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45 混じり合う1

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「ぁ、あっ、あ、ぁっ」
「く……っ」
「んぅっ!」

 下から突き上げられて、思わず目の前の殿下にしがみついた。お腹の奥にトプトプと注がれているのを感じ、自然と口元が緩む。尻穴が限界まで広がっているのでさえ気持ちがよくてゾクゾクした。
 そういえば、どのくらいこうしているんだろうか。薄暗い寝室の中では、いまが昼なのか夜なのかもわからない。食事を取るどころかベッドから一歩も下りていないから、何日過ぎたのかもわからなかった。

「これほど注いでいるというのに、まったく衰え知らずだな」

 苦笑するような殿下の声に、首に回した両腕にぎゅうっと力を込めた。たしかにたっぷりと注いでもらったが、まだ足りない。ここで打ち止めだと抜かれてしまわないように、両足を殿下の腰に絡みつける。まるで膝から下ろされるのを嫌がる子どものようだと思いながら、さらにぎゅうっと抱きついた。

「こういうランシュも、可愛くていい」
「ん……殿下」

 殿下が首筋にチュッと口づけ、背中を撫でていた指でうなじをスルッと撫でた。それだけで僕のうなじからは殿下を捕らえようとする香りがあふれ出す。それに呼応するように殿下の香りも強くなり、ますます僕の体は香りを放とうと熱くなった。

(僕たちからはきっと、ミルクセーキのような香りが、しているんだろうな)

 ふわふわと漂うような意識のなか、そんなことを思った。
 殿下の濃いミルクの香りより、いまは僕の甘い香りのほうがわずかに強い。その香りを殿下はミルクセーキのようだと表現したが、これはバニラの香りだ。殿下の濃いミルクと僕のバニラが混ざり合って、殿下が言ったような極上のミルクセーキの香りになっていることだろう。

「あぁ、またランシュの香りが強くなった。甘くておいしそうな、わたしのランシュの香りだ」
「んっ」

 グッと穿たれるたびに、もう勃起すらしなくなった僕のナニが殿下のお腹に擦れてビリッとした。もしかしたら痛みなのかもしれないが、陰嚢がせり上がるような気持ちよさも感じる。

(というか、最初に散々感じさせられて、馬鹿になったのかも、しれないな)

 ベッドに突っ伏してしまった僕に、殿下はのし掛かるようにアレを入れてきた。そうして容赦なくガンガン揺さぶられた。自分が漏らしたものでぐっしょり濡れていた下着に包まれたままだった僕のナニは、おかげで濡れた布で延々と擦られ続けることになった。
 それは想像を絶するような快感だった。濡れた布に擦れるだけであんなふうになるなんて、いま思い出しても恐ろしくなる。あまりの快感から怖くなり、途中からは手足をばたつかせながら泣きじゃくってしまった。

(だって、敏感になったアレを擦られ続けるのは、気持ちよすぎて怖いんだ)

 これも男のΩだからだろうか。それとも男なら誰しもがああなってしまうんだろうか。気持ちいいのが怖いなんて初めての経験だった。
 それなのに殿下は動きを止めてくれず、ノットで尻穴を塞がれるまで濡れた下着でナニを擦られ続けた。最後には子種じゃない何かを思いきり吐き出してしまった気がする。

(それにしても、発情中なのに、意識はあるんだな)

 心許ない感覚ではあるものの、こうして何かを考え感じることはできる。これも前回までの発情と違う点だ。

(あとで、いろいろ思い出しては、情けなくなりそうだけど)

 そんなことを思っていたら、またもやズンと突き上げられて「ぁん!」と恥ずかしい声が漏れてしまった。

「何か、考えごとか?」
「ちが、」
「発情中は、わたしのことだけを考えろ」

 返事をする前に後頭部を掴まれた。殿下がこんな乱暴なことをすることに少し驚きつつ、こういう殿下は僕以外に知らないに違いないと思うとうれしくなる。
 そう思って口元を緩めていると、下から噛みつくように口づけられた。唇を甘噛みされ、驚いて少し口を開くとすぐさま殿下の舌が入ってくる。こういう口づけもあるのだと教えてくれたのは殿下だ。口の中で互いの舌を絡め合わせると気持ちいいということも、殿下とする口づけで初めて知った。

「んっ、んぅ、んっ」

 口づけながら、殿下がグイグイと腰を突き上げてくる。お腹の奥が苦しくて、そのうえ口まで塞がれているから呼吸も満足にできない。鼻でなんとか息をするものの、濃すぎるミルクの香りで窒息しそうなほどだ。
 気持ちがよくて苦しくて、すべてが怖くなる。それなのに体も気持ちも昂ぶって「もっと、もっと」と催促してしまう。

(僕の全部が、殿下に染まっていくみたいだ)

 同じくらい、殿下も僕の香りに包まれている。二人の香りが混じり合い、溶け合い、境界線がわからなくなるような不思議な感覚だった。

(ここは、僕たち二人だけの場所だから、当然だ)

 こうなるために二人だけの場所を作った。そうして殿下の香りに包まれた僕は、ようやく本格的な発情を迎えることができた。
 殿下を香りで捕らえ、僕が作った安心できる場所に誘い込んだ。誰にも邪魔されず、殿下のすべてを僕に捧げさせることもできた。

(いや、いまがまさに、その最中だ)

 殿下の舌に自分の舌を絡めながら、突き上げる動きに合わせて腰を動かす。
 すでに僕のお腹はたっぷりと満たされているが、まだ足りない。発情が終わるまで何度でも満たされなくては。新しい子種で満たされた僕の体は、ますます濃い香りを放出するだろう。香りが濃くなればなるほど僕のΩ性は強くなる。僕の香りが濃くなれば、殿下のα性もより強くなり濃い香りを放つ。

(そうだ……互いに高め合うことができるαとΩは……僕たちは、唯一の相手なんだ)

 ようやく吐精が落ち着いてきた殿下のナニに、僕の中がぎゅうっと絡みついた。これで終わりじゃないと訴えるためだ。僕自身も「もっと」とぎゅうぎゅうに抱きつく。そうして目の前にある殿下の首筋にかぷりと噛みつき、背中に爪を立てた。

「つ……っ。ランシュは、少し凶暴になるな」
「んっ! まだ、まだだ……もっと、僕にもっと、注ぐんだ」
「わかっている。まだ発情は終わらない。その間はこうしてずっと交わっていよう。片時も離れず、そうしてランシュの腹にわたしのすべての子種を注ぎ込む」
「もっと、ん……! あぁ、また、きた……」

 少し落ち着いていた吐精が、またびゅうびゅうと勢いを取り戻した。尻穴をこれでもかと広げていたノットも、まだ大きいままだ。これならもっとたくさんの子種がもらえる。もっともっと僕の中が殿下で満たされていく。

「殿下……ノアール殿下……僕だけの、殿下……」
「そうだ。そして、ランシュはわたしだけのものだ」
「ふふ……はは、うれしい」
「何があっても絶対に手放したりはしない。誰が割り込もうとしてもだ」
「ん……殿下は、誰にも渡さない、から」
「死ぬまでわたしはランシュのものだ。安心しろ」
「はは……うれしい」

 そうだ、殿下は死ぬまで僕のものだ。僕の香りからは絶対に逃れられない。いや、逃してなるものか。

「そしてランシュも死ぬまでわたしのものだ。何人たりとも割って入ることは許さない」
「んっ、ふ、んぅ、」

 うなじを撫でられて体が震えた。気持ちがよくて肌がぞわぞわする。

「だから、金色の真珠は銀色の犬にくれてやることにした。小賢しい邪魔などさせはしない。それに、忠犬を躾けるには褒美を与えることも必要だからな」

 金色の……なに? それに、銀色の……駄目だ、お腹が気持ちよくてうまく聞き取れなかった。それなのに、なぜか一瞬だけ背中がぞわっとしたような気がした。

(そういえば、殿下の雰囲気が、いつもと違う、ような……)

 そう思ったのも一瞬で、すぐに濃い香りに意識が持っていかれてしまった。再び二人だけの世界に溺れた僕は、止まらない発情の熱に浮かされ続けた。
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