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006 百華繚乱(仮)②
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その後、「早く行こう」と騒ぐルイーゼを止めて、イケメン君、ラインハルトと細かいところを話し合い、正式に今回の冒険に参加することを決めた。報酬が6等分で貰えるのが決め手になった。悲しいけど、ポーターの報酬は安くされることが多い。相場はパーティの頭数で割ってそこから更に半分に割った程度だという。つまり、他の人の半分だね。まぁ半分も貰えれば良い方だって言う人も居るくらいだよ。それぐらいポーターの、特にポーターもどきへの扱いは酷い。まぁポーターもどきが一方的に被害者なのかというと、またちょっと違ってくるんだけどね。
「お待たせ!」
「もう! おっそーい!」
「ごめん、ごめん」
腕を組んでご機嫌斜めなルイーゼに謝りつつ、僕は『百華繚乱(仮)』の面々と王都の城門で合流する。僕だけちょっと別行動で買い物に行かせてもらった。今日、ダンジョンに行くつもりは無かったので、いろいろとアイテムに不足があったのだ。
「もう不足はありませんか?」
「バッチリだよ」
ラインハルトに頷いて返す。
「じゃあ、今度こそ行くわよー!」
何がそんなに楽しいのか、ルイーゼが満面の笑みで号令を出した。
「「「「「おー!」」」」」
「ぉおー!」
僕は遅れて突き上げた手を下ろしながら思う。気合が入ってると言うか……わりと熱血なパーティなのかな? 女の子が多いから、もうちょっと華やかな優雅な感じを想像してたよ。
◇
王都を出た僕たちは、一路西へと歩いて向かう。レベル1ダンジョン『ゴブリンの巣窟』は、王都のすぐ近くにあるのだ。その利便性の高さから、わりと人気なダンジョンの1つで、たぶん冒険者なら一度は行ったことのあるダンジョンになると思う。
僕も昔、アンナと2人で行ったことがある。まだアレクサンダーたちがパーティに入る前だったなぁ。あの頃の僕は、ポーターもどきではなく、剣を片手にゴブリンとやり合っていたっけ。まぁほとんどアンナが倒しちゃって僕の出番なんて無かったけどね。でも、この頃はまだ英雄はムリでも一人前の冒険者にはなれると信じていた気がする。アンナとの関係も良かった。アンナが僕に惚れているのではないかと己惚れていたほどだ。あと一歩踏み出す勇気が出なかったから真相は闇の中だけど……。あれから2年しか経っていないのか……。どうして、こんなことになっちゃったんだろうね……。
「クルトさんは『ゴブリンの巣窟』へ行ったことがありますか?」
独りで沈んでいると、隣を歩くラインハルトが尋ねてくる。柔和な笑みが眩しいね。イケメンが羨ましいよ。
「クルトでいいよ」
“さん”を付けて呼ばれるほど大した人間じゃない。
「一応、何度か行ったことはあるよ」
「どんな場所か伺っても?」
ラインハルトが身を乗り出すように訊いてくる。事前に情報は集めているだろうけど、これから行くダンジョンだからね。気になるらしい。
「私も気になるわね」
「その…私も…」
僕たちの前を歩いていたイザベルとリリーが僕へと振り返る。イザベルは、黒く長い髪に黒い瞳、着ている服も黒い夜会服のような胸元が大きく開いたドレスだ。全体的に黒いからか、白い豊かな胸元と細面の美しい顔がより際立って見える。
イザベルと共に振り返ったもう1人は、リリー。白に青のラインが入った修道服に身を包み、長い髪も肌も真っ白な小柄な白い美少女だ。その瞳は深い青色で、白地に青の修道服は、まるで彼女のために誂えたかのように似合っている。
「なになに? 何の話? あーしも入れてよー」
イザベルとリリーの更に前を歩いていたマルギットが振り返る。マルギットは、どこか人懐っこい猫を思わせる美少女だ。肩に掛かるくらいの長さの茶髪に、大きな碧の瞳をしている。その恰好は、かなり過激だ。体のラインがくっきり出るようなピッチリとした格好をしている。盗賊である彼女にとって身軽さとは大事なのだろうけど……素朴な疑問なのだけど、恥ずかしくないのかな?
