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037 レイラとヒルダは病気なのか?
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食事を終えた我らは、宿へと戻ってきていた。ふぅ、少し食べ過ぎたな。身体が重たい。腹がゆっさゆっさする。
「201号室ですから二階ですね」
階段を上り、廊下の端の部屋へと向かう。扉を開けると、それほど広くない部屋だった。学院の寮のアリアの部屋より少し広い程度だろうか。家具も少ない。ベッドが二つと木の箱が二つあるだけだ。ここが今日の寝床か。
「なにもありませんのね。それにベッドが凸凹していますが、こんなところで寝られるのかしら?」
「きっとベッドの下が藁なんですよ。ほら、やっぱり藁だった」
ルサルカがベッドのシーツをめくり、中を確認していた。中を確認しようと皆がルサルカの所に集まる。シーツの下には枯れた草がどっさり入っていた。
「ベッドと言うより木枠のような作りなんですね」
「まぁ安かったし、こんなものよね。ヒルダ様は大丈夫ですか?」
アリアの言葉に、ヒルダが苦笑を浮かべる。
「わたくしは大丈夫ですわ。昨日は地べたで怯えながら寝たのですもの。それに比べれば、安全に眠れるだけで有り難いです」
昨日はオオカミに襲われたからな。今日の寝床は昨日よりも安全らしい。
「そういえば、オオカミはどうしましょう? 確か持ってきていましたよね?」
レイラの質問に、皆の視線がヒルダに集まった。
「明日売ってしまいましょう。でもどこに売ればいいのかしら? ハンターギルドでしょうか?」
四人が悩んでいる。
「それも明日調べてみましょう」
「明日のことは明日考えましょ。それよりも私は早く寝てしまいたいわ。もうクタクタだもの。でもその前に」
「そうですね。身体を拭いて早く寝てしまいましょう。お湯を貰ってくるのを忘れてしまいましたね」
「じゃあ、あたしが貰ってくるよ。イノリスの様子も見たいし」
ルサルカが部屋を出ていく。イノリスは今この部屋にはいない。一緒に来られれば良かったのだが、イノリスは宿の中に入ることができなかった。体が大きすぎたのだ。仕方なくイノリスは宿の横にある馬小屋に預けられている。
馬たちは、イノリスにひどく怯えていたが、食べたりしないので安心してほしい。
「おっまたせー!」
ルサルカが戻ってきて、少女たちが身体を拭くために制服を脱ぎ始める。随分前に、生徒は制服という同じ服を着ることを強要されているとアリアは言っていたが、下着まで同じものを着るように強要されているわけではないらしい。アリアはいつもの白い下着、ルサルカも似たような白い下着だったが、レイラはピンク、ヒルダは黒色の下着だった。形も随分と違う。
「レイラの下着、フリフリでかわいいね」
「もう、ルサルカ。からかわないで」
「ヒルダ様のは……なんだか過激ですね」
「そうかしら? このくらい別に普通でしてよ」
少女たちが下着も脱ぎ始め、徐々に裸体が露わになる。並べて見ると同じ種族、性別、年齢なのにけっこう違いがあるな。アリアはいつも通り、細く、平べったい印象だ。ルサルカも似たようなものだ。だが、レイラとヒルダは少し違う。細いがむっちりとした肉感だ。身体も凹凸がある印象を受ける。
「なんだか気恥ずかしいですね」
「いいじゃない。女同士なんだし。そりゃ、ちょっとは恥ずかしいけど」
四人が、なぜだか照れながら体を布で拭いていく。おそらく、己のハゲを他人に晒すのが恥ずかしいのだろう。
「レイラとヒルダ様はもう生えているのね……」
「アリア、あまりじろじろ見ないでください。恥ずかしいです」
「ご、ごめん」
四人の裸体を見比べていた我は、あることに気が付いた。レイラとヒルダの胸が少し尖って膨らんでいる。なんだあれは? 我は昨日見たレイラの裸体を思い出した。やはり我の見間違いではなかったか……。
