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053 魔力の補充を頼む。多めにな
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最近、我は気分が良い。たぶん、模擬戦の戦績が良いからだろう。今日も勝ったしな。イノリスに勝利してから、我は負け知らずだ。以前は、我を侮るような空気があったが、それも払拭されたと言っていい。大嫌いだった模擬戦が、いつしか楽しみになっていた。
「ふっふっふ。我に敵は無い」
今ならいつかのワイバーンやネズミにも勝てそうだ。そのぐらい調子が良い。それもこれも操影の魔法を覚えてからだな。操影の魔法の自由度はかなり高い。攻撃に防御にそれ以外、どんな状況にも対応できる。良い魔法を習得できた。
「なんだかご機嫌ね」
盥を持って扉から現れたアリアにも我の機嫌の良さが分かるようだ。
「まぁな。最近良いことが続くのでな」
食堂の食事にチーズが出るようになったし、イノリスに勝利したことで、イノリスに大人として認められ、クロ坊呼びから解放されたり、他にも色々と良いことがあった。
「そう? 良かったわね」
盥を置いたアリアが服を脱ぎ始める。これから身を清めるのだろう。
「それが終わったら、魔力の補充を頼む。多めにな」
絶好調な我の唯一の弱点を挙げるなら、それは自力では魔力の補給ができない事だろう。魔法を使えば使う分だけ魔力を消費し、眠ってもなにをしても回復することは無い。我が魔力を回復できる唯一の手段が、使い魔とその主の契約を結んでいるアリアに魔力を補充してもらう事だ。故に、以前ならいざ知らず、魔法という力の強大さに魅せられた我はアリアから離れることができなくなってしまった。ふむ、これも弱点と言えるな。我は魔法を使う為に、唯一の魔力回復手段であるアリアを守らなくてはいけなくなったのも弱点だ。
……意外と弱点多いな我。
「また? 最近多いわね。いったい何に魔法を使ってるのよ?」
「まだ内緒だ」
「怪しいわね。悪いことに使っちゃダメよ?」
アリアが訝しんでいるが、悪いことには使っていない……と思う。
「心配無い」
「どうだか」
いまいち信用が無いな。
◇
「ふぅ…」
アリアの水浴びもようやく一段落したらしい。髪の毛を拭いていたタオルを肩に掛け、裸のアリアがこちらに近づいてきた。魔力の補充だろうか? アリアはそのまま我を抱え上げ、盥へと戻って行く。
「待てアリア、貴様何をする気だ?」
「何って、洗うのよ」
「何を?」
「クロを」
クソッ、やはりそうか。我はアリアの腕から脱出しようと足掻く。
「こらっ、暴れないの!」
我はアリアの拘束が緩んだ隙にアリアの腹を蹴り、腕の中から飛び出した。
「痛った! クロ! あなたやったわね!」
腹を蹴られたアリアが怒っているが、知ったことではない。我はアリアから逃げる。
「こら! 待ちなさい!」
狭い部屋の中で我とアリアの追いかけっこが始まった。我は追いかけて来るアリアから逃げる。アリアから逃げるのは難しいことではない。アリアは我に比べれば鈍足で動きが鈍いからな。だが、アリアは執念深く追って来て、さすがに逃げるのも疲れてきた。
「貴様もしつこいな!」
「はぁはぁ、あなたが、逃げる、からでしょ! はぁ、汗かいてきたわ。せっかく拭いたのに……」
いつしか我は部屋の角に追い詰められる。ここから逃れることも可能だが、少し休憩したい。
「はぁ、観念しなさい」
我は自分の影を実体化し、操る。我を包むように部屋の角を影の盾をで覆った。これで我に手を出すことはできまい。
「あなたねー。そこまでする? どれだけお風呂が嫌いなのよ」
「水に濡れるのが嫌なのだ」
アリアが大きく足を広げて影の盾の前に陣取る。両腕も広げて、絶対に逃がさないという強い意志を感じた。
「ちゃんとお湯にしてもらったから冷たくないわよ。早くしないと冷たくなっちゃうかも。そうなったら嫌でしょ? 早く出てきなさい」