「あたしだけ除け者にしないでよ!」
そう言ってマルギットの隣を歩いていたルイーゼが振り返る。この美少女4人に、絵本の王子様みたいな金髪に緑の瞳のイケメン、ラインハルトが『百華繚乱(仮)』のメンバーたちだ。美少女4人を独り占めとか、ラインハルトが羨ましい。
「クルトさんに『ゴブリンの巣窟』の情報を尋ねようかと。我々も情報を集めましたが、やはり実際に行った方の情報は聞きたいで……」
「それ! あたしも聞きたいわ!」
ラインハルトの言葉に、ルイーゼが喰い気味に答え、皆の視線が僕に集まる。注目を浴びて少し照れるものがあった。
「僕もそこまで詳しいわけじゃないけど……」
そう前置きして僕は『ゴブリンの巣窟』の情報を話し始める。とは言っても、僕の知ってる情報は本当に少ない。オーソドックスな洞窟型ダンジョンであること、罠の類は無いこと、ゴブリンが大量に居ること……。
「罠無いんだ……」
なぜか残念そうに言うマルギット。
「ゴブリンの強さはどの程度ですか?」
「そんなに強くないよ。クズギフトの僕でも楽に倒せるくらい」
「神様から賜ったギフトをクズと言うのは……」
リリーが悲しそうな表情で僕を見る。なんだか怒られるよりもいたたまれないものを感じるな。これなら怒鳴られた方がマシだよ。
「ごめん、口が過ぎたよ」
僕はリリーに頭を下げて謝って話を続ける。
「ゴブリンだけど、弱いけど数が多いんだ。そこだけは注意だね。っと、見えてきたよ」
僕たちの行く手を阻むように現れたのは、森と云うには小さな林だ。あの林も『ゴブリンの巣窟』のダンジョンの一部らしい。ダンジョンは基本的に壊すことができない。仮に壊すことができても、時間と共に修復されてしまう。あの林もそうだ。伐採しても時間と共に修復される。こんなことを言うと、無限に木材が手に入ると思われがちだが、ダンジョンの一部は、ダンジョンから持ち出すと、時間と共に消滅する。苦労して林を伐採しても、手に入れた木材は消滅してしまうのだ。
「あの林の中に洞窟があって、メインはその洞窟の中かな。本当にゴブリンがうじゃうじゃ居るんだ」
「んふー! 楽しみね!」
大量のゴブリンと聞いても、なぜかルイーゼはわくわくしているようだ。戦闘狂なのかな?
「お待たせ!」
「もう! おっそーい!」
「ごめん、ごめん」
腕を組んでご機嫌斜めなルイーゼに謝りつつ、僕は『百華繚乱(仮)』の面々と王都の城門で合流する。僕だけちょっと別行動で買い物に行かせてもらった。今日、ダンジョンに行くつもりは無かったので、いろいろとアイテムに不足があったのだ。
「もう不足はありませんか?」
「バッチリだよ」
ラインハルトに頷いて返す。
「じゃあ、今度こそ行くわよー!」
何がそんなに楽しいのか、ルイーゼが満面の笑みで号令を出した。
「「「「「おー!」」」」」
「ぉおー!」
僕は遅れて突き上げた手を下ろしながら思う。気合が入ってると言うか……わりと熱血なパーティなのかな? 女の子が多いから、もうちょっと華やかな優雅な感じを想像してたよ。
◇
王都を出た僕たちは、一路西へと歩いて向かう。レベル1ダンジョン『ゴブリンの巣窟』は、王都のすぐ近くにあるのだ。その利便性の高さから、わりと人気なダンジョンの1つで、たぶん冒険者なら一度は行ったことのあるダンジョンになると思う。
僕も昔、アンナと2人で行ったことがある。まだアレクサンダーたちがパーティに入る前だったなぁ。あの頃の僕は、ポーターもどきではなく、剣を片手にゴブリンとやり合っていたっけ。まぁほとんどアンナが倒しちゃって僕の出番なんて無かったけどね。でも、この頃はまだ英雄はムリでも一人前の冒険者にはなれると信じていた気がする。アンナとの関係も良かった。アンナが僕に惚れているのではないかと己惚れていたほどだ。あと一歩踏み出す勇気が出なかったから真相は闇の中だけど……。あれから2年しか経っていないのか……。どうして、こんなことになっちゃったんだろうね……。