「アリア、言いづらいことを訊くが……」
「ん? なにクロ?」
「ヒルダとレイラは病気なのか? 胸が膨らんでいるが……」
「あなたどこ見てるのよ……」
こちらが真剣に心配しているというのに、アリアは目を細め、睨んでいるような、呆れたような表情になった。なんだか蔑まれている気分だ。心外だな。
「あのね、女の子は胸が膨らむものなの。病気じゃないわよ」
「アリアは膨らんでいないが?」
「うっさいわね。はったおすわよ」
アリアが怒ってしまった。事実を指摘しただけなのだが……解せんな。
「アリア、どうかしたのですか?」
「クロがちょっとね。あぁそうだ。クロがレイラのおっぱい気にしてたわよ」
「えっ!? 何故でしょう? ……母親が恋しいとか?」
なぜ、母親が出てくるのだろう? 母親か……今どうしているんだろう? 元気にしていると良いが。
「違う違う。おっぱいが大きくなってるのが、病気だと思ったみたい」
「あぁ、そういう……。これは病気じゃありませんよ。安心してください」
レイラが胸を触りながらこちらに笑いかける。ふむ、無理をしているようには見えないな。アリアも病気じゃないと言っていたし、おそらく本当に病気ではないのだろう。しかし、胸が膨らむって邪魔じゃないか? なぜ、人間の女の胸は膨らむのだろう?
アリア達が再び下着を身に着け、服を着始める。四人とも制服の時よりもゆったりとした服を着ていた。
「レイラの夜着、フリフリしててかわいい」
「ありがとう。お母様の趣味なの。私はもっとシンプルなのが好みなのだけどね……」
「レイラさんによく似合っていると思いますよ」
「かわいいから良いじゃない。私なんてコレよ? ボロボロで恥ずかしいわ」
アリアが自分の夜着を見せながら嘆いている。確かにレイラの物と比べると随分と貧相に見える。よく見ると解れていたり、穴が開いたのを内側から布を当てて補修した跡もあった。
「あたしも似たようなものだよ。もしかして、元は普段着だったりする?」
「えぇ。ひょっとしてルサルカも?」
「うん。王都じゃ恥ずかしくて着れないから夜着にしちゃった」
アリアとルサルカが二人で分かりあっている。ルサルカの夜着もアリアと似たり寄ったりだ。なにか通じ合うものがあるのだろう。
「この前、王都で野外学習の買い物したでしょ? その時、古着屋見つけたんだよねー。よかったら覗いてみない?」
「本当!? 行く行く! 王都に戻ったら一緒に行きましょ!」
アリアとルサルカが手を取り合いクルクルと回り、はしゃいでいる。
「その古着屋、わたくしも一緒に行ってもいいかしら?」
「えっ!? ヒルダ様も!?」
ヒルダの申し出がよほど意外だったのか、アリアとルサルカの動きが止まってしまった。そしてヒルダの顔を驚愕の表情で見つめている。
「そんなに驚かなくても……。わたくしだって安い服に興味がありますわ」
「すみません、なんか意外で……。それじゃあヒルダ様も行きましょう」
「レイラはどうする?」
古着屋に行くことを決めた三人の視線がレイラに集まった。
「私も行きます。私だけ仲間外れなんて寂しいですもの」
「それじゃあ決まりね。王都に帰ったら、また細かいことを決めましょう」
それからも四人はおしゃべりを続けた。ベットに入り、明かりを消しても四人のおしゃべりは終わらない。早く寝るという話はどこに行ってしまったのやら。だが、やがて話のテンポが遅くなっていき、ぽつりぽつりと呟くようなおしゃべりに変わり、ついには静かになる。静かになると四人の寝息が聞こえてきた。普段に比べて、ベッドに入ってから寝るまで早かったな。それだけ疲れていたのだろう。
今日は四人同時に眠り、警戒のために誰かが起きている、ということはないらしい。初めての場所だというのに、なぜ警戒を疎かにするのだろう? 我には考えられない。大胆不敵と褒めればいいのか、警戒心がないと嘆くべきなのか……。仕方ない、今日は我が代わりに警戒しておいてやろう。
