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第1部

67決戦の週末(土曜日)がつんとやってやります・王妃様の部屋にて1

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「ここで待っていて。様子を見ていたらよく分かるわ。クルリ何かあったら2人に教えて上げて」
「分かりました」
王妃様の部屋から少し離れた場所で、フィーとカレンに待つように頼んだ。
この2人ならどうにか理解してくれるはずだし、何かあればクルリがいるから大丈夫だ。
「1人で大丈夫か?」
「いつもの事よ。じゃあ行くわ」
すっと背筋を伸ばし2人から離れると、クルリの輝く目が心に入ってきた。
心が穏やかになり、ふっ、と唇が緩んだ。
「クルリ、鮮やかに悪女を咲かせてみせるわ」
「はい!」
さあ、行くわよ。
「失礼致します」
扉を叩き返事が帰ってくるのを確認し、開け中に入った。
クルリがいつものように、定位置に立つのが見え、誇らしい気持ちになった。
「遅いわ!何故あなたは私の機嫌ばかり損なうことしかしないの!」 
すっと、扉を閉めた。
まだ、
よ。
側に行くと、鬼の形相の王妃様がソファに座ったまま、私に怒鳴りつけたてきた。
機嫌がいつも以上に悪い。
笑いが出るのを堪えた。
レインといい、王妃様といい、思ったようにいかないから、化けの皮が剥がれていく。
冷静になると、なんて馬鹿げた状況だったのだろうか、と自分が愚かになる。
必至に、気に入られようと繕っていた。
必至に、愛されようとへりくだった。
必至に、その心を理解しようと尽くした。
それが、
これ程までに、
己を枯れ果てる、
と言う悲しい現実に気づかなかった。
「申し訳ありません。ご意志にそうように努力致します」
だが、まだ枯れていない。
「努力致します!?どの公爵家も、いつも口癖のように努力致しますと言うけれど、結果が全てよ!何一つ私の意にそうようにしてくれないわ!」
当たり前でしょ。
誰が従うと思ってるの?
いつも無理難題を言っておいて、従うどころか、出来もしないし、実際何を頼まれているのかさえも、分からない。
「申し訳」
バシャリ!!
音と共に、かちゃんと割れる音と、真正面に王妃様が勝ち誇った微笑みが、私にスイッチをを入れた。
お茶の入ったカップを私に投げつけて来たのだ。
「お前のせいで、何もかもがおかしくなったわ!何故ガナッシュの誕生パーティーで逃げたのだ!?お陰で私は、お前の躾がなってないと他国からの使者から叱責を受けたのだ!!」
逃げた?
私が?
面白いことを言ってくれる。
「逃げておりません。お忘れになりましたか?ああ、そうでした。王妃様も、私と同じで被害妄想が激しいのでしたね。ですから、私がわざわざ、嘘を庇って差し上げましたね」
「庇った!?お前が自分の利己に走ったせいでああなったのだろうが!何を言って皇子、皇女を、誑かした!?お前はガナッシュの婚約者でありながら、この国のことも考えず、ただ、おのれの感情に走っただけだ!どれだけ私が使者達の機嫌を直したか分かるか!?」
意味不明もいい所だ。
ガナッシュ。
婚約者。
その言葉を出せば全てが自分の思い通りに動くと思っている時代は終わったのよ。
「恐れ入りますが、何故王妃様と宰相がお相手したのですか?私が居ないなら、殿下とレインがすべきありませんか?」
「レインは平民です。そのような事が出来るわけが無いでしょうが!お前はそうやって出来もしない事をさも当たり前のように言う!!」
はあ?
一緒に登場して、そう言いますか?
殿下の誕生パーティーですよ。
それは、それ相応の立場あってこそ登場して然るべきだと誰もが思います。
だって、今、その口からいいましたよね?
他国の使者が来ている。
そうして私は殿下に言いましたよ。
今回は帝国のお2人が参加しているので、と。
釘を刺したのにも関わらず、私の助言をも聞かず、その上お2人の前で堂々虚偽をぶちまけたのは、あなた方でしょう?
それなら、もう少しあと先考えて動いてて下さい。
それに、宰相様とテスターから聞いたわ。
他国の使者達は私のもてなしがいつも素晴らしいのに、王妃様のぞんざいな応対に辟易していた、とね。私の愚痴ばかり言っていて、誰もが嫌な顔をしていた、ともね。
どれだけ私の悪態をついても、これまで培ってきたものが違うわ。
「そうでしょうか?レイン殿の立場は既に諸外国には愛人として見られております。それならそれ相応の教育をすべきでは無いのですか?」
「まだ学生の身分のレインが愛人などと呼ばれるには早いのはわかっているでょうが。婚約者であるお前が率先して前に出るのか当然。何故人任せにしようとする!」
「人任せ?私は1度も人に任せた事などありません。それに、学生の身分と言うならば、何故、殿下と御一緒に入場するのですか?」
「まだ、根に持っているの!?」
「別にそうではありません。では、軽々しく殿下の側にレイン殿を置いた結果ですね。残念ながら、レイン殿は私よりも殿下に愛された女性、と見なされております」
「バカバカしいしい!お前がレインに嫉妬した結果でしょう!」
それこそバカバカしい。
嫉妬?
あの時の感情は既にそんなものはなかったわ。
怒り。
それだけよ。
「違います。レイン殿に嫉妬などしておりません。それこそ子供じみております。そんな馬鹿な考えしか思いつかないからこそ、私の迎えに殿下とレイン殿を向かわせたのでしょう?ほかの者でも良かったのでは無いですか?そんな浅はかな考えだから、王妃様が諸外国の方の相手をする事になったのです」
私がここまで反論するとは思っていなかった様で、笑い出すほど顔が真っ赤になった。
「御自分の愚かさを認めたらいがですか?」
「何様よ!!」
バシッ、
と鈍い音ともに、
頬に凄い痛みが走った。
「殿下の婚約者でございます」
ハッキリ言ってやるわ。
「私は殿下の婚約者として、相応しく振舞っております!」
私は何時だって間違ってなかった。
ただ、言葉にして、殿下に嫌われるのが怖かった。
でも、殿下のために、必死に努力してきた。
その結果、誰にも文句の付けようのない令嬢だと自負している。
この私に、対峙できる令嬢はどこにも居ないわ。
睨む私に、王妃様も睨み返してきた。
扉を叩く音がしたかと思うと、開き、誰かが入ってきた。
「どうしれました?何か大声が聞こえ・・・その顔・・・」
私の顔を見るなり驚きいた。
出たわね、クラウス様。
「あまりに言うことをきかないからよ」
「ですが・・・これは・・・」
「躾よ!座りなさい」
「・・・わかりました」
私の顔と、落ちたカップを交互に見つめながらビクつきながら王妃様の前に座った。
はあ、と王妃様大きなため息をつきながら、私を馬鹿にする顔で見てきた。
「スティング、お茶を入れなさい」
「嫌です」
「・・・何ですって?」
眉間に皺を寄せながらも、この状況で聞き間違いだと思う愚かな様子がおかしかった。
「このような近くにおりながら、聞こえなかったのですか?では、再度申しましょう」
「スティング!!」
苛立ちの顔で立ち上がった瞬間、扉を叩く音がし、開いた。
「失礼致しまあす」
この淀んだ空気に不似合いな陽気な声が部屋に響いた。




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