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第12話 シャロン、ガゼルから逃げたい

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 01/


 (はあ。どうしよう)

 シャロンは、ガゼルにお姫様のように抱きかかえられながら、あることで悩んでいた。

 ガゼルは、シャロンと憲兵から逃げるため、夜の街を駆け抜けていた。
 建物の屋根から屋根へと移動し、風を切りながら走るガゼル。


 
 最近の首都ルクセンバルグの夜は肌寒かった。
 しかし、ガゼルの腕の中で、ガゼルの温もりを感じることで、シャロンは、その冷たい風もあまり気にならなかった。


 シャロンは、ちらっとガゼルの顔を見上げた。


 (間違いない。この人は、ガゼル・ロンドだ)


 シャロンは、青ざめた表情を浮かべていた。


 (なんで、私なんかを助けてくれるんだろう)


 シャロンは、過去に社交界でガゼルに行った自身の悪行を思い出す。



 02/

  4年前。
  エルダーク王国で盛大な舞踏会が開かれた。


  「見て。成り上がり者のガゼル・ロンドよ」

 
 社交界に初めて姿をあらわしたガゼル・ロンドを見て、エルダーク王国の若い貴族たちは、冷ややかな笑みを浮かべながら、ガゼル・ロンドを馬鹿にしていた

 
 ガゼル・ロンドは、魔鉱石で財を成した男だった。
 鉱山を大量に買い占め、運良く、その後、鉄道が普及したことで、魔鉱石の需要が高まり、運良く富豪になれた。
 
 貴族たちは、そう考えていた。


 
 白髪の青年ガゼルは、一際高級感のある黒のタキシードに身を包んでいた。そして、ガゼルは、そんな冷ややかな目線をまったく気にしていない様子だった。


 蒼いドレスを着たシャロンは、そんなガゼルが眼中に入ってなかった。

 ただ、自身の想い人。エルダーク王国の王子セリル・エルダークと一緒に踊りたい。それしか頭になかった。




 物憂げにテラスでセリル・エルダークが舞踏会にあらわれるのを待っていたシャロン。


 すると、
 シャロンの目の前に、白髪の青年がやってきた。



 「お嬢さん。よろしかったら、俺と一曲踊っていただけませんか」


 ガゼル・ロンドが、シャロンにダンスの誘いを申し込んできたのだ。



 そして、シャロンは、ガゼルに容赦なく心ない言葉を言った。




 「私、成り上がり者には興味ないの」




 
 
 

 
 
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