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第3章 領改善編
第52話 突然の継承
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「………おい、偵察の奴らは?」
「………帰って来ませんね」
クソが………これはもう戻ってこない可能性が濃厚になってきた………
「クライト・フェルディナント・レンメル、予想以上だ………」
正直な話。未だ舐めていた部分はあった。所詮学園生という発展途上の人間であると勝手に思ってしまっていた。しかしもう少しよく考えたら、報告されていたクライトの姿は〈属性〉を一切使わなかった場合の純粋な戦闘の姿であって、全力というわけでは無かったのだ。
こちらにも〈属性〉持ちの個体は沢山いるのにも関わらず、それを〈属性〉を使わずに倒したという事実がまずおかしかったのだ。騎士団も、学園教師も、Sランク冒険者も、〈属性〉を使った上でこちら側でも戦えるものが1番強い我から300名程と限られている。それなのに、クライトは〈属性〉を使わなかったという事はどれだけ実力差が開いているかの証明となってしまっている。
「クソッ、このままじゃ総崩れだ………!!!」
「ど、どうしますか?将軍様………」
「………よし、計画は変更だ。クライトには関わるな。我らには他に手段が多く残されている。それこそ………そこにあるものとか、な」
「そ、そうですね。そしたらどうしましょう?」
「レンメル領以外の土地は攻略出来たんだよな?」
「そのようです。各小隊長から電報が届いております」
「あぁ、了解。それならばレンメル領以外の所から攻めよう、今回の侵攻の目的はヨーダン王の殺害だ。確かにクライトは脅威だが………いざとなったら我一人でも十分殺せるだろう」
「はっ、承知致しました。それではすぐに手配いたします。各小隊長の者共にも伝えて参ります」
「あぁ。頼んだ」
クライト………ぜひ、手に入れたいものだ。
右の器具を見る。中に液体を入れることのできる小さな筒に極細の筒状の針を付けて、そこまで傷つけずに体内に注入する事が出来る優れモノである。今その器具に入っている薬液は………使ってみれば分かる。
「さて、我の動く時もそろそろだな………」
軽く、体でも動かしてこようか。
今回の戦いで、我は別に殺されたって構わない。
兎に角、グロス・サイト・ハイドロン・ソーネク・ヨーダン………俺を裏切って、国王になったお前には確実に死んでもらおうか。
☆★☆★☆
【クライトside】
魔人達を処理した後、僕はすぐにナイパーの様子を見に行った。すると、キュールが回復魔法をかけていた。どうやら、さっき急いでいて回復しきれなかった細部を回復させているらしい。それは良かった。
次に向かったのは、僕の兄二人の部屋。部屋に入ると、すでに起きていたクスマは痛みに悶えていて、クスエルの方は未だ気絶していた。
「………」
ツカツカと僕はクスマの元に歩いていく。そして、クスマの目の前で剣を抜く。もちろん、首を斬るためではない。そんなことをしたらいくら僕でも重罪人だ。脇腹に剣先を当てる。回復魔法の準備も出来た。
「………っ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!一回はなっ………ゴッホゴホ!!!」
「ん?何て言ったのか全然分かんないよ。それじゃあ始めるよ」
「ま、待って!!!」
「………なに?」
「お前が欲しいものは全部やるから!だから殺さないでくれぇ!お願いだよぉ!」
「………」
殺すつもりは無かったけれど、どうやら勘違いしている様だからこの際利用してしまおう。
「父が死んだ」
