陽だまりへの妄執 〜金の鎖で縛られた愛人契約〜

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 　友人がこんなに必死になるからには、それだけこの条件が良いのだろう。その勢いに押されてつい頷く。

 「…………今日だけなら」
 「良かったー！　実は今日わたしのお客さんも来るから、日にちをずらしたくなかったんだ。初日に自分のお客さんを連れて行くと時給の交渉がしやすいからすごい助かる」

 　時給。その言葉に反応してつい喉が鳴る。今、どうしてもお金が欲しいのはわたしの方だ。

 「へー。いくらくらい貰えるものなの？」
 「んーと、知り合いのボーイの所で交渉しといたから五千円くらいかな。後はドリンクとか指名のバックもつくよ。って言っても実際働いて、自分の指名数が少なかったら容赦なく時給減らされるけどね」

 　さりげなく釘をさす彼女は、その仕事に誇りを持っているからだろう。わたしはそんな彼女が眩しく思える――自分がグジグジと悩んでばかりいるから余計に。


 　待ち合わせの場所と時間を決めて電話を切ると急に冷静になると、とんでもないことを了承してしまったのではないかと項垂れる。


 （……御堂さんになんて言おう？）

　わたしが外出を許されているのは仕事の時間だけだ。
　いつもより帰りが遅くなるのならば、彼に許可を得なければならない。こちらから電話することに気まずい思いはあれど、連絡はきちんとする必要がある。
　手に汗をかいたまま電話を掛ければ、意外にも彼はすぐに電話に出てくれた。
　しかし、彼も外に居るのか電話口の背後から喧騒の声も聞こえる。

「あの、もしもし」
「どうした？」
「……申し訳ないのですが、今日友人とご飯に行っても大丈夫でしょうか？」
「戻る時間は？」
「終電になるまでには必ず帰ります」
「それならば良い。ただし見張りはついていることを忘れるな」

　忙しいのかプツリと電話を切られる。
　そして見張りの存在を思い出して、わたしは顔を青褪めさせた。


（……ああ。どうして忘れていたの！）

　いつも遠くに見張りが居るのか、彼らがどこに居るか気付いた試しはない。しかし、彼らは今もわたしを監視していることを御堂さんから聞いていたのに、昨夜の疲れも相待ってかその事実を頭から抜け落ちていた。

（本当に私の馬鹿！　いくら寝不足だからって頭が働いてないにもほどがあるわ）

　
　どうしようかと打開策を考えながら会社に戻る。

 　――けれど、わたしはもう少しきちんと考えて行動をとるべきだったのだ。
 　この時、御堂さんに真実を言わなかったからこそ、自分の首を絞めることになるのだから。