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第三章
夏空の気配に思うこと。
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この学園は全寮制だが、届けを出せば外泊は簡単に出来る。
それこそ、家の方が使用人だのなんだのがたくさんいて不自由がないため、週末を実家で過ごすものはそれなりにいた。
「今週でしたっけ?帰るの」
「そう。弟の誕生日会やるから帰ってこいって」
「いいお兄ちゃんじゃないですか」
真加はその週の土日、GWぶりに実家に帰る帰ることとなった。
期末テストが無事に終わり、残すはあと終業式が来週に控えるのみだ。
「あーもう、テスト微妙だったから絶対なんか言われる」
真加は貴重品を鞄に入れ愚痴をこぼした。通知表は終業式の日に渡されるが、先んじて期末テストの結果が親には連絡されていた。DクラスとCクラスを彷徨うあたりの順位で、父親はうるさいだろうと簡単に想像がついた。
母親と駆け落ち同然で結婚した真加の父親は、苦学生だったが頭は良かった。それのせいか、家の体面を気にしているのか、どっちかはわからないが成績にはめっぽううるさかった。
この国では生まれた時点以降、血液検査を行えば自らがアルファかベータかオメガなのか、わかるようになってた。
真加は物心つく前からオメガだとわかっていたし、それで良かったと思っている。
自分の役割が実は正反対でしたなんて、生まれて10年以上って言われても困っていたはずだ。いや、真加は両方出来るというものだったけど。
アルファ、ベータ、オメガの別は成長にも若干の影響を与え、比較的アルファの方が体躯が多い者が多い。ちゃんとした科学的な理由があるとハルに聞いたが男女に差があるのとそう変わらないものだった気がする。
ただ、真加は身長が170センチ半ばほどまで成長しており、男のオメガでも「かわいらしい」イメージと結びけられがちな中ではオメガらしくないオメガだった。
真加は生まれて早々オメガだと診断されたこと、母がオメガであるため発情期に対する理解が幼い頃より深かったことは非常に幸運だったと思っている。
……本当に。
◆
事業の成功につれて少しずつ広い家へ引っ越しを繰り返してきた笠間家は最終的に母の実家の近くに家を買った。
というより母方の祖父譲り受けたという形が正しい。
母は元々貴族の生まれの家だとかで、苦学生の父とは結婚が認められず駆け落ち同然で結婚した。
人口わずか数パーセントのアルファでも、家柄が良くなければ結婚相手としては認められないほどの家だったということだ。
しかし、真加がちょうど中等部に入ったあたりでようやく親子の縁が再び繋がったようだ。事業家だった祖父がついに父を認めたということだった。
まだまだ幼い弟は目に入れても痛くない可愛がりようだが、正直既に思春期に差し掛かっていた真加に対しては祖父と祖母も接し方に悩んでいるようにに思える。
しかし、結局会えるのは年に一度程度なので状況はやや気まずいままだった。
母親が20数年共に生きた人たちとこんな状況なのはいかがなものかと真加も若干思う。親密度を出して2で割れたらちょうどいいのかもしれない。
学園から家までは笠間家が出した車に乗った。小学生まではごく普通どころかそれ以下の暮らしをしていた真加にはまだまだ慣れない部分である。
こんな何人で住めるかわからないくらいの大きさの家しか並んでない街並みに、自分の家があるというのも驚く。
真加にとっての家は幼い頃過ごした質素な集合住宅のままかもしれない。ボーッと車の外の景色を眺めていた。
「お兄ちゃんー!おかえりー!」
玄関で待ち構えていた弟を真加は抱き上げた。
弟・朝陽(あさひ)は、真加が小学5年生の時に生まれた。来年は小学校に進学する。
