70 / 124
070 エレオノール③
しおりを挟む
「エル、お前は『五花の夢』の守りの要だ。お前が倒されるようなことがあってはならない。自分よりも仲間のことを気遣えるお前は、それだけ優しい奴なんだろう。それは素晴らしいことだ。だが、それは自分自身のことを十分に守れる奴だけが言っていい言葉なんだ」
言いながら、ちと説教臭過ぎたかと反省する。歳を取ると、説教臭くなるのはなんでなんだろうな。それだけ若者に伝えたい言葉があるということなのだろう。年月をかけて気が付いた自分なりの考えを若者に託し、より飛躍してもらいたいという願いが背景にあるのかもしれない。
「言っちゃ悪いが、エルはまだまだ未熟だ。しかし、それは伸びしろが大いにあるということでもある。仲間のことを大切に想えることはとてもいいことだ。だが、まずは自分を大切にしてやれ。自分も守れないような奴が、他人を守ることなんてできない」
「分かりました……」
俯いたエレオノールの黄金のカーテンの向こう、そこにはどのような表情が浮かんでいるのか分からない。少しでも響いていればいいんだがな……。
もっと強い言葉で言った方がよかったのか、それとも、もっと寄り添ってやるべきだったのか。オレとしてもこれでよかったのかと疑問が、喉に刺さった小骨のようにジクジクと残り続ける。
エレオノールのことを未熟と評したが、オレ自身こそがパーティリーダーとして未熟なのだということを痛感させられた。
だが、時は戻ってはくれない。一度放った言葉を取り返すことなんてできない。
オレには、前に進むしか道は無いのだ。
「じゃあ、エル。これからは具体的な反省会だ。どうすればよかったのか、どういった手段があるのか、一緒に考えてみようぜ。クロエたちもこっちに来て意見をくれないか? 皆で一緒に戦術ってやつを考えてみよう」
「はいっ!」
「りょっ! でも、戦術ならアベるんが一番詳しいんだし、アベるんがパパッと決めた方が早くなーい?」
オレは、素朴な疑問顔を浮かべたジゼルに首を横に振ってみせる。
「戦術なんて難しい言葉を使ったが、ようは、皆がどういう風に動くかってことだからな。皆がどんな風に動けば戦いやすいのか。皆のできることを持ち寄って話し合うのさ」
「ふーん……」
ジゼルは難しい顔を浮かべて唸ってしまった。なるべく簡単に説明したつもりだったんだが、抽象的になり過ぎたか?
「そんなに難しく考えなくても、貴女のできること、できないことを答えるだけでいいのよ」
どう説明すればいいものか。そう考えていたら、イザベルが助け舟を出してくれた。
「そんだけ? りょーかい、りょーかい!」
ジゼルの難しい顔がパッと明るくなり、華やかな笑顔が浮かべられた。
イザベルに助けられたな。同じ孤児院出身だからか、ジゼルの扱いに慣れているようだ。
「皆さん、申し訳ありません。わたくしにお力をお貸しください……」
エレオノールがクロエたちに向かって深く頭を下げた。本人の言葉通り、とても申し訳なく思っていることが伝わってくる。
「そんな気にするなよ、仲間だろ」
「ひゃんっ!」
オレは、エレオノールの曲がった腰をバシバシと叩いて直す。エレオノールはビックリしたのか、無駄に黄色い声を上げていた。そんなに驚かなくても……。なれなれし過ぎたか?
「あたしたちは仲間よ。そんなの水臭いわ」
「そうそう。あーしらの仲じゃん?」
「私たちはまだまだ未熟よ。改善するべき点なんていくらでもあるわ。今日はそれが、たまたまエルだっただけよ。気にしないで」
「える、助け、る……!」
クロエが、ジゼルが、イザベルが、リディが、柔らかい笑顔を浮かべてエレオノールへと手を伸ばした。なにかの少女たち特有の儀式なのだろうか? 一応、オレもエレオノールへと手を伸ばした。
「皆さん……ッ」
エレオノールは感極まったように言葉を詰まらせると、皆から伸ばされた手を優しく両手で束ねて、額を押し当てる。ぷにぷにと柔らかい少女たちの手の中に、オレの武骨な手が混じっているのを気にしている様子は無い。
なんだか、言外にオレまで仲間に認められたようで、嬉しさなのか、温かいものが体を駆け巡るのが分かった。
「わたくしは果報者ですわね。こんなに優しい素敵な仲間たちに囲まれて……これ以上の幸せはありませんわ」
オレの手の甲に、温かい雫が落ちたのを感じた。どうやらエレオノールは涙しているらしい。
もちろん、そのことをわざわざ指摘しないだけの配慮をオレは持っていた。なにも言わずに、ただエレオノールの手を細心の注意を込めて優しく握り返す。
ふと横を見ると、クロエたちもなにも言わずに、ただ、エレオノールの手を握り返したり、エレオノールの頭や背を撫でていた。
オレはこういったことに慣れていないため、このやり取りの中に自分が含まれていることが、なんだか恥ずかしいような気がしていた。今まで男ばかりのパーティメンバーを相手にしてきた弊害だろう。こういった優しいコミュニケーションに恥ずかしさを感じる。
今後は、こういったことにも慣れていかねぇといけないのだろう。
冒険者生活は長いというのに、クロエたちといると、新しい発見ばかりだな。
