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047 神様とお肉
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長い休養期間も明けて、私たち【赤の女王】の面々は、久しぶりにダンジョンに潜っていた。
ダンジョン第八階層。相変わらずの草原フィールドだ。もう少し変化が欲しいところだな。
「ディア、宝箱の反応はありますか?」
「ある…」
エレオノールの質問に、ディアネットが宝具の地図を見て答える。
「では宝箱に向かいましょう。ディア、案内をお願いします」
ディアネットの案内に従って、宝箱を目指して草原を進む。私としては、早くこの階層を攻略してしまいたいのだが、久しぶりのダンジョンだ。まっすぐボス部屋に向かうのではなく、肩慣らしを兼ねて宝箱を開けて回るらしい。
「それにしても人が多かったな」
第八階層の入口には、次から次へと冒険者のパーティが転移して来ていた。彼らはまっすぐ北へと進んで行った。彼らの目的は階層ボスなのだろう。南へ進む私たちを不思議そうな顔で見ていたのが印象的だった。
「彼らは、たぶんお肉屋さんですね」
「お肉屋さん?」
エレオノールの答えに疑問が浮かぶ。ダンジョンの中でお肉屋さん?どういうことだ?
「彼らの狙いは、階層ボスのドロップアイテムのお肉なんです」
聞けば、この階層の階層ボスはイノシシで、良質な豚肉をドロップするらしい。その肉はとても美味で、街の富裕層の間で人気なんだとか。一種のブランドのような扱いを受けていて、割と高値で取引されているらしい。納品クエストもよく発注されているという。
その他にも、彼らがフィールドで狩るモンスターのドロップ品である肉が、街の巨大な胃袋を支えているようだ。街で肉が低価格で売られているのは、彼らの働きによるものである。そのため、彼らはお肉屋さんと呼ばれているらしい。
「冒険者は肉から始めよって言うよねー」
ダンジョンの第一から第十階層のモンスターは、主に肉をドロップする。冒険者たちは、モンスターを狩って、ドロップ品の肉を売って資金を貯めて、装備を整えて、次の階層に進んで行くものらしい。
「わたくしたちも何度かここに来ることになると思いますよ。わたくしたちの装備は整っていますけど、それでも活動資金は必要ですからね」
冒険者は、活動するだけでその資金をすり減らしていく。その最たる物は、私の使う矢だろう。矢を使えば、折れたり、鏃が欠けたりするのは当たり前だ。そうすると、新しく矢を買わなければならない。武器や鎧なんかも同じだ。冒険者の武器や鎧は、消耗品なのである。
「2時、敵…」
「了解だ」
ディアネットの言葉に頷き、私は矢筒から矢を取り出して、弓を構える。さてさて、休み明け最初の獲物は何かな?
◇
ダンジョン第十階層の階層ボスは、大きな黒毛のウシだった。興奮しているのか、しきりに地面を前足で掻いている。突進してくるつもりだ。あの巨体で迫られたら、エレオノールでは止めることは不可能だろう。体重差がありすぎる。
私たちは、事前に打ち合わせた通りに、素早く左右に広く展開する。ボーリングのピンのように、全員が一撃で薙ぎ倒されるのを防ぐためだ。
「貴方の相手は、わたくしです!」
エレオノールが、盾に剣を打ち付けて音を鳴らし、ウシの注意を引いている。ウシも音が気になるのか、エレオノールの方を向いた。
ウシが頭を下げて、その黒光りする角をエレオノールへと向ける。さあ、ウシが突っこんでくるぞというところで、突如として爆炎がウシを包む。ディアネットの魔法だ。
真横から爆炎の魔法を受けたウシは、その衝撃に横倒しとなった。全身の毛が激しく燃えて、火だるまとなるウシ。これは勝負あったな。
燃え盛るウシは、立ち上がろうと足掻くが、その動きがだんだんと緩慢なものへとなっていく。そしてついにその動きが完全に止まり、ウシはボフンッと煙となって消えた。討伐完了だ。
やれやれ、またディアネットの魔法だけでケリがついてしまったな。私は出そうになったため息を飲み込み、弓をそっと下ろした。
「見て!宝箱よ!」
ミレイユが歓喜の声を上げる。ウシが煙となって消えた場所には、大き目の宝箱が鎮座していた。早速開けて中を確認する。
「これは……」
「お肉ですね」
中に入っていたのは、一塊の肉だった。ウシの階層ボスがドロップしたということは、たぶん牛肉だろう。霜降りでなかなか美味しそうな見た目をしている。
「これは、当たりなんでしょうか?ルーは分かりますか?」
「うーむ…」
一口に牛肉と言っても、その部位によって味も値段も全然違う。この肉が高値で取引されている当たりの肉、例えばヒレ肉やサーロインと呼ばれる部位なのか、それともハズレと言われるスネ肉なのかは、素人である私たちには、見た目だけでは分からない。食べれば分かるのだがな。
「スネ肉ではなさそうだが……いや、分からんな」
「そうですよね。それは本職の方に鑑定してもらいましょう」
冒険者ギルドには、見ただけで肉の部位だけではなく、その品質まで見抜くプロが居るらしい。世の中にはいろんなプロが居るんだな。
「今日はそろそろダンジョンを出ましょうか」
エレオノールの提案に異議を唱える者は居なかった。
ダンジョンのボス部屋は、夕日で真っ赤に染まっている。ダンジョンの中の時間は、外の時間とリンクしているので、ダンジョンの外でも夕日に赤く染まっている頃だろう。
肉塊をミレイユのマジックバッグにしまって、私たちはダンジョンを後にするのだった。
ダンジョン第八階層。相変わらずの草原フィールドだ。もう少し変化が欲しいところだな。
「ディア、宝箱の反応はありますか?」
「ある…」
エレオノールの質問に、ディアネットが宝具の地図を見て答える。
「では宝箱に向かいましょう。ディア、案内をお願いします」
ディアネットの案内に従って、宝箱を目指して草原を進む。私としては、早くこの階層を攻略してしまいたいのだが、久しぶりのダンジョンだ。まっすぐボス部屋に向かうのではなく、肩慣らしを兼ねて宝箱を開けて回るらしい。
「それにしても人が多かったな」
第八階層の入口には、次から次へと冒険者のパーティが転移して来ていた。彼らはまっすぐ北へと進んで行った。彼らの目的は階層ボスなのだろう。南へ進む私たちを不思議そうな顔で見ていたのが印象的だった。
「彼らは、たぶんお肉屋さんですね」
「お肉屋さん?」
エレオノールの答えに疑問が浮かぶ。ダンジョンの中でお肉屋さん?どういうことだ?
