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27.結婚とハネムーン
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新郎バロン・アルフォードは
シルヴィア・グラントを妻として愛し
敬い 慈しむ事を誓いますか?
――誓います
新婦シルヴィア・グラントは
バロン・アルフォードを夫として愛し
敬い 慈しむ事を誓いますか?
――誓います
結婚式は無事に執り行われた。
侯爵家から王宮まで、沿道に集まる人々に手を振りながらゆっくりと空を豪華な馬車のような乗り物で王宮に移動するところから始まり……大変だった。各国の王族も参列するしで、とんでもないタイムスケジュールを把握して間違いなく滞りなくマナーに気を付けて笑顔を絶やさず遂行していくのは気疲れが半端なかった。
水分もとりにくい。ドレスはトイレに向かない。男のがそのあたりは楽だ。
でも……バロン王子が完璧にスケジュールを把握してフォローしてくれたからどうにかなった。
終わってみれば、夢のような時間だった。
全てがきらびやかで、豪華で、華やかで、美しくて……。ずっと宝箱の中にいたような気さえする。
王宮で初夜は迎えたものの、何もしていない。ベッドに横になった瞬間に疲れすぎて眠ってしまった。気づいたら朝だ。何もしない朝チュンだった。
そして翌日からハネムーン。
オレの希望で海の側にある貸しコテージにいる。一棟ずつの貸しコテージではあるものの……全て貸し切りで、他の棟には護衛が常駐する。空から近くの城館まで移動し、そこからは風力車でここまで来た。
「バロン様~、しばらくゴロゴロしたいです。駄目ですか?」
「そうだな、二階にはベッドがある。移動中も緊張していたようだしな。そこで少し休もう」
「そうさせてください……」
結婚式の夜は熟睡したはずなのに寝た気がしない。目をつむって数秒経ったら朝だったという感覚だ。
階段を上り二階まで来ると、一階以上に見晴らしがいい。広大な海を一望できる。
「すごいですね……」
ベッドもものすごく大きいのが二つ……ま、貸しコテージだからな。昨日はダブルベッドが一つだったけど意識することなく寝てしまった。今日はさすがに……う、うん。
「バロン様……今って自由ですよね」
「ああ。罠の部屋にいる時のように話してもいいし、完全に自由だ。ずっと張り詰めていたな。すまなかった」
すぐ謝るよな、王子……。
ふらふらしながらベッドへと倒れ込む。窓の向こうには青い海と空しか見えない。
「二度寝したかった……」
「朝も早かったからな。もっと寝かせてやりたかったが。今から寝たらいいさ。五日間ある。終わったらすぐに後期が再開してしまうし少なすぎると思うが、自由だ」
バロン王子がオレの頭をなでる。
優しく、優しく……。見上げると、慈しむように笑ってくれる。
女の子でいたくなるな。
「せっかく目の前に海があるのに、もったいないですよね。すみません」
「眠気と戦いながら無理矢理遊ぶより、午前いっぱい寝てからでも問題ない」
「ん……なら、お言葉に甘えて……少し、眠ります。まだ眠くて――」
「ああ」
そっとオレの手を握るバロン王子にも、しっかりとその左手の薬指に指輪がつけられている。お揃いの結婚指輪だ。
目をつむり、まどろんでいく。意識が遠くなっていく中でバロン王子の声が聞こえたような聞こえていないような……。
「君は、いつまで僕に――」
なんだろう。
なんて言ったのだろう。
どうしてせっかくのハネムーンなのに、こんなに眠いのだろう。抗えない。深く深く潜っていく。どこか違う世界に迷い込んでしまいそうな……。
――全てが分からなくなっていく。
シルヴィア・グラントを妻として愛し
敬い 慈しむ事を誓いますか?
――誓います
新婦シルヴィア・グラントは
バロン・アルフォードを夫として愛し
敬い 慈しむ事を誓いますか?
――誓います
結婚式は無事に執り行われた。
侯爵家から王宮まで、沿道に集まる人々に手を振りながらゆっくりと空を豪華な馬車のような乗り物で王宮に移動するところから始まり……大変だった。各国の王族も参列するしで、とんでもないタイムスケジュールを把握して間違いなく滞りなくマナーに気を付けて笑顔を絶やさず遂行していくのは気疲れが半端なかった。
水分もとりにくい。ドレスはトイレに向かない。男のがそのあたりは楽だ。
でも……バロン王子が完璧にスケジュールを把握してフォローしてくれたからどうにかなった。
終わってみれば、夢のような時間だった。
全てがきらびやかで、豪華で、華やかで、美しくて……。ずっと宝箱の中にいたような気さえする。
王宮で初夜は迎えたものの、何もしていない。ベッドに横になった瞬間に疲れすぎて眠ってしまった。気づいたら朝だ。何もしない朝チュンだった。
そして翌日からハネムーン。
オレの希望で海の側にある貸しコテージにいる。一棟ずつの貸しコテージではあるものの……全て貸し切りで、他の棟には護衛が常駐する。空から近くの城館まで移動し、そこからは風力車でここまで来た。
「バロン様~、しばらくゴロゴロしたいです。駄目ですか?」
「そうだな、二階にはベッドがある。移動中も緊張していたようだしな。そこで少し休もう」
「そうさせてください……」
結婚式の夜は熟睡したはずなのに寝た気がしない。目をつむって数秒経ったら朝だったという感覚だ。
階段を上り二階まで来ると、一階以上に見晴らしがいい。広大な海を一望できる。
「すごいですね……」
ベッドもものすごく大きいのが二つ……ま、貸しコテージだからな。昨日はダブルベッドが一つだったけど意識することなく寝てしまった。今日はさすがに……う、うん。
「バロン様……今って自由ですよね」
「ああ。罠の部屋にいる時のように話してもいいし、完全に自由だ。ずっと張り詰めていたな。すまなかった」
すぐ謝るよな、王子……。
ふらふらしながらベッドへと倒れ込む。窓の向こうには青い海と空しか見えない。
「二度寝したかった……」
「朝も早かったからな。もっと寝かせてやりたかったが。今から寝たらいいさ。五日間ある。終わったらすぐに後期が再開してしまうし少なすぎると思うが、自由だ」
バロン王子がオレの頭をなでる。
優しく、優しく……。見上げると、慈しむように笑ってくれる。
女の子でいたくなるな。
「せっかく目の前に海があるのに、もったいないですよね。すみません」
「眠気と戦いながら無理矢理遊ぶより、午前いっぱい寝てからでも問題ない」
「ん……なら、お言葉に甘えて……少し、眠ります。まだ眠くて――」
「ああ」
そっとオレの手を握るバロン王子にも、しっかりとその左手の薬指に指輪がつけられている。お揃いの結婚指輪だ。
目をつむり、まどろんでいく。意識が遠くなっていく中でバロン王子の声が聞こえたような聞こえていないような……。
「君は、いつまで僕に――」
なんだろう。
なんて言ったのだろう。
どうしてせっかくのハネムーンなのに、こんなに眠いのだろう。抗えない。深く深く潜っていく。どこか違う世界に迷い込んでしまいそうな……。
――全てが分からなくなっていく。
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