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2.変化
77.友達
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「空井さんのお家、楽しみー!」
篠田さんがニコニコ笑う。
「篠田さんは学校から見て私とは反対側に家があるんだよね?」
「そう。こっち側は来ること少ないから、新鮮」
篠田さんはかなり話しやすいなあ、とホッとする。
いつの間にか篠田さんも敬語じゃなくなっていて、クラスメイトって感じがする。
「昨日もみんなで勉強してたんでしょ?誘ってくれればよかったのにー」
佐藤さんに話を振る。
「優里を呼ぶ発想がなかったの」
「酷いー!」
「冗談。いきなり4人で押しかけても迷惑かと思って」
…3人も4人もあまり変わらない気がするけど、私はツッコまない。
「空井さんがくれたノート、めっちゃわかりやすくて、昨日も使って勉強してたんだよ」
篠田さんが私を見て、笑いかけてくれる。
「よかった」
今日の佐藤さんは永那ちゃんにくっついていない。
なんか、昨日のことを引きずってるのかな…?
永那ちゃんは不機嫌そうにそっぽを向きながら歩いて、話に参加してこない。
昨日と同じようにコンビニでお弁当を買う。
永那ちゃんと2人だったら、夜の残りでもお昼に食べようと思っていたけど、さすがに他の人に夕飯の残りを出すのは忍びない。
家につくと、篠田さんが「お邪魔します」と小さく言って、靴を揃えた。
佐藤さんがそれを見て真似する。
永那ちゃんは何も気にせず家に入っていく。
私は永那ちゃんの靴も揃えて、後に続いた。
…性格が出るなあ。なんて、少し笑える。
今日はさすがにダイニングテーブルにみんなで座った。
「穂、いつもどこに座ってるの?」
永那ちゃんが聞くから、私は4人分のお茶を用意しながら、指さした。
キッチンに対して垂直に4人用のダイニングテーブルが置かれている。
1番キッチンに近い席が、私の定位置だ。
その隣に誉。
誉の向かいにお母さんが座って、お母さんの隣…私の向かいにはいつも、お母さんの仕事の資料が山積みになっている。
今日は片付けてある。
「んじゃ私ここ!」
永那ちゃんが誉の席に座る。
篠田さんが私の向かいの席に座って、佐藤さんが永那ちゃんの向かいに座る。
みんながお弁当を広げて、食べ始める。
「ねえ、空井さん?」
篠田さんが焼肉弁当を頬張りながら言う。
「私も永那と同じように、名前で呼んでもいいかなあ?」
急な提案にドキッとする。
「え?…うん」
「よかったー。じゃあ、穂ちゃんでいいかな?」
私が頷くと「私のことも優里って呼んでね」と言われて、“友達”っぽいやり取りが少し楽しくなる。
「優里ー、穂って呼んでいいのは私だけだぞ」
「え!?なにそのルール」
「今決まった」
「却下します」
クスクス笑ってると、永那ちゃんが頬杖をついて私を眺めていた。
「穂が普通に笑ってる」
その笑顔があまりに幸せそうで、思わず見惚れてしまう。
「よし、特別に優里には“穂”と呼ぶことを認めましょう」
「え、もう却下されてるから、そのルール。永那に認められなくても呼ぶんだけど」
優里ちゃんがお弁当のプラスチックを洗ってくれようとしたけど、「後で洗うから大丈夫」と断わった。
優里ちゃんの行動を考えると、永那ちゃんと佐藤さんは全くそういうのを気にしないタイプなことに気づく。
とは言え、永那ちゃんはいろんなことによく気がつくから、甘えるところは甘える…という感じで、永那ちゃんのなかで何かしらの基準があるのかな?と思える。
でもその基準はまだよくわからなくて、本当に全く気にしていないようにも見える。
どっちが良いとか悪いとかはないけれど、なんとなく、永那ちゃんと佐藤さんの2人が少しズレてるのがわかる。
だからいつも2人は一緒にいるのかな?と思えた。
2人の周りにいる人はコロコロ変わるけど、2人は変わらない。
その点、優里ちゃんもよく2人と一緒にいるから、何か通ずるものがあるのかもしれない。
「みんな今日のテストどうだった?」
今日は物理と現代文と英語だった。
「普通」
「普通だね」
佐藤さんと永那ちゃんが答える。
優里ちゃんが机に顔を突っ伏す。
「ですよねー」
私は今までこんなやり取りを誰かとしたことがなかったから、どう答えればいいかわからない。
「穂ちゃんは?」
悲しそうな目を向けられる。
「えっと…物理は少し引っ掛けがあったよね」
苦笑すると、優里ちゃんが体を起こす。
「そうだよね!難しかったよね!?」
優里ちゃんは理系が苦手なんだな。
「優里、それは穂の優しさだよ」
永那ちゃんがアクビをしながら伸びている。
優里ちゃんがまた顔を突っ伏す。
「なんでこんな人達に囲まれてるの、私」
「よかったじゃん、いくらでも教えてもらえるんじゃない?」
「え!?2人とも教えてくれたことないよね!?」
佐藤さんが冷めた目で優里ちゃんを見て、ノートを出す。
自分で言っておいて、“知らない”という態度だ。
「あたしにはわからないもん、優里が何がわからないのか」
優里ちゃんが髪をぐしゃぐしゃにして、「あー」と叫んでる。
「私、やっぱり穂ちゃんがいてくれてよかった…この2人頭おかしいんだよ」
両手を掴まれて、肩がピクッと上がる。
篠田さんがニコニコ笑う。
「篠田さんは学校から見て私とは反対側に家があるんだよね?」
「そう。こっち側は来ること少ないから、新鮮」
篠田さんはかなり話しやすいなあ、とホッとする。
いつの間にか篠田さんも敬語じゃなくなっていて、クラスメイトって感じがする。
「昨日もみんなで勉強してたんでしょ?誘ってくれればよかったのにー」
佐藤さんに話を振る。
「優里を呼ぶ発想がなかったの」
「酷いー!」
「冗談。いきなり4人で押しかけても迷惑かと思って」
…3人も4人もあまり変わらない気がするけど、私はツッコまない。
「空井さんがくれたノート、めっちゃわかりやすくて、昨日も使って勉強してたんだよ」
篠田さんが私を見て、笑いかけてくれる。
「よかった」
今日の佐藤さんは永那ちゃんにくっついていない。
なんか、昨日のことを引きずってるのかな…?
