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14.初デート
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とうとうデートの日だ。
どうして男とデートなんだよという気持ちもありつつ、だからといって女とデートをしたいわけでもなく、心がちょっと浮き立っているのも否定できず……。
「じゃ、行こうか。シルヴィア」
「ええ。……なんだか、ほくほくしているわね、バロン様」
「そりゃ、君に昨日好きだって言ってもらったわけだしね。気持ちが通じているって最高だな!」
……言ったっけ?
ああ、"たぶん"好きだとは言ったな。
「君は照れてなかなか言ってくれないから。毎日でも聞きたいのに」
……これ、周囲の生徒に聞かせているだろう。
学園外に出られるのは、特定の門からだけだ。今は学園内をそこまでテクテク歩いている。生徒もチラホラいる。オレもシルヴィアっぽく話さなくてはならない。
オレのことを好きらしいし、周囲への牽制か? いや、王子の恋人なんて存在にちょっかいかける奴なんざ、いねーだろ。しかもこんな男オンナ……。
「僕は君が大好きだよ、シルヴィア」
うん。「女の子として見てもらっていない気がして」なんて食堂で言ってしまったからな……そう思わせてしまう男だという印象を早急に払拭したいんだな。
合わせておくか。
「私も好きです、バロン様」
「……!」
なんでそんなに驚いているんだ。
「ほ、ほら。シルヴィア」
……なんかバロン王子が突然手を腰に……。エスコートできる王子アピールか? しょうがねーなー。
そっと腕に手を添える。
……!!!
固い!
やはり王子……鍛えているな。そうだった、水着の時も思った以上にムキムキだったしな。細マッチョだな。ガチガチだ。オレも毎日筋トレはしているものの……男だった時ほど筋肉がつかねーんだよな。こんなにムキムキだと、王子が本気出したら、オレなんて簡単に組み敷けてしまうよな。昨日だって――。
「シルヴィア?」
あ。気づいたら両手でずっともみもみしていた!
「なにかしら」
じゃねーよな。
しかし、説明のしようがない。
「あー……、揉むのが好きならずっと揉んでいてもいいが……」
いえ、もういいです。
無意識です。
「途中から暗い顔をしていたが大丈夫か?」
心配性すぎるだろ!
「なんでもないわ」
「ないわけがないだろう」
ちょっと暗い顔をしていたからって、鬱陶しいな。うーん……。
「き、筋肉が……」
「筋肉!?」
筋肉が……なんだろう。
「……いいなって」
「ええ!?」
そんな、ぱぁぁぁっと嬉しそうにされると困るな。
「欲しいなって」
「えっ」
「私にも」
「えー……」
バロン王子、分かりやすくガックリし過ぎだな。なんか、おかしくね? 感情が分かりやすくなったっつーか、なんつーか……。
「女性の君に筋肉までこれくらいあったら、制服に困ると思うよ……」
「あー。既にキツイのよね」
バロン王子の腕に自分の腕を絡ませて、胸を押しつけてみる。
「これがね」
やっぱり、王子のこのドキッとした顔が……好きなんだよなー。
「……君が魔性の女すぎて、昇天しそうになってきたよ」
「バロン様、なんだか感情が分かりやすくなった気がするわ。なぜかしら」
「隠す必要がなくなったからな。表に出しても引かないでくれるだろう?」
「……隠してたの」
それなら、いつからオレのことを好きになったんだろう。まったく分からない。
「ああ。あまりその……女の子扱いされるのを苦手にしているように見えたからね。君は照れ屋だから」
周囲に生徒がいるから、言葉選びに苦心しているな。
「でも、今なら君から離れることはないから安心してほしいという意味だと、ちゃんと君に伝わる」
バロン王子が「な?」と優しい笑顔を向けてくれるが……全然伝わってなかったな! そうか、オレが「離れないで」なんて言ったから一生懸命それを伝えようとしていたのか!
王道……王道王子様だ……。
「君が不安にならないよう、これからも毎日君が好きだと伝えることにしよう」
え……毎日……。
そうか、心配性な王子にお願い事をするとこうなるのか。
「好きだよ、シルヴィア」
顔が赤くなっていく。どうしてこんなにドキドキしてしまうのか。
見上げると、さっきと変わらず優しく微笑んでくれる。きっとずっと隣にいてくれるだろうオレの――。
「私だけの……王子様」
「!?」
でも、それはつまるところオレがいつか、王子の妃になってしまうということで。王位継承権第一位のせいで、王妃になってしまう可能性も高いということで。
「は~……」
「シルヴィア! なんでそんな甘い台詞のあとにため息なんだ! もー、僕を振り回しすぎだよ」
言いがかりだな。
「振り回されて可哀想ね」
「何を考えているのか、サッパリ分からない」
「深く考えないでください」
門番に、外出許可証をサッと見せる。なかなか帰って来ない場合に備えてザックリ行く予定の場所と帰宅予定時間を記入すれば、簡単に発行してもらえる。
「さ、行くか!」
「ええ」
どこに行くんだろうなーと思いながら、学園都市エリアに足を踏み入れた。
どうして男とデートなんだよという気持ちもありつつ、だからといって女とデートをしたいわけでもなく、心がちょっと浮き立っているのも否定できず……。
「じゃ、行こうか。シルヴィア」
「ええ。……なんだか、ほくほくしているわね、バロン様」
「そりゃ、君に昨日好きだって言ってもらったわけだしね。気持ちが通じているって最高だな!」
……言ったっけ?
