ビッグデータ探偵

なかの

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第22話 1000万枚の定義

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「ということは、鏡越しの写真だけを1000万枚集める必要があるということですか?」
高崎くんは僕に質問する。
瞳の中の映像と実際の映像が入っている画像をたくさん集めれば、瞳の中から瞳に写っている場所を探すことができるのではないかと言う話をしていた。

「さすが!そうなんだ、そして1000万枚その条件を満たすものを探すのは難しいだろうね」
僕は高崎くんに応える。
いくら3000万人ユーザがいる大人気写真SNSでも1000万枚もの鏡越しの画像を集めるのは難しい。

「え、ということはできないということですか?」
高崎くんが聞く。
写真SNS単体で1000万枚目標のものが集められないとなると原理的にはそうなってしまう。当然の質問だ。

「いや、そうじゃないんだ。コンピュータに与える写真が1000万枚必要ということなんだ」
僕は高崎くんの質問に応える。
この辺りがややこしい事で、人間が思う1000万枚と人工知能に使う1000万枚の違いがそこにはある。

「ということは?」
高崎くんが聞く。

「水増しができるということだね」
話を聞いていた佐々木が説明する。
流石に佐々木はプロなので完全にそれを理解して、高崎くんに説明してくれた。

「水増し??」
高崎くんが僕たちに聞く。
彼女は文系代表。僕たちは理系の最先端の知識を持つ大学の教員。わかりやすく説明する技術が問われる。

「そう、1000万枚の画像が必要だけども、オリジナルが必要じゃないというのはそういう意味で、簡単に言うと、コンピュータは少し大きさや角度が変わるだけで、別のものとして捉えるんだ」
僕は高崎くんに説明する。
枚数の定義の話に帰結した。人間の捉えれる枚数とコンピュータの捉える枚数は異なる。

「そうなんですか!!」
高崎くんは驚く。

「そうなんだ、だから拡大、縮小、回転させてコンピュータに与えればいい」
僕は説明を続ける。
古典的なアルゴリズムだと、回転させるだけで文字が読めなくなる人工知能はたくさんあった。

「えー、ずるーい!」
高崎くんは釈然としない様子で僕たちを見ている。

「まぁ、人間が賢すぎると言うことだね。逆に少しぐらい違っていても同じものとして認識できる人間の能力がすごい」
佐々木が説明する。
融通が効きすぎて正確に記録できないと言うことが工学的には弱点であるけれども。

「あー、少し変装していても人間なら気がつくけど、コンピューターだと難しいってことですか?子供が成長してもある程度は気が付ける的な」
高崎くんは質問する。

「やっぱり筋がいいなぁ。その通り!」
佐々木は僕の方を見ながらそういった。

「そう、その差を現在のコンピュータパワーで埋めていくんだ」
僕は二人に向かってそう言った。
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