「彼らの狙いは、階層ボスのドロップアイテムのお肉なんです」
聞けば、この階層の階層ボスはイノシシで、良質な豚肉をドロップするらしい。その肉はとても美味で、街の富裕層の間で人気なんだとか。一種のブランドのような扱いを受けていて、割と高値で取引されているらしい。納品クエストもよく発注されているという。
その他にも、彼らがフィールドで狩るモンスターのドロップ品である肉が、街の巨大な胃袋を支えているようだ。街で肉が低価格で売られているのは、彼らの働きによるものである。そのため、彼らはお肉屋さんと呼ばれているらしい。
「冒険者は肉から始めよって言うよねー」
ダンジョンの第一から第十階層のモンスターは、主に肉をドロップする。冒険者たちは、モンスターを狩って、ドロップ品の肉を売って資金を貯めて、装備を整えて、次の階層に進んで行くものらしい。
「わたくしたちも何度かここに来ることになると思いますよ。わたくしたちの装備は整っていますけど、それでも活動資金は必要ですからね」
冒険者は、活動するだけでその資金をすり減らしていく。その最たる物は、私の使う矢だろう。矢を使えば、折れたり、鏃が欠けたりするのは当たり前だ。そうすると、新しく矢を買わなければならない。武器や鎧なんかも同じだ。冒険者の武器や鎧は、消耗品なのである。
「2時、敵…」
「了解だ」
ディアネットの言葉に頷き、私は矢筒から矢を取り出して、弓を構える。さてさて、休み明け最初の獲物は何かな?
◇
ダンジョン第十階層の階層ボスは、大きな黒毛のウシだった。興奮しているのか、しきりに地面を前足で掻いている。突進してくるつもりだ。あの巨体で迫られたら、エレオノールでは止めることは不可能だろう。体重差がありすぎる。
私たちは、事前に打ち合わせた通りに、素早く左右に広く展開する。ボーリングのピンのように、全員が一撃で薙ぎ倒されるのを防ぐためだ。
「貴方の相手は、わたくしです!」
エレオノールが、盾に剣を打ち付けて音を鳴らし、ウシの注意を引いている。ウシも音が気になるのか、エレオノールの方を向いた。
ウシが頭を下げて、その黒光りする角をエレオノールへと向ける。さあ、ウシが突っこんでくるぞというところで、突如として爆炎がウシを包む。ディアネットの魔法だ。
真横から爆炎の魔法を受けたウシは、その衝撃に横倒しとなった。全身の毛が激しく燃えて、火だるまとなるウシ。これは勝負あったな。
燃え盛るウシは、立ち上がろうと足掻くが、その動きがだんだんと緩慢なものへとなっていく。そしてついにその動きが完全に止まり、ウシはボフンッと煙となって消えた。討伐完了だ。
やれやれ、またディアネットの魔法だけでケリがついてしまったな。私は出そうになったため息を飲み込み、弓をそっと下ろした。
「見て!宝箱よ!」
ミレイユが歓喜の声を上げる。ウシが煙となって消えた場所には、大き目の宝箱が鎮座していた。早速開けて中を確認する。
「これは……」
「お肉ですね」
中に入っていたのは、一塊の肉だった。ウシの階層ボスがドロップしたということは、たぶん牛肉だろう。霜降りでなかなか美味しそうな見た目をしている。
「これは、当たりなんでしょうか?ルーは分かりますか?」
「うーむ…」
一口に牛肉と言っても、その部位によって味も値段も全然違う。この肉が高値で取引されている当たりの肉、例えばヒレ肉やサーロインと呼ばれる部位なのか、それともハズレと言われるスネ肉なのかは、素人である私たちには、見た目だけでは分からない。食べれば分かるのだがな。
「スネ肉ではなさそうだが……いや、分からんな」
「そうですよね。それは本職の方に鑑定してもらいましょう」
冒険者ギルドには、見ただけで肉の部位だけではなく、その品質まで見抜くプロが居るらしい。世の中にはいろんなプロが居るんだな。
「今日はそろそろダンジョンを出ましょうか」
エレオノールの提案に異議を唱える者は居なかった。
ダンジョンのボス部屋は、夕日で真っ赤に染まっている。ダンジョンの中の時間は、外の時間とリンクしているので、ダンジョンの外でも夕日に赤く染まっている頃だろう。
肉塊をミレイユのマジックバッグにしまって、私たちはダンジョンを後にするのだった。
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