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3.成長
145.海とか祭りとか
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永那の門限があるから、あたしたちは早々に帰る。
さすがに永那も、帰りは更衣室を借りていた。
軽くシャワーを浴びて、服を着る。
あたし達が出る頃には、弟は準備を終えていて、立って待っていた。
「誉、お待たせ」
優里が弟に抱きついている。
「そんな待ってないよ」
重そうにしながら、受け止めようとしている。
「行くかー!」
永那が空井さんの手を掴む。
空井さんもそれを受け入れて、恋人繋ぎをする。
やっぱりまだ、あたしは受け入れられない。
胸がチクリと痛んで、俯く。
それでも、みんなの後ろを歩く。
きっと、永那から離れる選択肢だってある。
きっと、まだ諦めないで永那を奪う選択肢だってある。
もしかしたら2人が別れて、永那が“やっぱり千陽がいい”って言ってくれるときがくるかもしれない。
最後のはわからないけど、少なくともあたしは、最初の2つを選択する気は、ない。
永那は変わらずあたしの王子様だし、でも、彼女にとってあたしはただの友達。
誰よりも永那を見てきたから、奪えるわけがないと、わかってる。
こんなあたしを、空井さんは好きだという。
あたしだったら、あたしを好きになんてなれない。
付き合ってもないのに永那の周りをずっとチョロチョロして、恋人みたいにして…。
浮かれてはなかったと思うけど、あたしは自分でも気付かないうちに彼女面してたのかな。
永那に守ってもらって、守ってもらい続けて、それに甘えて…そんなあたしを、永那が好きになるはずがなかった。
…永那が空井さんを好きだと言うのならなおさら、あたしを好きになるはずがない。
ただ、現実を知る。
まだ受け止められたわけじゃない。
ただ、知っただけ。
帰り際、弟に連絡先を聞かれた。
仕方ないから教えると、永那が嬉しそうにしていた。
日曜日、行くのをやめようと思っていたレズビアンのイベントに参加した。
とある映画好きのオフ会も兼ねていて、わりとこじんまりしていた。
雰囲気も今までで1番落ち着いていて、カフェでの集まりだった。
声をかけてくれた人がよく話す人で、あたしは自分から話すのが苦手だから、居心地が良かった。
連絡先を交換して、また会おうという話にもなった。
…しばらく、永那を好きなままでいるとは思うけど…いつか、誰か、他の人を好きになれたら…とも思う。
月曜日、永那と待ち合わせて空井さんの家に向かう。
初めて見る眼鏡姿に、思わずしゃがみこんだ。
空井さんの家で寝るから、コンタクトじゃなくて眼鏡にしていると…。
羨ましい、彼女は永那のこんな姿を見ていたなんて。
「ねえ」
「ん?」
「あたし、空井さんとのことを邪魔するつもりはないけど…あたしがいるところで、セックスとかしないで。さすがに、耐えられない」
永那の耳が赤くなる。
「わ、わかってるよ」
「前にしてたじゃん」
「いや…まあ、あれは、イライラしてたから。もう、しないから」
「あっそ」
最初に空井さんの家に行った日、すごく緊張したなあ。
でも、もういつの間にか慣れて、慣れたのを通り越して居心地の良さを感じている。
初めて行ったときは永那が騙されてるんじゃないかとか思って、いろいろ疑って空井さんを見ていた。
強引に空井さんのベッドに寝転がって、永那を誘って、でも、突き飛ばされて…。
“傷つくのも承知で”とか思っておきながら、結局傷ついて耐えられなくなって、優里を頼った。
去年、永那があたしの部屋に来たとき、あたしはかなり勇気を出して永那を誘った。
露出の多い服を着て、胸元を強調させて、ベッドに寝転がる。
足をバタバタさせてみたりして、ショーツがチラ見えするような格好をしたり。
永那はチラッと見たけど、すぐに目をそらして、座りながら目を閉じてしまった。
「ベッドで寝たら?」って言ってみたけど「いい」と断られた。
それなら…と、彼女の横に座って肩に頭を預けてみた。
無反応だから、腕に抱きついて、胸を押し付けた。
それでもスゥスゥ寝息を立てて寝るから、悲しくなった。
動画を見ながら永那が起きるのを待つ。
永那が起きたら、ベッドに座って足を少し開いて「永那、あたしはシてもいいけど?」って言ってみた。
でも永那は「なにを?…もう帰るよ?」と平然と言った。
自分で言って恥ずかしくて、あの後何度も思い出して、転げまわった。
家につくと、弟がドアを開けた。
永那が当たり前のように家に入って、空井さんと楽しそうに話す。
「永那ちゃん、佐藤さんがいるからってはしゃいで起きてちゃだめだよ?ちゃんと寝てよ?」
「はーい」
…本当にちゃんと寝てるんだ。
てっきり毎日セックスしてるのかと思ったけど。
少しホッとする。
…でも、永那が寝たらあたし、どうすればいいの?