兄の欲目を抜いても、目がくりっとしてて子役になれるくらいかわいいんじゃないかと考えている。
「真加おかえりなさい」
廊下の奥から母が出てきた。元はご令嬢だったらしいが駆け落ち後に庶民感覚が磨かれてしまったらしく、もっぱらカジュアルな格好が多い。ややウェーブがかったロングヘアを一つに束ねている。
今日はもう過ぎてしまったが朝陽の誕生日パーティだった。忙しい父も夜には帰ってくるらしい。
「お兄ちゃん遊ぼ!」
抱き上げて顔が近くなった朝陽が首にぎゅっと抱きつく。
彼氏や彼女でもいない限りなかなか普段感じられない体温の近さを心地よく思った。
朝陽は母親に似たぱっちりとした瞳をキラキラと真加に注ぐ。
「いいよ。何する?」
「んーとね、んーとね……」
そのままリビングまで連れて行く。母はキッチンの方へ引っ込んでいった。
そのうち抱き上げさせてくれない時が来るのもあっという間だろう。
ここだけで元々住んでいたアパートより広いであろうリビングダイニング。朝陽を降ろしてL字の革張りのソファに腰掛けると、朝陽はどたどたとアニメのイラストが描かれたパズルを持ってきた。
「パズルしよ!」
「いいよ」
17歳の真加から見れば大したことない幼児向けパズルだが、朝陽が一生懸命手に余る大きさのピースをはめていく様子はなんとも愛らしい。
「今幼稚園って何やってんの?」
「えっとね、運動会の練習!」
「ふーん。どんなの?見せて?」
少しずつ大きくなるにつれコミュニケーションもだいぶ取れるようになった。
「こんなの!」
朝陽は母お気に入りのラグに座り込んでパズルに励んでいたが、立ち上がって体を動かしはじめた。
流行りの歌に疎い真加でもわかる歌をたどたどしく歌いながら腕を上げたり足を前後に動かしたりとしている。どうやらダンスのようだ。
真加はそんな様子を見ながら思う。他に同じ6歳がいないからわからないものの、にしたってダンスが上手い気がする。リズム感がいいというか。
素直な自分がダンスを踊る弟を愛らしいと思い、それを俯瞰で見るどこか冷めた自分が、しょうがないと笑っていた。
アルファだから、他の子より成長も早いに違いない。
朝陽は生まれてすぐの検査でアルファだと診断された。その時はいいことだと思っていたが、成長していくにつれアルファの片鱗を見せる朝陽にどきっと胸が冷たくなる瞬間がある。
「朝陽すごいなー!もうバッチリじゃん。動画撮ってもいい?」
「いいよぉ」
もう一度踊ってもらう。複雑な心境は置いといて、たまに動画で見返せたらなんだか癒されそうな気がした。
朝陽の母親譲りのややパーマかかったふわふわの髪が動きに合わせてぴょこぴょこ舞う。
朝陽はアルファだとかオメガだとかまだ深く理解していない。しかし、聡明だから遅かれ早かれ理解するだろう。
兄は「支配される側」の性で、自らは「支配する側」の性であることを。
◆
「あのね、お兄ちゃん!これ僕が好きなやつ、ママと透子ちゃんに作ってもらったの!これと、これも!」
夕食の席で朝陽が身を乗り出そうという勢いでダイニングテーブルの料理を指差していく。
テーブルには朝陽の好きなグラタンやハンバーグなどが所狭しと料理が並べられ、真ん中には大きなホールケーキが鎮座していた。母とお手伝いの透子さんで選んだようだ。何でも、有名なパティシエに特別に作ってもらったとか。
プレートには『あさひくんたんじょうびおめでとう』の字がのせられており、ろうそくの炎が朝陽の瞳に映ってきらきらと輝いていた。
たまにしか会えないという補正のおかげか、朝陽は真加に異様に懐いていた。
今も隣に座って、えらくおしゃべりな朝陽の話を聞いている。
「朝陽、静かに食べなさい」
「今日くらいいいじゃん」
「もう。そうやって甘やかされると困るわ」
母がぼやいた。
「お兄ちゃん、明日何時ごろ帰っちゃう?」
「夕方くらいかな」
