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聖女が偽聖女と呼ばれる理由(2)

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 背負い袋に王宮でもらった袋を詰め込み、キャシーはぽてぽてと道をゆく。ここまでは「追放」という形で王宮側が用意した馬車で送られてきたので、野宿をせずに済んだ。懐を痛めずに距離を稼ぐことができたので、吝嗇家のキャシーとしては正直ありがたい。

「ムカつきますね。なんなんですか、アレは。やはり女神の名の下に、キャシーが話した王族の秘密は全部真実だったと大々的に宣伝した方がいいのではないでしょうか」
「ありがとう。でもそんなことをしたら、追放じゃ済まなくなるからね。いいんだよ、アレで。だいたいみんな、暴露された王族の秘密は真実だってわかっているんだから。ただ、一応『これは嘘ってことにしておいてね。あんな恥ずかしいことをそのままにしておいたら、王族の威厳が台無しになるから許してね。お金はあげるし、国境まで送るから早く出ていってちょ』っていう茶番劇だからね」
「それでも、助けてもらった相手にする仕打ちではありません!」
「私の代わりに怒ってくれるあなたがいるから平気、平気。こういう時こそ、田舎の山育ちで良かったって思うわ。最悪、どんな状態になってもサバイバルできるもんね。なめるなよ、雑草魂!」
「そもそも、そういう状況になるのがおかしいんです!」

 キャシーの肩口で、小さな白い竜がぷりぷり怒っている。聖女に選ばれた際に、女神から託された聖獣だ。そのすべすべとした身体をひとなでして、彼女は微笑んだ。小さな竜は言い募る。

「この間は女神さまの鉄槌が下されていましたよね? お城がひゅーどっかーんと花火のように爆発していましたが、とても綺麗でしたよ。今回もあんな風になれば良かったんです」
「あははは。あれはね、特別だよ。あいつら追放劇のどさくさに紛れて、依頼料を勝手に減額してきたからね。しかも床にお金を投げつけてきたし!」
「なんて無礼な!」
「そうでしょ、大事なお金を投げつけるとかマジで許せないよね」
「ああ、あなたはそういうかたでした」
「ほら、おしゃべりしていたらあっという間に次の国の関所に着いたよ。入国までの間、おとなしくしていてね」
「当然ですとも」

 目の前でふるふると揺れる竜のしっぽにキャシーが口づけると、白い竜はテンションがあがったのか小さな炎を吐いてみせた。
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