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Chapter01 茨の道を行け
Dream 001
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『ドリーマーズインターネットのサービス開始は再来月で確定か?』
カチカチと薄暗い部屋にクリック音が響く。
少し鬱陶しいくらいに伸びた前髪を左手で弄りながら、俺はひたすらにそんな『ドリーマーズインターネット』についての記事を読み漁っていた。
ドリーマーズインターネットとは同時に複数の人に同じ夢を見せるシステムのことで、日本のバクーラル社が開発した唯一無二の存在だ。
今のところ日本でしか普及する予定は無いらしいが、おそらくは各国も日本をファーストペンギンにしていずれは導入するだろう。
楽しみで楽しみで仕方ない。5年前にフルダイブ型VRヘッドセットが発売された時だって同じくらいに興奮していたが、正直それは全くの期待外れだった。
所詮はCGで作られた、現実とは程遠い質感で再現された世界。ラグが酷かったし料理は砂の塊を食べてるようだったし。あれは3日で飽きてしまったなあ……
しかし今回はそんなことはない……はずだ。ドリーマーズインターネットのホームページで見た映像。
あれはまるで現実世界の何処かで撮った映像かのようだった。料理もちゃんと味がするらしい。
何度も夢見た限りなく現実に近いファンタジー世界の実現。ああ、早く、早く再来月にならないかな──。
まあ……再来月にサービスが開始すると確定しているわけではないのだが。
画面の見過ぎで疲れ切った目を癒そうと、俺はチェアから降りてベッドに横たわった。
大学に入ってから暮らし始めたアパート。その無機質な天井に取り付けられたフロアライトを無意味にボーッと見つめては思いを巡らせる。
それにしても良かった。
まさかあの恐ろしいまでの倍率だったドリーマーズインターネットへのシステム登録……『レム』の抽選が当たるとは思ってもみなかった。
当選者が3万人に対して応募者は約302万人。実に100倍もの倍率にも関わらず勝ち取ったのだ。
レムの登録ができるのは明日。
登録には何故だか知らないが身体検査も伴う。
よって指定された場所まで行かなければならないのだが、俺が行く予定の東京会場へ向かうには暫く電車に揺られる必要があった。
寝坊しないように気をつけなければならない。
それにレム以外にもやりたいことがある。
俺は目覚まし時計のアラームをセットし、そのまま電気を完全に消してカーテンから漏れ出る多少の朝日を感じながら、明日? への期待を胸に抱き目を閉じた。
※
ピピピ……ピピピ……
今ではすっかり聴き慣れてしまった目覚まし音が狭い部屋内に響き渡り、俺は渋々と目を開けアラームを止める。
あー……早く寝たつもりなんだけどな。めちゃくちゃ眠い。
しかし今日は待ちに待ったレムへの登録日。気合を振り絞ってでも街に出なければならない。
俺はベッドから立ち上がり、辛気臭い部屋へ日光を取り入れようとカーテンを開けた。
「邪魔だなあ……でも仕方ないか」
日光と共に飛び込んできた景色に、思わず悪態をつく。
俺はこの窓から見える景色が好きだった。障害物も何もなく、丁寧に整えられた樹林が心地よさを煽っていたあの景色が。このアパートを選んだ理由だってそれが大きかった。
だが、今は違う。
最近の工事によって設置された、大きな電波塔。
その人工的な建造物が、完全に景観の邪魔となってしまっている。
しかしそれはドリーマーズインターネットの電波を受信するのに必要なもの。
ドリーマーズインターネットのサービス開始を待ち望んでいた俺がどうこう言う代物ではない。
おっと、物思いに耽っている場合じゃないな。早く準備しないと。