直接手は出せないと見たのか、アリアが交渉の真似事を始める。
「もう……。魔力補充してあげないわよ? それからご飯も抜き、ブラッシングもしてあげないんだから」
「それは狡いだろ……」
交渉というよりも、それはもう脅しだ。そこまでするか? どれだけ我を洗いたいのだ……。
「致し方あるまい……」
我は影の盾を解除してアリアに降伏した。イノリスを撃破し、無敵と思われた我が、まさかこんなことで敗北することになろうとは……。
「足取り重いわねー。何がそんなに嫌なのよ?」
「石鹸がな……」
石鹸のモコモコの泡で洗われると、全身の毛がキシキシと軋んでしまうのだ。その感覚が慣れない。
「でも、石鹸で洗わないと綺麗にならないから」
石鹸で洗うのは外せないらしい。はぁ……。
「じゃあ入れるわよー」
アリアが我の身体を持ち上げて盥の中に入れる。足の肉球から温かいお湯の中に浸かり、毛がお湯を含んで重くなっていくのを感じた。アリアがお湯を救い上げ、我に掛けていく。我は水が耳に入らないようにペタンと倒した。
「洗うわよー」
「はぁ……。もう好きにせよ……」
アリアが手で石鹸を泡立て、我をワシャワシャと洗い始める。我にあるのは諦めの境地だ。どうせ逃れられないのだ。ならば無駄な足掻きは体力の無駄である。
アリアにこうして洗われるのは、これで何度目だろうか? 5,6回といったところか。アリアが我を洗うのは、月に一度のことなので、もうかなりの月日をアリアと共に過ごしたことになる。長いようで短い時間だったな。
この半年の間に、たくさんの変化があった。野良猫のボスであった我が、いつの間にか人間の少女の飼い猫だ。
その中でも一番大きな変化は、アリアと出会い、魔法の存在を知ったことだろう。初めは魔法の魔の字も知らず、魔法も使えなかった我が、今ではクラス最強の使い魔だ。
アリアと出会ったことで、美味い飯にもありつけるようになったのも大きい。それまで空腹を満たすために仕方なく食べていた食事が、美味しい飯を食べるようになって、我の楽しみの一つになった。最近はついつい食べ過ぎてしまうこともある。
「ゴシゴシー。あ! やっぱりあなた太ったんじゃない!? お肉が摘まめるし、お腹なんてたぷたぷよ。これはダイエットしないと……」
「必要ない」
「太り過ぎは体に良くないのよ。絶対ダイエットしてもらうから!」
やれやれ、また面倒なことになったな……。ダイエットって何するんだろう? 太ってても良いと思うんだがなぁ。たしかに俊敏性は損なうかもしれないが、その代りに力が強くなる。悪いことばかりではないと思う。
「猫のダイエットって何すればいいのかしら? やっぱりランニング?」
「面倒だな……」
「そんなこと言わないの。私も走るから一緒に頑張りましょ」
「アリアも太ったのか?」
「失礼なこと言わないで。これでも気を付けてるんだから」
我はアリアの身体を見る。たしかにこの半年でほとんど変化が無い。僅かに変化があったのは、胸くらいか。胸が尖ったように小さく膨らんでいた。胸の先端のピンクが、我を洗う為に腕を動かす度にふるふると揺れている。
「よいしょっと」
アリアが我の下半身を洗うために身体を前に倒した。我の目の前に胸のピンクの先端がくる。先端が、まるで我を誘っているかのように、ふるふると揺れだす。なんとなく舐めてみた。
「ひゃうんっ」
アリアの身体がビクンと仰け反った。そのままペタンと床に座り込み、舐められた胸を手で隠す。顔が真っ赤だ。
「え!? 何? 今の? え? クロ? あなた何かした?」
「何のことだ?」
我はアリアの予想外の反応に怖くなり、すっとぼけた。
「違うの? じゃあ何が……」
「そんなことより、お湯が冷めてきた。洗うなら早くしろ」
「あ、うん……」
アリアがおずおずと我を洗うのを再開する。またピンクの先端が揺れだす。動くものを見るとちょっかい出したくなるのは猫の本能だ。だが、我は手を出すのを我慢する。先程のアリアの過剰な反応……いったい何だったのだろう?
