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4 勇者の胸のうち
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「死ぬんじゃねぇ! こんな、たかが腹に穴が空いたくらいで魔王が死んだりするんじゃねぇよッ」
なんという無茶を言うのだ。そもそも穴を開けたのは勇者ではないか。それに魔王を滅ぼすために存在している聖剣で思い切り腹を抉っておいて死ぬなとはどういうことだろう。
「やっぱりおまえは神官たちに聞いてた魔王とは違う。こんなヤツが人間を滅ぼす魔王のはずがねぇ」
勇者の足音が近づいて来るのが聞こえる。目はすでに使い物にならなくなってしまったが、耳はまだ何とか音を拾えるようだ。
「こんな……勇者に斬られ放題の魔王なんて、観察とかふざけたことを言いやがる魔王なんて魔王なわけねぇだろッ」
すぐそばで勇者の怒鳴り声がした。それにいつもとは違った雰囲気で……そうだ、声に嗚咽が混じっているように聞こえる。
(やはり最後に見たのは涙だったのか)
なぜ泣いているのかはわからないが、できればもっと早くに見たかった表情だ。
「死なせねぇ……。やっぱりおまえは死なせねぇから」
いくら勇者でもそれは無理というものだ。たとえ腹の穴を塞いだとしても、魔力の根源がなくなったこの体が朽ちるのを止めることはできない。そろそろ耳も使い物にならなくなるだろう。
「死ぬなよ……」
(だから、それは無理だと……うん?)
不意に腹の辺りにおかしな熱を感じた。抉られたときも熱く感じたが、それとは別のもう少し穏やかな熱だ。
(そういえば足元もおかしい)
最後は血溜まりの中に立っていたはずだ。ところがなぜか立っている感覚がない。「変だな」と思いながらほんの少し動かした手に硬いものが触れた。この冷たさは……床だ。
(いつの間に倒れたのだ?)
意識が揺らいでいたから倒れたことにも気づかなかったのだろうか。……いや、それにしては頭の辺りに床ではないものを感じる。少し柔らかく温かいその感触も気になるが、腹を覆う熱も気になった。
「……クソッ! もっと早く、もっとたくさん出ねぇのかよッ」
顔のすぐ近くで勇者の声がした。一体どうしたというのだろう。それに「出る」というのは一体……?
「もっとだ……もっと……!」
勇者の声に反応するかのように腹を覆う熱がさらに強くなった。それに頭が痺れるようなゾクゾクするものも感じる。
「死なせねぇ。おまえは絶対に死なせねぇから」
(まだ、そんなことを……)
諦めが悪いなと思っていると、頭がグイッと持ち上がった。……もしかして、わたしの頭は勇者の腕に乗っているのではないだろうか。
(体は床に倒れていて、それなのに頭は勇者の腕の上……?)
自分がどういう状況なのかまったくわからない。消滅寸前だというのに、この状況が気になって仕方がなかった。
「絶対に死なせねぇからな。人間にとっちゃ魔王かもしれねぇけど、俺にとっておまえは魔王なんかじゃねぇ。だから、絶対に死なせねぇ」
段々と胸が苦しくなってきた。消滅するのだから当然かもしれないが、それにしては呼吸だけが苦しいように感じる。それに腹のあたりがジクジクして、肉が焼けるような嫌な感じがした。ところが鼻に入ってきたのは嫌な臭いではなく花のような香りだ。
一体どういうことだろう。いろいろ気になるのに息苦しさと腹の熱さに訳がわからなくなる。見えない目を開くと、吐息のようなものが頬に触れるのを感じた。
「おまえが言うとおりだよ。俺はたぶん……おまえに恋してるんだ」
(……うん?)