レンジの上に無造作に置かれた消費期限切れの食パンを手に取り貪りながら、クローゼットから適当なパーカーを取り出して羽織る。
大学生になってから多少のオシャレに手を出してみようとは思ったが、いかんせん外に出ないのでこれがいつもの俺の外出スタイルである。
子綺麗にしていても結局他人は俺のことなんて見ない。洗濯も面倒だし結局これが1番良いと落ち着いた。
にしても食パン、パッサパサだな。
カビが生えてないことは確認したが、ただエネルギーを取るための手段として期限切れの食パンを摂取するのはやめたほうがいいな。
そう思っていてもコスパの良さに釣られて買ってしまう。きっとレムの帰りにまた食パンを買ってしまうんだろう。
やべ、パンのカスが床に散らばってる! まあ、いいか。
そんなことを考えながら時計を確認。
現在の時刻は11時32分。指定されている時刻は10時~15時の間であるからまだ全然余裕である。
にしても12時を過ぎる前に起きたのは一ヶ月ぶりくらいだな。無駄に長い夏休みのせいで完全に昼夜が逆転してしまった。
それはいいとして15時には会場に行けばいいんだろ? ヌルゲーすぎるぜ。
何故俺が11時半なんて微妙な時間にアラームをセットしたのか。その理由はコレだ。
俺は床に散らばっているパンカスまみれのチラシ一枚を手に取った。
そこに書かれていたのは11時から4時間限定で提供される『ATEDコラボカフェ』のランチメニュー。
ATEDってのはドリーマーズインターネットのサービス開始と共にリリースされる予定のMMORPGだ。
他にもドリーマーズインターネットと同時にリリースされるゲームはあるらしいが、俺はこのATEDしか眼中に無い。
なにせ他のゲームは教育用だとか、そんなのばっかりだったからだ。
それら有象無象とは違って、ATEDは完全に剣と魔法のファンタジーRPGらしい。
らしいっていうのはまだ完全に全容を把握してないからだ。
ネットで調べれば簡単に世界観なんかの情報を得られるだろう。だが俺はそれをしていない。
それは何故かって?
そう、コラボカフェを訪れると直接情報が得られるからだ!
絶対ネタバレをくらうよりは自分の目で確認してきた方がいい。
俺は今までドリーマーズインターネットの情報は得ていたものの、ATEDに関しては殆どの情報を遮断してきた。
だから感動は段違いのはずだ。マジで楽しみだ。
必要最低限のものを持って前回食料品を大量購入したぶりに外へ出る。
最近はずっと雨続きで少し肌寒さを感じていたのだが、やはり日光を直接浴びると違うもので少し暑い。
長袖で来たのは失敗だったかな。
少し歩いただけで背中に汗が滲むほど。
最近の温暖化はマジで異常だぜ。
額にまで汗が浮かぶ頃に駅前までたどり着いた。
「混んでんな……」
そんな俺の呟きは駅前の喧騒に容易にかき消される。
休日でしかも真昼間。
平日の通勤ラッシュほどでは無いだろうがレストランの並んだ駅前が混んでないわけがない。
近頃引きこもり気味でゲーム三昧だった俺にとってはあまりに恐ろしい光景だ。
とりあえず勇気を出して駅内へ。そして人波に流されるまま電車に乗って目的の駅へと向かう。
暫く電車に揺られた後、コラボカフェ最寄りの駅に到着した。
コラボカフェに向かうには駅から多少歩くことになる。
駅を出て暫く歩いても俺と同じ方向に向かっている若い男女たちはきっと俺と同じ場所へ向かっていることだろう。
コラボカフェには『レム』の当選者しか入れない。
だから目の前の男女は、レムの当選者に違いない。
時間的にもうレムが終わった後なのだろうか。それとも俺と同じでレムの前なのだろうか。
てかカップルでレムの抽選が当たるとか、豪運すぎるだろ!
もしかしてレムをキッカケに出会った男女とか? 確かに俺もそれを利用してマッチングアプリの1つでも利用すれば良かった!