「ふっふっふ。我に敵は無い」
今ならいつかのワイバーンやネズミにも勝てそうだ。そのぐらい調子が良い。それもこれも操影の魔法を覚えてからだな。操影の魔法の自由度はかなり高い。攻撃に防御にそれ以外、どんな状況にも対応できる。良い魔法を習得できた。
「なんだかご機嫌ね」
盥を持って扉から現れたアリアにも我の機嫌の良さが分かるようだ。
「まぁな。最近良いことが続くのでな」
食堂の食事にチーズが出るようになったし、イノリスに勝利したことで、イノリスに大人として認められ、クロ坊呼びから解放されたり、他にも色々と良いことがあった。
「そう? 良かったわね」
盥を置いたアリアが服を脱ぎ始める。これから身を清めるのだろう。
「それが終わったら、魔力の補充を頼む。多めにな」
絶好調な我の唯一の弱点を挙げるなら、それは自力では魔力の補給ができない事だろう。魔法を使えば使う分だけ魔力を消費し、眠ってもなにをしても回復することは無い。我が魔力を回復できる唯一の手段が、使い魔とその主の契約を結んでいるアリアに魔力を補充してもらう事だ。故に、以前ならいざ知らず、魔法という力の強大さに魅せられた我はアリアから離れることができなくなってしまった。ふむ、これも弱点と言えるな。我は魔法を使う為に、唯一の魔力回復手段であるアリアを守らなくてはいけなくなったのも弱点だ。
……意外と弱点多いな我。
「また? 最近多いわね。いったい何に魔法を使ってるのよ?」
「まだ内緒だ」
「怪しいわね。悪いことに使っちゃダメよ?」
アリアが訝しんでいるが、悪いことには使っていない……と思う。
「心配無い」
「どうだか」
いまいち信用が無いな。
◇
「ふぅ…」
アリアの水浴びもようやく一段落したらしい。髪の毛を拭いていたタオルを肩に掛け、裸のアリアがこちらに近づいてきた。魔力の補充だろうか? アリアはそのまま我を抱え上げ、盥へと戻って行く。
「待てアリア、貴様何をする気だ?」
「何って、洗うのよ」
「何を?」
「クロを」
クソッ、やはりそうか。我はアリアの腕から脱出しようと足掻く。
「こらっ、暴れないの!」
我はアリアの拘束が緩んだ隙にアリアの腹を蹴り、腕の中から飛び出した。
「痛った! クロ! あなたやったわね!」
腹を蹴られたアリアが怒っているが、知ったことではない。我はアリアから逃げる。
「こら! 待ちなさい!」
狭い部屋の中で我とアリアの追いかけっこが始まった。我は追いかけて来るアリアから逃げる。アリアから逃げるのは難しいことではない。アリアは我に比べれば鈍足で動きが鈍いからな。だが、アリアは執念深く追って来て、さすがに逃げるのも疲れてきた。
「貴様もしつこいな!」
「はぁはぁ、あなたが、逃げる、からでしょ! はぁ、汗かいてきたわ。せっかく拭いたのに……」
いつしか我は部屋の角に追い詰められる。ここから逃れることも可能だが、少し休憩したい。
「はぁ、観念しなさい」
我は自分の影を実体化し、操る。我を包むように部屋の角を影の盾をで覆った。これで我に手を出すことはできまい。
「あなたねー。そこまでする? どれだけお風呂が嫌いなのよ」
「水に濡れるのが嫌なのだ」
アリアが大きく足を広げて影の盾の前に陣取る。両腕も広げて、絶対に逃がさないという強い意志を感じた。
「ちゃんとお湯にしてもらったから冷たくないわよ。早くしないと冷たくなっちゃうかも。そうなったら嫌でしょ? 早く出てきなさい」
直接手は出せないと見たのか、アリアが交渉の真似事を始める。
「もう……。魔力補充してあげないわよ? それからご飯も抜き、ブラッシングもしてあげないんだから」
「それは狡いだろ……」
交渉というよりも、それはもう脅しだ。そこまでするか? どれだけ我を洗いたいのだ……。
「致し方あるまい……」