「ぼくとサッカーしてくれる?」
「いいよ」
「やったー!」
朝陽は先ほどプレゼントで真加からあげたサッカーボールで遊びたくてしょうがないようだ。
「お兄ちゃん夏休みは毎日おうちにいる?」
「うーん…。部活あるからわからないな」
ずっとこんな調子だった。
透子さんがケーキを切り分けているのに朝陽が夢中になっている隙に、父に話しかける。
父はお人よしで雰囲気も柔和で普段は優しいが、真加の成績などにはうるさい。
「朝陽も来年小学生なんて早いね」
「それを言うなら真加なんて高3だよ」
「うっ…俺は内部進学だけど、朝陽は受験でしょ?」
真加は公立の小学校に行ったが、朝陽はどうやらお受験というものをするというのは聞いてきた。同年代と比べても出来がいいのは何となくわかるため、教育に熱心になる気持ちもよくわかった。
「そうだねぇー…」
父はサーモンのタルタルをクラッカーにのせて食べながらボソボソ言う。よく見ると奥二重のまぶたは真加と同じだった。
「どこ受けるか決まってるんでしょ?」
「うん。いくつかあるけどK大附属なんてどうかなって」
単純な会話の流れとして聞いたそれに、真加は表情には出さずに驚いた。
「附属?でも中学は天風でしょ?」
真加が通う国立天風学園は中等部から大学までであり、小等部は無い。当然、アルファである朝陽もゆくゆくは天風に通うものだと考えていた。
「いや、そのまま進ませようかと。……子供が寮生活なんて、寂しいだろ?」
父は恥ずかしいな、とはにかみながら言った。ただの世間話だったが、真加の心には細い細い、しかし痛くて抜けない針が刺さったように感じた。
「へー…まあ、朝陽なら大丈夫だね」
「いや、朝陽は調子に乗りやすいんだよ。飲み込みは早いけど飽きっぽくてね」
「5歳ならみんなそうでしょ」
真加は切り分けてもらったケーキを受け取る。シンプルなショートケーキだった。クリームもスポンジもキメの細かさや味の上品さが格段で美味しく、真加の幼い頃の安価な誕生日ケーキとは違うと思った。
それこそ、家の方が使用人だのなんだのがたくさんいて不自由がないため、週末を実家で過ごすものはそれなりにいた。
「今週でしたっけ?帰るの」
「そう。弟の誕生日会やるから帰ってこいって」
「いいお兄ちゃんじゃないですか」
真加はその週の土日、GWぶりに実家に帰る帰ることとなった。
期末テストが無事に終わり、残すはあと終業式が来週に控えるのみだ。
「あーもう、テスト微妙だったから絶対なんか言われる」
真加は貴重品を鞄に入れ愚痴をこぼした。通知表は終業式の日に渡されるが、先んじて期末テストの結果が親には連絡されていた。DクラスとCクラスを彷徨うあたりの順位で、父親はうるさいだろうと簡単に想像がついた。
母親と駆け落ち同然で結婚した真加の父親は、苦学生だったが頭は良かった。それのせいか、家の体面を気にしているのか、どっちかはわからないが成績にはめっぽううるさかった。
この国では生まれた時点以降、血液検査を行えば自らがアルファかベータかオメガなのか、わかるようになってた。
真加は物心つく前からオメガだとわかっていたし、それで良かったと思っている。
自分の役割が実は正反対でしたなんて、生まれて10年以上って言われても困っていたはずだ。いや、真加は両方出来るというものだったけど。
アルファ、ベータ、オメガの別は成長にも若干の影響を与え、比較的アルファの方が体躯が多い者が多い。ちゃんとした科学的な理由があるとハルに聞いたが男女に差があるのとそう変わらないものだった気がする。
ただ、真加は身長が170センチ半ばほどまで成長しており、男のオメガでも「かわいらしい」イメージと結びけられがちな中ではオメガらしくないオメガだった。
真加は生まれて早々オメガだと診断されたこと、母がオメガであるため発情期に対する理解が幼い頃より深かったことは非常に幸運だったと思っている。