「201号室ですから二階ですね」
階段を上り、廊下の端の部屋へと向かう。扉を開けると、それほど広くない部屋だった。学院の寮のアリアの部屋より少し広い程度だろうか。家具も少ない。ベッドが二つと木の箱が二つあるだけだ。ここが今日の寝床か。
「なにもありませんのね。それにベッドが凸凹していますが、こんなところで寝られるのかしら?」
「きっとベッドの下が藁なんですよ。ほら、やっぱり藁だった」
ルサルカがベッドのシーツをめくり、中を確認していた。中を確認しようと皆がルサルカの所に集まる。シーツの下には枯れた草がどっさり入っていた。
「ベッドと言うより木枠のような作りなんですね」
「まぁ安かったし、こんなものよね。ヒルダ様は大丈夫ですか?」
アリアの言葉に、ヒルダが苦笑を浮かべる。
「わたくしは大丈夫ですわ。昨日は地べたで怯えながら寝たのですもの。それに比べれば、安全に眠れるだけで有り難いです」
昨日はオオカミに襲われたからな。今日の寝床は昨日よりも安全らしい。
「そういえば、オオカミはどうしましょう? 確か持ってきていましたよね?」
レイラの質問に、皆の視線がヒルダに集まった。
「明日売ってしまいましょう。でもどこに売ればいいのかしら? ハンターギルドでしょうか?」
四人が悩んでいる。
「それも明日調べてみましょう」
「明日のことは明日考えましょ。それよりも私は早く寝てしまいたいわ。もうクタクタだもの。でもその前に」
「そうですね。身体を拭いて早く寝てしまいましょう。お湯を貰ってくるのを忘れてしまいましたね」
「じゃあ、あたしが貰ってくるよ。イノリスの様子も見たいし」
ルサルカが部屋を出ていく。イノリスは今この部屋にはいない。一緒に来られれば良かったのだが、イノリスは宿の中に入ることができなかった。体が大きすぎたのだ。仕方なくイノリスは宿の横にある馬小屋に預けられている。
馬たちは、イノリスにひどく怯えていたが、食べたりしないので安心してほしい。
「おっまたせー!」
ルサルカが戻ってきて、少女たちが身体を拭くために制服を脱ぎ始める。随分前に、生徒は制服という同じ服を着ることを強要されているとアリアは言っていたが、下着まで同じものを着るように強要されているわけではないらしい。アリアはいつもの白い下着、ルサルカも似たような白い下着だったが、レイラはピンク、ヒルダは黒色の下着だった。形も随分と違う。
「レイラの下着、フリフリでかわいいね」
「もう、ルサルカ。からかわないで」
「ヒルダ様のは……なんだか過激ですね」
「そうかしら? このくらい別に普通でしてよ」
少女たちが下着も脱ぎ始め、徐々に裸体が露わになる。並べて見ると同じ種族、性別、年齢なのにけっこう違いがあるな。アリアはいつも通り、細く、平べったい印象だ。ルサルカも似たようなものだ。だが、レイラとヒルダは少し違う。細いがむっちりとした肉感だ。身体も凹凸がある印象を受ける。
「なんだか気恥ずかしいですね」
「いいじゃない。女同士なんだし。そりゃ、ちょっとは恥ずかしいけど」
四人が、なぜだか照れながら体を布で拭いていく。おそらく、己のハゲを他人に晒すのが恥ずかしいのだろう。
「レイラとヒルダ様はもう生えているのね……」
「アリア、あまりじろじろ見ないでください。恥ずかしいです」
「ご、ごめん」
四人の裸体を見比べていた我は、あることに気が付いた。レイラとヒルダの胸が少し尖って膨らんでいる。なんだあれは? 我は昨日見たレイラの裸体を思い出した。やはり我の見間違いではなかったか……。
「アリア、言いづらいことを訊くが……」
「ん? なにクロ?」
「ヒルダとレイラは病気なのか? 胸が膨らんでいるが……」
「あなたどこ見てるのよ……」
