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1.恋愛初心者
22.彼女
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彼の背中を見送った後、私はスマホを取り出して『終わったよ』と永那ちゃんに連絡する。
すると、すぐに電話がかかってきて、びっくりしてスマホを落としそうになった。
「も、もしもし」
「穂、おつかれさま」
「ありがとう。永那ちゃんも、おつかれさま」
この一言だけで、なぜか疲れが少し癒やされる。
「会いたいな」
「え?」
「今すぐ会いたい」
「今から?…でも、もう」
“こんな時間”と、腕時計が7時近くを示しているのを見て言おうとしたら、永那ちゃんに遮られる。
「会いたいよ」
電話の向こう側から賑やかな声が聞こえる。
「今、打ち上げ中?」
「うん、でも抜け出せるよ。どこにいる?学校?」
「あ、いや、帰り道の途中」
「じゃあ、穂の家の前で待ち合わせしよう?」
「…いいの?」
「うん。ゆーっくり歩いてね!ちょっと待たせちゃうかもしれないから」
永那ちゃんに言われた通り、意識してゆっくり歩く。
それでも当然、私の方が先にマンションの前についた。
壁に寄りかかって、外灯を頼りに本を読んでいると、10分後に永那ちゃんが走ってきた。
私が本を閉じる前に、抱きしめられる。
心臓がぴょんと跳ねて、少し息が苦しくなる。
永那ちゃんは私の鎖骨の辺りに顔をうずめてる。
彼女のあたたかい息が首にかかってくすぐったい。
「いい匂い」
「そんな…今日はけっこう汗かいたよ」
一応汗拭きシートで拭いたけど、私は恥ずかしくて身動ぐ。
「今日さ…」
その先の言葉が続かないから、「永那ちゃん?」と呼んでみる。
彼女の背に回した、本を持っていない左手で、背中をトントンと優しく叩く。
「ハァ」と彼女は息を吐いて、私の肩に頭を乗せたまま、こちらを見る。
顔が近くて、私は彼女の方を見れないけれど、視界に入った彼女の瞳が潤んでいるように見えた。
「今日さ、後輩君とイチャイチャしてたでしょ?」
ドキッとする。
「え?…し、してないよ?」
「してたよ。ずっと見てたんだから。…2人で手を握ってた」
見られてたなんて、全然気づかなかった。
不機嫌そうな永那ちゃんの声。
「あれは、私が緊張してたから」
「穂が緊張してたら、なんで手を握ることになるわけ?」
「手のひらに“人”って書いて飲むと緊張がやわらぐって教えてくれたんだよ」
「ふーん」
首筋に何かが這う。
全身に鳥肌が立って、思わず持っていた本を落とした。
そのまま、かぶりつかれる。
突然のことに対処しきれなくて、息の仕方もわからなくなる。
痛みが走って、わざと音を立てるように、チュパッと唇が離れる。
両手で頬を包まれて、顎が上がる。
「あんな、全校生徒の目の前で見せつけられてさ」
「だから、違うって…」
「後輩君に喧嘩売られてるのかと思った」
唇と唇が重なる。
下唇を甘噛みされ、彼女の舌が口の中に入ってくる。
「んん…っ」
必死に抵抗を試みるも、力がうまく入らない。
舌と舌が絡まる。
待って…。待って…。
必死に彼女の背を掴むけど、彼女は止まらない。
少し唇が離れたと思ったら「それとも穂は、後輩君とイチャイチャしたいのかな?」と睨みつけられ、また唇が重なる。
全く私に話させる気はないみたいだった。
彼女が唾液を私の口内に含ませる。
飲み込まなければ咽てしまいそうで、ゴクリと飲み込むと、彼女の口端が上がった。
また少し唇を離して「穂は、後輩君が好きなの?」と聞く。
「本当は、女じゃなくて男がいいの?」
その瞳が不安げに揺らいで、私が答える前に、また唇が重なった。
男とか女とかじゃなくて、私は…永那ちゃんが好きなんだよ。
