13 / 25
花のように13・終
しおりを挟む
「あぁっ!」
「く……っ。ははっ、クリュス、すごくかわいい」
そう言ったディニが、自分に跨がっているクリュスの顔を覗き込むように顔を寄せた。体勢は初めてのときと似ているものの、行為に慣れたからか上半身を起こしたままでいる。そのせいでクリュスの性器はディニの逞しい腹に擦られ、薄い種をとろとろと滴らせっぱなしになっていた。
「かわいい、クリュス」
そう言われるのがなぜか恥ずかしく、思わず俯くと垂れ耳がするりと頬を滑った。それに気づいたディニが先端にカリッと牙を立てる。それだけでクリュスの後孔はぎゅうっと窄まり、これでもかとディニを食い締めた。
「上に乗ってると、すごく奥まで、届くよな」
「んっ、ん、ぁっ、ぁっ」
「それにクリュス、軽いから、ほら……簡単に持ち上げられる」
細腰を掴んだディニが華奢な体をゆっくりと持ち上げた。すると後孔を押し広げていた肉茎がズルズルと抜け、その感触に尻尾がぶわっと膨らむ。
「顔が真っ赤なのも震えてるのも、全部かわいい。初めてのときはあんまり見ることできなかったけど、きっとかわいかったんだろうな」
「もったいないことした」とつぶやいた腕がぴたりと止まった。中途半端に貫く熱塊に自分の中が絡みつくのがよくわかる。すっかり慣れた感触だというのに、クリュスの肌はぞわりと粟立ち初心な様子を見せた。
「でも、あの笑顔だけはしっかり見えたんだ」
腰を掴んでいた手がグイッと引き落とすように動いた。同時にディニの腰が突き上げるように動く。再び腹の奥深くを押し上げられたクリュスは、喉をさらけ出しながら「あぁ!」と嬌声を上げた。
「ぁ……ぁ……」
「すごい……甘い匂いがどんどん強くなる……出しても出しても収まらない……」
体の奥に熱を感じるのは、ディニが種を吐き出しているからだろう。濡らされる感触に震えていたクリュスは、いまさらながら避妊薬を飲んでいないことに気がついた。思い出した途端に注ぎ込まれている種が熱くなったような気がしてくる。
(いつもと、何かが違う)
数え切れないほど経験してきた行為のはずなのに何もかもが敏感に感じられる。なぜそうなるのかわからず、クリュスは内心戸惑っていた。ただ肌を撫でられただけで尻尾が膨らみ、唇や胸の尖りに吸いつかれただけで垂れ耳が震えるのが不思議で仕方がない。
(こういうことは、もう何度もされてきたことなのに……)
もっとひどい行為をされたこともある。絶頂しすぎて喉を枯らしたことも、逆に性器を縛られて吐き出せずに気が狂いそうになったこともあった。そんなことをされてもどこか冷静な自分がいた。アフィーテだから感じるのだと諦め、華だからとすべてを受け入れ続けた。
それなのに、ディニが相手だと思うだけでどこもかしこも敏感になった。ひどいことは一つもされていないのに、感じすぎるのが苦しくて水色の目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「クリュス、つらい?」
問われて、ふるふると首を横に振った。つらくはない。つらいほどの快感でも、もっと感じたい。そんな貪欲な気持ちがわき上がってくる。
「も……っと、ディニさま、もっと……」
かろうじてそう答えると、中に収まっていた熱が再び大きく膨らんだ。
「そういうの、かわいくてちょっとずるい」
喉をさらし、仰け反っていたクリュスを大きな手が優しく抱きしめる。そのままベッドに横たえるように押し倒された。
「んっ!」
貫く角度が変わったからか、体に甘い痺れが走った。思わず眉を寄せると「かわいい」と笑ったディニが覆い被さるように抱きしめてきた。そのまま少し抜けていた肉茎をずぶぅと深くに突き刺す。
「ぁうっ!」
上に乗っていたときとは違う角度に尻尾が震えた。思わず目を瞑ると、今度は垂れ耳の付け根をディニがガジガジを甘噛みし始めた。
「ひゃっ! あっ、だめ、だめですっ。耳は、だめ、だからっ」
「知ってる。兎族は耳が弱いんだよな」
「ひん!」
れろっと舐められ縁を噛まれた。それだけで下腹が震え中の熱を食い締める。
「かわいい……クリュス、俺だけの番。かわいい花嫁……」