こちらが真剣に心配しているというのに、アリアは目を細め、睨んでいるような、呆れたような表情になった。なんだか蔑まれている気分だ。心外だな。
「あのね、女の子は胸が膨らむものなの。病気じゃないわよ」
「アリアは膨らんでいないが?」
「うっさいわね。はったおすわよ」
アリアが怒ってしまった。事実を指摘しただけなのだが……解せんな。
「アリア、どうかしたのですか?」
「クロがちょっとね。あぁそうだ。クロがレイラのおっぱい気にしてたわよ」
「えっ!? 何故でしょう? ……母親が恋しいとか?」
なぜ、母親が出てくるのだろう? 母親か……今どうしているんだろう? 元気にしていると良いが。
「違う違う。おっぱいが大きくなってるのが、病気だと思ったみたい」
「あぁ、そういう……。これは病気じゃありませんよ。安心してください」
レイラが胸を触りながらこちらに笑いかける。ふむ、無理をしているようには見えないな。アリアも病気じゃないと言っていたし、おそらく本当に病気ではないのだろう。しかし、胸が膨らむって邪魔じゃないか? なぜ、人間の女の胸は膨らむのだろう?
アリア達が再び下着を身に着け、服を着始める。四人とも制服の時よりもゆったりとした服を着ていた。
「レイラの夜着、フリフリしててかわいい」
「ありがとう。お母様の趣味なの。私はもっとシンプルなのが好みなのだけどね……」
「レイラさんによく似合っていると思いますよ」
「かわいいから良いじゃない。私なんてコレよ? ボロボロで恥ずかしいわ」
アリアが自分の夜着を見せながら嘆いている。確かにレイラの物と比べると随分と貧相に見える。よく見ると解れていたり、穴が開いたのを内側から布を当てて補修した跡もあった。
「あたしも似たようなものだよ。もしかして、元は普段着だったりする?」
「えぇ。ひょっとしてルサルカも?」
「うん。王都じゃ恥ずかしくて着れないから夜着にしちゃった」
アリアとルサルカが二人で分かりあっている。ルサルカの夜着もアリアと似たり寄ったりだ。なにか通じ合うものがあるのだろう。
「この前、王都で野外学習の買い物したでしょ? その時、古着屋見つけたんだよねー。よかったら覗いてみない?」
「本当!? 行く行く! 王都に戻ったら一緒に行きましょ!」
アリアとルサルカが手を取り合いクルクルと回り、はしゃいでいる。
「その古着屋、わたくしも一緒に行ってもいいかしら?」
「えっ!? ヒルダ様も!?」
ヒルダの申し出がよほど意外だったのか、アリアとルサルカの動きが止まってしまった。そしてヒルダの顔を驚愕の表情で見つめている。
「そんなに驚かなくても……。わたくしだって安い服に興味がありますわ」
「すみません、なんか意外で……。それじゃあヒルダ様も行きましょう」
「レイラはどうする?」
古着屋に行くことを決めた三人の視線がレイラに集まった。
「私も行きます。私だけ仲間外れなんて寂しいですもの」
「それじゃあ決まりね。王都に帰ったら、また細かいことを決めましょう」
それからも四人はおしゃべりを続けた。ベットに入り、明かりを消しても四人のおしゃべりは終わらない。早く寝るという話はどこに行ってしまったのやら。だが、やがて話のテンポが遅くなっていき、ぽつりぽつりと呟くようなおしゃべりに変わり、ついには静かになる。静かになると四人の寝息が聞こえてきた。普段に比べて、ベッドに入ってから寝るまで早かったな。それだけ疲れていたのだろう。
今日は四人同時に眠り、警戒のために誰かが起きている、ということはないらしい。初めての場所だというのに、なぜ警戒を疎かにするのだろう? 我には考えられない。大胆不敵と褒めればいいのか、警戒心がないと嘆くべきなのか……。仕方ない、今日は我が代わりに警戒しておいてやろう。
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