……そんな勇気ないけど。
目の前を行くカップルに羨望の目を向けながらようやく辿り着いた先で、事前に発行しておいたバーコードを受付に見せ中に入る。
「うおぉ……」
そこはもう先ほどまでいたコンクリートジャングルとは全く別の世界のように思えた。
造花だろうがまるで別惑星の植物のように生えそろった、不気味だが美しい植物たち。
それにプロジェクションマッピングかミストディスプレイか何かを駆使して映し出された、どこか可愛らしいモンスターたちの姿。
現実世界でも既存のフルダイブ世界を凌駕するほどのものがそこには広がっていた。
俺と同時に入店したカップルと暫くその感動を味わった後、俺のような独り身でも優しい仕切りによって隔離された一人席へと向かう。
そしてテーブル脇に置かれたタッチパネルからメニューを開いて何を注文するか考える。
にしても高い。
3食を80円の食パンで過ごしたことがある俺にとって、この値段は怪物的だ。
しかし仕方ない。注文した料理と一緒に付いてくるらしいカードにATEDの詳細が書かれてるらしいからな。
現場の雰囲気を感じただけで満足し、流れで帰るわけにはいかないのだ。
……よし。コレにするか。
何となく目についたものを注文して、暫くした後にその料理が運ばれてくる。
植物を模した緑色のカレーに大地を模した黄色っぽいライス。
それに謎の花が散りばめられた『キラードライアドのフラワーカレー』。
何とも毒々しい見た目だが味の方ははたして。
てかキラードライアドね。
可食シートにその姿がプリントされてるわけだが『キラー』という割には可愛らしい見た目だ。まあデフォルトされてるのかもしれないけど。
いただきまーすと口に運ぼうとした所で店員が何やら書かれたカードを持ってきた。
そういえばまだ受け取ってなかったな。コレ目当てで来たのに。
受け取って早速書かれている文字を見る。長々と書かれているわけだが俺はゆっくりとそれに目を通した。
『遥か太古の時代。
エイテッドの人々は世界中心部で天高く聳え立つ世界樹【バベル】の膝下で栄えていた。
ある日、誰かが呟いた。「バベル頂上部の枝に実る果実を食べれば、永遠の命が手に入る」と。
人々はその言葉を信じ、世界樹の中を掘り進んでは登り、果実を手に入れようとした。
数百……数千年の年月を経て、遂に人々は果実まで辿り着き、手に取った。
その瞬間バベルの枝葉は枯れ落ち、その外見は硬質な塔となり、モンスターを生み出す魔の砦と化してしまった。
人々は後悔した。
世界樹を蝕んだ己達の過ちを。』
カードにはそう書かれていた。
俺の正直な感想としては……
「ナンダコレ」
これだけだった。
カチカチと薄暗い部屋にクリック音が響く。
少し鬱陶しいくらいに伸びた前髪を左手で弄りながら、俺はひたすらにそんな『ドリーマーズインターネット』についての記事を読み漁っていた。
ドリーマーズインターネットとは同時に複数の人に同じ夢を見せるシステムのことで、日本のバクーラル社が開発した唯一無二の存在だ。
今のところ日本でしか普及する予定は無いらしいが、おそらくは各国も日本をファーストペンギンにしていずれは導入するだろう。
楽しみで楽しみで仕方ない。5年前にフルダイブ型VRヘッドセットが発売された時だって同じくらいに興奮していたが、正直それは全くの期待外れだった。
所詮はCGで作られた、現実とは程遠い質感で再現された世界。ラグが酷かったし料理は砂の塊を食べてるようだったし。あれは3日で飽きてしまったなあ……
しかし今回はそんなことはない……はずだ。ドリーマーズインターネットのホームページで見た映像。
あれはまるで現実世界の何処かで撮った映像かのようだった。料理もちゃんと味がするらしい。
何度も夢見た限りなく現実に近いファンタジー世界の実現。ああ、早く、早く再来月にならないかな──。
まあ……再来月にサービスが開始すると確定しているわけではないのだが。
画面の見過ぎで疲れ切った目を癒そうと、俺はチェアから降りてベッドに横たわった。
大学に入ってから暮らし始めたアパート。その無機質な天井に取り付けられたフロアライトを無意味にボーッと見つめては思いを巡らせる。
