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1.恋愛初心者
30.彼女
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ゴール前に立っていたのは、あの憎き後輩だった。
私は握っている穂の手に、そっと指を絡ませた。
彼女は全校生徒から突然注目されて緊張しているのか、絡ませた指に気づいていないみたいだった。
気づいてたら、きっと離されていただろうな。
後輩君が、カードと穂を交互に見る。
穂は私の好きな人、穂も私が好きなんだ。認めろ!そして諦めろ!
彼はニコリと笑顔を作って「OKです」と言った。
そのまま私達はゴールテープを切って、1位でゴール。
彼女がなんのカードだったのか聞いてくるから正直に答えたら、叩かれた。
ボサボサになった髪を指で梳いてくれ、鼻の汚れも拭ってくれる。
そのときの表情がどことなく嬉しそうで、可愛くて堪らなくなる。
クラスの待機場所に戻ると、千陽が引っ付いてきた。
「ねえ、“好きな人”で空井さん連れてくってどういうこと~?」
唇を尖らせて、お得意の上目遣いで私を見る。
「めっちゃ意外な選択だったよね」と周りの人達も言う。
「んー…」
まだみんなに彼女と付き合ってることは言っていない。
今のところ、言うつもりもない。
穂が公表したいと言うなら、それはそれでかまわないけど、まだ確認してないし、下手なことは言わないほうがいいだろう。
「なんであたしじゃないの~?」
千陽が少し不機嫌そうにする。面倒だな。
「まあ…ここ、最終地点のとこからめっちゃ遠いし?」
そう言うと「確かに」と言う笑い声が聞こえてくる。
「だからって…」
千陽が俯く。本当、面倒くさすぎる。
「まあまあ、そう怒るなって」
頭をポンポンと撫でてあげると、千陽の頬がピンク色に染まる。
体育祭は無事終わる。
穂が汗を流しながら真剣に綱を引く姿が愛しくて、大声を出して応援した。
全競技が終了して、最終的に、赤組は負けてしまったけど、正直そんな勝敗はどうでもいい。
みんな盛り上がれればそれでいいんだし、この後の打ち上げを1番の楽しみにしてる人もいるくらいだ。
穂は片付けがあるから参加できない。生徒会と体育祭委員は土曜日に打ち上げをするようだ。
…と、そこで憎き後輩のことを思い出す。
土曜日ということは、たぶん私服で参加することになるんだろう。
穂の私服…。デートのときの彼女を思い出す。
そんな…。地面に膝をつきたくなる。絶対に変な目で見られるからグッと堪えるけど。
そういえば生徒会の活動で、たまに土曜日もあるって言っていた。
だとするなら、あの可愛い姿を、あの憎き後輩のほうが先に見ていたということか…。
なんか、悔しい。何が悔しいのかわからないけど、なんか悔しい。
そして必然的に、後輩が穂の手を握っていたことを思い出して、怒りが再燃する。
あいつ、絶対わざと、あえて、全校生徒の前で穂の手を握っただろ!?
私が穂に告白したと知って、慌てて彼女をものにしようとしたんだ。
…穂は、私だけだよね?
奥歯を強く噛む。
そういえば、穂はなんで私を好きになってくれたんだろう?
1週間も夜遅くまで体育祭の準備して、例えばあいつが帰り道とかで穂の手を握ったりして、そしたら穂がポッと照れて…なんてことになってないよね!?…なってないよね?
私に言ってくれた“好き”が、たかだか1週間でなくなるわけないよね?
自分でも自分が面倒な性格してるってわかってる。恋をするとこんなふうになるなんて、今まで知らなかったけど。
でも一度考え始めたら止まらなくて、気づいたら彼女に電話していた。
打ち上げは二次会に移行したばかりで、カラオケはこれから盛り上がる…というところだった。
千陽が引き止めようとしたけど、思わず手を振り払ってしまった。
適当に謝って、走って出ていく。
会いたい。
早く君に会いたい。
1週間も我慢したんだ。
このくらいのわがまま、いいよね?
