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005 百華繚乱(仮)
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「おっそーい!」
ドアを開けた瞬間聴こえたのは、苛立ちを含んだ女の子の声だ。ドア閉めて帰ってもいいかなぁ……。僕はパーティに参加することにしたことを早速後悔し始めていた。
「はぁ…」
僕はため息一つ吐いてドアを開けた。僕を待ち構えていたのは、腕を組んで仁王立ちした小柄な美少女だった。輝くような金髪を編み込んで後頭部で纏め、大きな青い瞳はキラリと輝き、意思の強さを感じさせる。かわいい系というより美人な顔立ちの少女だ。要所を金属で補強した革鎧を身に着け、左手には円形の小型の盾バックラーが握られている。鎧も盾も目立った傷は無く、新品同様にピカピカだ。たぶん、新成人の新人冒険者だろう。正直、不安になる姿だ。
「ふーん…あなたがポーター。やっと決まったのね。もうポーターは諦めて、私たちだけで行っちゃおうかって話してたくらいよ。私たちが『百華繚乱(仮)』よ。あたしがリーダーのルイーゼ。よろしくね」
そう一気にまくし立て、手を差し伸ばす金髪の美少女に少し圧倒されるものを感じた。
「クルト、ポーターだ。こちらこそ、よろしく頼むよ」
そう言ってルイーゼと握手を交わす。
「じゃあ早速行きましょう!」
「「ちょっと待って!」」
挨拶もそこそこに、すぐに冒険に出ようとするルイーゼを引き止めたら、声が被ってしまった。声のした方を見ると、長身痩躯の金髪のイケメンが居た。イケメンの傍には他に3人の女の子の姿が見える。どうやら全員で5人のパーティらしい。男1人に女4人……ハーレムパーティかな?羨ましいことだ。僕の中でイケメンへの好感度がちょっと下がった。
「ルイーゼ、その……」
イケメンが言い辛そうに僕を見た。
「ちゃんと彼の人柄とか能力を確認しないと。あとは、報酬の分け方や移動手段とか……」
「そういう細かいことは苦手だわ。あなたがやって」
「はぁ…」
イケメンがため息を吐いて疲れた顔で僕を見る。
「えーっと、たしか貴方は勇者パーティのポーターの方ですよね?」
「そうなの!?」
イケメンのその言葉にドキリとする。驚いた声を上げるルイーゼは知らなかったみたいだけど、どうやらイケメンは僕のことを知っているらしい。
「そんな方がどうしてウチのパーティに?」
「……パーティをクビになったんだ」
嘘を吐いても仕方がないので正直に答える。
「理由を訊いても?」
「僕の能力不足だよ。僕より能力の高いポーターなんて、いくらでも居るからね」
自分で言ってて酷く惨めになるな……。
「そうですか……。不躾な質問をしてすみません」
「いいよ。当然の疑問だと思うし」
頭を下げるイケメンに、こっちが恐縮してしまう。
しかし、改めて自分の状況の厳しさに涙が出そうだ。僕には元からあまり良い噂がないけど、それでも勇者のパーティに居られるだけの能力があると思われていた部分がある。しかし、今回パーティをクビになったことで、僕の能力不足が明らかになってしまった。能力不足のポーターもどきなんて、パーティに居ても邪魔なだけだ。
これは、パーティへの参加を断られるかもしれないな……。
「あの勇者のパーティに居たなんて、あなたってすごいのね!」
そう言って無邪気に笑うルイーゼ。そこに悪意は見えない。僕の卑屈な思いなど吹き飛ばしてしまうほど、尊敬の感情すら感じるまっすぐな好意があった。この子、すごく良い子だ。そう確信させるほどルイーゼの態度には好感が持てた。
「でも、彼はパーティをクビになっていますよ?」
ルイーゼに否を唱えたのはイケメン君だ。イケメン君の言う通り、僕は勇者パーティに居たけどクビになった身だ。べつに、どこもすごくない。むしろ情けない。
「そうね。でも、だから何? クルトは勇者と一緒にいろんな冒険をしているはずだわ。その経験や知識はきっと役に立つはずよ。だって、あたしたちに一番足りないものだもの」
パーティをクビになったという不名誉なことを「だから何?」とスパッと言い切ってもらえて、僕は救われる思いがした。欝々としていた心がパッと晴れた心地だ。色褪せた景色が色彩を取り戻し、輝いて見えた。その中で一際輝いて見えるのがルイーゼの姿だ。黄金のように輝く金髪は、結われて後ろで纏められ、うなじが露わになっている。青く澄んだ双眸は、意志の強そうな光を放ち、頬から顎にかけてのラインは、優美さすら感じる。スッと通った鼻筋に、桜色がみずみずしい薄めの唇。僕はルイーゼから目が離せなかった。ルイーゼを見ているとドキドキしてくる。
「ふむ。たしかにそうですね…」
イケメン君がルイーゼの言葉に考える様子を見せた。
「マルギットたちはどう思いますか?」
そう言って、他の3人の女の子に話を振るイケメン君。そういえば、イケメン君の名前って何だろう?
