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1.恋愛初心者
40.靄
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日住君と金井さんには付き合ってることを言ったと、永那ちゃんに教えた。
「あの後輩君に?」
永那ちゃんは驚いた後、ニヤニヤ笑いながら「ふーん」と言っていた。
なんでニヤニヤしてるのか聞いたけど「なんでもない」と言われて、それでも私がしつこく聞こうとしたら、唇で口を塞がれてしまったから、それ以上聞けなくなった。
そのまま手を引かれて、すべり台に移動する。
すべり台の降り口に2人で縦になって座る。
永那ちゃんが後ろで、私が前。
なぜ金井さんに教えたのか聞かれたから、体育祭の一件で詰め寄られて、答えずにはいられなかったと答えた。
永那ちゃんは大爆笑して、「穂らしい」と言った。
そういうふうにバレちゃった場合は仕方ないけど、自ら宣伝するように付き合ってることを言うのはやめておこう…ということになった。
だからもちろん、佐藤さん達にも言わない。
というか、主に佐藤さんがややこしくなりそうだから…というのが言わない理由の1つでもある。
「でも、どうするかな?」
「何が?」
「私達、今のところ、学校で話す機会が全然ないじゃん?」
「そう…だね」
それは私も悩みの種だった。
「こうして休日しか会えないっていうのも、なんか寂しいよね」
私が頷くのを確認して、彼女はすべり台に寝転ぶ。
「私は遅くまで残ってられないし、朝は方向が全然違うから待ち合わせるわけにもいかないし…」
「起きてる間は佐藤さん達が永那ちゃんの周りにいるしね」
2人で苦笑する。
彼女は起き上がって、後ろから抱きしめてくれる。
首に顔をうずめる。
首筋が一瞬ひやりとして、鳥肌が立つ。
「永那ちゃん!?」
少し離れると、彼女が舌をペロリと出していた。
「もう」
私はわざと目を細めて、睨んでいるようにみせる。
「あ、そういえば」
永那ちゃんがニヤニヤしながら首を傾げる。
「体育祭の後、会ったとき、ここに痕残したでしょ?」
あのとき噛まれたところが、今でもシミみたいに残っている。
家に帰った後お母さんに赤くなっていることを指摘されて、慌てて汗疹ということにしたのは、我ながら機転が利いたと自負してる。
「マーキングだよ」
「なにそれ」
「“私の穂”ってこと」
「わ、わかってるよ!」
永那ちゃんの胸の辺りをベシベシ叩く。
彼女は「“なにそれ”って言うからー」と笑いながら受け止めている。
「まあ、普段どう2人で話すかは、また考えておくよ。穂も考えといて、何か良い案がないか」
後ろを向いていた私を前に向かせ、また後ろから抱きしめられる。
「わかった」
「ねえ、穂?」
耳元で彼女の声が聞こえてくる。
私が最初に彼女の耳元で囁いてから、彼女は何度もこうして耳元で囁くようになった。
耳に息がかかって少しくすぐったいけど、何度もあのときのことを思い出して、恥ずかしい気持ちにもなる。
でもあれがあったから、今の2人があるのだと思うと、過去の自分に拍手を送りたくもなる。
こうして彼女の声が近くで聞けることに、安心感を抱きはじめてる。
「いつかさ、穂の家に遊びに行きたい」
予想外の言葉に目を見開く。
少し後ろを向くと、キスできそうな距離に彼女がいて、心臓がぴょんと跳ねた。
「ダメ?」
顔を戻そうとすると、手で頬を包まれる。
潤んだ瞳を向けられて、胸がきゅぅっと締めつけられる。
「いい…よ」
「やったー」
そう小さく喜ぶ。
彼女が笑うから、私も笑みが溢れる。
唇にぬくもりを感じた。
じっくりと、ぬくもりを確かめるように、長いキスをした。
離れると、自然と笑い合った。
彼女がペロリと自分の唇を舐める。
「穂、随分キスに慣れたんじゃない?」
そう言われて、顔がボッと熱くなる。
「誰かさんがたくさんするからでしょ」