さすがに永那も、帰りは更衣室を借りていた。
軽くシャワーを浴びて、服を着る。
あたし達が出る頃には、弟は準備を終えていて、立って待っていた。
「誉、お待たせ」
優里が弟に抱きついている。
「そんな待ってないよ」
重そうにしながら、受け止めようとしている。
「行くかー!」
永那が空井さんの手を掴む。
空井さんもそれを受け入れて、恋人繋ぎをする。
やっぱりまだ、あたしは受け入れられない。
胸がチクリと痛んで、俯く。
それでも、みんなの後ろを歩く。
きっと、永那から離れる選択肢だってある。
きっと、まだ諦めないで永那を奪う選択肢だってある。
もしかしたら2人が別れて、永那が“やっぱり千陽がいい”って言ってくれるときがくるかもしれない。
最後のはわからないけど、少なくともあたしは、最初の2つを選択する気は、ない。
永那は変わらずあたしの王子様だし、でも、彼女にとってあたしはただの友達。
誰よりも永那を見てきたから、奪えるわけがないと、わかってる。
こんなあたしを、空井さんは好きだという。
あたしだったら、あたしを好きになんてなれない。
付き合ってもないのに永那の周りをずっとチョロチョロして、恋人みたいにして…。
浮かれてはなかったと思うけど、あたしは自分でも気付かないうちに彼女面してたのかな。
永那に守ってもらって、守ってもらい続けて、それに甘えて…そんなあたしを、永那が好きになるはずがなかった。
…永那が空井さんを好きだと言うのならなおさら、あたしを好きになるはずがない。
ただ、現実を知る。
まだ受け止められたわけじゃない。
ただ、知っただけ。
帰り際、弟に連絡先を聞かれた。
仕方ないから教えると、永那が嬉しそうにしていた。
日曜日、行くのをやめようと思っていたレズビアンのイベントに参加した。
とある映画好きのオフ会も兼ねていて、わりとこじんまりしていた。
雰囲気も今までで1番落ち着いていて、カフェでの集まりだった。
声をかけてくれた人がよく話す人で、あたしは自分から話すのが苦手だから、居心地が良かった。
連絡先を交換して、また会おうという話にもなった。
…しばらく、永那を好きなままでいるとは思うけど…いつか、誰か、他の人を好きになれたら…とも思う。
月曜日、永那と待ち合わせて空井さんの家に向かう。
初めて見る眼鏡姿に、思わずしゃがみこんだ。
空井さんの家で寝るから、コンタクトじゃなくて眼鏡にしていると…。
羨ましい、彼女は永那のこんな姿を見ていたなんて。
「ねえ」
「ん?」
「あたし、空井さんとのことを邪魔するつもりはないけど…あたしがいるところで、セックスとかしないで。さすがに、耐えられない」
永那の耳が赤くなる。
「わ、わかってるよ」
「前にしてたじゃん」
「いや…まあ、あれは、イライラしてたから。もう、しないから」
「あっそ」
最初に空井さんの家に行った日、すごく緊張したなあ。
でも、もういつの間にか慣れて、慣れたのを通り越して居心地の良さを感じている。
初めて行ったときは永那が騙されてるんじゃないかとか思って、いろいろ疑って空井さんを見ていた。
強引に空井さんのベッドに寝転がって、永那を誘って、でも、突き飛ばされて…。
“傷つくのも承知で”とか思っておきながら、結局傷ついて耐えられなくなって、優里を頼った。
去年、永那があたしの部屋に来たとき、あたしはかなり勇気を出して永那を誘った。
露出の多い服を着て、胸元を強調させて、ベッドに寝転がる。
足をバタバタさせてみたりして、ショーツがチラ見えするような格好をしたり。
永那はチラッと見たけど、すぐに目をそらして、座りながら目を閉じてしまった。
「ベッドで寝たら?」って言ってみたけど「いい」と断られた。
それなら…と、彼女の横に座って肩に頭を預けてみた。
無反応だから、腕に抱きついて、胸を押し付けた。
それでもスゥスゥ寝息を立てて寝るから、悲しくなった。
動画を見ながら永那が起きるのを待つ。
永那が起きたら、ベッドに座って足を少し開いて「永那、あたしはシてもいいけど?」って言ってみた。
でも永那は「なにを?…もう帰るよ?」と平然と言った。
自分で言って恥ずかしくて、あの後何度も思い出して、転げまわった。
家につくと、弟がドアを開けた。
永那が当たり前のように家に入って、空井さんと楽しそうに話す。
「永那ちゃん、佐藤さんがいるからってはしゃいで起きてちゃだめだよ?ちゃんと寝てよ?」
「はーい」
…本当にちゃんと寝てるんだ。
てっきり毎日セックスしてるのかと思ったけど。
少しホッとする。
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