６畳間のお姫さま

お姫さまの御乱心

３

　涙なみだを流ながす化物バケモノを見下みおろしながら、お姫ひめさまは「死しに損ぞこないが。悪わる足掻あがきしやがって」と、独ひとり言ごとをさらに続つづけます。

　そんなお姫ひめさまが、手てにしていた包丁ほうちょうを大おおきく振ふり上あげたその瞬間しゅんかん──


　まあ！　なんということでしょう！


　弱よわりきっていたはずの化物バケモノが急きゅうにお姫ひめさまを跳はねのけ、腰こしに隠かくし持もっていた三徳さんとく包丁ぼうちょうをあろうことかセーラー服ふくの胸むなもとに深ふかく突つき刺さしたのです！


　化物バケモノが包丁ほうちょうを引ひき抜ぬくと、お姫ひめさまの華奢きゃしゃな身体からだから鮮あざやかな血飛沫ちしぶきが噴ふき出だします。それは、とてもとても綺麗きれいな放物線ほうぶつせんを描えがきました。

「うっ……アッ…………ああ…………」

　目めを大おおきく見み開ひらいて口くちから血ちも流ながしているお姫ひめさまは、包丁ほうちょうを振ふり上あげた格好かっこうのまま、ゆっくりと後うしろへ蹌踉よろけながら倒たおれてしまいました。