「………はっ?え、ぇ?」
「魔人による襲撃で突如襲われたんだ。未だに死体が玄関先に放置されてある。こういう時は国のもっと上の人が車で現場の維持をしないといけないから僕達はまだ触っちゃいけない」
「え、お、おい!ど、どういう事………と、というかお前!あの魔人を倒したのか!?」
「そりゃあそうでしょ。昨日もそうだし、何体も居て面倒くさかったんだから」
「ぇ………な、どうやって………ひぃっ!剣を顔に向けないでくださいぃ!」
「じゃあ最後まで聞いて。だから、相続は兄様がすると思う。その時に約束して欲しいんだ。まずは要らない収蔵品を全部売って、それから今より税率をさげて。それが約束できないなら………」
「わ、分かった!分かったから!と、というか………」
「言い訳しない。分かったならそろそろやるね」
そう言って、再びクスマの脇腹に切先を当てる。
「ち、ちがっ!言い訳とかじゃ………」
クスマの脇腹に剣を突き刺して直ぐに引き抜く。即座に回復魔法をかけてやるけれど、正直ナイパーを殺しかけた奴にしたい行動ではない。口調もいつもとは違って少し荒くなってしまうのが自分でも分かる。
「がっ!………はぁっ!はぁっ!な………なんで、刺したのに回復してるんだ………?」
「………はぁ。そうしないと回復出来ないからだよ、このまま言ってたら兄様は貧血か衰弱死だったからね」
「そ、そうなのか………」
「それじゃあ、僕の言った事よろしくね」
「ま、待ってくれ!クライトが今言った事、それはいいんだが………」
「………なに?今度はクスエルの………クスエル兄様の………いや、やっぱクスエルでいいか。その治療するんだけど、まだ何かあるの?」
大分しつこい。そんなに何を言いたいんだろうか。
「お、俺には領主に務まらない!だから、爵位も権限も全部お前に渡す!」
「………は?何言ってるの?」
つい去年まで、『俺が領主になるからお前は絶対に領主にはなれないんだよぉ!分かるよなぁ?』みたいな、そう言う風な事を言ってきていたのに。
どうして急にそんなことを言い出したんだ?何か裏があるとか………駄目だ、思いつかない。
「なんで?」
「お………お前には勝てないからだ!無理だ!俺には耐えきれない!俺はもう聖職者になって隠居するから!」
「駄目だよ。僕だって忙し………」
ん?僕が忙しいのって、どうしようもない状況でこの領の制度をどうにか変える為に動いてるからだよね?
じゃあ、この領を僕が受け継ぐことになったら………今の状況がクスマにお願いしなくても直ぐに変わっていく。
「分かった。じゃあ僕が領主になる」
「あぁ、なってくれ。とてもじゃないが俺じゃ無理だ、父様みたいになるかもって思うと………あぁ、無理だ!」
「別に父は領民の反逆で殺されたわけじゃないんだし………」
でも確かに領を守るときにある程度戦えないと、今のレンメル領みたいなあまりにひどすぎる状況の領はやっていけないな。軍だって、いつどうして無くなったのかすら分かんないし………
「でも、クスエルは?」
「良いんだこいつなんか!どうせお前に反抗したところで絶対に勝てないだろ!」
「いや、それは分かんないけど………もしかしたら〈属性〉を7個持ってるかもしれないし」
「そんな奴人間じゃないわ!もしその半分の3、4個だったとしてこの世に居るか居ないか怪しいだろ!」
「………そ、そうだね」
今、クスマの目の前に5個持ちが居るとは言わない。面倒くさいことになる。
「まぁとにかくそう言うわけだから!早くそいつを治療してやってくれ、聖堂院に連れて行く!」
「あ、あぁ。分かった」
こう隣で大騒ぎしているのに、まだ気絶しているクスエルを強制的に起こして同じように治療する。
「ゴッホゴッホ、ゲホ、お、お前!何し………」
パァン!
やけに乾いた音が響いた。クスマがクスエルの頬をはたいた音だった。普通にびっくりした。
「黙れ!行くぞ!」
「な、に、兄様!こ、こいつのこ………」
「黙れって言っているだろうが!俺らには無理なんだから!」
そう言って、バタバタと音をたてて行ってしまった。そういえば、玄関先に父のクスタフの死体が転がっているけれど触ったりしないよね………?まぁ触ってたところであの二人が容疑者候補に挙がってしまうだけだから僕には関係ないけれど。
「はぁ………というか、僕今から領主なんだ………」
なんか、実感が湧かない。
でもこれで、したいことが全て出来るようになったじゃないか。
「よし………」
決意を固めた。
「………おい、偵察の奴らは?」
「………帰って来ませんね」
クソが………これはもう戻ってこない可能性が濃厚になってきた………
「クライト・フェルディナント・レンメル、予想以上だ………」
正直な話。未だ舐めていた部分はあった。所詮学園生という発展途上の人間であると勝手に思ってしまっていた。しかしもう少しよく考えたら、報告されていたクライトの姿は〈属性〉を一切使わなかった場合の純粋な戦闘の姿であって、全力というわけでは無かったのだ。
こちらにも〈属性〉持ちの個体は沢山いるのにも関わらず、それを〈属性〉を使わずに倒したという事実がまずおかしかったのだ。騎士団も、学園教師も、Sランク冒険者も、〈属性〉を使った上でこちら側でも戦えるものが1番強い我から300名程と限られている。それなのに、クライトは〈属性〉を使わなかったという事はどれだけ実力差が開いているかの証明となってしまっている。
「クソッ、このままじゃ総崩れだ………!!!」
「ど、どうしますか?将軍様………」
「………よし、計画は変更だ。クライトには関わるな。我らには他に手段が多く残されている。それこそ………そこにあるものとか、な」
「そ、そうですね。そしたらどうしましょう?」
「レンメル領以外の土地は攻略出来たんだよな?」
「そのようです。各小隊長から電報が届いております」
「あぁ、了解。それならばレンメル領以外の所から攻めよう、今回の侵攻の目的はヨーダン王の殺害だ。確かにクライトは脅威だが………いざとなったら我一人でも十分殺せるだろう」
「はっ、承知致しました。それではすぐに手配いたします。各小隊長の者共にも伝えて参ります」
「あぁ。頼んだ」
クライト………ぜひ、手に入れたいものだ。
右の器具を見る。中に液体を入れることのできる小さな筒に極細の筒状の針を付けて、そこまで傷つけずに体内に注入する事が出来る優れモノである。今その器具に入っている薬液は………使ってみれば分かる。
「さて、我の動く時もそろそろだな………」
軽く、体でも動かしてこようか。
今回の戦いで、我は別に殺されたって構わない。
兎に角、グロス・サイト・ハイドロン・ソーネク・ヨーダン………俺を裏切って、国王になったお前には確実に死んでもらおうか。
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【クライトside】
魔人達を処理した後、僕はすぐにナイパーの様子を見に行った。すると、キュールが回復魔法をかけていた。どうやら、さっき急いでいて回復しきれなかった細部を回復させているらしい。それは良かった。
次に向かったのは、僕の兄二人の部屋。部屋に入ると、すでに起きていたクスマは痛みに悶えていて、クスエルの方は未だ気絶していた。
「………」
ツカツカと僕はクスマの元に歩いていく。そして、クスマの目の前で剣を抜く。もちろん、首を斬るためではない。そんなことをしたらいくら僕でも重罪人だ。脇腹に剣先を当てる。回復魔法の準備も出来た。
「………っ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!一回はなっ………ゴッホゴホ!!!」
「ん?何て言ったのか全然分かんないよ。それじゃあ始めるよ」
「ま、待って!!!」
「………なに?」
「お前が欲しいものは全部やるから!だから殺さないでくれぇ!お願いだよぉ!」
「………」
殺すつもりは無かったけれど、どうやら勘違いしている様だからこの際利用してしまおう。
「父が死んだ」
「………はっ?え、ぇ?」
「魔人による襲撃で突如襲われたんだ。未だに死体が玄関先に放置されてある。こういう時は国のもっと上の人が車で現場の維持をしないといけないから僕達はまだ触っちゃいけない」
「え、お、おい!ど、どういう事………と、というかお前!あの魔人を倒したのか!?」
「そりゃあそうでしょ。昨日もそうだし、何体も居て面倒くさかったんだから」
「ぇ………な、どうやって………ひぃっ!剣を顔に向けないでくださいぃ!」
「じゃあ最後まで聞いて。だから、相続は兄様がすると思う。その時に約束して欲しいんだ。まずは要らない収蔵品を全部売って、それから今より税率をさげて。それが約束できないなら………」
「わ、分かった!分かったから!と、というか………」
「言い訳しない。分かったならそろそろやるね」
そう言って、再びクスマの脇腹に切先を当てる。
「ち、ちがっ!言い訳とかじゃ………」
クスマの脇腹に剣を突き刺して直ぐに引き抜く。即座に回復魔法をかけてやるけれど、正直ナイパーを殺しかけた奴にしたい行動ではない。口調もいつもとは違って少し荒くなってしまうのが自分でも分かる。
「がっ!………はぁっ!はぁっ!な………なんで、刺したのに回復してるんだ………?」
「………はぁ。そうしないと回復出来ないからだよ、このまま言ってたら兄様は貧血か衰弱死だったからね」
「そ、そうなのか………」
「それじゃあ、僕の言った事よろしくね」
「ま、待ってくれ!クライトが今言った事、それはいいんだが………」
「………なに?今度はクスエルの………クスエル兄様の………いや、やっぱクスエルでいいか。その治療するんだけど、まだ何かあるの?」
大分しつこい。そんなに何を言いたいんだろうか。
「お、俺には領主に務まらない!だから、爵位も権限も全部お前に渡す!」
「………は?何言ってるの?」
つい去年まで、『俺が領主になるからお前は絶対に領主にはなれないんだよぉ!分かるよなぁ?』みたいな、そう言う風な事を言ってきていたのに。
どうして急にそんなことを言い出したんだ?何か裏があるとか………駄目だ、思いつかない。
「なんで?」
「お………お前には勝てないからだ!無理だ!俺には耐えきれない!俺はもう聖職者になって隠居するから!」
「駄目だよ。僕だって忙し………」
ん?僕が忙しいのって、どうしようもない状況でこの領の制度をどうにか変える為に動いてるからだよね?
じゃあ、この領を僕が受け継ぐことになったら………今の状況がクスマにお願いしなくても直ぐに変わっていく。
「分かった。じゃあ僕が領主になる」
「あぁ、なってくれ。とてもじゃないが俺じゃ無理だ、父様みたいになるかもって思うと………あぁ、無理だ!」
「別に父は領民の反逆で殺されたわけじゃないんだし………」
でも確かに領を守るときにある程度戦えないと、今のレンメル領みたいなあまりにひどすぎる状況の領はやっていけないな。軍だって、いつどうして無くなったのかすら分かんないし………
「でも、クスエルは?」
「良いんだこいつなんか!どうせお前に反抗したところで絶対に勝てないだろ!」
「いや、それは分かんないけど………もしかしたら〈属性〉を7個持ってるかもしれないし」
「そんな奴人間じゃないわ!もしその半分の3、4個だったとしてこの世に居るか居ないか怪しいだろ!」
「………そ、そうだね」
今、クスマの目の前に5個持ちが居るとは言わない。面倒くさいことになる。
「まぁとにかくそう言うわけだから!早くそいつを治療してやってくれ、聖堂院に連れて行く!」
「あ、あぁ。分かった」
こう隣で大騒ぎしているのに、まだ気絶しているクスエルを強制的に起こして同じように治療する。
「ゴッホゴッホ、ゲホ、お、お前!何し………」
パァン!
やけに乾いた音が響いた。クスマがクスエルの頬をはたいた音だった。普通にびっくりした。
「黙れ!行くぞ!」
「な、に、兄様!こ、こいつのこ………」
「黙れって言っているだろうが!俺らには無理なんだから!」
そう言って、バタバタと音をたてて行ってしまった。そういえば、玄関先に父のクスタフの死体が転がっているけれど触ったりしないよね………?まぁ触ってたところであの二人が容疑者候補に挙がってしまうだけだから僕には関係ないけれど。
「はぁ………というか、僕今から領主なんだ………」
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