私は握っている穂の手に、そっと指を絡ませた。
彼女は全校生徒から突然注目されて緊張しているのか、絡ませた指に気づいていないみたいだった。
気づいてたら、きっと離されていただろうな。
後輩君が、カードと穂を交互に見る。
穂は私の好きな人、穂も私が好きなんだ。認めろ!そして諦めろ!
彼はニコリと笑顔を作って「OKです」と言った。
そのまま私達はゴールテープを切って、1位でゴール。
彼女がなんのカードだったのか聞いてくるから正直に答えたら、叩かれた。
ボサボサになった髪を指で梳いてくれ、鼻の汚れも拭ってくれる。
そのときの表情がどことなく嬉しそうで、可愛くて堪らなくなる。
クラスの待機場所に戻ると、千陽が引っ付いてきた。
「ねえ、“好きな人”で空井さん連れてくってどういうこと~?」
唇を尖らせて、お得意の上目遣いで私を見る。
「めっちゃ意外な選択だったよね」と周りの人達も言う。
「んー…」
まだみんなに彼女と付き合ってることは言っていない。
今のところ、言うつもりもない。
穂が公表したいと言うなら、それはそれでかまわないけど、まだ確認してないし、下手なことは言わないほうがいいだろう。
「なんであたしじゃないの~?」
千陽が少し不機嫌そうにする。面倒だな。
「まあ…ここ、最終地点のとこからめっちゃ遠いし?」
そう言うと「確かに」と言う笑い声が聞こえてくる。
「だからって…」
千陽が俯く。本当、面倒くさすぎる。
「まあまあ、そう怒るなって」
頭をポンポンと撫でてあげると、千陽の頬がピンク色に染まる。
体育祭は無事終わる。
穂が汗を流しながら真剣に綱を引く姿が愛しくて、大声を出して応援した。
全競技が終了して、最終的に、赤組は負けてしまったけど、正直そんな勝敗はどうでもいい。
みんな盛り上がれればそれでいいんだし、この後の打ち上げを1番の楽しみにしてる人もいるくらいだ。
穂は片付けがあるから参加できない。生徒会と体育祭委員は土曜日に打ち上げをするようだ。
…と、そこで憎き後輩のことを思い出す。
土曜日ということは、たぶん私服で参加することになるんだろう。
穂の私服…。デートのときの彼女を思い出す。
そんな…。地面に膝をつきたくなる。絶対に変な目で見られるからグッと堪えるけど。
そういえば生徒会の活動で、たまに土曜日もあるって言っていた。
だとするなら、あの可愛い姿を、あの憎き後輩のほうが先に見ていたということか…。
なんか、悔しい。何が悔しいのかわからないけど、なんか悔しい。
そして必然的に、後輩が穂の手を握っていたことを思い出して、怒りが再燃する。
あいつ、絶対わざと、あえて、全校生徒の前で穂の手を握っただろ!?
私が穂に告白したと知って、慌てて彼女をものにしようとしたんだ。
…穂は、私だけだよね?
奥歯を強く噛む。
そういえば、穂はなんで私を好きになってくれたんだろう?
1週間も夜遅くまで体育祭の準備して、例えばあいつが帰り道とかで穂の手を握ったりして、そしたら穂がポッと照れて…なんてことになってないよね!?…なってないよね?
私に言ってくれた“好き”が、たかだか1週間でなくなるわけないよね?
自分でも自分が面倒な性格してるってわかってる。恋をするとこんなふうになるなんて、今まで知らなかったけど。
でも一度考え始めたら止まらなくて、気づいたら彼女に電話していた。
打ち上げは二次会に移行したばかりで、カラオケはこれから盛り上がる…というところだった。
千陽が引き止めようとしたけど、思わず手を振り払ってしまった。
適当に謝って、走って出ていく。
会いたい。
早く君に会いたい。
1週間も我慢したんだ。
このくらいのわがまま、いいよね?
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