「いや、たぶんじゃねぇ。俺はおまえが好きだ。だから絶対に死なせたりしねぇ」
先ほどから勇者は何を言っているのだろうか。勇者がわたしに恋をしていることは以前からわかっていた。だからこそ日々熱心に観察をしていたのだ。
「だから死ぬな」
話がよく見えない。目を閉じたわたしは残り少ない魔力を自分の眼球に集めた。そうして勇者の声がしたほうに頭を向け、ゆっくりと瞼を開く。
「……なぜ、顔を赤らめながら、泣いて、いる?」
思っていたよりもずっと近くにあった勇者の顔は真っ赤だった。それに湖面のように潤んだ碧眼からはポタポタと涙がこぼれている。
「美しい、瞳、だな」
最期にこれほど美しいものを見ることができるとは思わなかった。これなら心置きなく消滅することができる。そう思って再び目を閉じると「魔王!」という叫び声が響いた。同時に全身を熱いものに包まれる。
(最期まで、わからないこと、ばかりだ)
「魔王!」
今度は全身を何かに縛られるような苦しさを感じた。思わず目を開くと、視界にうっすらと金の髪が見えた。
(……これは……)
一瞬、抱擁ではないかと考えた。しかし、なぜ勇者がわたしを抱きしめているのだろう。それに泣いている理由もわからない。
次々と疑問が浮かんでは散り散りになり、意識がすぅっと遠のくのを感じた。
・ ・
「なるほど、あの花のような香りは魔力の匂いだったのか。ということは、腹の穴が塞がったのは勇者せいということだな」
「せいとか言うなよ。それに塞がってなけりゃあんた死んでたんだぞ?」
「あぁ、すまない。まだうまく理解できなくて混乱しているのだ」
「……いや、別に責めてるわけじゃねぇけどよ」
ベッドの傍らに座る勇者の手がわたしの手を握りしめる。こうして肌を触れ合わせると、より効率よく勇者の魔力をわたしの体内に流し込めるというのは数日前にわかったことだ。
聖剣で腹を抉られたわたしは、体内のほとんどの魔力を失って消滅する寸前だった。ところが勇者が自分の魔力を注ぎ込んだおかげで腹の穴が塞がり、結果として消滅の危機を免れることができた。
「まさか魔族であるわたしの体が勇者の魔力を受け入れられるとは思わなかった」
魔族と勇者の魔力は正反対の性質を持つ。本来なら勇者の魔力を注ぎ込まれた段階で魔族であるわたしは消えるはずだった。ところがなぜか腹の穴が塞がり、抉り取られた根源まで再生され始めている。
「俺だってうまくいくとは思ってなかった。そもそも俺は魔法が使えねぇし、治癒魔法なんて使い方すら知らねぇし。あのときはとにかく必死だったんだよ」
「ふむ。これは治癒魔法というより、死者復活の魔法に近いかもしれないな」
「死者復活?」
「反魂、蘇生、そういう言葉で表現される魔法だ。さすがのわたしもそこまでの力は持っていなかったが、さすがは勇者といったところか」
「ほめんなよ、照れるだろ」
目元を赤く染めながら口元を緩める勇者の顔は、意識が戻ってから何度も目にする表情だ。それをベッドに横になったまま「愛らしいな」と見つめる。
(穴が塞がったとはいえ、再生されつつある魔力が馴染むにはもう少し時間がかかるだろう)
根源は再生されつつあるが以前とは何かが違う。勇者の魔力の影響を受けているからだろうが、うまく魔力を動かすことができないままだ。
(しばらくはおとなしくしているか)
勇者からも「まだ寝てろ」と毎日のように言われている。そうして寝ているわたしの手を握り、自分の魔力を注ぎ続けていた。
「ところで、本当に帰らなくていいのか?」
「だからいいんだって言ってるだろ」
わたしの質問に勇者の口が不機嫌そうに尖った。そういう反応をするとわかっていても、気になって尋ねずにはいられない。
わたしの腹を抉った日以降、勇者は一度も魔王城から出ていない。人間たちの元に帰らなくていいのかと尋ねると、「あんなむかつくヤツらのところになんか二度と戻らねぇよ」と吐き捨てるように答えるばかりだ。
それが本心だと示したいのか、持っていた帰還魔法の魔法具まで壊してしまった。それに魔王城の地下に聖剣を封印するという荒技にまで出た。
この城の地下にはすべての魔族を生み出した魔力の泉がある。魔力が強い者しか近づけない場所のため、歴代魔王でも直接見たことがあるのはわたしを含めてほんの一握りだろう。そんな場所に難なく入り込んだ勇者は、持っていた聖剣を泉に突き刺してしまった。
魔力の泉は異物である聖剣を喰らおうとし、聖剣は逆に泉の魔力を焼き尽くそうとしている。地下で蠢く二つの魔力の動きはベッドで寝ているわたしにも感じられた。
(あれでは人間たちが聖剣を取り戻すのは難しいだろうな)
聖剣をあんなところに封印してしまって本当によかったのだろうか。そのことも何度か尋ねたものの、そのたびに「いいんだよ」とやっぱり口を尖らせた。
いろいろわからないことばかりだが、こうして傍らに勇者がいる日常というのは悪くない。むしろわたし自身が望んでいた状況だ。これなら心置きなく観察することができるし知らない表情をじっくり見ることもできる。しばらくは記録書に書き記すことができないため、発見した様々なことを忘れないようにと日々心がけているところだ。
「でもよ、なんで俺があんたに恋してるってわかったんだ?」
「あぁ、そのことか。それは先々代魔王が書き記した書物を読んだからだ」
「先々代の魔王? 書物? よくわかんねぇけど、それのおかげで俺は自分の気持ちに気づけた。それに勇者を辞めるきっかけにもなったし、やっと自由にもなれた。これからは俺の好きに生きるんだ」
うれしそうに笑う勇者の指が、するするとわたしの頬を撫でた。
(勇者は肌を撫でるのが好きなのだな)
握った手の甲を撫でられるのはいつものことで、腕や肩、頬、それに唇を撫でられるようにもなった。あまりに楽しそうに撫でるから理由を聞き損ねているが、顔を撫でられることには正直戸惑っている。
(だからといって「やめてくれ」とも言いづらいしな)
ちらりと見た勇者の碧眼は相変わらずキラキラと瞬いていた。この輝きを曇らせるようなことは言いたくない。
「それにしても、あんたって本当に変わった魔王だよな」
「そうか?」
「そうだろ? 最初は何度攻撃しても防御壁に傷をつけることしかできなかったのに、急にあちこち攻撃を食らうようになってさ。おまけに斬られてもニコニコ笑ってるわ、ちょっと不気味だったぞ?」
「そうか、わたしはそんなに笑っていたのか」
「なんだ、気づいてなかったのかよ」
「観察に夢中になっていたからな。笑っているように見えたのは、期待以上に観察が楽しかったからだろう」
わたしの言葉に勇者が「ははっ、やっぱりおもしれぇ」と笑った。
「魔王が勇者を観察するなんて聞いたことねぇ」
「歴代の魔王はしなかったかもしれないが、わたしは初めて見る人間というものが気になって仕方なかったのだ。それに先々代魔王の書物でしか読んだことがなかった恋という現象に出くわすこともできた。直接観察できる機会は二度とないだろうと思ったら、ますます夢中になった」
「ほら、やっぱり変だ。うん、あんたはやっぱり魔王なんかじゃねぇよ」
そう言った勇者が握っていたわたしの手を持ち上げ、なぜか指先に唇で触れた。そうして伺うようにわたしを見る。
「どうかしたか?」
「うーん、人間とはいろいろ違うんだな」
「違う? 何がだ?」
「ま、そういうところもこれからのお楽しみってことにしとくか」
こうして話すようになってから、勇者はたびたびわたしが理解できないことを口にする。中には先々代魔王が記した言葉とよく似たことを口にすることもあった。気になってどういう意味か尋ねても「お楽しみってことで」と言って教えてくれない。
「それにしてもあんなにムカついてたのに、まさかこんなことになるなんてなぁ」
「むかつく……?」
「そうだよ。最初はさ、何やっても表情一つ変わらねぇことにすっげぇムカついた。スカした美形ってのもムカついた。俺は勇者なのに、目の前の魔王を倒さないといけないのにって焦ってもいた。それにあいつらからも……、あー、最初に一緒に来てたヤツらな? あいつらが『早く魔王を殺せ。殺せないのなら、せめて囮りになって殺す機会を作れ』ってうるさくてさ。役に立たねぇくせに口だけは達者なんだよな、神殿が選ぶ奴らって」
なるほど、あの者たちは勇者と意見が合わなくなったから一緒に来なくなったのか。それにしても「囮になって」というのはどういうことだろう。一行にとって勇者とは大切な存在ではなかったのだろうか。
(……やはり不愉快だな)
もう顔すら覚えていない一行だが、次に現れたら真っ先に排除しておこう。
「メチャクチャ攻撃してんのに、あんたは全然反撃しようとしねぇ。何とかしないとって聖剣を鍛え直したりしたけど、それも通用しねぇ。そのうち、なんで反撃しないんだろうって思うようになった。そしたら急に攻撃が当たるようになるし、斬られてもニコニコ笑ってるし、正直ちょっと怖かった」
「そうか」
「ま、ある意味魔王っぽかったけどな? とにかく聞いてた魔王と全然違うから、もっと自分の頭で考えないとって思うようになったんだ。だけど神殿のヤツらがさ……」
「さっさと殺せと言ったのだろう?」
「魔王を殺さない限り人間は滅ぼされる。おまえは魔王を殺すために生まれてきたのだから、役目を果たせ。……小せぇ頃から毎日言われてきたことだけどよ。俺は魔王を殺すことでしか生きる意味がねぇのかと思ったら、なんかすげぇ虚しくなったんだよな」
その解釈は間違っていない。勇者は魔王を倒すために生まれ、そのためだけに存在する。それは歴代魔王も書き記してきたことで、わたしもそう理解していた。しかし勇者は違うと思っているらしい。
(そんなふうに考える勇者も変わっているじゃないか)
しかし、それを指摘することはできなかった。
(なんというか、この表情が口をつぐませるというか……)
緩んだ口元は笑っているというより悲しんでいるように見えた。そのせいか愛らしさより憐憫さを感じる。
「どうしていいのか正直わからなくなった。あんたは聞いてた魔王と全然違うし、俺を観察したいとか言ってメガネまでかけるし。おかげで魔王の行動が気になって眠れなくなった。丸三日眠れなくて、あの日は睡眠不足だったんだ。そのせいで力加減を間違えて、それで腹に穴を……ごめん」
「謝る必要はない。それにおまえの魔力のおかげで消滅しなかったのだ。そもそも魔王に謝る勇者というのも大概おかしなものだと思うぞ?」
「あー……ははっ。そっか、そうだよな」
今度は照れくさそうに笑っている。先ほどの悲しそうな表情より、勇者にはこうした顔のほうが合っている。そう思うようになったのも、毎日そばで勇者をじっくり観察するようになったからに違いない。間近で観察できるのは喜ばしいことなのだが……。
「首を撫でるのはやめてくれないか?」
さすがに気になった。残念がられるかもしれないが、くすぐったいやら指の熱が気になるやらで会話に集中できない。すると一瞬だけ止まった指先が、なぜか耳たぶをキュッと摘んできた。
「だから……」
「ムリ」
「無理?」
「好きなヤツが目の前にいるのに、触らないなんてムリ。それにできるだけ魔力を注いでおきてぇし。そうすりゃ、きっと早く元に戻る。元に戻ればやりたいこともできる」
「やりたいこと? それは何だ?」
「元に戻ってからのお楽しみな」
満面の笑みを浮かべる勇者の顔に、なぜか胸の奥がざわりとした。
それにしても、これほどあちこち触られることになるとは思わなかった。おかげで勇者の指が熱いことも、筋肉質な体でも指先は柔らかいのだということがわかった。先々代魔王の書物には“触れ合うようになれば恋の成就”と書いてあったが、これで成就したことになるのだろうか。
(いや、魔力を供給するための触れ合いでは恋の触れ合いにはならないか)
しかし魔力供給のためなら手に触れるだけで十分なはずなのに、なぜ耳にまで触れるのだろう。耳に触れられると、くすぐったいというより首がぞわっとして落ち着かなくなる。
(毎日そばで観察しているというのに、わからないことばかりが増えていくな)
だが、これからは焦って観察する必要はない。勇者はわたしのそばにずっといると話しているし、それなら一つずつゆっくり知っていけばいい。
期待に少し胸が高鳴ったところで「ふぁ」とあくびが出てしまった。
「眠くなったのか?」
「あぁ……魔力が完全に交わるまで、どうにも眠くなるようだ」
「へぇ。……まさか、体が交わるときも眠くなったりはしないよな?」
「体……なんだ……?」
「いや、それもお楽しみってことでいいや。それより早く元に戻れよな。そろそろ俺のほうがガマンできなくなりそうだからさ」
何を我慢しているのだろうか。こうして理解できない言葉が日々増えるせいか気になって仕方がない。先々代魔王の書物を読み返せばわかるのかもしれないが、元に戻るまでは絶対安静だと言って書物を読むことすら禁じられてしまった。
(自分の食事すら傍らで取るくらいだしな)
この城には勇者の休息のためにと用意しておいた人間用の食料がある。勇者にそれを食べるようにと言うと、毎回わたしの傍らで食べるようになった。まるでひとときも離れたくないというような姿に、なんと愛らしいのだろうと密かに感動しているところだ。
「は~、やっぱおまえ美人だな」
頬に熱くて柔らかな何かが触れたような気がした。それに何か話している声も聞こえたが、眠気が勝っていたわたしはそのまま深い眠りに落ちていった。
なんという無茶を言うのだ。そもそも穴を開けたのは勇者ではないか。それに魔王を滅ぼすために存在している聖剣で思い切り腹を抉っておいて死ぬなとはどういうことだろう。
「やっぱりおまえは神官たちに聞いてた魔王とは違う。こんなヤツが人間を滅ぼす魔王のはずがねぇ」
勇者の足音が近づいて来るのが聞こえる。目はすでに使い物にならなくなってしまったが、耳はまだ何とか音を拾えるようだ。
「こんな……勇者に斬られ放題の魔王なんて、観察とかふざけたことを言いやがる魔王なんて魔王なわけねぇだろッ」
すぐそばで勇者の怒鳴り声がした。それにいつもとは違った雰囲気で……そうだ、声に嗚咽が混じっているように聞こえる。
(やはり最後に見たのは涙だったのか)
なぜ泣いているのかはわからないが、できればもっと早くに見たかった表情だ。
「死なせねぇ……。やっぱりおまえは死なせねぇから」
いくら勇者でもそれは無理というものだ。たとえ腹の穴を塞いだとしても、魔力の根源がなくなったこの体が朽ちるのを止めることはできない。そろそろ耳も使い物にならなくなるだろう。
「死ぬなよ……」
(だから、それは無理だと……うん?)