「んっ! はっ、は、んぅっ、ぁっ! ぁっ、ぁっ、あぁっ!」
ズンズンと突かれて背中がしなった。ところが全身をすっぽりと覆われているため、実際には体のどこも動いていない。ぎゅうぎゅうに抱きしめられたまま、太く硬い熱塊でずちゅずちゅと何度も擦り上げられる。
強すぎる快感と身動きできない苦しさに目を回しながらも、クリュスは必死に逞しい背中を抱きしめた。
「ふぁ!」
突然、それまでとは明らかに違う感覚が背中を駆け上がった。腹の奥を硬い先端に突き上げるたびに垂れ耳の毛が逆立つ。思わず見開いた目がチカチカと瞬き、掻き混ぜられるような強烈な快楽が脳天を貫いた。
クリュスは長い髪が乱れるのもかまわず頭を振った。華のときでさえ感じたことがない感覚が恐ろしくて必死に身をよじる。しかし逞しいディニの体にすっぽりと包まれている体では腰をねじることすらできない。
どこにも逃がせない凄まじい快感に、気がつけば「いく、いく、いく!」と濡れた声で連呼していた。
「たくさん、いって。俺が何度でも、いっぱいいかせてやるから」
「――……!」
抱き込まれた体がびくんと大きく跳ねた。下腹にぐぐぅっと力が入り、窄まりも搾り取らんとしているかのように肉茎を食い締める。背中に爪を立て、腰に絡みつかせた両足は爪先を丸めた状態でブルブルと震えていた。
「ぐ……ぅっ!」
ディニの低い声とともに体の奥に再び熱が広がった。後孔が異様に苦しいのはコブが膨らんでいるからだろう。
しかし、いつもと何かが違う。勢いよく吐き出される種が、どこかへどんどんと流れ込むような奇妙な感覚がした。
(わからないけど……気持ちいい……)
何もかもが気持ちよかった。華のときとはまったく違う法悦とも呼べる快感に全身が震える。どくどくと注ぎ込まれる種に体中が歓喜の声を上げているような気さえした。
「……やっぱり、いい匂いがする」
囁かれた声に垂れ耳がふるりと震えた。貫く熱をなおも食い締め、体のさらに奥深くへと誘い続ける。そのまま深いところを満たしてほしい、なぜかそう感じたクリュスは、その後も貪欲に種を求め続けた。
数日後、クリュスは自分が発情していたことを知らされた。行為の後、再び熱を出したクリュスを診た梟族の医師が診断したのだから間違いないのだろう。
「わたしが発情……」
思わず口に出たのは信じられなかったからだ。
アフィーテは発情しにくい、そう言われてきた。実際、これまで発情したことは一度もなく兆候すらなかった。クリュスは間もなく三十という適齢期を過ぎた年になる。「それなのにまさか発情するなんて」と大いに困惑した。
「好きな人のそばにいるからって思えば?」
「え?」
「だから、俺のそばにいるから発情したってことにすればいいだろってこと」
ぶっきらぼうな言い方ながらもディニの目元はうっすらと赤くなっている。戸惑っているクリュスのために言った言葉なのだろうが、本人は本当にそう思っているのかもしれない。
(……もしかして、本当にそういうことがあるのかもしれない)
長の息子とつがったアフィーテに子ができたという話が伝わったのは昨日のことだった。子ができたということは、花嫁になったアフィーテは発情したということだ。
(ということは、わたしももしかして……)
ふとよぎった考えに驚いた。何もかも諦めてきたはずなのに、最近はあれもこれもと欲深くなっている気がする。「自分はこんなにも強欲だったのか」と恐ろしくなる一方で、ディニに関することには次々と欲がわき上がり続けた。
(もし……もし、わたしに子ができるなら……)
ディニは喜んでくれるだろうか。それとも驚き慌てふためくだろうか。顔を真っ赤にしながら慌てる姿を想像したクリュスは、気がつけば「ふふ」と口元をほころばせていた。
「やっぱり、クリュスにはそういう笑顔が似合うと思う」
「え?」
「華街にいたときの笑顔も綺麗だと思うけど、いまみたいな笑顔のほうが、やっぱり俺は好きだ」
きょとんとしたクリュスに、オレンジ色の目が優しく微笑みかけた。
「なんかさ、無理してないっていうか、きっといまみたいなのがクリュスなんだろうなって感じがする」
(わたしらしい、ということでしょうか)
