられるの、無理だから…それで、嫌われて」
彼女の受けてきた傷を、私は、到底わかってあげられない。
鼓動が、速くなる。
お母さんのこと…本当に何かできないのかな?
いつまでも永那ちゃんがいないとダメ、なんて…それじゃあ、永那ちゃんの人生はどうなるの?
依存関係。
スマホで調べると、色々出てくる。
…それを永那ちゃんに伝えたところで、どうすることもできないだろうし、ありがた迷惑だろうから、何も言わない。
でも、絶対に、このままでいいわけがない。
どうにかできないのか…。
考えても答えは出ず、家につく。
3人が人生ゲームで遊んでいた。
「あ、穂ちゃん!おかえりー!」
「ただいま」
「永那大丈夫だった?」
優里ちゃんは眉をハの字にさせて聞く。
「うーん…どうかな」
「なんか、申し訳ないことしちゃったな…」
「べつに、いつものことでしょ?」
佐藤さんがルーレットを回している。
「そう、だけど…」
「次、優里だよ」
誉が俯く優里ちゃんに声をかけた。
テーブルに何もないから、私は4人分のお茶を用意する。
ボーッとボードを眺める。
なんだかんだ優里ちゃんも、申し訳ない気持ちを横に置いて、楽しそうにしていた。
勝敗は、1位が佐藤さん、2位 誉、3位 優里ちゃんの順だった。
優里ちゃんが「もう一回!」と言って、今度は私も参加することになった。
この回は、1位 私、2位 誉、3位 佐藤さん、4位 優里ちゃんだった。
優里ちゃんが「もう一回!!」と言ったけど、私は遠慮した。
1人で買い物に行こうとしたら、佐藤さんも行きたがった。
優里ちゃんも来ようとしたけど、誉がゴネて、2人は家に残ることになった。
今日は、3人で屋内型のアトラクション施設に行ってきたらしく、誉は“もう歩けない”と寝転んだ。
エレベーターに乗ると、佐藤さんに壁に押しやられた。
「キス、したい」
ズキズキと胸が痛みながら、彼女の唇に唇を重ねる。
エレベーターが1階について唇が離れると、彼女は満足げだった。
佐藤さんのも、依存なのかな。
…永那ちゃんのお母さんに、似てるのかな。
だから永那ちゃんは、佐藤さんを放っておけない?
手を繋いで、スーパーに行く。
「今日、ご飯なに?」
「んー…何も考えてないんだよね。何か食べたい物ある?」
「特には…」
野菜を見つめても、何も浮かんでこない。
「佐藤さんは」
「千陽」
「ああ…千陽は、トマト以外に嫌いなものある?」
「野菜は、全般的に苦手だけど…食べられないわけじゃない」
「そっか。じゃあ…まあ、お肉系かな」
適当な、使えそうな定番の野菜をカゴに入れてから、お肉コーナーに移動する。
「穂」
「なに?」
「そんなに永那が心配?」
私の腕に抱きつく佐藤さんと、見つめ合う。
彼女は無表情だ。
「うん、心配だよ」
唐揚げ用の鶏肉を手に取る。
「永那…帰る理由は、門限じゃないの?他に、理由があるの?」
私は口角を上げて、内容量の多い鶏肉に変える。
「私は、何も言えないよ。永那ちゃんに、聞いて?」
「…聞いても、あたしには言ってくれない」
佐藤さんを見ると、その横顔がすごく寂しげで…彼女が1歩永那ちゃんに踏み込めない理由が、わかった気がした。
私にはキスしたり、胸をさわらせたりできるのに、永那ちゃんにはできない、理由。
永那ちゃんが、佐藤さんに心を開いていないのか。
…開いていないというより、永那ちゃんは佐藤さんを守る立場だから、自分の悩みなんて言えないのかもしれない。
本当に、問題が山積みだ。
「千陽は、どうしてそんなに寂しいの?…昔、いじめられてたから?」
おやつを買うために、お菓子コーナーに行く。
なんとなく優里ちゃんは、夜にお菓子パーティーをやりたいとか言い出しそうだったから。
「それも、あると思う」
私が彼女に目を遣ると、クッキーを見ていたから、それもカゴに入れた。
彼女が、少し嬉しそうな顔をする。
「あたし、昔、ストーカーされてたの」
驚きのあまり、立ち止まる。
彼女の瞳が、酷く冷たい。
「母親にね、小さい頃、写真を勝手にSNSにあげられてて…それを見た男に、襲われそうになった」
彼女はもう1つ別のクッキーの箱を取って、カゴに入れた。
「母親には、言えなかった。もちろん、父親にも。2人には、あたしよりも大事な人が、他にいるから」
私が首を傾げると、彼女に手を引かれて、飲み物コーナーに連れて行かれる。
「誰かに守ってもらいたくて、適当に彼氏を作ったの」
彼女は、炭酸飲料をカゴに入れていく。
「その彼氏には、元々女がいたらしくてね…あたし知らなくて、奪っちゃったの」
ジッと私を見つめる。
「そしたら、その女に、顔を便器に突っ込まれた。…笑えるよね」
彼女は、全く笑っていない。
…私は、イジメを受けたことがない。
距離を置かれることはあっても、無視をされたことすらほとんどない。
「結局、その男には捨てられたし。…あたし、男にさわられるの、無理だから…それで、嫌われて」
彼女の受けてきた傷を、私は、到底わかってあげられない。
鼓動が、速くなる。
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