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010 それから
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それから先の展開は早かった。リディアのパーティメンバーの女たちの口車に乗せられて、あれよあれよという間にリディアの部屋に連れ込まれてしまった。
「後はお若いお二人で……」
「あたしたちは今日外で寝るから」
そう言って、どこかに行ってしまう女たち。残されたのは、オレとリディアの二人っきりだ。
「………」
「………」
沈黙が痛てぇ……。こんな時、何を話せばいいんだ?
リディアは先程から顔を俯かせて黙り込んだままだ。ここはオレが突破口を開くのが正解か?
「なあ、ほんとに良かったのか?オレなんかとその……」
リディアがオレのことを好きという事実がまだ信じられなくて、確認のために尋ねてしまう。
自慢にもならないが、オレは体がでかくて力があるだけの男だ。顔が特別良いわけじゃねぇし、女の扱いも分からない。対してリディアは、誰もが認める美少女だ。オレにはなぜか突っかかってくるが、他の奴には優しいし、皆に慕われているアイドルみたいな冒険者。リディアなら、オレより良い男なんて選びたい放題だろう。
リディアがオレの言葉に顔を上げる。その顔は、薄っすらと上気し、真剣な表情を浮かべている。
「貴方がいいんです。貴方だからいいんです。わたくしが愛しているのは貴方だけなんです!」
リディアの情熱的な告白にこっちが照れてしまう。顔が熱い。リディアの奴も自分で言ってて恥ずかしくなったのか、その顔を真っ赤にして俯いてしまう。耳まで真っ赤だ。
だが、リディアは本気でオレのことが好きらしい。そう確信が持てた。オレはリディアへと一歩近づく。
リディアが顔を上げ、オレの顔を見上げる。リディアの顔は可愛そうになるくらい真っ赤だ。いつも強気な光を宿している碧の瞳は潤み、本当にあの生意気なリディアかと疑いたくなるほどしおらしい態度だ。
オレは勇気を出してリディアを抱きしめようとする。いつもダンジョンのモンスター相手に一番に突っ込み、勇敢だと自負しているこのオレが、ここまで勇気を必要としたのは初めてのことかもしれない。心臓が破れるんじゃないかと心配になるくらいドクドクと早く鳴り響き、胸の奥がキューッと締め付けられるような心地がした。今のオレはとんでもなく緊張している。
「あっ……」
リディアの体は、小さくほっそりとしていた。力を籠めればすぐに壊れてしまいそうなくらい華奢な身体。そのくせひどく柔らかい。オレは慎重にリディアの背に腕を回して、彼女を抱き寄せた。
「オレも…その、なんだ……リディアを愛している」
妙に照れくさくて、言葉に詰まりながらも、オレはリディアに自分の気持ちを告白した。
「嬉しい……」
リディアが呟き、オレの背に腕を回して抱きしめてくる。二人で抱き合ったまま、至近距離から見つめ合う。香水でもつけているのか、リディアの甘い香りが胸いっぱいに広がった。
リディアがオレを見上げていた瞳を閉じる。それが何を意味しているのか、オレにはすぐ分かった。
オレはリディアの唇を奪った。
◇
唇以外にもリディアの初めてをいろいろと奪った後。オレとリディアはベッドの上で向き合って横になっていた。リディアがオレの腕を枕に、とろんとした瞳でオレを見つめている。正直、腕が痺れて辛いが、ここは我慢一択だ。リディアに情けないところは見せたくない。
行為が終わった後、オレ達はいろいろなことを話したが、オレはずっと気になっていたことをリディアに訊いてみることにした。
「そういや、リディアはなんでオレにあんな突っかかってきたんだ?」
リディアは事あるごとにオレに突っかかってきた。リディアはオレのことが好きなのに、なんであんなにケンカ腰だったんだろう?普通好きな奴には優しくしないか?
「それは……貴方にわたくしを見てもらいたくて……」
リディアが恥ずかしそうに話し出す。
最初はリディアもオレに優しく接してくれていたみたいだ。オレのことを褒めたりしてくれたみたいだが……。
「でも、ある時気付いたんです。わたくしは、貴方の目に留まっていないと……」
自慢じゃないが、オレのことを褒める奴はいっぱい居る。リディアは、オレにその他大勢の中の一人としてしか認識されていない自分に気が付いたと言う。そこでリディアはなんとかオレの目に留まろうと、自分を認識してもらおうと、オレに挑発的な態度をとるようになった。オレのことを褒める奴はいっぱい居るが、オレにケンカを売るやつは滅多に居ない。リディアはオレに認知してもらおうと、あえて反抗的な態度をとっていたらしい。そのなんともいじらしい理由に、リディアへの愛おしさが込み上げてくる。
たしかに、オレがリディアを認識したのは、リディアがオレに突っかかってくるようになってからだ。リディアには申し訳ないが、それまでのリディアはあまり印象にない。
「はしたないマネをしてしまいました。貴方には不快な思いもさせたと思います。申し訳ありません」
「いや、いいんだ。そのおかげでオレはリディアを知ることができた」
他にもリディアはオレに認知してもらおうと、いろいろしていたらしい。例えば装備だ。リディアといえば、黒と赤の派手な装備でおなじみだが、それはオレが白地に青の差し色が入った装備をしているからだ。オレの装備の色と対になるように黒と赤の装備をしていたらしい。そして、リディアが胸元を大きく開けていたのは、オレに異性だと意識してもらいたかったからだと言う。
「少し恥ずかしかったですけど……」
恥ずかしい思いまでしてオレの気を引こうとしていたのか。
「これからはしまっていいんだぞ?」
「お気に召しませんでしたか?」
気に入っているかいないかで言えば、リディアの胸元が見える服装はとても魅力的だ。だが……。
「他の奴に見せたくない」
リディアの艶姿は、オレだけが知っていればいい。他の奴に見せたくない。これはオレのわがままと言うか、独占欲だ。独占欲の強い男は嫌われると言うが、こればかりは譲れない。
「まぁ、ふふふ」
リディアは、オレを嫌がるどころか嬉しそうに笑ってみせた。
「では、キスしてくれたら止めますわ」
そういって目を閉じるリディア。そんなオレにばかり有利な交換条件でいいんだろうか?キスしたいのはオレも同じだ。交換条件なんて無くても、いつでもしてやるのに。
「んっ……」
オレはリディアと口付けを交わした。
◇◆◇
これにて、この物語は一旦幕とさせていただきたいと思います。
これまで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
続きは……書きたい気持ちはあります。まだ回収していない物がたくさんありますし。しかし、なかなか時間の方が……。
どうか、気をながーくして待っていただけると助かります。
「後はお若いお二人で……」
「あたしたちは今日外で寝るから」
そう言って、どこかに行ってしまう女たち。残されたのは、オレとリディアの二人っきりだ。
「………」
「………」
沈黙が痛てぇ……。こんな時、何を話せばいいんだ?
リディアは先程から顔を俯かせて黙り込んだままだ。ここはオレが突破口を開くのが正解か?
「なあ、ほんとに良かったのか?オレなんかとその……」
リディアがオレのことを好きという事実がまだ信じられなくて、確認のために尋ねてしまう。
自慢にもならないが、オレは体がでかくて力があるだけの男だ。顔が特別良いわけじゃねぇし、女の扱いも分からない。対してリディアは、誰もが認める美少女だ。オレにはなぜか突っかかってくるが、他の奴には優しいし、皆に慕われているアイドルみたいな冒険者。リディアなら、オレより良い男なんて選びたい放題だろう。
リディアがオレの言葉に顔を上げる。その顔は、薄っすらと上気し、真剣な表情を浮かべている。
「貴方がいいんです。貴方だからいいんです。わたくしが愛しているのは貴方だけなんです!」
リディアの情熱的な告白にこっちが照れてしまう。顔が熱い。リディアの奴も自分で言ってて恥ずかしくなったのか、その顔を真っ赤にして俯いてしまう。耳まで真っ赤だ。
だが、リディアは本気でオレのことが好きらしい。そう確信が持てた。オレはリディアへと一歩近づく。
リディアが顔を上げ、オレの顔を見上げる。リディアの顔は可愛そうになるくらい真っ赤だ。いつも強気な光を宿している碧の瞳は潤み、本当にあの生意気なリディアかと疑いたくなるほどしおらしい態度だ。