「クルトさんは『ゴブリンの巣窟』へ行ったことがありますか?」
独りで沈んでいると、隣を歩くラインハルトが尋ねてくる。柔和な笑みが眩しいね。イケメンが羨ましいよ。
「クルトでいいよ」
“さん”を付けて呼ばれるほど大した人間じゃない。
「一応、何度か行ったことはあるよ」
「どんな場所か伺っても?」
ラインハルトが身を乗り出すように訊いてくる。事前に情報は集めているだろうけど、これから行くダンジョンだからね。気になるらしい。
「私も気になるわね」
「その…私も…」
僕たちの前を歩いていたイザベルとリリーが僕へと振り返る。イザベルは、黒く長い髪に黒い瞳、着ている服も黒い夜会服のような胸元が大きく開いたドレスだ。全体的に黒いからか、白い豊かな胸元と細面の美しい顔がより際立って見える。
イザベルと共に振り返ったもう1人は、リリー。白に青のラインが入った修道服に身を包み、長い髪も肌も真っ白な小柄な白い美少女だ。その瞳は深い青色で、白地に青の修道服は、まるで彼女のために誂えたかのように似合っている。
「なになに? 何の話? あーしも入れてよー」
イザベルとリリーの更に前を歩いていたマルギットが振り返る。マルギットは、どこか人懐っこい猫を思わせる美少女だ。肩に掛かるくらいの長さの茶髪に、大きな碧の瞳をしている。その恰好は、かなり過激だ。体のラインがくっきり出るようなピッチリとした格好をしている。盗賊である彼女にとって身軽さとは大事なのだろうけど……素朴な疑問なのだけど、恥ずかしくないのかな?
「あたしだけ除け者にしないでよ!」
そう言ってマルギットの隣を歩いていたルイーゼが振り返る。この美少女4人に、絵本の王子様みたいな金髪に緑の瞳のイケメン、ラインハルトが『百華繚乱(仮)』のメンバーたちだ。美少女4人を独り占めとか、ラインハルトが羨ましい。
「クルトさんに『ゴブリンの巣窟』の情報を尋ねようかと。我々も情報を集めましたが、やはり実際に行った方の情報は聞きたいで……」
「それ! あたしも聞きたいわ!」
ラインハルトの言葉に、ルイーゼが喰い気味に答え、皆の視線が僕に集まる。注目を浴びて少し照れるものがあった。
「僕もそこまで詳しいわけじゃないけど……」
そう前置きして僕は『ゴブリンの巣窟』の情報を話し始める。とは言っても、僕の知ってる情報は本当に少ない。オーソドックスな洞窟型ダンジョンであること、罠の類は無いこと、ゴブリンが大量に居ること……。
「罠無いんだ……」
なぜか残念そうに言うマルギット。
「ゴブリンの強さはどの程度ですか?」
「そんなに強くないよ。クズギフトの僕でも楽に倒せるくらい」
「神様から賜ったギフトをクズと言うのは……」
リリーが悲しそうな表情で僕を見る。なんだか怒られるよりもいたたまれないものを感じるな。これなら怒鳴られた方がマシだよ。
「ごめん、口が過ぎたよ」
僕はリリーに頭を下げて謝って話を続ける。
「ゴブリンだけど、弱いけど数が多いんだ。そこだけは注意だね。っと、見えてきたよ」
僕たちの行く手を阻むように現れたのは、森と云うには小さな林だ。あの林も『ゴブリンの巣窟』のダンジョンの一部らしい。ダンジョンは基本的に壊すことができない。仮に壊すことができても、時間と共に修復されてしまう。あの林もそうだ。伐採しても時間と共に修復される。こんなことを言うと、無限に木材が手に入ると思われがちだが、ダンジョンの一部は、ダンジョンから持ち出すと、時間と共に消滅する。苦労して林を伐採しても、手に入れた木材は消滅してしまうのだ。
「あの林の中に洞窟があって、メインはその洞窟の中かな。本当にゴブリンがうじゃうじゃ居るんだ」
「んふー! 楽しみね!」
大量のゴブリンと聞いても、なぜかルイーゼはわくわくしているようだ。戦闘狂なのかな?
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