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第1部
79王妃様との決戦3
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王妃様は青ざめた顔から一気に真っ赤に変わり、睨んできたが、それを私は一蹴し、また、同じ場所まで下がった。
「陛下、最後に1つお願いがございます」
「申してみよ」
「私の名を呼ぶ者は私が決めさせて頂きます」
「よかろう。スティング殿は公爵令嬢であり、ガナッシュの婚約者だ。その立場から不用意に名を呼ぶには、無作法極まりない」
ちらりと陛下は王妃様を見る所が、これまで召使い達が平気で呼んでいたのが気に食わなかったのだろう。
ここまであからさまな態度をとるのを初めて見た。それだけ感情を素直に出してくださっているのだ。
王妃様は、勿論反論したい顔だったが、そこは我慢するかのように俯いた。
「ありがとうございます。では、私を呼ぶ際には、公女、とお呼びください」
「公女?」
「はい。その呼び方は平民が貴族令嬢を呼ぶのに使用しているのです」
「わかった。望むようにしなさい。もし、スティング殿を勝手に名で呼ぶ輩は、私に申せ。私自ら罰する」
「ありがとうございます。お願いは以上でございます。他は報告をさせて頂きます。クルリ、陛下に文を渡して下さい」
「はい、お嬢様」
目をキラキラ輝かせ笑いを堪えてるのがわかったが、そこはクルリだ。
低姿勢で、全くの無感情の顔で文を宰相様に渡し、帰ってきた顔が、私の顔を見るなり一気にニヤニヤしてたが、私と目線が合うと、顔をひきつらせぱっと顔を背けそそくさと私の後ろについた。
全く。最後まで我慢しなさいよ!
ちなみに、王妃様は宰相様が離れたので違う人が支えていた。
そのまま、倒れてくれたらいいのに、残念だわ。
陛下は宰相様から渡された文を読み出すと、顔を綻ばせた。
「楽しんできなさい」
「どなたからですか!?」
まあ、立ち直りが早い事。
とりあえずは陛下から文を奪う事はしなかったが、陛下が文を渡そうとした所を、猛烈な勢いで取った。
目線を動かし文を読み終わると、陛下と正反対の顔になった。
「これはどういう事ですか!?何故お前だけが招待されるのですか!?」
また、訳の分からない事を喚き出した。
文の内容は、前日フィーとカレンに届いた、私を直々に帝国に招待する、と言う皇后様からの文だ。
「陛下、おかしな話しでは無いですか!?ガナッシュが招待されておりません!!」
息巻く王妃様と裏腹に、陛下の、馬鹿だろ、という諦めた顔。
ですよねえ。
私も同じ気持ちです。
仕方ありませんわ。
「王妃様、では、また私がお教え致しましょう」
「もういい!!お前の言うことは、的外れだ!!」
「それで結構です。では、的外れの教え、だと思って下さって聞いてください。まず、帝国皇子と帝国皇女に、初めに誰が無礼を与えましたか?」
「そ、それは・・・」
「殿下、ですわね。あら?やっと思い出して頂けましたか?あら?それとも、私の的外れの答えに驚かれました?」
つまり、
「その謝罪も出来ない方を帝国に招待されるとお思いですか?」
と言う事ですよ?
わかります?
「帝国にて謝罪をすれば良いだろ!」
残念。
御理解頂けないようでしたね。
ですが、その話に乗って差し上げましょう。
「まあ!それは素敵なお考えですね。では、先程のように土下座をするのですね」
ぱんと手を叩くと、またまた睨まれた。
「違いますの?では、首でも差し上げますか?」
「な、なんという恐ろしい事を!!」
「あら?でも、帝国では帝国裁判に掛けられる事もある、とお2人は仰っていましたよ?」
「!!」
だから、その驚いて、絶句、と言う顔はやめて欲しい。
何かあるなら、揚げ足取って返しなさいよ。
つまらないわ。
これまでの返しは、全て教えて貰った通りにやってきたという事ね。殿下を中心に動く私の行動が分かりやすかった、という点は否定はしないけれど、臨機応変があまりになってないわね。
つまり、
この方も、
操り人形、
か。
「それと先日のお茶の時に、殿下とレイン殿が今日からご一緒に避暑地に参る、ととても仲むつまじく教えて下さいました。わざわざ、お2人がおられる時に仰ったのに、それを、引き裂く等出来ませんわ」
「それは、すぐに帰るように伝えればいいでしょうが!!」
「馬鹿者!!読んだだろうが!!招待を受けたのはスティング殿のみ!!それを、小国の王妃が何を勝手に動こうとしている!!それも、帰るように言う!?では、帝国皇子、皇女を待たせる気か!!」
陛下、仰る通りでございます。
王妃様、申し訳ありませんが、馬鹿も休み休み仰って下さい。
「っ!!」
わなわなと震える姿に飽きてきた。
小物、
だったわね。
さあて、次に行きますか。
「陛下、では私はこれにて失礼させて頂きます。これより、父と公爵様達と、そして宰相様と急ぎ話し合い決めるべき事が多くございます。それが済み次第、直ぐに帝国へと参ります」
「それまでに、ガナッシュを呼び寄せればいいのでは無いか!?」
「そうだな。忙しくなるが、スティング殿を見ているととても頼もしく見える」
「陛下!」
「恐れ入ります。その期待に答えるよう努力致します」
「スティング!何か答えなさい!!」
「うむ。気をつけて帰られよ」
「まだ話が終わっていません!」
「では、失礼致します」
見ると、残念ながら王妃様の前には兵士の壁があり動けないようだった。
当然ですね。
陛下と目を合わせ、私は微笑み、一礼した。
一足歩く度に、カツカツとホールに私のヒールの音が、気高く響く。
ホールにいる全ての召使い、兵士達が私に頭を下げる。
その瞳には、畏敬の念が溢れ満ちている。
それでいい。
私は、
もう、
俯かない。
この国を変えると、
決めたのだから。
「陛下、最後に1つお願いがございます」
「申してみよ」
「私の名を呼ぶ者は私が決めさせて頂きます」
「よかろう。スティング殿は公爵令嬢であり、ガナッシュの婚約者だ。その立場から不用意に名を呼ぶには、無作法極まりない」
ちらりと陛下は王妃様を見る所が、これまで召使い達が平気で呼んでいたのが気に食わなかったのだろう。
ここまであからさまな態度をとるのを初めて見た。それだけ感情を素直に出してくださっているのだ。
王妃様は、勿論反論したい顔だったが、そこは我慢するかのように俯いた。
「ありがとうございます。では、私を呼ぶ際には、公女、とお呼びください」
「公女?」
「はい。その呼び方は平民が貴族令嬢を呼ぶのに使用しているのです」
「わかった。望むようにしなさい。もし、スティング殿を勝手に名で呼ぶ輩は、私に申せ。私自ら罰する」
「ありがとうございます。お願いは以上でございます。他は報告をさせて頂きます。クルリ、陛下に文を渡して下さい」
「はい、お嬢様」
目をキラキラ輝かせ笑いを堪えてるのがわかったが、そこはクルリだ。
低姿勢で、全くの無感情の顔で文を宰相様に渡し、帰ってきた顔が、私の顔を見るなり一気にニヤニヤしてたが、私と目線が合うと、顔をひきつらせぱっと顔を背けそそくさと私の後ろについた。
全く。最後まで我慢しなさいよ!
ちなみに、王妃様は宰相様が離れたので違う人が支えていた。
そのまま、倒れてくれたらいいのに、残念だわ。
陛下は宰相様から渡された文を読み出すと、顔を綻ばせた。
「楽しんできなさい」
「どなたからですか!?」
まあ、立ち直りが早い事。
とりあえずは陛下から文を奪う事はしなかったが、陛下が文を渡そうとした所を、猛烈な勢いで取った。
目線を動かし文を読み終わると、陛下と正反対の顔になった。
「これはどういう事ですか!?何故お前だけが招待されるのですか!?」
また、訳の分からない事を喚き出した。
文の内容は、前日フィーとカレンに届いた、私を直々に帝国に招待する、と言う皇后様からの文だ。
「陛下、おかしな話しでは無いですか!?ガナッシュが招待されておりません!!」
息巻く王妃様と裏腹に、陛下の、馬鹿だろ、という諦めた顔。
ですよねえ。
私も同じ気持ちです。
仕方ありませんわ。
「王妃様、では、また私がお教え致しましょう」
「もういい!!お前の言うことは、的外れだ!!」
「それで結構です。では、的外れの教え、だと思って下さって聞いてください。まず、帝国皇子と帝国皇女に、初めに誰が無礼を与えましたか?」
「そ、それは・・・」
「殿下、ですわね。あら?やっと思い出して頂けましたか?あら?それとも、私の的外れの答えに驚かれました?」
つまり、
「その謝罪も出来ない方を帝国に招待されるとお思いですか?」
と言う事ですよ?
わかります?
「帝国にて謝罪をすれば良いだろ!」
残念。
御理解頂けないようでしたね。
ですが、その話に乗って差し上げましょう。
「まあ!それは素敵なお考えですね。では、先程のように土下座をするのですね」
ぱんと手を叩くと、またまた睨まれた。
「違いますの?では、首でも差し上げますか?」
「な、なんという恐ろしい事を!!」
「あら?でも、帝国では帝国裁判に掛けられる事もある、とお2人は仰っていましたよ?」
「!!」
だから、その驚いて、絶句、と言う顔はやめて欲しい。
何かあるなら、揚げ足取って返しなさいよ。
つまらないわ。
これまでの返しは、全て教えて貰った通りにやってきたという事ね。殿下を中心に動く私の行動が分かりやすかった、という点は否定はしないけれど、臨機応変があまりになってないわね。
つまり、
この方も、
操り人形、
か。
「それと先日のお茶の時に、殿下とレイン殿が今日からご一緒に避暑地に参る、ととても仲むつまじく教えて下さいました。わざわざ、お2人がおられる時に仰ったのに、それを、引き裂く等出来ませんわ」
「それは、すぐに帰るように伝えればいいでしょうが!!」
「馬鹿者!!読んだだろうが!!招待を受けたのはスティング殿のみ!!それを、小国の王妃が何を勝手に動こうとしている!!それも、帰るように言う!?では、帝国皇子、皇女を待たせる気か!!」
陛下、仰る通りでございます。
王妃様、申し訳ありませんが、馬鹿も休み休み仰って下さい。
「っ!!」
わなわなと震える姿に飽きてきた。
小物、
だったわね。
さあて、次に行きますか。
「陛下、では私はこれにて失礼させて頂きます。これより、父と公爵様達と、そして宰相様と急ぎ話し合い決めるべき事が多くございます。それが済み次第、直ぐに帝国へと参ります」
「それまでに、ガナッシュを呼び寄せればいいのでは無いか!?」
「そうだな。忙しくなるが、スティング殿を見ているととても頼もしく見える」
「陛下!」
「恐れ入ります。その期待に答えるよう努力致します」
「スティング!何か答えなさい!!」
「うむ。気をつけて帰られよ」
「まだ話が終わっていません!」
「では、失礼致します」
見ると、残念ながら王妃様の前には兵士の壁があり動けないようだった。
当然ですね。
陛下と目を合わせ、私は微笑み、一礼した。
一足歩く度に、カツカツとホールに私のヒールの音が、気高く響く。
ホールにいる全ての召使い、兵士達が私に頭を下げる。
その瞳には、畏敬の念が溢れ満ちている。
それでいい。
私は、
もう、
俯かない。
この国を変えると、
決めたのだから。
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