オレは勇気を出してリディアを抱きしめようとする。いつもダンジョンのモンスター相手に一番に突っ込み、勇敢だと自負しているこのオレが、ここまで勇気を必要としたのは初めてのことかもしれない。心臓が破れるんじゃないかと心配になるくらいドクドクと早く鳴り響き、胸の奥がキューッと締め付けられるような心地がした。今のオレはとんでもなく緊張している。
「あっ……」
リディアの体は、小さくほっそりとしていた。力を籠めればすぐに壊れてしまいそうなくらい華奢な身体。そのくせひどく柔らかい。オレは慎重にリディアの背に腕を回して、彼女を抱き寄せた。
「オレも…その、なんだ……リディアを愛している」
妙に照れくさくて、言葉に詰まりながらも、オレはリディアに自分の気持ちを告白した。
「嬉しい……」
リディアが呟き、オレの背に腕を回して抱きしめてくる。二人で抱き合ったまま、至近距離から見つめ合う。香水でもつけているのか、リディアの甘い香りが胸いっぱいに広がった。
リディアがオレを見上げていた瞳を閉じる。それが何を意味しているのか、オレにはすぐ分かった。
オレはリディアの唇を奪った。
◇
唇以外にもリディアの初めてをいろいろと奪った後。オレとリディアはベッドの上で向き合って横になっていた。リディアがオレの腕を枕に、とろんとした瞳でオレを見つめている。正直、腕が痺れて辛いが、ここは我慢一択だ。リディアに情けないところは見せたくない。
行為が終わった後、オレ達はいろいろなことを話したが、オレはずっと気になっていたことをリディアに訊いてみることにした。
「そういや、リディアはなんでオレにあんな突っかかってきたんだ?」
リディアは事あるごとにオレに突っかかってきた。リディアはオレのことが好きなのに、なんであんなにケンカ腰だったんだろう?普通好きな奴には優しくしないか?
「それは……貴方にわたくしを見てもらいたくて……」
リディアが恥ずかしそうに話し出す。
最初はリディアもオレに優しく接してくれていたみたいだ。オレのことを褒めたりしてくれたみたいだが……。
「でも、ある時気付いたんです。わたくしは、貴方の目に留まっていないと……」
自慢じゃないが、オレのことを褒める奴はいっぱい居る。リディアは、オレにその他大勢の中の一人としてしか認識されていない自分に気が付いたと言う。そこでリディアはなんとかオレの目に留まろうと、自分を認識してもらおうと、オレに挑発的な態度をとるようになった。オレのことを褒める奴はいっぱい居るが、オレにケンカを売るやつは滅多に居ない。リディアはオレに認知してもらおうと、あえて反抗的な態度をとっていたらしい。そのなんともいじらしい理由に、リディアへの愛おしさが込み上げてくる。
たしかに、オレがリディアを認識したのは、リディアがオレに突っかかってくるようになってからだ。リディアには申し訳ないが、それまでのリディアはあまり印象にない。
「はしたないマネをしてしまいました。貴方には不快な思いもさせたと思います。申し訳ありません」
「いや、いいんだ。そのおかげでオレはリディアを知ることができた」
他にもリディアはオレに認知してもらおうと、いろいろしていたらしい。例えば装備だ。リディアといえば、黒と赤の派手な装備でおなじみだが、それはオレが白地に青の差し色が入った装備をしているからだ。オレの装備の色と対になるように黒と赤の装備をしていたらしい。そして、リディアが胸元を大きく開けていたのは、オレに異性だと意識してもらいたかったからだと言う。
「少し恥ずかしかったですけど……」
恥ずかしい思いまでしてオレの気を引こうとしていたのか。
「これからはしまっていいんだぞ?」
「お気に召しませんでしたか?」
気に入っているかいないかで言えば、リディアの胸元が見える服装はとても魅力的だ。だが……。
「他の奴に見せたくない」
リディアの艶姿は、オレだけが知っていればいい。他の奴に見せたくない。これはオレのわがままと言うか、独占欲だ。独占欲の強い男は嫌われると言うが、こればかりは譲れない。
「まぁ、ふふふ」
リディアは、オレを嫌がるどころか嬉しそうに笑ってみせた。
「では、キスしてくれたら止めますわ」
そういって目を閉じるリディア。そんなオレにばかり有利な交換条件でいいんだろうか?キスしたいのはオレも同じだ。交換条件なんて無くても、いつでもしてやるのに。
「んっ……」
オレはリディアと口付けを交わした。
◇◆◇
これにて、この物語は一旦幕とさせていただきたいと思います。
これまで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
続きは……書きたい気持ちはあります。まだ回収していない物がたくさんありますし。しかし、なかなか時間の方が……。
どうか、気をながーくして待っていただけると助かります。
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