我は影の盾を解除してアリアに降伏した。イノリスを撃破し、無敵と思われた我が、まさかこんなことで敗北することになろうとは……。
「足取り重いわねー。何がそんなに嫌なのよ?」
「石鹸がな……」
石鹸のモコモコの泡で洗われると、全身の毛がキシキシと軋んでしまうのだ。その感覚が慣れない。
「でも、石鹸で洗わないと綺麗にならないから」
石鹸で洗うのは外せないらしい。はぁ……。
「じゃあ入れるわよー」
アリアが我の身体を持ち上げて盥の中に入れる。足の肉球から温かいお湯の中に浸かり、毛がお湯を含んで重くなっていくのを感じた。アリアがお湯を救い上げ、我に掛けていく。我は水が耳に入らないようにペタンと倒した。
「洗うわよー」
「はぁ……。もう好きにせよ……」
アリアが手で石鹸を泡立て、我をワシャワシャと洗い始める。我にあるのは諦めの境地だ。どうせ逃れられないのだ。ならば無駄な足掻きは体力の無駄である。
アリアにこうして洗われるのは、これで何度目だろうか? 5,6回といったところか。アリアが我を洗うのは、月に一度のことなので、もうかなりの月日をアリアと共に過ごしたことになる。長いようで短い時間だったな。
この半年の間に、たくさんの変化があった。野良猫のボスであった我が、いつの間にか人間の少女の飼い猫だ。
その中でも一番大きな変化は、アリアと出会い、魔法の存在を知ったことだろう。初めは魔法の魔の字も知らず、魔法も使えなかった我が、今ではクラス最強の使い魔だ。
アリアと出会ったことで、美味い飯にもありつけるようになったのも大きい。それまで空腹を満たすために仕方なく食べていた食事が、美味しい飯を食べるようになって、我の楽しみの一つになった。最近はついつい食べ過ぎてしまうこともある。
「ゴシゴシー。あ! やっぱりあなた太ったんじゃない!? お肉が摘まめるし、お腹なんてたぷたぷよ。これはダイエットしないと……」
「必要ない」
「太り過ぎは体に良くないのよ。絶対ダイエットしてもらうから!」
やれやれ、また面倒なことになったな……。ダイエットって何するんだろう? 太ってても良いと思うんだがなぁ。たしかに俊敏性は損なうかもしれないが、その代りに力が強くなる。悪いことばかりではないと思う。
「猫のダイエットって何すればいいのかしら? やっぱりランニング?」
「面倒だな……」
「そんなこと言わないの。私も走るから一緒に頑張りましょ」
「アリアも太ったのか?」
「失礼なこと言わないで。これでも気を付けてるんだから」
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「よいしょっと」
アリアが我の下半身を洗うために身体を前に倒した。我の目の前に胸のピンクの先端がくる。先端が、まるで我を誘っているかのように、ふるふると揺れだす。なんとなく舐めてみた。
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アリアの身体がビクンと仰け反った。そのままペタンと床に座り込み、舐められた胸を手で隠す。顔が真っ赤だ。
「え!? 何? 今の? え? クロ? あなた何かした?」
「何のことだ?」
我はアリアの予想外の反応に怖くなり、すっとぼけた。
「違うの? じゃあ何が……」
「そんなことより、お湯が冷めてきた。洗うなら早くしろ」
「あ、うん……」
アリアがおずおずと我を洗うのを再開する。またピンクの先端が揺れだす。動くものを見るとちょっかい出したくなるのは猫の本能だ。だが、我は手を出すのを我慢する。先程のアリアの過剰な反応……いったい何だったのだろう?
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