それにしても良かった。
まさかあの恐ろしいまでの倍率だったドリーマーズインターネットへのシステム登録……『レム』の抽選が当たるとは思ってもみなかった。
当選者が3万人に対して応募者は約302万人。実に100倍もの倍率にも関わらず勝ち取ったのだ。
レムの登録ができるのは明日。
登録には何故だか知らないが身体検査も伴う。
よって指定された場所まで行かなければならないのだが、俺が行く予定の東京会場へ向かうには暫く電車に揺られる必要があった。
寝坊しないように気をつけなければならない。
それにレム以外にもやりたいことがある。
俺は目覚まし時計のアラームをセットし、そのまま電気を完全に消してカーテンから漏れ出る多少の朝日を感じながら、明日? への期待を胸に抱き目を閉じた。
※
ピピピ……ピピピ……
今ではすっかり聴き慣れてしまった目覚まし音が狭い部屋内に響き渡り、俺は渋々と目を開けアラームを止める。
あー……早く寝たつもりなんだけどな。めちゃくちゃ眠い。
しかし今日は待ちに待ったレムへの登録日。気合を振り絞ってでも街に出なければならない。
俺はベッドから立ち上がり、辛気臭い部屋へ日光を取り入れようとカーテンを開けた。
「邪魔だなあ……でも仕方ないか」
日光と共に飛び込んできた景色に、思わず悪態をつく。
俺はこの窓から見える景色が好きだった。障害物も何もなく、丁寧に整えられた樹林が心地よさを煽っていたあの景色が。このアパートを選んだ理由だってそれが大きかった。
だが、今は違う。
最近の工事によって設置された、大きな電波塔。
その人工的な建造物が、完全に景観の邪魔となってしまっている。
しかしそれはドリーマーズインターネットの電波を受信するのに必要なもの。
ドリーマーズインターネットのサービス開始を待ち望んでいた俺がどうこう言う代物ではない。
おっと、物思いに耽っている場合じゃないな。早く準備しないと。
レンジの上に無造作に置かれた消費期限切れの食パンを手に取り貪りながら、クローゼットから適当なパーカーを取り出して羽織る。
大学生になってから多少のオシャレに手を出してみようとは思ったが、いかんせん外に出ないのでこれがいつもの俺の外出スタイルである。
子綺麗にしていても結局他人は俺のことなんて見ない。洗濯も面倒だし結局これが1番良いと落ち着いた。
にしても食パン、パッサパサだな。
カビが生えてないことは確認したが、ただエネルギーを取るための手段として期限切れの食パンを摂取するのはやめたほうがいいな。
そう思っていてもコスパの良さに釣られて買ってしまう。きっとレムの帰りにまた食パンを買ってしまうんだろう。
やべ、パンのカスが床に散らばってる! まあ、いいか。
そんなことを考えながら時計を確認。
現在の時刻は11時32分。指定されている時刻は10時~15時の間であるからまだ全然余裕である。
にしても12時を過ぎる前に起きたのは一ヶ月ぶりくらいだな。無駄に長い夏休みのせいで完全に昼夜が逆転してしまった。
それはいいとして15時には会場に行けばいいんだろ? ヌルゲーすぎるぜ。
何故俺が11時半なんて微妙な時間にアラームをセットしたのか。その理由はコレだ。
俺は床に散らばっているパンカスまみれのチラシ一枚を手に取った。
そこに書かれていたのは11時から4時間限定で提供される『ATEDコラボカフェ』のランチメニュー。
ATEDってのはドリーマーズインターネットのサービス開始と共にリリースされる予定のMMORPGだ。
他にもドリーマーズインターネットと同時にリリースされるゲームはあるらしいが、俺はこのATEDしか眼中に無い。
なにせ他のゲームは教育用だとか、そんなのばっかりだったからだ。
それら有象無象とは違って、ATEDは完全に剣と魔法のファンタジーRPGらしい。
らしいっていうのはまだ完全に全容を把握してないからだ。
ネットで調べれば簡単に世界観なんかの情報を得られるだろう。だが俺はそれをしていない。
それは何故かって?
そう、コラボカフェを訪れると直接情報が得られるからだ!
