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第1部
84やりすぎです!2
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「お嬢様は、まっすぐというか、融通が利かないというか、ともかく臨機応変ができないんです。これ、と決めたら突き進んでいくでしょう?」
「えーと、そうかなあ?リューナイトもそう思う?」
「思います。良い性格だと感心しております。己が信念を曲げずに突き進み、立ち止まらない。それでいて、公爵令嬢としての振る舞い、気品は失わない」
「リューナイト様、遠回しに言うのやめて下さいよ。ハッキリと言って下さい。言い方を気をつけて、と」
「気をつけてるわよ。ねえ、リューナイト」
「そ、それは・・・」
あら?
同じ事を言ってくれると思ったのに、言葉を濁し、ふい、と私から目線を逸らした。
「ほら!その目です。そんな目で見たら誰も喋れないですよ」
「待ってよ!私何もしてないよ!リューナイト、何か言ってよ」
「お嬢様は怖くはありません」
「ちよっと、どっち向いて言っているのよ。私の方を向いてよ」
「ぷぷっ、リューナイト様も同じなんですよ」
「もう!」
そんな他愛のない会話が暫く馬車の中で続いた。
緊張感がほぐれたらかもしれないが、とても肩の力が抜け自然に言葉が出た。
「そうだリューナイト、文は届けてくれた?」
「はい。言いつけ通りスルジニア様に全てお渡ししてきました」
「ありがとう」
私が帝国に行っている間の指示を書いておいた。
公爵派であるお茶会の友人と、手駒とした3人の方々だ。
「何と書いたのですか?」
「何も」
クルリの言葉に優しく微笑み首を振った。
「これからが気を抜けないわ。王妃派にとって、こちら側が今、予想外の手を打っているのだから、そろそろ反撃にでてくるでしょう」
「それで、どうして何も書いていないのですか?相手の動きを見て何か探ってもらったり、またまた、何か気づいた事を探って貰ったり、拡散するような噂を流した方がいいんじゃないですか?」
「いい事言いうね。そこを狙っているからこそ、指示したのよ」
「そこを狙う?」
「ええ。王妃派はこれからより貪欲に攻撃してくるでしょうね。そこであの方々が標的になるのは一目瞭然。そんな虎視眈々と狙われている中、下手に動けば逆に足を掬われ、あの方々を危険に晒してしまう」
「あ・・・そう、ですね」
一気に現実に戻されたように、笑顔が消えた。
「それに、これから私達は国を離れるから、余計にまもれない。それならば、何もせず自分の身だけを守ってくれればいい。その中で気づく事があれば上々、ぐらいの気持ちでいたいの」
私の静かな声に、クルリもリューナイトも神妙に頷いた。
そう。
これからが本当の戦いだ。私が頼めば、少し無理なことでも行動し調べてくれるだろう。だが、それが命取りとなる。
ふう、と重たいため息をついた。
洗脳。
という、先程の言葉が脳裏に響いていた。
奇妙な行動だ。何故ならそこまでする必要などない。私が殿下を慕っていたのは本心だ。そこにより付け込み、ここまで手の込んだ事をして、何をしたいのだろうか?
いや、そう考えると全てがおかしいと今更気づいた。この国を手中におさめようと王妃派が望むなら、私に対して優しくした方がずっと簡単だ。
わざわざ、精神を追い込んだ洗脳をする必要などない。
勿論、王妃様と私の性格が合わないのは理解している。
だから、王妃様のおもちゃ的に扱える存在にしたかったのかもしれない。
それだけ、だろうか?
いや、違う、と何故か断言出来る。
それならば、公爵派に対して洗脳的なやり方で攻めた方がより効率良く、王妃様も満足する。
私よりも、公爵様たちの態度により、御立腹だった。だから、私に八つ当たりしていた。
王妃様を裏で操っていた人間は、誰?
何をしたいのだろうか?
そこまで考えて、ぞっとした。
私を、
憎んでいるんだ。
その答えが、ストン、とはまった。
標的は、私。
ガタガタと揺れる馬車の振動が、心臓を揺らし、まるで掴まれるかのように苦しくなってきた。
面白くなってきたわ。
王妃様の薬物販売を突き詰めようと絡んでいた糸をほぐしていたのに、違う糸を見つけてしまったみたいね。
「えーと、そうかなあ?リューナイトもそう思う?」
「思います。良い性格だと感心しております。己が信念を曲げずに突き進み、立ち止まらない。それでいて、公爵令嬢としての振る舞い、気品は失わない」
「リューナイト様、遠回しに言うのやめて下さいよ。ハッキリと言って下さい。言い方を気をつけて、と」
「気をつけてるわよ。ねえ、リューナイト」
「そ、それは・・・」
あら?
同じ事を言ってくれると思ったのに、言葉を濁し、ふい、と私から目線を逸らした。
「ほら!その目です。そんな目で見たら誰も喋れないですよ」
「待ってよ!私何もしてないよ!リューナイト、何か言ってよ」
「お嬢様は怖くはありません」
「ちよっと、どっち向いて言っているのよ。私の方を向いてよ」
「ぷぷっ、リューナイト様も同じなんですよ」
「もう!」
そんな他愛のない会話が暫く馬車の中で続いた。
緊張感がほぐれたらかもしれないが、とても肩の力が抜け自然に言葉が出た。
「そうだリューナイト、文は届けてくれた?」
「はい。言いつけ通りスルジニア様に全てお渡ししてきました」
「ありがとう」
私が帝国に行っている間の指示を書いておいた。
公爵派であるお茶会の友人と、手駒とした3人の方々だ。
「何と書いたのですか?」
「何も」
クルリの言葉に優しく微笑み首を振った。
「これからが気を抜けないわ。王妃派にとって、こちら側が今、予想外の手を打っているのだから、そろそろ反撃にでてくるでしょう」
「それで、どうして何も書いていないのですか?相手の動きを見て何か探ってもらったり、またまた、何か気づいた事を探って貰ったり、拡散するような噂を流した方がいいんじゃないですか?」
「いい事言いうね。そこを狙っているからこそ、指示したのよ」
「そこを狙う?」
「ええ。王妃派はこれからより貪欲に攻撃してくるでしょうね。そこであの方々が標的になるのは一目瞭然。そんな虎視眈々と狙われている中、下手に動けば逆に足を掬われ、あの方々を危険に晒してしまう」
「あ・・・そう、ですね」
一気に現実に戻されたように、笑顔が消えた。
「それに、これから私達は国を離れるから、余計にまもれない。それならば、何もせず自分の身だけを守ってくれればいい。その中で気づく事があれば上々、ぐらいの気持ちでいたいの」
私の静かな声に、クルリもリューナイトも神妙に頷いた。
そう。
これからが本当の戦いだ。私が頼めば、少し無理なことでも行動し調べてくれるだろう。だが、それが命取りとなる。
ふう、と重たいため息をついた。
洗脳。
という、先程の言葉が脳裏に響いていた。
奇妙な行動だ。何故ならそこまでする必要などない。私が殿下を慕っていたのは本心だ。そこにより付け込み、ここまで手の込んだ事をして、何をしたいのだろうか?
いや、そう考えると全てがおかしいと今更気づいた。この国を手中におさめようと王妃派が望むなら、私に対して優しくした方がずっと簡単だ。
わざわざ、精神を追い込んだ洗脳をする必要などない。
勿論、王妃様と私の性格が合わないのは理解している。
だから、王妃様のおもちゃ的に扱える存在にしたかったのかもしれない。
それだけ、だろうか?
いや、違う、と何故か断言出来る。
それならば、公爵派に対して洗脳的なやり方で攻めた方がより効率良く、王妃様も満足する。
私よりも、公爵様たちの態度により、御立腹だった。だから、私に八つ当たりしていた。
王妃様を裏で操っていた人間は、誰?
何をしたいのだろうか?
そこまで考えて、ぞっとした。
私を、
憎んでいるんだ。
その答えが、ストン、とはまった。
標的は、私。
ガタガタと揺れる馬車の振動が、心臓を揺らし、まるで掴まれるかのように苦しくなってきた。
面白くなってきたわ。
王妃様の薬物販売を突き詰めようと絡んでいた糸をほぐしていたのに、違う糸を見つけてしまったみたいね。
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