……本当に。
◆
事業の成功につれて少しずつ広い家へ引っ越しを繰り返してきた笠間家は最終的に母の実家の近くに家を買った。
というより母方の祖父譲り受けたという形が正しい。
母は元々貴族の生まれの家だとかで、苦学生の父とは結婚が認められず駆け落ち同然で結婚した。
人口わずか数パーセントのアルファでも、家柄が良くなければ結婚相手としては認められないほどの家だったということだ。
しかし、真加がちょうど中等部に入ったあたりでようやく親子の縁が再び繋がったようだ。事業家だった祖父がついに父を認めたということだった。
まだまだ幼い弟は目に入れても痛くない可愛がりようだが、正直既に思春期に差し掛かっていた真加に対しては祖父と祖母も接し方に悩んでいるようにに思える。
しかし、結局会えるのは年に一度程度なので状況はやや気まずいままだった。
母親が20数年共に生きた人たちとこんな状況なのはいかがなものかと真加も若干思う。親密度を出して2で割れたらちょうどいいのかもしれない。
学園から家までは笠間家が出した車に乗った。小学生まではごく普通どころかそれ以下の暮らしをしていた真加にはまだまだ慣れない部分である。
こんな何人で住めるかわからないくらいの大きさの家しか並んでない街並みに、自分の家があるというのも驚く。
真加にとっての家は幼い頃過ごした質素な集合住宅のままかもしれない。ボーッと車の外の景色を眺めていた。
「お兄ちゃんー!おかえりー!」
玄関で待ち構えていた弟を真加は抱き上げた。
弟・朝陽(あさひ)は、真加が小学5年生の時に生まれた。来年は小学校に進学する。
兄の欲目を抜いても、目がくりっとしてて子役になれるくらいかわいいんじゃないかと考えている。
「真加おかえりなさい」
廊下の奥から母が出てきた。元はご令嬢だったらしいが駆け落ち後に庶民感覚が磨かれてしまったらしく、もっぱらカジュアルな格好が多い。ややウェーブがかったロングヘアを一つに束ねている。
今日はもう過ぎてしまったが朝陽の誕生日パーティだった。忙しい父も夜には帰ってくるらしい。
「お兄ちゃん遊ぼ!」
抱き上げて顔が近くなった朝陽が首にぎゅっと抱きつく。
彼氏や彼女でもいない限りなかなか普段感じられない体温の近さを心地よく思った。
朝陽は母親に似たぱっちりとした瞳をキラキラと真加に注ぐ。
「いいよ。何する?」
「んーとね、んーとね……」
そのままリビングまで連れて行く。母はキッチンの方へ引っ込んでいった。
そのうち抱き上げさせてくれない時が来るのもあっという間だろう。
ここだけで元々住んでいたアパートより広いであろうリビングダイニング。朝陽を降ろしてL字の革張りのソファに腰掛けると、朝陽はどたどたとアニメのイラストが描かれたパズルを持ってきた。
「パズルしよ!」
「いいよ」
17歳の真加から見れば大したことない幼児向けパズルだが、朝陽が一生懸命手に余る大きさのピースをはめていく様子はなんとも愛らしい。
「今幼稚園って何やってんの?」
「えっとね、運動会の練習!」
「ふーん。どんなの?見せて?」
少しずつ大きくなるにつれコミュニケーションもだいぶ取れるようになった。
「こんなの!」
朝陽は母お気に入りのラグに座り込んでパズルに励んでいたが、立ち上がって体を動かしはじめた。
流行りの歌に疎い真加でもわかる歌をたどたどしく歌いながら腕を上げたり足を前後に動かしたりとしている。どうやらダンスのようだ。
真加はそんな様子を見ながら思う。他に同じ6歳がいないからわからないものの、にしたってダンスが上手い気がする。リズム感がいいというか。
素直な自分がダンスを踊る弟を愛らしいと思い、それを俯瞰で見るどこか冷めた自分が、しょうがないと笑っていた。
アルファだから、他の子より成長も早いに違いない。