絶対ネタバレをくらうよりは自分の目で確認してきた方がいい。
俺は今までドリーマーズインターネットの情報は得ていたものの、ATEDに関しては殆どの情報を遮断してきた。
だから感動は段違いのはずだ。マジで楽しみだ。
必要最低限のものを持って前回食料品を大量購入したぶりに外へ出る。
最近はずっと雨続きで少し肌寒さを感じていたのだが、やはり日光を直接浴びると違うもので少し暑い。
長袖で来たのは失敗だったかな。
少し歩いただけで背中に汗が滲むほど。
最近の温暖化はマジで異常だぜ。
額にまで汗が浮かぶ頃に駅前までたどり着いた。
「混んでんな……」
そんな俺の呟きは駅前の喧騒に容易にかき消される。
休日でしかも真昼間。
平日の通勤ラッシュほどでは無いだろうがレストランの並んだ駅前が混んでないわけがない。
近頃引きこもり気味でゲーム三昧だった俺にとってはあまりに恐ろしい光景だ。
とりあえず勇気を出して駅内へ。そして人波に流されるまま電車に乗って目的の駅へと向かう。
暫く電車に揺られた後、コラボカフェ最寄りの駅に到着した。
コラボカフェに向かうには駅から多少歩くことになる。
駅を出て暫く歩いても俺と同じ方向に向かっている若い男女たちはきっと俺と同じ場所へ向かっていることだろう。
コラボカフェには『レム』の当選者しか入れない。
だから目の前の男女は、レムの当選者に違いない。
時間的にもうレムが終わった後なのだろうか。それとも俺と同じでレムの前なのだろうか。
てかカップルでレムの抽選が当たるとか、豪運すぎるだろ!
もしかしてレムをキッカケに出会った男女とか? 確かに俺もそれを利用してマッチングアプリの1つでも利用すれば良かった!
……そんな勇気ないけど。
目の前を行くカップルに羨望の目を向けながらようやく辿り着いた先で、事前に発行しておいたバーコードを受付に見せ中に入る。
「うおぉ……」
そこはもう先ほどまでいたコンクリートジャングルとは全く別の世界のように思えた。
造花だろうがまるで別惑星の植物のように生えそろった、不気味だが美しい植物たち。
それにプロジェクションマッピングかミストディスプレイか何かを駆使して映し出された、どこか可愛らしいモンスターたちの姿。
現実世界でも既存のフルダイブ世界を凌駕するほどのものがそこには広がっていた。
俺と同時に入店したカップルと暫くその感動を味わった後、俺のような独り身でも優しい仕切りによって隔離された一人席へと向かう。
そしてテーブル脇に置かれたタッチパネルからメニューを開いて何を注文するか考える。
にしても高い。
3食を80円の食パンで過ごしたことがある俺にとって、この値段は怪物的だ。
しかし仕方ない。注文した料理と一緒に付いてくるらしいカードにATEDの詳細が書かれてるらしいからな。
現場の雰囲気を感じただけで満足し、流れで帰るわけにはいかないのだ。
……よし。コレにするか。
何となく目についたものを注文して、暫くした後にその料理が運ばれてくる。
植物を模した緑色のカレーに大地を模した黄色っぽいライス。
それに謎の花が散りばめられた『キラードライアドのフラワーカレー』。
何とも毒々しい見た目だが味の方ははたして。
てかキラードライアドね。
可食シートにその姿がプリントされてるわけだが『キラー』という割には可愛らしい見た目だ。まあデフォルトされてるのかもしれないけど。
いただきまーすと口に運ぼうとした所で店員が何やら書かれたカードを持ってきた。
そういえばまだ受け取ってなかったな。コレ目当てで来たのに。
受け取って早速書かれている文字を見る。長々と書かれているわけだが俺はゆっくりとそれに目を通した。
『遥か太古の時代。
エイテッドの人々は世界中心部で天高く聳え立つ世界樹【バベル】の膝下で栄えていた。
ある日、誰かが呟いた。「バベル頂上部の枝に実る果実を食べれば、永遠の命が手に入る」と。
人々はその言葉を信じ、世界樹の中を掘り進んでは登り、果実を手に入れようとした。
数百……数千年の年月を経て、遂に人々は果実まで辿り着き、手に取った。
その瞬間バベルの枝葉は枯れ落ち、その外見は硬質な塔となり、モンスターを生み出す魔の砦と化してしまった。
人々は後悔した。
世界樹を蝕んだ己達の過ちを。』
カードにはそう書かれていた。
俺の正直な感想としては……
「ナンダコレ」
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表紙イラスト&キャラクタ―シート:nijijourney タイトルロゴ:コタツラボ様(https://twitter.com/musical_0327)
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