そういえば、華だった頃は自分というものを必死に隠していたような気がする。アフィーテであることも幼い頃の経験も忘れたように振る舞い、ただ華であり続けることばかりを考えていた。そうすることが自分を守る手段だと無意識に感じていたのかもしれない。
「いまみたいな笑顔も、それ以外の顔も、もっと見たいって思ってる。俺の隣でいろんな顔を見せてほしい」
そう言って笑うディニの顔に胸がざわついた。切ないような、それでいてくすぐったいような甘い気持ちが広がっていく。
(わたしのほうこそ、いろんなディニ様を見たいと思っているんですよ)
若々しい姿も力強い様子も、この先どんな雄に成長していくのかそばでずっと見ていたい。
(……なるほど、これが好きになるということなのかもしれませんね)
クリュスの頬が和らいだ。ふわりと浮かぶ笑みは、大輪の花というよりも可憐で優しい野の花を思わせる。その顔を見たディニは、途端に顔を真っ赤にし視線をうろうろとさまよわせた。
その後、頻繁に可憐な笑みを浮かべるようになったクリュスは、瞬く間に屋敷の者たちを魅了するようになった。そのことに気づいたディニが、顔を真っ赤にしながら「クリュスは俺のだからな!」と叫びキュマたちを大いに笑わせたのだという。
「く……っ。ははっ、クリュス、すごくかわいい」
そう言ったディニが、自分に跨がっているクリュスの顔を覗き込むように顔を寄せた。体勢は初めてのときと似ているものの、行為に慣れたからか上半身を起こしたままでいる。そのせいでクリュスの性器はディニの逞しい腹に擦られ、薄い種をとろとろと滴らせっぱなしになっていた。
「かわいい、クリュス」
そう言われるのがなぜか恥ずかしく、思わず俯くと垂れ耳がするりと頬を滑った。それに気づいたディニが先端にカリッと牙を立てる。それだけでクリュスの後孔はぎゅうっと窄まり、これでもかとディニを食い締めた。
「上に乗ってると、すごく奥まで、届くよな」
「んっ、ん、ぁっ、ぁっ」
「それにクリュス、軽いから、ほら……簡単に持ち上げられる」
細腰を掴んだディニが華奢な体をゆっくりと持ち上げた。すると後孔を押し広げていた肉茎がズルズルと抜け、その感触に尻尾がぶわっと膨らむ。
「顔が真っ赤なのも震えてるのも、全部かわいい。初めてのときはあんまり見ることできなかったけど、きっとかわいかったんだろうな」
「もったいないことした」とつぶやいた腕がぴたりと止まった。中途半端に貫く熱塊に自分の中が絡みつくのがよくわかる。すっかり慣れた感触だというのに、クリュスの肌はぞわりと粟立ち初心な様子を見せた。
「でも、あの笑顔だけはしっかり見えたんだ」
腰を掴んでいた手がグイッと引き落とすように動いた。同時にディニの腰が突き上げるように動く。再び腹の奥深くを押し上げられたクリュスは、喉をさらけ出しながら「あぁ!」と嬌声を上げた。
「ぁ……ぁ……」
「すごい……甘い匂いがどんどん強くなる……出しても出しても収まらない……」
体の奥に熱を感じるのは、ディニが種を吐き出しているからだろう。濡らされる感触に震えていたクリュスは、いまさらながら避妊薬を飲んでいないことに気がついた。思い出した途端に注ぎ込まれている種が熱くなったような気がしてくる。
(いつもと、何かが違う)
数え切れないほど経験してきた行為のはずなのに何もかもが敏感に感じられる。なぜそうなるのかわからず、クリュスは内心戸惑っていた。ただ肌を撫でられただけで尻尾が膨らみ、唇や胸の尖りに吸いつかれただけで垂れ耳が震えるのが不思議で仕方がない。
(こういうことは、もう何度もされてきたことなのに……)
もっとひどい行為をされたこともある。絶頂しすぎて喉を枯らしたことも、逆に性器を縛られて吐き出せずに気が狂いそうになったこともあった。そんなことをされてもどこか冷静な自分がいた。アフィーテだから感じるのだと諦め、華だからとすべてを受け入れ続けた。
それなのに、ディニが相手だと思うだけでどこもかしこも敏感になった。ひどいことは一つもされていないのに、感じすぎるのが苦しくて水色の目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「クリュス、つらい?」