不意に腹の辺りにおかしな熱を感じた。抉られたときも熱く感じたが、それとは別のもう少し穏やかな熱だ。
(そういえば足元もおかしい)
最後は血溜まりの中に立っていたはずだ。ところがなぜか立っている感覚がない。「変だな」と思いながらほんの少し動かした手に硬いものが触れた。この冷たさは……床だ。
(いつの間に倒れたのだ?)
意識が揺らいでいたから倒れたことにも気づかなかったのだろうか。……いや、それにしては頭の辺りに床ではないものを感じる。少し柔らかく温かいその感触も気になるが、腹を覆う熱も気になった。
「……クソッ! もっと早く、もっとたくさん出ねぇのかよッ」
顔のすぐ近くで勇者の声がした。一体どうしたというのだろう。それに「出る」というのは一体……?
「もっとだ……もっと……!」
勇者の声に反応するかのように腹を覆う熱がさらに強くなった。それに頭が痺れるようなゾクゾクするものも感じる。
「死なせねぇ。おまえは絶対に死なせねぇから」
(まだ、そんなことを……)
諦めが悪いなと思っていると、頭がグイッと持ち上がった。……もしかして、わたしの頭は勇者の腕に乗っているのではないだろうか。
(体は床に倒れていて、それなのに頭は勇者の腕の上……?)
自分がどういう状況なのかまったくわからない。消滅寸前だというのに、この状況が気になって仕方がなかった。
「絶対に死なせねぇからな。人間にとっちゃ魔王かもしれねぇけど、俺にとっておまえは魔王なんかじゃねぇ。だから、絶対に死なせねぇ」
段々と胸が苦しくなってきた。消滅するのだから当然かもしれないが、それにしては呼吸だけが苦しいように感じる。それに腹のあたりがジクジクして、肉が焼けるような嫌な感じがした。ところが鼻に入ってきたのは嫌な臭いではなく花のような香りだ。
一体どういうことだろう。いろいろ気になるのに息苦しさと腹の熱さに訳がわからなくなる。見えない目を開くと、吐息のようなものが頬に触れるのを感じた。
「おまえが言うとおりだよ。俺はたぶん……おまえに恋してるんだ」
(……うん?)
「いや、たぶんじゃねぇ。俺はおまえが好きだ。だから絶対に死なせたりしねぇ」
先ほどから勇者は何を言っているのだろうか。勇者がわたしに恋をしていることは以前からわかっていた。だからこそ日々熱心に観察をしていたのだ。
「だから死ぬな」
話がよく見えない。目を閉じたわたしは残り少ない魔力を自分の眼球に集めた。そうして勇者の声がしたほうに頭を向け、ゆっくりと瞼を開く。
「……なぜ、顔を赤らめながら、泣いて、いる?」
思っていたよりもずっと近くにあった勇者の顔は真っ赤だった。それに湖面のように潤んだ碧眼からはポタポタと涙がこぼれている。
「美しい、瞳、だな」
最期にこれほど美しいものを見ることができるとは思わなかった。これなら心置きなく消滅することができる。そう思って再び目を閉じると「魔王!」という叫び声が響いた。同時に全身を熱いものに包まれる。
(最期まで、わからないこと、ばかりだ)
「魔王!」
今度は全身を何かに縛られるような苦しさを感じた。思わず目を開くと、視界にうっすらと金の髪が見えた。
(……これは……)
一瞬、抱擁ではないかと考えた。しかし、なぜ勇者がわたしを抱きしめているのだろう。それに泣いている理由もわからない。
次々と疑問が浮かんでは散り散りになり、意識がすぅっと遠のくのを感じた。
・ ・
「なるほど、あの花のような香りは魔力の匂いだったのか。ということは、腹の穴が塞がったのは勇者せいということだな」
「せいとか言うなよ。それに塞がってなけりゃあんた死んでたんだぞ?」
「あぁ、すまない。まだうまく理解できなくて混乱しているのだ」
「……いや、別に責めてるわけじゃねぇけどよ」
ベッドの傍らに座る勇者の手がわたしの手を握りしめる。こうして肌を触れ合わせると、より効率よく勇者の魔力をわたしの体内に流し込めるというのは数日前にわかったことだ。
聖剣で腹を抉られたわたしは、体内のほとんどの魔力を失って消滅する寸前だった。ところが勇者が自分の魔力を注ぎ込んだおかげで腹の穴が塞がり、結果として消滅の危機を免れることができた。
「まさか魔族であるわたしの体が勇者の魔力を受け入れられるとは思わなかった」
魔族と勇者の魔力は正反対の性質を持つ。本来なら勇者の魔力を注ぎ込まれた段階で魔族であるわたしは消えるはずだった。ところがなぜか腹の穴が塞がり、抉り取られた根源まで再生され始めている。
「俺だってうまくいくとは思ってなかった。そもそも俺は魔法が使えねぇし、治癒魔法なんて使い方すら知らねぇし。あのときはとにかく必死だったんだよ」
「ふむ。これは治癒魔法というより、死者復活の魔法に近いかもしれないな」
「死者復活?」
「反魂、蘇生、そういう言葉で表現される魔法だ。さすがのわたしもそこまでの力は持っていなかったが、さすがは勇者といったところか」
「ほめんなよ、照れるだろ」
目元を赤く染めながら口元を緩める勇者の顔は、意識が戻ってから何度も目にする表情だ。それをベッドに横になったまま「愛らしいな」と見つめる。
(穴が塞がったとはいえ、再生されつつある魔力が馴染むにはもう少し時間がかかるだろう)
根源は再生されつつあるが以前とは何かが違う。勇者の魔力の影響を受けているからだろうが、うまく魔力を動かすことができないままだ。
(しばらくはおとなしくしているか)
勇者からも「まだ寝てろ」と毎日のように言われている。そうして寝ているわたしの手を握り、自分の魔力を注ぎ続けていた。
「ところで、本当に帰らなくていいのか?」
「だからいいんだって言ってるだろ」
わたしの質問に勇者の口が不機嫌そうに尖った。そういう反応をするとわかっていても、気になって尋ねずにはいられない。
わたしの腹を抉った日以降、勇者は一度も魔王城から出ていない。人間たちの元に帰らなくていいのかと尋ねると、「あんなむかつくヤツらのところになんか二度と戻らねぇよ」と吐き捨てるように答えるばかりだ。
それが本心だと示したいのか、持っていた帰還魔法の魔法具まで壊してしまった。それに魔王城の地下に聖剣を封印するという荒技にまで出た。
この城の地下にはすべての魔族を生み出した魔力の泉がある。魔力が強い者しか近づけない場所のため、歴代魔王でも直接見たことがあるのはわたしを含めてほんの一握りだろう。そんな場所に難なく入り込んだ勇者は、持っていた聖剣を泉に突き刺してしまった。
魔力の泉は異物である聖剣を喰らおうとし、聖剣は逆に泉の魔力を焼き尽くそうとしている。地下で蠢く二つの魔力の動きはベッドで寝ているわたしにも感じられた。
(あれでは人間たちが聖剣を取り戻すのは難しいだろうな)
聖剣をあんなところに封印してしまって本当によかったのだろうか。そのことも何度か尋ねたものの、そのたびに「いいんだよ」とやっぱり口を尖らせた。
いろいろわからないことばかりだが、こうして傍らに勇者がいる日常というのは悪くない。むしろわたし自身が望んでいた状況だ。これなら心置きなく観察することができるし知らない表情をじっくり見ることもできる。しばらくは記録書に書き記すことができないため、発見した様々なことを忘れないようにと日々心がけているところだ。
「でもよ、なんで俺があんたに恋してるってわかったんだ?」
「あぁ、そのことか。それは先々代魔王が書き記した書物を読んだからだ」
「先々代の魔王? 書物? よくわかんねぇけど、それのおかげで俺は自分の気持ちに気づけた。それに勇者を辞めるきっかけにもなったし、やっと自由にもなれた。これからは俺の好きに生きるんだ」
うれしそうに笑う勇者の指が、するするとわたしの頬を撫でた。
(勇者は肌を撫でるのが好きなのだな)
握った手の甲を撫でられるのはいつものことで、腕や肩、頬、それに唇を撫でられるようにもなった。あまりに楽しそうに撫でるから理由を聞き損ねているが、顔を撫でられることには正直戸惑っている。
(だからといって「やめてくれ」とも言いづらいしな)
ちらりと見た勇者の碧眼は相変わらずキラキラと瞬いていた。この輝きを曇らせるようなことは言いたくない。
「それにしても、あんたって本当に変わった魔王だよな」
「そうか?」
「そうだろ? 最初は何度攻撃しても防御壁に傷をつけることしかできなかったのに、急にあちこち攻撃を食らうようになってさ。おまけに斬られてもニコニコ笑ってるわ、ちょっと不気味だったぞ?」
「そうか、わたしはそんなに笑っていたのか」
「なんだ、気づいてなかったのかよ」
「観察に夢中になっていたからな。笑っているように見えたのは、期待以上に観察が楽しかったからだろう」
わたしの言葉に勇者が「ははっ、やっぱりおもしれぇ」と笑った。
「魔王が勇者を観察するなんて聞いたことねぇ」
「歴代の魔王はしなかったかもしれないが、わたしは初めて見る人間というものが気になって仕方なかったのだ。それに先々代魔王の書物でしか読んだことがなかった恋という現象に出くわすこともできた。直接観察できる機会は二度とないだろうと思ったら、ますます夢中になった」
「ほら、やっぱり変だ。うん、あんたはやっぱり魔王なんかじゃねぇよ」
そう言った勇者が握っていたわたしの手を持ち上げ、なぜか指先に唇で触れた。そうして伺うようにわたしを見る。
「どうかしたか?」
「うーん、人間とはいろいろ違うんだな」
「違う? 何がだ?」
「ま、そういうところもこれからのお楽しみってことにしとくか」
こうして話すようになってから、勇者はたびたびわたしが理解できないことを口にする。中には先々代魔王が記した言葉とよく似たことを口にすることもあった。気になってどういう意味か尋ねても「お楽しみってことで」と言って教えてくれない。
「それにしてもあんなにムカついてたのに、まさかこんなことになるなんてなぁ」
「むかつく……?」
「そうだよ。最初はさ、何やっても表情一つ変わらねぇことにすっげぇムカついた。スカした美形ってのもムカついた。俺は勇者なのに、目の前の魔王を倒さないといけないのにって焦ってもいた。それにあいつらからも……、あー、最初に一緒に来てたヤツらな? あいつらが『早く魔王を殺せ。殺せないのなら、せめて囮りになって殺す機会を作れ』ってうるさくてさ。役に立たねぇくせに口だけは達者なんだよな、神殿が選ぶ奴らって」
なるほど、あの者たちは勇者と意見が合わなくなったから一緒に来なくなったのか。それにしても「囮になって」というのはどういうことだろう。一行にとって勇者とは大切な存在ではなかったのだろうか。
(……やはり不愉快だな)
もう顔すら覚えていない一行だが、次に現れたら真っ先に排除しておこう。
「メチャクチャ攻撃してんのに、あんたは全然反撃しようとしねぇ。何とかしないとって聖剣を鍛え直したりしたけど、それも通用しねぇ。そのうち、なんで反撃しないんだろうって思うようになった。そしたら急に攻撃が当たるようになるし、斬られてもニコニコ笑ってるし、正直ちょっと怖かった」
「そうか」
「ま、ある意味魔王っぽかったけどな? とにかく聞いてた魔王と全然違うから、もっと自分の頭で考えないとって思うようになったんだ。だけど神殿のヤツらがさ……」
「さっさと殺せと言ったのだろう?」
「魔王を殺さない限り人間は滅ぼされる。おまえは魔王を殺すために生まれてきたのだから、役目を果たせ。……小せぇ頃から毎日言われてきたことだけどよ。俺は魔王を殺すことでしか生きる意味がねぇのかと思ったら、なんかすげぇ虚しくなったんだよな」
その解釈は間違っていない。勇者は魔王を倒すために生まれ、そのためだけに存在する。それは歴代魔王も書き記してきたことで、わたしもそう理解していた。しかし勇者は違うと思っているらしい。
(そんなふうに考える勇者も変わっているじゃないか)
しかし、それを指摘することはできなかった。
(なんというか、この表情が口をつぐませるというか……)
緩んだ口元は笑っているというより悲しんでいるように見えた。そのせいか愛らしさより憐憫さを感じる。
「どうしていいのか正直わからなくなった。あんたは聞いてた魔王と全然違うし、俺を観察したいとか言ってメガネまでかけるし。おかげで魔王の行動が気になって眠れなくなった。丸三日眠れなくて、あの日は睡眠不足だったんだ。そのせいで力加減を間違えて、それで腹に穴を……ごめん」
「謝る必要はない。それにおまえの魔力のおかげで消滅しなかったのだ。そもそも魔王に謝る勇者というのも大概おかしなものだと思うぞ?」
「あー……ははっ。そっか、そうだよな」
今度は照れくさそうに笑っている。先ほどの悲しそうな表情より、勇者にはこうした顔のほうが合っている。そう思うようになったのも、毎日そばで勇者をじっくり観察するようになったからに違いない。間近で観察できるのは喜ばしいことなのだが……。
「首を撫でるのはやめてくれないか?」
さすがに気になった。残念がられるかもしれないが、くすぐったいやら指の熱が気になるやらで会話に集中できない。すると一瞬だけ止まった指先が、なぜか耳たぶをキュッと摘んできた。
「だから……」
「ムリ」
「無理?」
「好きなヤツが目の前にいるのに、触らないなんてムリ。それにできるだけ魔力を注いでおきてぇし。そうすりゃ、きっと早く元に戻る。元に戻ればやりたいこともできる」
「やりたいこと? それは何だ?」
「元に戻ってからのお楽しみな」
満面の笑みを浮かべる勇者の顔に、なぜか胸の奥がざわりとした。
それにしても、これほどあちこち触られることになるとは思わなかった。おかげで勇者の指が熱いことも、筋肉質な体でも指先は柔らかいのだということがわかった。先々代魔王の書物には“触れ合うようになれば恋の成就”と書いてあったが、これで成就したことになるのだろうか。
(いや、魔力を供給するための触れ合いでは恋の触れ合いにはならないか)
しかし魔力供給のためなら手に触れるだけで十分なはずなのに、なぜ耳にまで触れるのだろう。耳に触れられると、くすぐったいというより首がぞわっとして落ち着かなくなる。
(毎日そばで観察しているというのに、わからないことばかりが増えていくな)
だが、これからは焦って観察する必要はない。勇者はわたしのそばにずっといると話しているし、それなら一つずつゆっくり知っていけばいい。
期待に少し胸が高鳴ったところで「ふぁ」とあくびが出てしまった。
「眠くなったのか?」
「あぁ……魔力が完全に交わるまで、どうにも眠くなるようだ」
「へぇ。……まさか、体が交わるときも眠くなったりはしないよな?」
「体……なんだ……?」
「いや、それもお楽しみってことでいいや。それより早く元に戻れよな。そろそろ俺のほうがガマンできなくなりそうだからさ」
何を我慢しているのだろうか。こうして理解できない言葉が日々増えるせいか気になって仕方がない。先々代魔王の書物を読み返せばわかるのかもしれないが、元に戻るまでは絶対安静だと言って書物を読むことすら禁じられてしまった。
(自分の食事すら傍らで取るくらいだしな)
この城には勇者の休息のためにと用意しておいた人間用の食料がある。勇者にそれを食べるようにと言うと、毎回わたしの傍らで食べるようになった。まるでひとときも離れたくないというような姿に、なんと愛らしいのだろうと密かに感動しているところだ。
「は~、やっぱおまえ美人だな」
頬に熱くて柔らかな何かが触れたような気がした。それに何か話している声も聞こえたが、眠気が勝っていたわたしはそのまま深い眠りに落ちていった。
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禅
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母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
魔術学院に通うクーノは小さい頃助けてくれた騎士ザイハムに恋をしている。毎年バレンタインの日にチョコを渡しているものの、ザイハムは「いまだにお礼なんて律儀な子だな」としか思っていない。ザイハムの弟で重度のブラコンでもあるファルスの邪魔を躱しながら、今年は別の想いも胸にチョコを渡そうと考えるクーノだが……。
[名家の騎士×魔術師の卵 / BL]
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
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