「あーしはいいと思うなー。『ゴブリンの巣窟』行くならポーター必須っしょ」
身軽そうな軽装の茶髪の少女が言う。彼女は僕がパーティに参加することに賛成してくれるらしい。
「そうね。私、もう待つのは嫌よ?」
黒いドレスのような格好をした黒髪の少女もとりあえず賛成してくれるようだ。
「私も…賛成です」
教会のシスターの格好をした背の低い白髪の少女も賛成してくれた。
「なるほど。では私も賛成で」
女の子3人の賛成を受けて、イケメン君も賛成を表明した。これで全員賛同してくれたことになる。どうやら僕は今回パーティに参加させてもらえるようだ。
「じゃあ決まりね! 早速行きましょう!」
ルイーゼが満足げに頷き、冒険への出発を宣言するのだった。
ドアを開けた瞬間聴こえたのは、苛立ちを含んだ女の子の声だ。ドア閉めて帰ってもいいかなぁ……。僕はパーティに参加することにしたことを早速後悔し始めていた。
「はぁ…」
僕はため息一つ吐いてドアを開けた。僕を待ち構えていたのは、腕を組んで仁王立ちした小柄な美少女だった。輝くような金髪を編み込んで後頭部で纏め、大きな青い瞳はキラリと輝き、意思の強さを感じさせる。かわいい系というより美人な顔立ちの少女だ。要所を金属で補強した革鎧を身に着け、左手には円形の小型の盾バックラーが握られている。鎧も盾も目立った傷は無く、新品同様にピカピカだ。たぶん、新成人の新人冒険者だろう。正直、不安になる姿だ。
「ふーん…あなたがポーター。やっと決まったのね。もうポーターは諦めて、私たちだけで行っちゃおうかって話してたくらいよ。私たちが『百華繚乱(仮)』よ。あたしがリーダーのルイーゼ。よろしくね」
そう一気にまくし立て、手を差し伸ばす金髪の美少女に少し圧倒されるものを感じた。
「クルト、ポーターだ。こちらこそ、よろしく頼むよ」
そう言ってルイーゼと握手を交わす。
「じゃあ早速行きましょう!」
「「ちょっと待って!」」
挨拶もそこそこに、すぐに冒険に出ようとするルイーゼを引き止めたら、声が被ってしまった。声のした方を見ると、長身痩躯の金髪のイケメンが居た。イケメンの傍には他に3人の女の子の姿が見える。どうやら全員で5人のパーティらしい。男1人に女4人……ハーレムパーティかな?羨ましいことだ。僕の中でイケメンへの好感度がちょっと下がった。
「ルイーゼ、その……」
イケメンが言い辛そうに僕を見た。
「ちゃんと彼の人柄とか能力を確認しないと。あとは、報酬の分け方や移動手段とか……」
「そういう細かいことは苦手だわ。あなたがやって」
「はぁ…」
イケメンがため息を吐いて疲れた顔で僕を見る。
「えーっと、たしか貴方は勇者パーティのポーターの方ですよね?」
「そうなの!?」
イケメンのその言葉にドキリとする。驚いた声を上げるルイーゼは知らなかったみたいだけど、どうやらイケメンは僕のことを知っているらしい。
「そんな方がどうしてウチのパーティに?」
「……パーティをクビになったんだ」
嘘を吐いても仕方がないので正直に答える。
「理由を訊いても?」
「僕の能力不足だよ。僕より能力の高いポーターなんて、いくらでも居るからね」
