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 ガーデニアとの生活は、存外心地いいものだった。違和感なく馴染み過ぎていることに気がついて、愕然としてしまうほどに。

 今日も彼女は、当然のようにロイドの好物を作る。王都では食べられなかったこの地方の郷土料理。特別な材料など使わない。地味で素朴な家庭の味はレストランのメニューには上がらず、それゆえにロイドに恋しく思わせた。

 まったく不思議なものだ。ロイドは一度だって、これが自分の好物だと告げたことはない。なんなら、ガーデニアの好物を用意してやりたいと話しかけていたくらいだ。

「これは俺の好物なんだが。どうして知っているんだ?」

 何をおかしなことを聞いているのかとでも言うように、ガーデニアが男の皿を指差した。ロイドの皿は、すでに空っぽだ。どうやら好物の料理が出た場合、ロイドは自分でも気がつかぬうちに皿を綺麗にしてしまっているらしかった。子どもと同じである。

「ああ、フィオナ。君を守れなかった俺は、幸せになってはいけないのに」

 美味しい料理に温かい部屋。その喜びを分かち合うことのできる家族ガーデニア。その喜びを噛み締めながら、ロイドは首をくくりたくなった。
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