朝陽は生まれてすぐの検査でアルファだと診断された。その時はいいことだと思っていたが、成長していくにつれアルファの片鱗を見せる朝陽にどきっと胸が冷たくなる瞬間がある。
「朝陽すごいなー!もうバッチリじゃん。動画撮ってもいい?」
「いいよぉ」
もう一度踊ってもらう。複雑な心境は置いといて、たまに動画で見返せたらなんだか癒されそうな気がした。
朝陽の母親譲りのややパーマかかったふわふわの髪が動きに合わせてぴょこぴょこ舞う。
朝陽はアルファだとかオメガだとかまだ深く理解していない。しかし、聡明だから遅かれ早かれ理解するだろう。
兄は「支配される側」の性で、自らは「支配する側」の性であることを。
◆
「あのね、お兄ちゃん!これ僕が好きなやつ、ママと透子ちゃんに作ってもらったの!これと、これも!」
夕食の席で朝陽が身を乗り出そうという勢いでダイニングテーブルの料理を指差していく。
テーブルには朝陽の好きなグラタンやハンバーグなどが所狭しと料理が並べられ、真ん中には大きなホールケーキが鎮座していた。母とお手伝いの透子さんで選んだようだ。何でも、有名なパティシエに特別に作ってもらったとか。
プレートには『あさひくんたんじょうびおめでとう』の字がのせられており、ろうそくの炎が朝陽の瞳に映ってきらきらと輝いていた。
たまにしか会えないという補正のおかげか、朝陽は真加に異様に懐いていた。
今も隣に座って、えらくおしゃべりな朝陽の話を聞いている。
「朝陽、静かに食べなさい」
「今日くらいいいじゃん」
「もう。そうやって甘やかされると困るわ」
母がぼやいた。
「お兄ちゃん、明日何時ごろ帰っちゃう?」
「夕方くらいかな」
「ぼくとサッカーしてくれる?」
「いいよ」
「やったー!」
朝陽は先ほどプレゼントで真加からあげたサッカーボールで遊びたくてしょうがないようだ。
「お兄ちゃん夏休みは毎日おうちにいる?」
「うーん…。部活あるからわからないな」
ずっとこんな調子だった。
透子さんがケーキを切り分けているのに朝陽が夢中になっている隙に、父に話しかける。
父はお人よしで雰囲気も柔和で普段は優しいが、真加の成績などにはうるさい。
「朝陽も来年小学生なんて早いね」
「それを言うなら真加なんて高3だよ」
「うっ…俺は内部進学だけど、朝陽は受験でしょ?」
真加は公立の小学校に行ったが、朝陽はどうやらお受験というものをするというのは聞いてきた。同年代と比べても出来がいいのは何となくわかるため、教育に熱心になる気持ちもよくわかった。
「そうだねぇー…」
父はサーモンのタルタルをクラッカーにのせて食べながらボソボソ言う。よく見ると奥二重のまぶたは真加と同じだった。
「どこ受けるか決まってるんでしょ?」
「うん。いくつかあるけどK大附属なんてどうかなって」
単純な会話の流れとして聞いたそれに、真加は表情には出さずに驚いた。
「附属?でも中学は天風でしょ?」
真加が通う国立天風学園は中等部から大学までであり、小等部は無い。当然、アルファである朝陽もゆくゆくは天風に通うものだと考えていた。
「いや、そのまま進ませようかと。……子供が寮生活なんて、寂しいだろ?」
父は恥ずかしいな、とはにかみながら言った。ただの世間話だったが、真加の心には細い細い、しかし痛くて抜けない針が刺さったように感じた。
「へー…まあ、朝陽なら大丈夫だね」
「いや、朝陽は調子に乗りやすいんだよ。飲み込みは早いけど飽きっぽくてね」
「5歳ならみんなそうでしょ」
真加は切り分けてもらったケーキを受け取る。シンプルなショートケーキだった。クリームもスポンジもキメの細かさや味の上品さが格段で美味しく、真加の幼い頃の安価な誕生日ケーキとは違うと思った。
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