2 / 22
聖女が偽聖女と呼ばれる理由(2)
しおりを挟む
背負い袋に王宮でもらった袋を詰め込み、キャシーはぽてぽてと道をゆく。ここまでは「追放」という形で王宮側が用意した馬車で送られてきたので、野宿をせずに済んだ。懐を痛めずに距離を稼ぐことができたので、吝嗇家のキャシーとしては正直ありがたい。
「ムカつきますね。なんなんですか、アレは。やはり女神の名の下に、キャシーが話した王族の秘密は全部真実だったと大々的に宣伝した方がいいのではないでしょうか」
「ありがとう。でもそんなことをしたら、追放じゃ済まなくなるからね。いいんだよ、アレで。だいたいみんな、暴露された王族の秘密は真実だってわかっているんだから。ただ、一応『これは嘘ってことにしておいてね。あんな恥ずかしいことをそのままにしておいたら、王族の威厳が台無しになるから許してね。お金はあげるし、国境まで送るから早く出ていってちょ』っていう茶番劇だからね」
「それでも、助けてもらった相手にする仕打ちではありません!」
「私の代わりに怒ってくれるあなたがいるから平気、平気。こういう時こそ、田舎の山育ちで良かったって思うわ。最悪、どんな状態になってもサバイバルできるもんね。なめるなよ、雑草魂!」
「そもそも、そういう状況になるのがおかしいんです!」
キャシーの肩口で、小さな白い竜がぷりぷり怒っている。聖女に選ばれた際に、女神から託された聖獣だ。そのすべすべとした身体をひとなでして、彼女は微笑んだ。小さな竜は言い募る。
「この間は女神さまの鉄槌が下されていましたよね? お城がひゅーどっかーんと花火のように爆発していましたが、とても綺麗でしたよ。今回もあんな風になれば良かったんです」
「あははは。あれはね、特別だよ。あいつら追放劇のどさくさに紛れて、依頼料を勝手に減額してきたからね。しかも床にお金を投げつけてきたし!」
「なんて無礼な!」
「そうでしょ、大事なお金を投げつけるとかマジで許せないよね」
「ああ、あなたはそういうかたでした」
「ほら、おしゃべりしていたらあっという間に次の国の関所に着いたよ。入国までの間、おとなしくしていてね」
「当然ですとも」
目の前でふるふると揺れる竜のしっぽにキャシーが口づけると、白い竜はテンションがあがったのか小さな炎を吐いてみせた。
「ムカつきますね。なんなんですか、アレは。やはり女神の名の下に、キャシーが話した王族の秘密は全部真実だったと大々的に宣伝した方がいいのではないでしょうか」
「ありがとう。でもそんなことをしたら、追放じゃ済まなくなるからね。いいんだよ、アレで。だいたいみんな、暴露された王族の秘密は真実だってわかっているんだから。ただ、一応『これは嘘ってことにしておいてね。あんな恥ずかしいことをそのままにしておいたら、王族の威厳が台無しになるから許してね。お金はあげるし、国境まで送るから早く出ていってちょ』っていう茶番劇だからね」
「それでも、助けてもらった相手にする仕打ちではありません!」
「私の代わりに怒ってくれるあなたがいるから平気、平気。こういう時こそ、田舎の山育ちで良かったって思うわ。最悪、どんな状態になってもサバイバルできるもんね。なめるなよ、雑草魂!」
「そもそも、そういう状況になるのがおかしいんです!」
キャシーの肩口で、小さな白い竜がぷりぷり怒っている。聖女に選ばれた際に、女神から託された聖獣だ。そのすべすべとした身体をひとなでして、彼女は微笑んだ。小さな竜は言い募る。
「この間は女神さまの鉄槌が下されていましたよね? お城がひゅーどっかーんと花火のように爆発していましたが、とても綺麗でしたよ。今回もあんな風になれば良かったんです」
「あははは。あれはね、特別だよ。あいつら追放劇のどさくさに紛れて、依頼料を勝手に減額してきたからね。しかも床にお金を投げつけてきたし!」
「なんて無礼な!」
「そうでしょ、大事なお金を投げつけるとかマジで許せないよね」
「ああ、あなたはそういうかたでした」
「ほら、おしゃべりしていたらあっという間に次の国の関所に着いたよ。入国までの間、おとなしくしていてね」
「当然ですとも」
目の前でふるふると揺れる竜のしっぽにキャシーが口づけると、白い竜はテンションがあがったのか小さな炎を吐いてみせた。
10
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
追放された令嬢は英雄となって帰還する
影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。
だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。
ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。
そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する……
※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる