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8 咲き誇るは神官王の腕の中

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 神官王の部屋に戻った二人は、そのままなだれ込むように寝室へと向かった。ベッドに下ろされたリシアは妖艶な笑みを浮かべながら貪欲にユリティを求める。それに微笑みを返したユリティは丁寧に夜着を脱がせた。

「はやく」
「わかっていますよ」

 宥めるように口づけられたリシアが目を細めた。触れ合わせた唇の隙間から舌が入り込む。それにリシアが夢中になっている間に夜着は脱がされ、ユリティ自身も手早く服を脱ぎ期待に震える華奢な体を抱きしめた。そうして唇だけでなく手や指、胸や腹など隅々まで口づけで可愛がる。
 全身に口づけられる喜びにうっとりとしていたリシアだったが、しばらくするともう無理だと目尻を濡らし始めた。

「や、だぁ……っ。も、や、だって……っ」

 甘く耐えがたい快感を与え続けるユリティの後頭部に手を伸ばした。花芯を熱心にねぶる頭を退けようとするものの、指に金髪が絡むばかりで遠ざけることができない。かろうじて起き上がっていたリシアの上半身は、いまにも崩れ落ちそうなほど快感に震えていた。

「なぜです? 気持ちがいいでしょう?」
「だって、そこば、っかり……っ」
「うれしそうに震えているのを見ると、つい」
「ひゃっ! ぁ、ぁ……やぁ……!」

 濡れそぼる花芯を咥えられたリシアは甘い悲鳴を上げながら爪先でシーツを引っ掻いた。それに小さく笑ったユリティが先端をひと舐めすると、勢いを失った白濁がとろりとこぼれ落ちる。それを舐め取るように再び花芯に舌を這わせるユリティに、リシアが「もう出なぃ」と涙声で訴えた。
 神官王の大事な初夜だからと美しく整えられたベッドは、いまや淫靡な気配と匂いに満ちていた。若く青いリシアの精臭に混じるのはユリティの成熟した匂いで、それを感じるたびにリシアは追い詰められるような感覚に陥った。応接間で一度繋がった交合口からは注がれた欲望がトロトロとこぼれ落ち、それさえもリシアの快感を刺激する。それに気づきながらもユリティがそこに触れることはない。たたひたすら可憐な花芯を舐めしゃぶり、ほとんど色がなく粘度も失いつつある白濁を熱心に啜り出していた。

「ユリティ、も、そっちは、やだ……」
「そっちとは?」

 聞き返されたリシアがグッと唇を噛む。それは羞恥ゆえの仕草ではなく意地悪をされていると感じての反応だった。それでも疼く体には勝てず、目元を真っ赤にしながら濡れた唇を動かす。

「前、じゃなくて……奥が、いい」

 そう言いながら上半身をベッドに横たえた。仰向けになると、力が抜けた手をゆっくりと動かした。そうして震える足を持ち上げ、膝裏に手を回すと膝をグイッと胸に引き寄せる。

「ね……? 奥がいい……」

 そう言いながら小振りな尻たぶをキュッと持ち上げた。やや閉じ気味の太ももの間にはくたりとした花芯が姿を覗かせ、その下にある袋は視線を感じるのかヒクッと震えている。それより下には慎ましやかな交合口が誘うようにひくついていた。

「んっ」

 視線に耐えきれず、リシアが体を震わせた。それにつられるように交合口からとろりと白濁がこぼれ落ちる。その感触すら快感と捉える華奢な腰がふるっと震えた。
 無理やり貫かれた交合口は赤くなり、わずかに縁が腫れている。痛々しそうな様子ではあるものの痛みはないのか、リシアの表情は完全にとろけていた。赤くなった交合口も貫くものを求めるようにふくふくと開閉をくり返している。

「こうした姿は贄そのものですね。金竜の血脈でありながら、もう一つの祖である贄の血を色濃く受け継いだ母親の影響でしょうか」

 独りごちながらユリティの指が震える太ももを撫でた。刺激に尻が揺れ、交合口からさらに白濁が流れ落ちる。

「そんなあなたの母親は、もう一人の金竜の子の血脈であった王と交わりました。そうして貴方が生まれました。金竜の子は一つとなり贄の肉体をも手に入れた」

 太ももを撫でていたユリティの指が空になった二つの袋を撫でた。それに「んんっ」と声を漏らしたリシアが、我慢できないというように「はやく」と訴える。

「ねぇ、はやく……ユリティの、挿れて……?」

 閉じていた太ももを少し開き、とろけた顔を覗かせた。白い肌は快感に赤く染まり黒眼は情欲の色を濃くしている。

「愛しい金竜が産み落とした二人を、その血脈を見守るだけで満足でした。そのためにわたしはこちら側に留まり、肉体を失っても人として生き続けてきました。しかし、こうしていざ手にすると……こちら側に留まった甲斐があったというもの」

 誘うように開閉する交合口にユリティの指が触れる。それだけで「ぁん」と声を上げるリシアに碧眼が細くなった。

「残滓すらないほど精を吐き出せば血の効果はほぼ抜けたでしょう」
「ねぇ、指じゃ嫌だ。はやくユリティの、挿れて」

 淫らに腰を揺らすリシアを咎めるようにユリティの指先が交合口の縁を引っ掻いた。

「んっ!」
「そう急くものではありません。本来神に捧げられる贄は純潔でなくてはなりません。初夜で純潔を散らされるとき、破瓜はかの痛みを与えられた贄は生涯その神のものとなる。古いことわりですが、いまでもこちら側に残る神と贄との決め事です」

 ユリティの体が期待に震えるリシアの体に覆い被さった。小柄なリシアはすっぽりと覆われることにすら喜びを感じるのか、「ユリティ」と高揚した声で名を口にする。

「これは花嫁であるあなたが最初にわたしに捧げるご褒美のようなものです」
「ご褒美……?」
「えぇ。先ほどの交わりはわたしの血で酩酊した状態でのこと。あれでは痛みは感じません。あれはあなたの開花を促し羽虫を駆除するための、いわば余興のようなものです」

 うっとり聞き入っていたリシアの体がピクッと動いた。交合口に熱く硬いものが触れたのがわかり「あぁ」と甘いため息を漏らす。

「これがまことの初夜。わたしをここで感じるのです」

 ここと言いながら、ユリティの指が股の間から覗く平らな腹に触れた。つつくように触れ、へその下あたりでくるりと動かす。途端にその奥が疼くような熱を感じる。腹の内側がカッと熱くなったような気がしたリシアが問いかけるようにユリティを見た。

「ここをわたしに貫かれるのですよ。さぁ、思う存分破瓜の痛みを感じなさい」

 美しく微笑んだユリティが硬くそそり勃つ欲望を一気に突き入れた。

「――……っ!」
「く……っ」

 リシアが声にならない悲鳴を上げた。息を呑むほどの締めつけにユリティまでもが声を漏らす。それでも腰を止めることはなく一気に最奥へと先端を押し込んだ。途中ツプッと何かを貫いた感覚にユリティが笑みをこぼす。
 グッと腰を押しつけ、改めて体の下で震える花嫁に視線を向けた。美しい黒眼は大きく見開かれ、濡れた唇はわななくように震えている。真っ白な体は硬直しているのかぴくりとも動かず、膝裏を掴む手にはより一層肌を白くするほど力が入っていた。

「これが破瓜の痛みです。わたしに痛みを与えられたあなたは、わたしだけの贄となりました。ほかのいかなる神々にも手出しはさせません。こちら側に残っているもの、再びこちら側にやって来ようとするもの、それらすべてからこの世界ごと守ってあげましょう」
「……っ、……ぁ、……ん」

 ユリティを受け入れている肉壁がぐにゅうと蠢いた。ただ食い締めていただけのそこが、吸いつき舐め回すように熱塊に絡みつく。

「愛しいリシア。かつての金竜のように、贄たちのように、わたしの腕の中で咲き乱れなさい」
「ユ……ティ」

 リシアとユリティの視線が絡み合った瞬間、黒眼の縁に黄金の輪が光った。一瞬の輝きを見せた黒眼はすぐにトロンとなり、艶やかな唇からは「だいすき」という甘い声が漏れる。

「わたしもですよ、愛しい花嫁」
「あ……ぁ……」
「気持ちよくなってきましたか」
「んっ、んぁ、ぁっ、あぁっ」

 リシアの体を突然の快楽が襲った。痛みに硬直していた体を次々と快感が飲み込んでいく。リシアはただユリティだけを感じていた。初めて肌を触れ合わせたはずなのに、遠い昔から知っているような感覚に皮膚がざわめく。体の奥深くを暴かれるのは二度目だというのに貫く熱塊に懐かしさを感じた。

「ユリティ、もっと、もっと」
「随分と中がほころんできましたね。それに……ここもぷくりと膨らんで」
「ひゃあっ!」
「ここを擦ってほしいのだと主張しているようですよ」
「ユリ、ティ……っ、そこ、そこ……っ」
「ここですか?」
「んっ! 気持ち、い……っ、いい……っ!」

 よがるリシアを見下ろしながら、ユリティは熟れ始めた肉壁を満遍なく擦り上げるように腰を動かした。繋がったところからは止めどなく濡れた音が響き、それがますます二人の快感を押し上げる。

「ユリテ、ィっ! もっと、ちょ、だい……っ! もっと、きもち、く、してっ!」
「えぇ、望みのまま、にっ、」
「やぁあっ! きもち、いぃの……っ、もっと、して! ぁあ、あっ、くる、また、気持ちいいの、くる……っ、きちゃ、あぁっ!」

 肉壁がヒクヒクと痙攣しユリティの熱塊を食い締めた。そうかと思えばさらに奥へといざなうように絡みつく。いつの間にかユリティの腰に巻きつけていた細足にも力が入り、快感に太ももを震わせながらリシアが恍惚とした笑みを浮かべた。

「美しい花嫁、わたしだけの愛しいリシア……さぁ、淫らに咲き誇って」
「ぁぁああっ、……っ!」

 ベッドとユリティの間に挟まれていた華奢な体が弓のようにしなった。それを押さえつけるように抱きしめたユリティが思う存分欲望を吐き出す。体内を濡らされることにすら感じたリシアが、息を詰めビクビクと腰を震わせた。

「リシア、わたしだけの花嫁」

 拘束を解いたユリティが体を起こし、腰に絡みつく細い足を労るように撫でた。汗でしっとり濡れた肌の感触を楽しみながら太ももに手をかけ大きく開かせる。そうして衰えることのない熱塊をゆっくりと引き抜いた。

「んぅ、んっ」

 甘い余韻に声を漏らすリシアの顔を見つめ、淫らに震える肢体に視線を向ける。ぷくりと膨らんだ胸の尖りはますます膨らみ、平らな下腹部は断続的に震えていた。さらに下に視線を動かすと濡れた下生えと力を失った花芯が、その奥には飲み込めなかった白濁をこぼす交合口が見えた。
 交合口からトロッとあふれ出した白濁に、ほんのわずか血の色が混じっている。それは本来リシアの体では起こり得ないことだが、たしかに鮮血が混じっていた。

「神に姫だと言われれば体は姫だと勘違いします。そしてわたしがここだと指し示せば、そこに必要なものが現れる」

「ここ」と言いながらユリティの指がへその下をくるりと撫でる。再び腹の内側がカッと熱くなったものの、快感に打ち震えるリシアがその熱に気づくことはない。

「あなたからのご褒美、たしかに頂戴しました」
「ユリ、ティ」
「そのまま眠ってなさい。後片付けはわたしがしておきます」
「ん……ユリティ、だいすき……」

 夢うつつで囁かれた言葉にユリティが優しい口づけで応える。

「わたしもですよ、愛しいリシア」

 花嫁の体を清めたユリティは、眠る頬をひと撫ですると部屋着用のローブを身に着けた。長い金髪を紐で結わえると足音を立てることなく寝室を出る。

(さて、あちらも片付けておくとしますか)

 ユリティが向かったのは応接間だった。そこに残したままの男を領地に送り返さなくてはいけない。ただし本人の意思で戻れるかはわからないが、と独りごちる。

(まぁ、どんな姿になっていても領地の者たちが面倒を見てくれるでしょう)

 こうなることを予見していながら先の神官王はユリティにその座を譲った。いや、神官王だったからこそユリティがただの人間ではないことに気がついた。そして内包する魂にひれ伏した。

(人間ごときがわたし相手に何かできるはずもない)

 ユリティの顔に禍々しくも神々しい笑みが広がる。そうして足を踏み入れた応接間には立ち去ったときと変わらない淫靡な匂いが漂っていた。しかしソファに座ったままのスフォルツは抜け殻のように宙を見つめ、その目には何も映っていなかった。
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