「誰でしょう?」
唇を尖らせて目を細めると、彼女が笑う。
「あの後輩君に?」
永那ちゃんは驚いた後、ニヤニヤ笑いながら「ふーん」と言っていた。
なんでニヤニヤしてるのか聞いたけど「なんでもない」と言われて、それでも私がしつこく聞こうとしたら、唇で口を塞がれてしまったから、それ以上聞けなくなった。
そのまま手を引かれて、すべり台に移動する。
すべり台の降り口に2人で縦になって座る。
永那ちゃんが後ろで、私が前。
なぜ金井さんに教えたのか聞かれたから、体育祭の一件で詰め寄られて、答えずにはいられなかったと答えた。
永那ちゃんは大爆笑して、「穂らしい」と言った。
そういうふうにバレちゃった場合は仕方ないけど、自ら宣伝するように付き合ってることを言うのはやめておこう…ということになった。
だからもちろん、佐藤さん達にも言わない。
というか、主に佐藤さんがややこしくなりそうだから…というのが言わない理由の1つでもある。
「でも、どうするかな?」
「何が?」
「私達、今のところ、学校で話す機会が全然ないじゃん?」
「そう…だね」
それは私も悩みの種だった。
「こうして休日しか会えないっていうのも、なんか寂しいよね」
私が頷くのを確認して、彼女はすべり台に寝転ぶ。
「私は遅くまで残ってられないし、朝は方向が全然違うから待ち合わせるわけにもいかないし…」
「起きてる間は佐藤さん達が永那ちゃんの周りにいるしね」
2人で苦笑する。
彼女は起き上がって、後ろから抱きしめてくれる。
首に顔をうずめる。
首筋が一瞬ひやりとして、鳥肌が立つ。
「永那ちゃん!?」
少し離れると、彼女が舌をペロリと出していた。
「もう」
私はわざと目を細めて、睨んでいるようにみせる。
「あ、そういえば」
永那ちゃんがニヤニヤしながら首を傾げる。
「体育祭の後、会ったとき、ここに痕残したでしょ?」
あのとき噛まれたところが、今でもシミみたいに残っている。
家に帰った後お母さんに赤くなっていることを指摘されて、慌てて汗疹ということにしたのは、我ながら機転が利いたと自負してる。
「マーキングだよ」
「なにそれ」
「“私の穂”ってこと」
「わ、わかってるよ!」
永那ちゃんの胸の辺りをベシベシ叩く。
彼女は「“なにそれ”って言うからー」と笑いながら受け止めている。
「まあ、普段どう2人で話すかは、また考えておくよ。穂も考えといて、何か良い案がないか」
後ろを向いていた私を前に向かせ、また後ろから抱きしめられる。
「わかった」
「ねえ、穂?」
耳元で彼女の声が聞こえてくる。
私が最初に彼女の耳元で囁いてから、彼女は何度もこうして耳元で囁くようになった。
耳に息がかかって少しくすぐったいけど、何度もあのときのことを思い出して、恥ずかしい気持ちにもなる。
でもあれがあったから、今の2人があるのだと思うと、過去の自分に拍手を送りたくもなる。
こうして彼女の声が近くで聞けることに、安心感を抱きはじめてる。
「いつかさ、穂の家に遊びに行きたい」
予想外の言葉に目を見開く。
少し後ろを向くと、キスできそうな距離に彼女がいて、心臓がぴょんと跳ねた。
「ダメ?」
顔を戻そうとすると、手で頬を包まれる。
潤んだ瞳を向けられて、胸がきゅぅっと締めつけられる。
「いい…よ」
「やったー」
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彼女が笑うから、私も笑みが溢れる。
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じっくりと、ぬくもりを確かめるように、長いキスをした。
離れると、自然と笑い合った。
彼女がペロリと自分の唇を舐める。
「穂、随分キスに慣れたんじゃない?」
そう言われて、顔がボッと熱くなる。
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