自分で言ってて酷く惨めになるな……。
「そうですか……。不躾な質問をしてすみません」
「いいよ。当然の疑問だと思うし」
頭を下げるイケメンに、こっちが恐縮してしまう。
しかし、改めて自分の状況の厳しさに涙が出そうだ。僕には元からあまり良い噂がないけど、それでも勇者のパーティに居られるだけの能力があると思われていた部分がある。しかし、今回パーティをクビになったことで、僕の能力不足が明らかになってしまった。能力不足のポーターもどきなんて、パーティに居ても邪魔なだけだ。
これは、パーティへの参加を断られるかもしれないな……。
「あの勇者のパーティに居たなんて、あなたってすごいのね!」
そう言って無邪気に笑うルイーゼ。そこに悪意は見えない。僕の卑屈な思いなど吹き飛ばしてしまうほど、尊敬の感情すら感じるまっすぐな好意があった。この子、すごく良い子だ。そう確信させるほどルイーゼの態度には好感が持てた。
「でも、彼はパーティをクビになっていますよ?」
ルイーゼに否を唱えたのはイケメン君だ。イケメン君の言う通り、僕は勇者パーティに居たけどクビになった身だ。べつに、どこもすごくない。むしろ情けない。
「そうね。でも、だから何? クルトは勇者と一緒にいろんな冒険をしているはずだわ。その経験や知識はきっと役に立つはずよ。だって、あたしたちに一番足りないものだもの」
パーティをクビになったという不名誉なことを「だから何?」とスパッと言い切ってもらえて、僕は救われる思いがした。欝々としていた心がパッと晴れた心地だ。色褪せた景色が色彩を取り戻し、輝いて見えた。その中で一際輝いて見えるのがルイーゼの姿だ。黄金のように輝く金髪は、結われて後ろで纏められ、うなじが露わになっている。青く澄んだ双眸は、意志の強そうな光を放ち、頬から顎にかけてのラインは、優美さすら感じる。スッと通った鼻筋に、桜色がみずみずしい薄めの唇。僕はルイーゼから目が離せなかった。ルイーゼを見ているとドキドキしてくる。
「ふむ。たしかにそうですね…」
イケメン君がルイーゼの言葉に考える様子を見せた。
「マルギットたちはどう思いますか?」
そう言って、他の3人の女の子に話を振るイケメン君。そういえば、イケメン君の名前って何だろう?
「あーしはいいと思うなー。『ゴブリンの巣窟』行くならポーター必須っしょ」
身軽そうな軽装の茶髪の少女が言う。彼女は僕がパーティに参加することに賛成してくれるらしい。
「そうね。私、もう待つのは嫌よ?」
黒いドレスのような格好をした黒髪の少女もとりあえず賛成してくれるようだ。
「私も…賛成です」
教会のシスターの格好をした背の低い白髪の少女も賛成してくれた。
「なるほど。では私も賛成で」
女の子3人の賛成を受けて、イケメン君も賛成を表明した。これで全員賛同してくれたことになる。どうやら僕は今回パーティに参加させてもらえるようだ。
「じゃあ決まりね! 早速行きましょう!」
ルイーゼが満足げに頷き、冒険への出発を宣言するのだった。
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