ああ、"たぶん"好きだとは言ったな。
「君は照れてなかなか言ってくれないから。毎日でも聞きたいのに」
……これ、周囲の生徒に聞かせているだろう。
学園外に出られるのは、特定の門からだけだ。今は学園内をそこまでテクテク歩いている。生徒もチラホラいる。オレもシルヴィアっぽく話さなくてはならない。
オレのことを好きらしいし、周囲への牽制か? いや、王子の恋人なんて存在にちょっかいかける奴なんざ、いねーだろ。しかもこんな男オンナ……。
「僕は君が大好きだよ、シルヴィア」
うん。「女の子として見てもらっていない気がして」なんて食堂で言ってしまったからな……そう思わせてしまう男だという印象を早急に払拭したいんだな。
合わせておくか。
「私も好きです、バロン様」
「……!」
なんでそんなに驚いているんだ。
「ほ、ほら。シルヴィア」
……なんかバロン王子が突然手を腰に……。エスコートできる王子アピールか? しょうがねーなー。
そっと腕に手を添える。
……!!!
固い!
やはり王子……鍛えているな。そうだった、水着の時も思った以上にムキムキだったしな。細マッチョだな。ガチガチだ。オレも毎日筋トレはしているものの……男だった時ほど筋肉がつかねーんだよな。こんなにムキムキだと、王子が本気出したら、オレなんて簡単に組み敷けてしまうよな。昨日だって――。
「シルヴィア?」
あ。気づいたら両手でずっともみもみしていた!
「なにかしら」
じゃねーよな。
しかし、説明のしようがない。
「あー……、揉むのが好きならずっと揉んでいてもいいが……」
いえ、もういいです。
無意識です。
「途中から暗い顔をしていたが大丈夫か?」
心配性すぎるだろ!
「なんでもないわ」
「ないわけがないだろう」
ちょっと暗い顔をしていたからって、鬱陶しいな。うーん……。
「き、筋肉が……」
「筋肉!?」
筋肉が……なんだろう。
「……いいなって」
「ええ!?」
そんな、ぱぁぁぁっと嬉しそうにされると困るな。
「欲しいなって」
「えっ」
「私にも」
「えー……」
バロン王子、分かりやすくガックリし過ぎだな。なんか、おかしくね? 感情が分かりやすくなったっつーか、なんつーか……。
「女性の君に筋肉までこれくらいあったら、制服に困ると思うよ……」
「あー。既にキツイのよね」
バロン王子の腕に自分の腕を絡ませて、胸を押しつけてみる。
「これがね」
やっぱり、王子のこのドキッとした顔が……好きなんだよなー。
「……君が魔性の女すぎて、昇天しそうになってきたよ」
「バロン様、なんだか感情が分かりやすくなった気がするわ。なぜかしら」
「隠す必要がなくなったからな。表に出しても引かないでくれるだろう?」
「……隠してたの」
それなら、いつからオレのことを好きになったんだろう。まったく分からない。
「ああ。あまりその……女の子扱いされるのを苦手にしているように見えたからね。君は照れ屋だから」
周囲に生徒がいるから、言葉選びに苦心しているな。
「でも、今なら君から離れることはないから安心してほしいという意味だと、ちゃんと君に伝わる」
バロン王子が「な?」と優しい笑顔を向けてくれるが……全然伝わってなかったな! そうか、オレが「離れないで」なんて言ったから一生懸命それを伝えようとしていたのか!
王道……王道王子様だ……。
「君が不安にならないよう、これからも毎日君が好きだと伝えることにしよう」
え……毎日……。
そうか、心配性な王子にお願い事をするとこうなるのか。
「好きだよ、シルヴィア」
顔が赤くなっていく。どうしてこんなにドキドキしてしまうのか。
見上げると、さっきと変わらず優しく微笑んでくれる。きっとずっと隣にいてくれるだろうオレの――。
「私だけの……王子様」
「!?」
でも、それはつまるところオレがいつか、王子の妃になってしまうということで。王位継承権第一位のせいで、王妃になってしまう可能性も高いということで。
「は~……」
「シルヴィア! なんでそんな甘い台詞のあとにため息なんだ! もー、僕を振り回しすぎだよ」
言いがかりだな。
「振り回されて可哀想ね」
「何を考えているのか、サッパリ分からない」
「深く考えないでください」
門番に、外出許可証をサッと見せる。なかなか帰って来ない場合に備えてザックリ行く予定の場所と帰宅予定時間を記入すれば、簡単に発行してもらえる。
「さ、行くか!」
「ええ」
どこに行くんだろうなーと思いながら、学園都市エリアに足を踏み入れた。
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