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「オレはちょっとオディロンと話がある。先に飯を食っててくれ」
「あっ、叔父さん……」
オレは財布をクロエに渡すと、オディロンの向かいの席に腰を落とした。クロエたちには悪いが、オディロンがクロエたちに聞かせるのに抵抗があると示してみせたのだ。オディロンの心遣いに感謝して、クロエたちには二つほど離れたテーブルを用意した。
本来はダンジョン攻略の打ち上げなのだから、リーダーであるオレが抜けることは止めた方がいい。そんなことは分かっている。だが、オレはオディロンが言葉を濁すほどのなにかが無性に気になった。
悪い情報ってのは、吉報だ。心の準備や対策を練る時間ができる。なるべく早く聞いた方がいい。
「オレにもオディロンと同じ酒を。それとオディロンにお代わりを持ってきてくれ」
「はーい」
近くに居たウェイトレスに注文して、オレはテーブルの向かいに座るオディロンを見つめる。
「んで? 何があったんだ?」
オディロンは片手でご立派なヒゲをしごくのを止めると、重々しく口を開いた。
「ふむ。お前さんにはもう聞きたくもない関係ない話だろうが、あちらが噛み付いてきそうでな……。一応、お前さんの耳にも入れておこうと思ってな。……『切り裂く闇』の件じゃ」
「………」
オディロンの言う通り、聞きたくもない名前が出てきたな。奴らとは縁を切ってるからもう関りがないと思いたいが、どうもあちらが、オレに纏わりついてくるかもしれないらしい。まったく、面倒この上ないな……。
「アイツらがどうかしたのか? またバカでもやったのか?」
「正確には、バカをし続けておるな」
バカをし続けている?
「あ奴ら、意地でもレベル6ダンジョンを攻略したいようでな。攻略できもしないレベル6ダンジョンに挑戦し続けておる」
「そいつぁ……」
アイツらには、レベル5ダンジョンに挑戦するように助言したというのに、なぜレベル6ダンジョンに固執してるんだ? そんなことをすれば、報酬が得られず、困窮していくというのに……。
「なんでそんなことをしてるんだ? 何のメリットもねぇだろ? むしろ悪循環でしかねぇ」
「お前さんじゃよ……」
「オレ?」
「お前さんがレベル5ダンジョンに挑戦するように助言したじゃろ? あ奴らは意地でもお前さんの助言には従おうとせんからな。レベル6ダンジョンの攻略に固執しておる。お前さんが追放されたあの時、たくさんの冒険者が居ったからな。お前さんの助言に従うということは、お前さんの言葉を正しいと認めたということになる。プライドだけは高いあ奴らには、絶対に従えんじゃろうよ」
「マジか……」
オレの心からの助言が、逆にアイツらを縛る鎖になっていたとは……。
まさかの事態だな。オレにそんな思惑は無かったのだが……。
「絶対にレベル6ダンジョンを攻略するつもりらしくてな。高価な宝具やアイテムも買い漁っておったようじゃが、結果は攻略失敗じゃ。収入がほとんど無いからの。あ奴らは先細りじゃ。今では、お前さんを追放した理由であるマジックバッグすら売り払ったようじゃぞ?」
「はぁ!? マジか……」
そいつはいよいよ追い詰められている。まさか、マジックバッグを売り払うとは……。
「最近はダンジョン攻略にも乗り出さず、拠点でだんまりじゃ。噂では、どうも借金もあるようでな。あ奴らは追い詰められておる。自業自得じゃがな」
「………」
あまりの事実に、オレは絶句してしまう。逆に、よくそこまでこの短期間で落ちぶれたものだ。普通はそこまでいかないぞ? どこかでブレーキがかかる。才能すら感じてしまう落ちぶれっぷりだ。
「もう後のないあ奴らが、心底憎んでいるのがお前さんじゃ。あ奴らの口からお前さんへの呪詛が途切れたことがない」
「迷惑過ぎるだろ……」
なんでそんなにオレを憎むんだよ……。アイツらがレベル5ダンジョンに行かないのは、アイツらのプライドのせいだろ。レベル5が行けないなら、レベル4にでも行けよ。
だが、アイツらのプライドはレベル5以下のダンジョン攻略を許さないのだろう。
ようは、アイツらの失敗の原因であるプライドの高さを、オレのせいにしているだけだろ。
全てオレのせいにして、一致団結してオレを嫌い、パーティの結束を高めているだけだ。健全な方法ではないが、パーティの外に敵を作ると、結束が固まるからなぁ……。オレはお前たちに関りを持たないのだから、オレに依存してくるなと言いたい。
穿った見方をすれば、アイツらはオレに甘えているのだ。いい歳なんだから、いい加減に独立してほしい。
「あぁあ~~~~~~~~~~……」
オレの口から意味のない呻きが漏れる。オレはもうアイツらに関わりたくないというのに、アイツらがどんどん厄介になってオレに関わってくる。
「情けない声を出さんでくれ。お前さんはしっかりせんといかんのだぞ? 今のお前さんには守るべきものがあるだろう?」
「ッ!?」
オディロンの言葉にハッとする。そうだ。アイツらがオレになにか行動を起こすとしたら、クロエたちも危険に巻き込まれてしまう。
「くそっ!」
いくつか手立ては浮かぶ。だが、四六時中クロエたちを守り通すことなんてできない。
どうすればいいんだ……?
