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ショーン目線2
しおりを挟む「イエーガー、やめなさい。無理強いはいけない」
「ショーンお兄様!」
私の声に動揺し、腕を離したのは良かったが、勢いで押してしまった。
「うっ!」
お陰で召使いは突き飛ばされた格好になった。
「別に無理やりではありません。もう、私の相手をしているので問題ないのです」
そんな会話では無かったがな、現に召使いは真っ青で助けを求める顔だ。
「だが、仕事があると言っていたのが聞こえたよ。今日はやめておきなさい」
ちっ、と小さく舌打ちし、私に聞こえないように小さくしたつもりだろうが、よく聞こえていた。
「お見苦しいところを見せてしまいました」
忌々しそうに召使いを睨むと踵を返し歩いていった。
途端に、召使いは泣き出した。
「大丈夫ですか?」
サバノーラが側に行き声をかけた。
私もすぐにそばに寄った。
「・・・えっ・・・嫌、だって・・・言ったのに・・・えっ・・・前も、嫌です・・・と言ったのに・・・!!」
大泣きしながら言葉にする内容は、あまり聞きたくない内容だった。
「サバノーラ、この子をイエーガーが近づけない仕事に変えてあげなさい。それと少し休ませてあげなさい」
「分かりました、では、イエーガー様が来られない場所に行きましょうか」
「・・・あ、あり・・・がとう・・・ございます・・・」
震える声で頷きサバノーラが連れていった。
貴族が召使いに手を出す事はよくある事だ。下手に貴族を相手にする方が面倒なことになる。それに比べ、金さえ払えば、口をつぐみ相手をしてくる召使いは、男性としては有難い相手だ。
だが、無理強いは良くない。
話しをして辞めたいと言うならば、それ相応の手当を出し、次の仕事場を探してやらなければならないな。
これで何人目だ、そんな声が周りから聞こえてき。
「ショーン様。イエーガー様が喚きながらカーテンを破っていましたがまだ何かありまして?」
しかめっ面で、3つ上の私の婚約者、シャーリーンがやってきた。
彼女とは友人のお茶会で出会って私が一目惚れし、あの手この手で婚約者とした。
来年式を挙げることになっている為、王妃教育の為王宮に来ているが、元々由緒ある伯爵家の令嬢。
既に作法も気品も問題ないのだが、ここもあの手この手で、私が王宮に留まらせている。
「お気に入りの召使いに振られてしまったようで、それも手痛くね」
「また、ですか?」
汚いものを見るように言う。
「イエーガー様は御自分の立場をお分かりなのでしょうか?皆様が甘やかしすぎるのです」
「愚かなほど可愛いからね。それに、男というのはそんなものだよ」
「え!?ショーン様もそうなのですか?」
からかうつもりそう言うと、可笑しいくらいに不安そうに反応してくれた。
本当に素直だな。
「そうだなあ。私は残念ながら、シャーリーンにしか興味がないみたいだ」
言うと顔を真っ赤にした。
「な、何を仰るのですか!いえ、そうですねショーン様は私以外にもそういう方はおられた方がいいです。お子は沢山いた方が宜しいです」
真面目な顔をしながら言いながらも、悲しそうな瞳に、笑いそうになった。
「その話はまだまだ、先のことになるかな。さて、昼食の時間だから、行こうか」
「はい」
「その後少し時間があるから2人でダンスの練習でもしようか?」
「はい」
嬉しそうに即答するシャーリーンの手を握ると、頬を赤く染めた。
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