そう答えたいのに、彼女の舌が私の舌に絡んで離れない。
もう私は抵抗を諦めて、彼女に身を任す。
すると、すぐに電話がかかってきて、びっくりしてスマホを落としそうになった。
「も、もしもし」
「穂、おつかれさま」
「ありがとう。永那ちゃんも、おつかれさま」
この一言だけで、なぜか疲れが少し癒やされる。
「会いたいな」
「え?」
「今すぐ会いたい」
「今から?…でも、もう」
“こんな時間”と、腕時計が7時近くを示しているのを見て言おうとしたら、永那ちゃんに遮られる。
「会いたいよ」
電話の向こう側から賑やかな声が聞こえる。
「今、打ち上げ中?」
「うん、でも抜け出せるよ。どこにいる?学校?」
「あ、いや、帰り道の途中」
「じゃあ、穂の家の前で待ち合わせしよう?」
「…いいの?」
「うん。ゆーっくり歩いてね!ちょっと待たせちゃうかもしれないから」
永那ちゃんに言われた通り、意識してゆっくり歩く。
それでも当然、私の方が先にマンションの前についた。
壁に寄りかかって、外灯を頼りに本を読んでいると、10分後に永那ちゃんが走ってきた。
私が本を閉じる前に、抱きしめられる。
心臓がぴょんと跳ねて、少し息が苦しくなる。
永那ちゃんは私の鎖骨の辺りに顔をうずめてる。
彼女のあたたかい息が首にかかってくすぐったい。
「いい匂い」
「そんな…今日はけっこう汗かいたよ」
一応汗拭きシートで拭いたけど、私は恥ずかしくて身動ぐ。
「今日さ…」
その先の言葉が続かないから、「永那ちゃん?」と呼んでみる。
彼女の背に回した、本を持っていない左手で、背中をトントンと優しく叩く。
「ハァ」と彼女は息を吐いて、私の肩に頭を乗せたまま、こちらを見る。
顔が近くて、私は彼女の方を見れないけれど、視界に入った彼女の瞳が潤んでいるように見えた。
「今日さ、後輩君とイチャイチャしてたでしょ?」
ドキッとする。
「え?…し、してないよ?」
「してたよ。ずっと見てたんだから。…2人で手を握ってた」
見られてたなんて、全然気づかなかった。
不機嫌そうな永那ちゃんの声。
「あれは、私が緊張してたから」
「穂が緊張してたら、なんで手を握ることになるわけ?」
「手のひらに“人”って書いて飲むと緊張がやわらぐって教えてくれたんだよ」
「ふーん」
首筋に何かが這う。
全身に鳥肌が立って、思わず持っていた本を落とした。
そのまま、かぶりつかれる。
突然のことに対処しきれなくて、息の仕方もわからなくなる。
痛みが走って、わざと音を立てるように、チュパッと唇が離れる。
両手で頬を包まれて、顎が上がる。
「あんな、全校生徒の目の前で見せつけられてさ」
「だから、違うって…」
「後輩君に喧嘩売られてるのかと思った」
唇と唇が重なる。
下唇を甘噛みされ、彼女の舌が口の中に入ってくる。
「んん…っ」
必死に抵抗を試みるも、力がうまく入らない。
舌と舌が絡まる。
待って…。待って…。
必死に彼女の背を掴むけど、彼女は止まらない。
少し唇が離れたと思ったら「それとも穂は、後輩君とイチャイチャしたいのかな?」と睨みつけられ、また唇が重なる。
全く私に話させる気はないみたいだった。
彼女が唾液を私の口内に含ませる。
飲み込まなければ咽てしまいそうで、ゴクリと飲み込むと、彼女の口端が上がった。
また少し唇を離して「穂は、後輩君が好きなの?」と聞く。
「本当は、女じゃなくて男がいいの?」
その瞳が不安げに揺らいで、私が答える前に、また唇が重なった。
男とか女とかじゃなくて、私は…永那ちゃんが好きなんだよ。
そう答えたいのに、彼女の舌が私の舌に絡んで離れない。
もう私は抵抗を諦めて、彼女に身を任す。
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