問われて、ふるふると首を横に振った。つらくはない。つらいほどの快感でも、もっと感じたい。そんな貪欲な気持ちがわき上がってくる。
「も……っと、ディニさま、もっと……」
かろうじてそう答えると、中に収まっていた熱が再び大きく膨らんだ。
「そういうの、かわいくてちょっとずるい」
喉をさらし、仰け反っていたクリュスを大きな手が優しく抱きしめる。そのままベッドに横たえるように押し倒された。
「んっ!」
貫く角度が変わったからか、体に甘い痺れが走った。思わず眉を寄せると「かわいい」と笑ったディニが覆い被さるように抱きしめてきた。そのまま少し抜けていた肉茎をずぶぅと深くに突き刺す。
「ぁうっ!」
上に乗っていたときとは違う角度に尻尾が震えた。思わず目を瞑ると、今度は垂れ耳の付け根をディニがガジガジを甘噛みし始めた。
「ひゃっ! あっ、だめ、だめですっ。耳は、だめ、だからっ」
「知ってる。兎族は耳が弱いんだよな」
「ひん!」
れろっと舐められ縁を噛まれた。それだけで下腹が震え中の熱を食い締める。
「かわいい……クリュス、俺だけの番。かわいい花嫁……」
「んっ! はっ、は、んぅっ、ぁっ! ぁっ、ぁっ、あぁっ!」
ズンズンと突かれて背中がしなった。ところが全身をすっぽりと覆われているため、実際には体のどこも動いていない。ぎゅうぎゅうに抱きしめられたまま、太く硬い熱塊でずちゅずちゅと何度も擦り上げられる。
強すぎる快感と身動きできない苦しさに目を回しながらも、クリュスは必死に逞しい背中を抱きしめた。
「ふぁ!」
突然、それまでとは明らかに違う感覚が背中を駆け上がった。腹の奥を硬い先端に突き上げるたびに垂れ耳の毛が逆立つ。思わず見開いた目がチカチカと瞬き、掻き混ぜられるような強烈な快楽が脳天を貫いた。
クリュスは長い髪が乱れるのもかまわず頭を振った。華のときでさえ感じたことがない感覚が恐ろしくて必死に身をよじる。しかし逞しいディニの体にすっぽりと包まれている体では腰をねじることすらできない。
どこにも逃がせない凄まじい快感に、気がつけば「いく、いく、いく!」と濡れた声で連呼していた。
「たくさん、いって。俺が何度でも、いっぱいいかせてやるから」
「――……!」
抱き込まれた体がびくんと大きく跳ねた。下腹にぐぐぅっと力が入り、窄まりも搾り取らんとしているかのように肉茎を食い締める。背中に爪を立て、腰に絡みつかせた両足は爪先を丸めた状態でブルブルと震えていた。
「ぐ……ぅっ!」
ディニの低い声とともに体の奥に再び熱が広がった。後孔が異様に苦しいのはコブが膨らんでいるからだろう。
しかし、いつもと何かが違う。勢いよく吐き出される種が、どこかへどんどんと流れ込むような奇妙な感覚がした。
(わからないけど……気持ちいい……)
何もかもが気持ちよかった。華のときとはまったく違う法悦とも呼べる快感に全身が震える。どくどくと注ぎ込まれる種に体中が歓喜の声を上げているような気さえした。
「……やっぱり、いい匂いがする」
囁かれた声に垂れ耳がふるりと震えた。貫く熱をなおも食い締め、体のさらに奥深くへと誘い続ける。そのまま深いところを満たしてほしい、なぜかそう感じたクリュスは、その後も貪欲に種を求め続けた。
数日後、クリュスは自分が発情していたことを知らされた。行為の後、再び熱を出したクリュスを診た梟族の医師が診断したのだから間違いないのだろう。
「わたしが発情……」
思わず口に出たのは信じられなかったからだ。
アフィーテは発情しにくい、そう言われてきた。実際、これまで発情したことは一度もなく兆候すらなかった。クリュスは間もなく三十という適齢期を過ぎた年になる。「それなのにまさか発情するなんて」と大いに困惑した。
「好きな人のそばにいるからって思えば?」
「え?」
「だから、俺のそばにいるから発情したってことにすればいいだろってこと」
ぶっきらぼうな言い方ながらもディニの目元はうっすらと赤くなっている。戸惑っているクリュスのために言った言葉なのだろうが、本人は本当にそう思っているのかもしれない。
(……もしかして、本当にそういうことがあるのかもしれない)