そんなことを考えながら、オレは、思いがけずできてしまった柔らかい空間に、顔が熱くなるのを感じながら耐えるのだった。
言いながら、ちと説教臭過ぎたかと反省する。歳を取ると、説教臭くなるのはなんでなんだろうな。それだけ若者に伝えたい言葉があるということなのだろう。年月をかけて気が付いた自分なりの考えを若者に託し、より飛躍してもらいたいという願いが背景にあるのかもしれない。
「言っちゃ悪いが、エルはまだまだ未熟だ。しかし、それは伸びしろが大いにあるということでもある。仲間のことを大切に想えることはとてもいいことだ。だが、まずは自分を大切にしてやれ。自分も守れないような奴が、他人を守ることなんてできない」
「分かりました……」
俯いたエレオノールの黄金のカーテンの向こう、そこにはどのような表情が浮かんでいるのか分からない。少しでも響いていればいいんだがな……。
もっと強い言葉で言った方がよかったのか、それとも、もっと寄り添ってやるべきだったのか。オレとしてもこれでよかったのかと疑問が、喉に刺さった小骨のようにジクジクと残り続ける。
エレオノールのことを未熟と評したが、オレ自身こそがパーティリーダーとして未熟なのだということを痛感させられた。
だが、時は戻ってはくれない。一度放った言葉を取り返すことなんてできない。
オレには、前に進むしか道は無いのだ。
「じゃあ、エル。これからは具体的な反省会だ。どうすればよかったのか、どういった手段があるのか、一緒に考えてみようぜ。クロエたちもこっちに来て意見をくれないか? 皆で一緒に戦術ってやつを考えてみよう」
「はいっ!」
「りょっ! でも、戦術ならアベるんが一番詳しいんだし、アベるんがパパッと決めた方が早くなーい?」
オレは、素朴な疑問顔を浮かべたジゼルに首を横に振ってみせる。
「戦術なんて難しい言葉を使ったが、ようは、皆がどういう風に動くかってことだからな。皆がどんな風に動けば戦いやすいのか。皆のできることを持ち寄って話し合うのさ」
「ふーん……」
ジゼルは難しい顔を浮かべて唸ってしまった。なるべく簡単に説明したつもりだったんだが、抽象的になり過ぎたか?
「そんなに難しく考えなくても、貴女のできること、できないことを答えるだけでいいのよ」
どう説明すればいいものか。そう考えていたら、イザベルが助け舟を出してくれた。
「そんだけ? りょーかい、りょーかい!」
ジゼルの難しい顔がパッと明るくなり、華やかな笑顔が浮かべられた。
イザベルに助けられたな。同じ孤児院出身だからか、ジゼルの扱いに慣れているようだ。
「皆さん、申し訳ありません。わたくしにお力をお貸しください……」
エレオノールがクロエたちに向かって深く頭を下げた。本人の言葉通り、とても申し訳なく思っていることが伝わってくる。
「そんな気にするなよ、仲間だろ」
「ひゃんっ!」
オレは、エレオノールの曲がった腰をバシバシと叩いて直す。エレオノールはビックリしたのか、無駄に黄色い声を上げていた。そんなに驚かなくても……。なれなれし過ぎたか?
「あたしたちは仲間よ。そんなの水臭いわ」
「そうそう。あーしらの仲じゃん?」
「私たちはまだまだ未熟よ。改善するべき点なんていくらでもあるわ。今日はそれが、たまたまエルだっただけよ。気にしないで」
「える、助け、る……!」
クロエが、ジゼルが、イザベルが、リディが、柔らかい笑顔を浮かべてエレオノールへと手を伸ばした。なにかの少女たち特有の儀式なのだろうか? 一応、オレもエレオノールへと手を伸ばした。
「皆さん……ッ」
エレオノールは感極まったように言葉を詰まらせると、皆から伸ばされた手を優しく両手で束ねて、額を押し当てる。ぷにぷにと柔らかい少女たちの手の中に、オレの武骨な手が混じっているのを気にしている様子は無い。
なんだか、言外にオレまで仲間に認められたようで、嬉しさなのか、温かいものが体を駆け巡るのが分かった。
「わたくしは果報者ですわね。こんなに優しい素敵な仲間たちに囲まれて……これ以上の幸せはありませんわ」
オレの手の甲に、温かい雫が落ちたのを感じた。どうやらエレオノールは涙しているらしい。
もちろん、そのことをわざわざ指摘しないだけの配慮をオレは持っていた。なにも言わずに、ただエレオノールの手を細心の注意を込めて優しく握り返す。
ふと横を見ると、クロエたちもなにも言わずに、ただ、エレオノールの手を握り返したり、エレオノールの頭や背を撫でていた。
オレはこういったことに慣れていないため、このやり取りの中に自分が含まれていることが、なんだか恥ずかしいような気がしていた。今まで男ばかりのパーティメンバーを相手にしてきた弊害だろう。こういった優しいコミュニケーションに恥ずかしさを感じる。
今後は、こういったことにも慣れていかねぇといけないのだろう。
冒険者生活は長いというのに、クロエたちといると、新しい発見ばかりだな。
そんなことを考えながら、オレは、思いがけずできてしまった柔らかい空間に、顔が熱くなるのを感じながら耐えるのだった。
166
あなたにおすすめの小説
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる