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後宮に繋がれし王子と新たな妃
4 新しい妃2
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お茶会のつぎの日、もしかしてまた誘われるかもしれないと少しだけ身構えていた。けれど、ツアル姫のお付きの女性が黄玉宮にやって来ることはなかった。
それに少しだけホッとしつつ、いつもよりモヤモヤとしたものを感じて気分が滅入る。日課の散歩に出てはみたものの、気分が晴れることはなかった。
「兄上様がいたら、話を聞いてもらえたのに……」
いや、それでは兄上様に甘えすぎだ。ここは塔にいたときとはまったく違う。後宮から出ることは許されていないけれど、中庭の散歩や読書、それに見たことがない花々を楽しむこともできる。そんな贅沢な暮らしをしているのに、これ以上兄上様に迷惑をかけるわけにはいかない。
「それに、兄上様も忙しそうだし」
祖国では魔石を専門に扱う魔術士だったけれど、帝国では魔具の開発に携わっているのだと楽しそうに話していた。きっと新しい仕事にやり甲斐を感じているのだろう。
そんな忙しい兄上様の負担になるようなことはしてはいけない。今度は僕が兄上様を助ける番だ。
「そう思ってはいるけれど、結局僕は何の役にも立っていない」
兄上様は「カナの魔力のおかげで人工魔石の純度を測ることができる。助かっているよ」といつも言ってくれる。でも、本当に僕の魔力が役に立っているのか僕にはわからない。
「兄上様が戻ってくるのは、五日後か」
つまり、軍帝が戻って来るのも五日後ということだ。
「……軍帝に、会いたいな」
口にしたら、こっちのほうが本心のように思えた。僕は兄上様より軍帝に会いたい。会って、あの声で「カナ」と呼んでほしい。燃えるような赤い眼で僕を見てほしい。
そう思うだけで体の奥が少し熱くなる。そうしてほんの少し、魔力が蠢くようなものを感じた。
「ふぅ」
ため息をつきながらぼんやりしていると、ツアル姫から贈り物があるので会いたいという連絡が来た。
本当は会いたくない。ツアル姫を思い出すだけで気が重くなる。けれど断る理由もない。それに、いずれは軍帝の正妃になる姫の訪問を断ることはできない。
僕は「わかりました」と答え、それからもう一度小さく息を吐いた。
部屋にやって来たツアル姫は、お付きの女性たちにたくさんの服を持たせていた。どうしたのだろうと思っていると、お付きの女性の一人が服を飾る魔具を取り出し手際よく服を飾っていく。すべて男性が着るような服で、随分高級な生地を使っているように見えた。
「すべてカナリヤ様のために仕立てたものですわ。お気に召しましたらよいのですけれど」
「僕のため、ですか?」
まさか僕の服だとは思わず、驚いてツアル姫を見た。
淡い空色のドレスを着たツアル姫は、今日も髪を綺麗に結い上げて色とりどりの髪飾りを付けている。胸には真っ赤な宝石の首飾りがキラキラと光っていた。
「えぇ、そうですわ。後宮を去る妃には、後宮に残る妃が贈り物をするのが帝国の慣習ですの。本来なら首飾りや髪飾りを贈るのですけれど、カナリヤ様は男性ですからそういったものは必要ないでしょう? だから、代わりに服を何着か仕立てさせましたの。わたくしの生家が昔から懇意にしている仕立て屋ですから、品も腕も保証しますわ」
もう一度並べられた服を見た。離れたところから見ても、とてもよい品だということがわかる。それに生地だけでなく刺繍もすばらしく、はっきりとは見えないけれどボタンも光っているように見えた。こうしたものを軍帝が着ているところは見たことがないけれど、おそらく帝国の貴族が着る服に違いない。
それはわかったけれど、ツアル姫が僕に服を贈ろうとしている理由がわからなかった。お礼を告げるべきか悩みつつ、並んだ服を一着ずつ眺める。
「やはり、少し地味でしたかしら」
ため息をつくようなツアル姫の言葉に、慌てて「そんなことはありません」と答えた。
服が地味かどうかはよくわからないけれど、高価なものだということは理解している。そもそも何も言えなかったのは受け取ってよいのかわからないからだ。
「去られる方が身につけるものですから、あまり派手になってはよくないかと思いましたの。どちらへ降嫁されるのか存じ上げませんけれど、いずれの家格に行かれても大丈夫なように仕立てていますから、そこは安心してくださいませ」
「こうか……?」
聞いたことがない言葉に、思わずツアル姫のほうを見た。
「あら、ご存知なくて? 後宮を去る妃は、家臣のどなたかに嫁がれることが多いのですわ。陛下の妃であった方を娶るのですから、家臣にとっては至上の誉れ。陛下にとっても家臣への褒美としてこれほどのものはございませんもの」
ツアル姫の指が真っ赤な宝石を意味ありげに撫でている。
「それで、カナリヤ様はいつ後宮をお出になりますの?」
僕を見る碧眼が笑っているように見えた。
気がついたら窓の外は真っ暗になっていた。途中でお付きの人たちが部屋の魔燈をつけてくれたような気がするけれど、いつ夜になったのかよくわからない。
明るい部屋には、ツアル姫が持って来た何着もの服が飾られたままだった。それらをぼんやりと眺めながら、後宮を去る僕への贈り物だというツアル姫の言葉を思い出した。
そういえば、僕はちゃんとお礼を言えただろうか。思いだそうとしけれど、頭がぼんやりして思い出すことができない。それ以前に、いつツアル姫たちが部屋を出て行ったのかさえ思い出せなかった。
「……少し、溜まってきたかな」
体の奥に蠢くような魔力を感じるということは、澱みが溜まってきたのかもしれない。そう考え、そんなはずはないかと少しだけ笑ってしまった。
「いつも吐き出しているから、溜まるわけがない」
毎日のように軍帝が僕の澱んだ魔力を食べているのだから、溜まるはずがない。それに第二都市に向かう前日も明け方まで抱かれた。「しばらく抱けないぶん、今夜は思う存分抱き潰すからな」と宣言したとおり、精根尽き果てるまで魔力を吐き出すことになった。おかげで軍帝を見送ることができなくなるところだった。
あのとき根こそぎ魔力を吐き出したのだから、澱みを感じるはずがない。たった数日で魔力が澱むことなんてあり得ない。それなのに、体の深いところで真っ黒な澱みが静かに渦を巻いているような気がしてならなかった。
この日、僕は帝国に来て初めて夕食を食べなかった。どうしても喉を通らず、果実水だけを飲んで下げてもらった。そして、お付きの人たちにお願いして湯浴みもやめてもらうことにした。駄目だと言われるかと思ったけれど、お付きの人たちは何も言うことなく部屋を出て行った。
「これも軍帝の指示なのかな」
真っ白なお付きの人たちを見送った僕は、寝台に倒れるように横になった。
それに少しだけホッとしつつ、いつもよりモヤモヤとしたものを感じて気分が滅入る。日課の散歩に出てはみたものの、気分が晴れることはなかった。
「兄上様がいたら、話を聞いてもらえたのに……」
いや、それでは兄上様に甘えすぎだ。ここは塔にいたときとはまったく違う。後宮から出ることは許されていないけれど、中庭の散歩や読書、それに見たことがない花々を楽しむこともできる。そんな贅沢な暮らしをしているのに、これ以上兄上様に迷惑をかけるわけにはいかない。
「それに、兄上様も忙しそうだし」
祖国では魔石を専門に扱う魔術士だったけれど、帝国では魔具の開発に携わっているのだと楽しそうに話していた。きっと新しい仕事にやり甲斐を感じているのだろう。
そんな忙しい兄上様の負担になるようなことはしてはいけない。今度は僕が兄上様を助ける番だ。
「そう思ってはいるけれど、結局僕は何の役にも立っていない」
兄上様は「カナの魔力のおかげで人工魔石の純度を測ることができる。助かっているよ」といつも言ってくれる。でも、本当に僕の魔力が役に立っているのか僕にはわからない。
「兄上様が戻ってくるのは、五日後か」
つまり、軍帝が戻って来るのも五日後ということだ。
「……軍帝に、会いたいな」
口にしたら、こっちのほうが本心のように思えた。僕は兄上様より軍帝に会いたい。会って、あの声で「カナ」と呼んでほしい。燃えるような赤い眼で僕を見てほしい。
そう思うだけで体の奥が少し熱くなる。そうしてほんの少し、魔力が蠢くようなものを感じた。
「ふぅ」
ため息をつきながらぼんやりしていると、ツアル姫から贈り物があるので会いたいという連絡が来た。
本当は会いたくない。ツアル姫を思い出すだけで気が重くなる。けれど断る理由もない。それに、いずれは軍帝の正妃になる姫の訪問を断ることはできない。
僕は「わかりました」と答え、それからもう一度小さく息を吐いた。
部屋にやって来たツアル姫は、お付きの女性たちにたくさんの服を持たせていた。どうしたのだろうと思っていると、お付きの女性の一人が服を飾る魔具を取り出し手際よく服を飾っていく。すべて男性が着るような服で、随分高級な生地を使っているように見えた。
「すべてカナリヤ様のために仕立てたものですわ。お気に召しましたらよいのですけれど」
「僕のため、ですか?」
まさか僕の服だとは思わず、驚いてツアル姫を見た。
淡い空色のドレスを着たツアル姫は、今日も髪を綺麗に結い上げて色とりどりの髪飾りを付けている。胸には真っ赤な宝石の首飾りがキラキラと光っていた。
「えぇ、そうですわ。後宮を去る妃には、後宮に残る妃が贈り物をするのが帝国の慣習ですの。本来なら首飾りや髪飾りを贈るのですけれど、カナリヤ様は男性ですからそういったものは必要ないでしょう? だから、代わりに服を何着か仕立てさせましたの。わたくしの生家が昔から懇意にしている仕立て屋ですから、品も腕も保証しますわ」
もう一度並べられた服を見た。離れたところから見ても、とてもよい品だということがわかる。それに生地だけでなく刺繍もすばらしく、はっきりとは見えないけれどボタンも光っているように見えた。こうしたものを軍帝が着ているところは見たことがないけれど、おそらく帝国の貴族が着る服に違いない。
それはわかったけれど、ツアル姫が僕に服を贈ろうとしている理由がわからなかった。お礼を告げるべきか悩みつつ、並んだ服を一着ずつ眺める。
「やはり、少し地味でしたかしら」
ため息をつくようなツアル姫の言葉に、慌てて「そんなことはありません」と答えた。
服が地味かどうかはよくわからないけれど、高価なものだということは理解している。そもそも何も言えなかったのは受け取ってよいのかわからないからだ。
「去られる方が身につけるものですから、あまり派手になってはよくないかと思いましたの。どちらへ降嫁されるのか存じ上げませんけれど、いずれの家格に行かれても大丈夫なように仕立てていますから、そこは安心してくださいませ」
「こうか……?」
聞いたことがない言葉に、思わずツアル姫のほうを見た。
「あら、ご存知なくて? 後宮を去る妃は、家臣のどなたかに嫁がれることが多いのですわ。陛下の妃であった方を娶るのですから、家臣にとっては至上の誉れ。陛下にとっても家臣への褒美としてこれほどのものはございませんもの」
ツアル姫の指が真っ赤な宝石を意味ありげに撫でている。
「それで、カナリヤ様はいつ後宮をお出になりますの?」
僕を見る碧眼が笑っているように見えた。
気がついたら窓の外は真っ暗になっていた。途中でお付きの人たちが部屋の魔燈をつけてくれたような気がするけれど、いつ夜になったのかよくわからない。
明るい部屋には、ツアル姫が持って来た何着もの服が飾られたままだった。それらをぼんやりと眺めながら、後宮を去る僕への贈り物だというツアル姫の言葉を思い出した。
そういえば、僕はちゃんとお礼を言えただろうか。思いだそうとしけれど、頭がぼんやりして思い出すことができない。それ以前に、いつツアル姫たちが部屋を出て行ったのかさえ思い出せなかった。
「……少し、溜まってきたかな」
体の奥に蠢くような魔力を感じるということは、澱みが溜まってきたのかもしれない。そう考え、そんなはずはないかと少しだけ笑ってしまった。
「いつも吐き出しているから、溜まるわけがない」
毎日のように軍帝が僕の澱んだ魔力を食べているのだから、溜まるはずがない。それに第二都市に向かう前日も明け方まで抱かれた。「しばらく抱けないぶん、今夜は思う存分抱き潰すからな」と宣言したとおり、精根尽き果てるまで魔力を吐き出すことになった。おかげで軍帝を見送ることができなくなるところだった。
あのとき根こそぎ魔力を吐き出したのだから、澱みを感じるはずがない。たった数日で魔力が澱むことなんてあり得ない。それなのに、体の深いところで真っ黒な澱みが静かに渦を巻いているような気がしてならなかった。
この日、僕は帝国に来て初めて夕食を食べなかった。どうしても喉を通らず、果実水だけを飲んで下げてもらった。そして、お付きの人たちにお願いして湯浴みもやめてもらうことにした。駄目だと言われるかと思ったけれど、お付きの人たちは何も言うことなく部屋を出て行った。
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