長の息子とつがったアフィーテに子ができたという話が伝わったのは昨日のことだった。子ができたということは、花嫁になったアフィーテは発情したということだ。
(ということは、わたしももしかして……)
ふとよぎった考えに驚いた。何もかも諦めてきたはずなのに、最近はあれもこれもと欲深くなっている気がする。「自分はこんなにも強欲だったのか」と恐ろしくなる一方で、ディニに関することには次々と欲がわき上がり続けた。
(もし……もし、わたしに子ができるなら……)
ディニは喜んでくれるだろうか。それとも驚き慌てふためくだろうか。顔を真っ赤にしながら慌てる姿を想像したクリュスは、気がつけば「ふふ」と口元をほころばせていた。
「やっぱり、クリュスにはそういう笑顔が似合うと思う」
「え?」
「華街にいたときの笑顔も綺麗だと思うけど、いまみたいな笑顔のほうが、やっぱり俺は好きだ」
きょとんとしたクリュスに、オレンジ色の目が優しく微笑みかけた。
「なんかさ、無理してないっていうか、きっといまみたいなのがクリュスなんだろうなって感じがする」
(わたしらしい、ということでしょうか)
そういえば、華だった頃は自分というものを必死に隠していたような気がする。アフィーテであることも幼い頃の経験も忘れたように振る舞い、ただ華であり続けることばかりを考えていた。そうすることが自分を守る手段だと無意識に感じていたのかもしれない。
「いまみたいな笑顔も、それ以外の顔も、もっと見たいって思ってる。俺の隣でいろんな顔を見せてほしい」
そう言って笑うディニの顔に胸がざわついた。切ないような、それでいてくすぐったいような甘い気持ちが広がっていく。
(わたしのほうこそ、いろんなディニ様を見たいと思っているんですよ)
若々しい姿も力強い様子も、この先どんな雄に成長していくのかそばでずっと見ていたい。
(……なるほど、これが好きになるということなのかもしれませんね)
クリュスの頬が和らいだ。ふわりと浮かぶ笑みは、大輪の花というよりも可憐で優しい野の花を思わせる。その顔を見たディニは、途端に顔を真っ赤にし視線をうろうろとさまよわせた。
その後、頻繁に可憐な笑みを浮かべるようになったクリュスは、瞬く間に屋敷の者たちを魅了するようになった。そのことに気づいたディニが、顔を真っ赤にしながら「クリュスは俺のだからな!」と叫びキュマたちを大いに笑わせたのだという。
3
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
寝込みを襲われて、快楽堕ち♡
すももゆず
BL
R18短編です。
とある夜に目を覚ましたら、寝込みを襲われていた。
2022.10.2 追記
完結の予定でしたが、続きができたので公開しました。たくさん読んでいただいてありがとうございます。
更新頻度は遅めですが、もう少し続けられそうなので連載中のままにさせていただきます。
※pixiv、ムーンライトノベルズ(1話のみ)でも公開中。
とある警察官の恋愛事情
萩の椿
BL
モノモノ文具お客様相談室に勤務して三年が経つ和泉透は、毎日の様に寄せられるお客様からの苦情にうんざりする日々を過ごしていた。転職は考えてはいるが、特にやりたい仕事もない。幼少期にあこがれていたヒーローのような仕事があればいいのにとは思いつつ、転職活動も本気ではやっていなかった。
そんなある日、帰り道でたまたまひったくりに遭った老婦人を交番に連れて行くと、運よくひったくりの犯人が警察官に捕まえられており、老婦人が警察官に感謝している現場を目撃する。それを見て、警察官がヒーローのような仕事に思えた和泉は警察官への転職を決意した。
しかし、警察学校に入った直後、担当教官となったのは、高校生の時に付き合っていた元カレの一ノ瀬仁だった。一ノ瀬の積極的なアプローチに混乱しつつも訓練をこなしていく中で、一ノ瀬に「透の事がまだ好きだ」と告白される。しかし、昔起こしたトラブルがトラウマでもう恋愛はしないと誓っていた和泉はその告白を断るが……。
【Hまでのskip機能有】コンプレックスヤリチンリーマンが占い師にハマって脳イき調教されてバブってるのが見たいんだい!!