「儂らも目を光らせるが、完全とはいかぬ。お前さんも十分気を付けてくれ」
「あぁ……」
オディロンの助力はありがたい。だが、オディロンの力を借りたとしても……。
「あっ、叔父さん……」
オレは財布をクロエに渡すと、オディロンの向かいの席に腰を落とした。クロエたちには悪いが、オディロンがクロエたちに聞かせるのに抵抗があると示してみせたのだ。オディロンの心遣いに感謝して、クロエたちには二つほど離れたテーブルを用意した。
本来はダンジョン攻略の打ち上げなのだから、リーダーであるオレが抜けることは止めた方がいい。そんなことは分かっている。だが、オレはオディロンが言葉を濁すほどのなにかが無性に気になった。
悪い情報ってのは、吉報だ。心の準備や対策を練る時間ができる。なるべく早く聞いた方がいい。
「オレにもオディロンと同じ酒を。それとオディロンにお代わりを持ってきてくれ」
「はーい」
近くに居たウェイトレスに注文して、オレはテーブルの向かいに座るオディロンを見つめる。
「んで? 何があったんだ?」
オディロンは片手でご立派なヒゲをしごくのを止めると、重々しく口を開いた。
「ふむ。お前さんにはもう聞きたくもない関係ない話だろうが、あちらが噛み付いてきそうでな……。一応、お前さんの耳にも入れておこうと思ってな。……『切り裂く闇』の件じゃ」
「………」
オディロンの言う通り、聞きたくもない名前が出てきたな。奴らとは縁を切ってるからもう関りがないと思いたいが、どうもあちらが、オレに纏わりついてくるかもしれないらしい。まったく、面倒この上ないな……。
「アイツらがどうかしたのか? またバカでもやったのか?」
「正確には、バカをし続けておるな」
バカをし続けている?
「あ奴ら、意地でもレベル6ダンジョンを攻略したいようでな。攻略できもしないレベル6ダンジョンに挑戦し続けておる」
「そいつぁ……」
アイツらには、レベル5ダンジョンに挑戦するように助言したというのに、なぜレベル6ダンジョンに固執してるんだ? そんなことをすれば、報酬が得られず、困窮していくというのに……。
「なんでそんなことをしてるんだ? 何のメリットもねぇだろ? むしろ悪循環でしかねぇ」
「お前さんじゃよ……」
「オレ?」
「お前さんがレベル5ダンジョンに挑戦するように助言したじゃろ? あ奴らは意地でもお前さんの助言には従おうとせんからな。レベル6ダンジョンの攻略に固執しておる。お前さんが追放されたあの時、たくさんの冒険者が居ったからな。お前さんの助言に従うということは、お前さんの言葉を正しいと認めたということになる。プライドだけは高いあ奴らには、絶対に従えんじゃろうよ」
「マジか……」
オレの心からの助言が、逆にアイツらを縛る鎖になっていたとは……。
まさかの事態だな。オレにそんな思惑は無かったのだが……。
「絶対にレベル6ダンジョンを攻略するつもりらしくてな。高価な宝具やアイテムも買い漁っておったようじゃが、結果は攻略失敗じゃ。収入がほとんど無いからの。あ奴らは先細りじゃ。今では、お前さんを追放した理由であるマジックバッグすら売り払ったようじゃぞ?」
「はぁ!? マジか……」
そいつはいよいよ追い詰められている。まさか、マジックバッグを売り払うとは……。
「最近はダンジョン攻略にも乗り出さず、拠点でだんまりじゃ。噂では、どうも借金もあるようでな。あ奴らは追い詰められておる。自業自得じゃがな」
「………」
あまりの事実に、オレは絶句してしまう。逆に、よくそこまでこの短期間で落ちぶれたものだ。普通はそこまでいかないぞ? どこかでブレーキがかかる。才能すら感じてしまう落ちぶれっぷりだ。
「もう後のないあ奴らが、心底憎んでいるのがお前さんじゃ。あ奴らの口からお前さんへの呪詛が途切れたことがない」
「迷惑過ぎるだろ……」
なんでそんなにオレを憎むんだよ……。アイツらがレベル5ダンジョンに行かないのは、アイツらのプライドのせいだろ。レベル5が行けないなら、レベル4にでも行けよ。
だが、アイツらのプライドはレベル5以下のダンジョン攻略を許さないのだろう。
ようは、アイツらの失敗の原因であるプライドの高さを、オレのせいにしているだけだろ。
全てオレのせいにして、一致団結してオレを嫌い、パーティの結束を高めているだけだ。健全な方法ではないが、パーティの外に敵を作ると、結束が固まるからなぁ……。オレはお前たちに関りを持たないのだから、オレに依存してくるなと言いたい。
穿った見方をすれば、アイツらはオレに甘えているのだ。いい歳なんだから、いい加減に独立してほしい。
「あぁあ~~~~~~~~~~……」
オレの口から意味のない呻きが漏れる。オレはもうアイツらに関わりたくないというのに、アイツらがどんどん厄介になってオレに関わってくる。
「情けない声を出さんでくれ。お前さんはしっかりせんといかんのだぞ? 今のお前さんには守るべきものがあるだろう?」
「ッ!?」
オディロンの言葉にハッとする。そうだ。アイツらがオレになにか行動を起こすとしたら、クロエたちも危険に巻き込まれてしまう。
「くそっ!」
いくつか手立ては浮かぶ。だが、四六時中クロエたちを守り通すことなんてできない。
どうすればいいんだ……?
「儂らも目を光らせるが、完全とはいかぬ。お前さんも十分気を付けてくれ」
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