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第二十八話『ランニング』

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「全部試してみる?」
「そう、一回全員と同じ修行をしてみるの!」
と、にっこり微笑んでヒカルは言った。

ハードな修行が始まるようだ。

「まずは、全員共通のメニューね!」
とヒカルが、メガネをぐっと上げてそう言った。
キラーンという音が聞こえてきそうだった。

「全員共通??」
「そう、ランニング!!」
と、笑顔でヒカルが答える。

確実に僕がそれ苦手なのをわかっていっている顔だ。
天使のような笑顔だが、小悪魔のような心を持っているのかもしれない、メガネをかけた美少女ヒカルは。

「きたー!ザ・体育会系!」
と僕は言う。

そう、今までの僕とは無縁の概念。体育会系。
とりあえずランニング!
その大雑把な体育会系の概念が今までは得意ではなかった。

「さ、走るわよ!!」
とニコが、お皿を下げながら、言った。
みんなも、同様にお皿をかたし始めた。
僕も食べ終わった皿をかたした。

「ふぁ、走りますか・・・」
と僕は、声にならない声で答えた。
そこから逃げ続けることはできない、とは薄々気づいていた。

「ふふ、ビシバシ行くわよ!タカシ!!」
とニコは楽しそうに言った。
お手柔らかにお願いします・・・。

僕らは表にでて、トラックを走った。
「うぅぅ。運動部っぽい・・・」
といいながら、走り始めた。

「う、もうつらい・・・」
と僕はぶつぶついう。

「ちょ!まだ10メートルくらいよ!!」
「そんだけ走れば十分なのでは・・・?」
と、僕はニコに言う。

「んなわけないでしょ!」
と、腕を掴まれて、引っ張られる。

「ほら、いくわよ!!」
と手を握られて、ドキドキする場面なのだけど
いまはそれどころではない。
首ををつけて引っ張られている犬の様な気分が多分いちばん近い。

「ぐぬぬ・・・」
と言いながら、仕方なく、歩みを進める。
引っ張られながらだと、逆に走りづらいからだ。
僕は覚悟を決めて走ることにした。

「お、やる気だしたわね!それでいいのよそれで!」
とニコがケラケラと笑っている。
その姿は可愛かったが、鬼教官だな・・・と思っていた。

「がんばれタカシ」
と、隣を並走してリオンが言う。

「これ何周するの?」
「100周くらいしたいところだけど・・・」
とリオンが言う。

「バケモンか・・・それはムリ・・・」
と僕は呟いた。

「今日は、10周位で許す」
とリオンが言う。

許すと言っているが、当然10周もヤバイ。
ぶっちゃけ1周だってヤバイ。
生きて帰れるのか・・・僕は・・・。

「ふふ、タカシくん、がんばろう〜。私もそんなに得意じゃないのよ!」
とヒカルが言う。
そう頭脳担当だから、僕と同じ・・・と思いたいが、動きが軽やかだ。
得意じゃない、というのは、この前線で戦う、リオンとニコの二人に対して、というだけのことだろう。

「みんな、どんな体力してんだよ・・・」
と僕は呟いた。

「パパッと十周するわよ!」
とニコはニッコリ笑ってそう言った。
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