朝井染両
BL
エロ大容量!エロシーンたっぷり15000文字越え!!!!(推定)
催眠×脳イき×淫乱リーマン!!
ストーリーパートも充実!
エロまでのskip機能有り!!
■
こんにちは、お久しぶりです。
題名ままです。
脳イキ催眠という知見を得て、調べたり考えたりしていたらものすごく時間と文字数がかかってしまいました。
催眠姦ともジャンルの異なるものですし、あまりポピュラーではないかも?
こういう受けが、赤ちゃんなのがみたいんだい!ってのが伝われば幸いです。
全てはエロへの助走、えっちだけ読みたい方も一章冒頭の注意書きは読んで頂けると嬉しい、よろしくお願いします。
いつも新鮮なエロと驚きを。
いつも感想やいいねありがとうございます、何回も読み返し、それを励みになんと一年越しの更新です。
ずっと書いてはいるのですよ、完成しないだけで。
りみちゃんの誕生日ケーキ
ねる
児童書・童話
りみちゃんはママと一緒にパパのために誕生日ケーキを作ることにした。
短編の一話完結です。
エブリスタからの転載です。
※写真はこちらからお借りしました→https://www.photo-ac.com/
義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました
やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>
フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。
アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。
貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。
そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……
蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。
もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。
「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」
「…………はぁ?」
断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。
義妹はなぜ消えたのか……?
ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?
義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?
そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?
そんなお話となる予定です。
残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……
多分、期待に添えれる……かも?
※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。
なんで婚約破棄できないの!?
稲子
恋愛
伯爵令嬢であるキャサリン・レイバーは自分には前世があり、俗に言う悪役令嬢であることに気づいた。
お先真っ暗な運命に抗うため、婚約をしないように知恵を絞るが邪魔が入り敢えなく失敗。王太子殿下の婚約者となってしまった。
ならば、穏便に婚約破棄をしてもらえるようにすればいい!
でも、なんでこうもうまくいかないの?!
婚約破棄したい悪役令嬢とそれを邪魔をしている婚約者のお話
※2020/08/08本編完結しました!
不定期ですが番外編などの更新を予定しています。
今後もお付き合いよろしくお願いします。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる