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番外編・遠い街で3

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「んっ、ん……!」

 怖いと思っていた行為は、あっという間にルヴィニを快感の中に引きずり込んだ。グチュ、ヌチュと響く音に尻尾がぞわっと毛を逆立てる。それを宥めるようにキュマが背中にキスを落とし、さらにルヴィニの肌を粟立たせた。

「んっ、んぅ、あっ!」

 一際高い声に慌てて唇を噛んだ。こんな声が自分から出るなんて信じられず、恥ずかしさのあまり必死に唇を噛み締める。ベッドに頬を擦りつけながらそうやって声を殺すルヴィニに、キュマが「愛らしいことだ」と囁いた。

「おまえは、閨ではこれほど可愛くなるのだな」
「か……わいく、なんて……んっ! ない、ですっ」
「そんなことはない。それに愛らしく乱れる姿は誰よりも美しいよ」
「ぁ……っ! ぁ、そこ、やだ……っ」
「腰を振る姿も淫らで美しい」
「んっ!」

 後ろをグチュグチュといじる指がどこかを押すたびに高く上げた尻が揺れてしまう。本当は動かしたくないのに、いじられるたびに中がビリビリとして勝手に揺れてしまった。それがルヴィニには恥ずかしくてたまらなかった。

(こんな、の……っ。まるで、あのときのリトスみたい、じゃないか……っ)

 不意によぎった納屋での光景に、ルヴィニの雄の証がぷるんと震えた。後ろを開くように指が動きカクカクと腰が揺れる。

「ぁっ、ぁ、ぁっ、ぁぁっ、あぁ!」

 ぴしゃっ。

 ルヴィニの雄の証から盛大に種が噴き出した。その後もピュピュッと勢いよく噴き出る。それに気づいたキュマが雄の証に触れ、まるで絞り出すように擦り始めた。

「やだ、も、そこ触らな、で……っ」

 種を出した後に擦られるのはつらい。感じすぎて腹部の奥がぞわぞわする。キュマにそうされてルヴィニは初めて肌を重ねることの快感の深さを知った。

「そうだね。これ以上出してはおまえがもたないだろう」
「ん……っ」

 散々後ろをいじっていた指が抜けた。ちゅぽっという音が恥ずかしく、指に吸いつくように窄まる感覚に肌が赤くなる。

(次はきっと、キュマ様のが……)

 想像しただけで腹部の奥がきゅうっと切なくなった。いままで感じたことがない深い部分が痺れるように疼く。早くここを埋めてほしいと腰がそわそわ揺れる。

「さぁルヴィニ、ゆっくりと入れるからね」

 高く上げたままの腰に大きな手が触れた。太ももにキュマの肌を感じ鼓動が跳ね上がる。いよいよだ、ついに入れられる、そう思うだけで後ろがみっともないほどきゅうきゅうと窄まった。

(僕は、キュマ様の番になるんだ)

 そう思った瞬間、窄まったところに熱いものが触れた。それがゆっくりと窄まりを押し開き中へと入ってくる。気がつけばルヴィニの口からは「ぁ、ぁ」と勝手に声が漏れていた。

「おまえのここは、こんなにもわたしを求めてくれている」
「ぁ、あ!」
「さぁ、もう少しだ……あぁ、やはり本格的な発情に入ったようだね。ここまで子宮が下りてきている」
「あ、ぁ! ぁっ、ぁっ、あっ、ああっ!」

 ズンと奥を突かれて上半身が崩れ落ちた。赤毛がベッドに広がり、同じ赤毛の尻尾はこれでもかと膨らみ震えている。普段はピンと立っている赤毛の耳も心なしかへにょりと垂れてフルフルと震えっぱなしだった。

「こんなに耳を震わせて、おまえは可愛いね」
「ん……! はっ、は、ぁっ、や、うごかな、で……っ」
「大丈夫、怖いのは最初だけだ。すぐに気持ちよくなるよ」
「まって、まって! あっ! や、そこっ、おしちゃ、や……!」

 ひどく熱いところをグンと押し上げられて悲鳴のような声が出た。ぐぅっと押し上げた熱がぬぷぷと抜けていく感覚に腰が震える。そうしてギリギリまで抜けたところで今度はずぶぅと隘路を開かれ「かふ」と息が漏れた。擦り上げられる感覚に腹部がカッと熱くなり下腹部が波打つ。

「ひっ! ひあっ、ぁっ、あぁ!」

 またピシャッと種が噴き出た。雄の証から震えるような快感が広がり、受け入れているところからは鋭い疼きが広がっていく。初めて感じる鋭い感覚に、ルヴィニは赤毛の頭を振り乱しながら「やだ、やだ!」と声を上げていた。

「大丈夫、怖がることはない。一度種を受ければ、あとは気持ちよさにうっとりとなるだけだ」
「ひぃ!」

 再びぐぐぅっと奥を抉られた。そのままズンズンと押し上げられ狭いところを開かれる。そうして一番奥を押し上げられたと思った瞬間、深いところに何かが勢いよく叩きつけられた。

 ビクン! ビクビクッ、ビクッ、ビクッ。

 ルヴィニは声も出せないまま全身を震わせた。体の奥が満たされる感覚に、次第にじわじわと胸が熱くなる。気がつけば紺碧の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

(キュマ様の種が、僕の中に……)

 嬉しくてたまらなかった。ようやく満たされたのだと涙があふれる。

「わたしの花嫁はよく泣くね」
「キュマ、さま」
「あまり泣いてほしくはないが、おまえは泣き顔も美しい。……あぁ、コブが出たのはどのくらい振りかな」
「ぁ……」
「おまえの発情の匂いはたまらないね。甘くわたしを誘い、離すものかと絡みつく。……先に手放しがたくなっていたのは、きっとわたしのほうだ。だから何もしなくとも手元に置き続けていた」
「ん……っ」

 体の奥でドクドクと脈打つ熱に段々と頭がぼんやりしてきた。どこか遠くで囁いているようなキュマの声を聞きながら、ルヴィニは体も心もフワフワと揺れるような感覚になっていく。
 そんなルヴィニからゆっくりとキュマが抜け出た。ずるっと抜けた先端からは白濁した糸が伸び、きゅうっと締まった窄まりと繋がっている。それを断ち切るようにルヴィニの体を仰向けにしたキュマは、くたりとしている白い両足を抱え再び貫いた。

「ぁあっ!」

 声が恥ずかしいと思う暇もなかった。激しく震えた体をキュマが腕に抱き込む。そうして力なく震えている耳の先端にカリッと噛みついた。

「ひ! ひぁ! ぁっ、あぁっ!」

 甘噛みされて背中がゾクッと震えた。腹部がぎゅうっと締まり、キュマが「くっ」と息を呑む。その声にルヴィニの体はますますキュマを締め上げた。

「綻んだばかりの奥が、もうこんなに種を求めている。わたしの花嫁は貪欲だね」
「ぁっ、あ! ぁ、ぁっ!」
「ルヴィニ、わたしの愛しい花嫁」
「キュマさま、キュ、マさ、あぁっ!」

 ルヴィニは目の前の体に必死にしがみついた。逞しく動く腰に両足を絡め、奥深くへといざなうように必死に縋りつく。
 気がつけば全身を蕩けるような快感が包み込んでいた。甘く柔らかいのに苦しくなっていく快感に、ルヴィニは段々と体の境界線がなくなるような感覚に陥っていた。

(キュマ様と、一つになってる)

 そう感じるたびに体の奥がきゅうっとキュマに吸いつく。何度も種を注ぎ込まれているのに、それでもまだ足りない。嫌なところばかり見せていたのに、それでもいいのだと言ってくれたキュマにルヴィニはこれでもかとしがみついた。

「ルヴィニ、わたしの愛しい花嫁。わたしだけの花嫁」
「キュマさま……僕の、つがい……」

 番だと口にするだけで全身が甘く蕩ける。とろとろと意識が溶け出すなか、ルヴィニは求めていたものを手に入れることができた安堵感と幸福にまた涙をこぼした。

 ・ ・

「ルヴィニ、海風は体に毒だ。さぁ中に入ろう」
「キュマ様」

 少し困ったようなキュマの顔にルヴィニの顔がほころぶ。

(本当にこの人は心配性だな)

 それがルヴィニには嬉しくてたまらない。背中に回された手に促されるようにゆっくりと歩き出す。

「そうだ、明日ベッドが届くそうだよ。次は枕やシーツを揃えなくてはね。さて、小さいものならどの店がいいか……」
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。それに靴下や寝間着まであんなに買って、まだどちらかもわからないのに」
「どちらでも似合うものを選んでいるから大丈夫……じゃないかな」
「とにかく、そんなに慌てなくても大丈夫です」
「そうだね。うん、少し焦りすぎているのかもしれないね」

 そう言って笑うキュマの目元がほんのり赤く染まる。そんな顔も愛しいとルヴィニは心から思った。

(番ってすごいな)

 一緒にいるだけでこんなにも満たされる。あんなに苦しかったリトスのことも、いまは穏やかな気持ちで受け入れることができるようになった。

(そういえば、リトスのほうはもう一歳になるんだっけ)

 そんなことを思い出しながら腹部にそっと手を添える。

「もしかして痛むのかい?」
「大丈夫ですよ。ただ、こうして触れていると落ち着くんです」
「そうか……うん、たしかにそうだね」

 そう言ったキュマの大きな手がルヴィニの手を覆うように添えられた。それだけで体中がじんわりと温かくなる。

(ようやく少しぽっこりしてきたかな)

 ふくろう族の医者が言うには、まだまだ大きく膨らむらしい。そのうち座ったり起き上がったり、それに歩くのもつらくなると言われて内心少しだけ怖くなっていた。

(でも、リトスだってそれを乗り越えたんだ)

 自分より小柄なリトスができたのだから、自分もできるはず。そう思いながら撫でるように指をそっと動かす。

「そうだ、名前も考えないといけないね」

(だから、そんなに急がなくてもいいって言ってるのに)

「そうだねぇ」と上目遣いになるキュマを見ながら、ルヴィニは手に入れた幸せを噛み締めるように微笑んだ。
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