永那ちゃんは不機嫌そうにそっぽを向きながら歩いて、話に参加してこない。
昨日と同じようにコンビニでお弁当を買う。
永那ちゃんと2人だったら、夜の残りでもお昼に食べようと思っていたけど、さすがに他の人に夕飯の残りを出すのは忍びない。
家につくと、篠田さんが「お邪魔します」と小さく言って、靴を揃えた。
佐藤さんがそれを見て真似する。
永那ちゃんは何も気にせず家に入っていく。
私は永那ちゃんの靴も揃えて、後に続いた。
…性格が出るなあ。なんて、少し笑える。
今日はさすがにダイニングテーブルにみんなで座った。
「穂、いつもどこに座ってるの?」
永那ちゃんが聞くから、私は4人分のお茶を用意しながら、指さした。
キッチンに対して垂直に4人用のダイニングテーブルが置かれている。
1番キッチンに近い席が、私の定位置だ。
その隣に誉。
誉の向かいにお母さんが座って、お母さんの隣…私の向かいにはいつも、お母さんの仕事の資料が山積みになっている。
今日は片付けてある。
「んじゃ私ここ!」
永那ちゃんが誉の席に座る。
篠田さんが私の向かいの席に座って、佐藤さんが永那ちゃんの向かいに座る。
みんながお弁当を広げて、食べ始める。
「ねえ、空井さん?」
篠田さんが焼肉弁当を頬張りながら言う。
「私も永那と同じように、名前で呼んでもいいかなあ?」
急な提案にドキッとする。
「え?…うん」
「よかったー。じゃあ、穂ちゃんでいいかな?」
私が頷くと「私のことも優里って呼んでね」と言われて、“友達”っぽいやり取りが少し楽しくなる。
「優里ー、穂って呼んでいいのは私だけだぞ」
「え!?なにそのルール」
「今決まった」
「却下します」
クスクス笑ってると、永那ちゃんが頬杖をついて私を眺めていた。
「穂が普通に笑ってる」
その笑顔があまりに幸せそうで、思わず見惚れてしまう。
「よし、特別に優里には“穂”と呼ぶことを認めましょう」
「え、もう却下されてるから、そのルール。永那に認められなくても呼ぶんだけど」
優里ちゃんがお弁当のプラスチックを洗ってくれようとしたけど、「後で洗うから大丈夫」と断わった。
優里ちゃんの行動を考えると、永那ちゃんと佐藤さんは全くそういうのを気にしないタイプなことに気づく。
とは言え、永那ちゃんはいろんなことによく気がつくから、甘えるところは甘える…という感じで、永那ちゃんのなかで何かしらの基準があるのかな?と思える。
でもその基準はまだよくわからなくて、本当に全く気にしていないようにも見える。
どっちが良いとか悪いとかはないけれど、なんとなく、永那ちゃんと佐藤さんの2人が少しズレてるのがわかる。
だからいつも2人は一緒にいるのかな?と思えた。
2人の周りにいる人はコロコロ変わるけど、2人は変わらない。
その点、優里ちゃんもよく2人と一緒にいるから、何か通ずるものがあるのかもしれない。
「みんな今日のテストどうだった?」
今日は物理と現代文と英語だった。
「普通」
「普通だね」
佐藤さんと永那ちゃんが答える。
優里ちゃんが机に顔を突っ伏す。
「ですよねー」
私は今までこんなやり取りを誰かとしたことがなかったから、どう答えればいいかわからない。
「穂ちゃんは?」
悲しそうな目を向けられる。
「えっと…物理は少し引っ掛けがあったよね」
苦笑すると、優里ちゃんが体を起こす。
「そうだよね!難しかったよね!?」
優里ちゃんは理系が苦手なんだな。
「優里、それは穂の優しさだよ」
永那ちゃんがアクビをしながら伸びている。
優里ちゃんがまた顔を突っ伏す。
「なんでこんな人達に囲まれてるの、私」
「よかったじゃん、いくらでも教えてもらえるんじゃない?」
「え!?2人とも教えてくれたことないよね!?」
佐藤さんが冷めた目で優里ちゃんを見て、ノートを出す。
自分で言っておいて、“知らない”という態度だ。
「あたしにはわからないもん、優里が何がわからないのか」
優里ちゃんが髪をぐしゃぐしゃにして、「あー」と叫んでる。
「私、やっぱり穂ちゃんがいてくれてよかった…この2人頭おかしいんだよ」
両手を掴まれて、肩がピクッと上がる。
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