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「凪ちゃんの体に咲いている赤い鬱血は、誰が付けたのかな?」
やわやわと胸を揉んでいながらも、聞いた者は一瞬で背筋を凍らせるぐらい冷えびえとした声を、夜神の耳に流し込む。
その声が恐ろしくて、胸の淡い刺激など何処かに吹き飛んてしまう程だった。

けど、夜神は言いたくなかった。言ってしまったら庵との思い出がなくなってしまうような気がしたからだ。
一夜の大切な思い出を、愛しい人が残してくれた跡を、皇帝に奪われるのも、穢されるのも望んでいないから。

背筋は恐怖でゾワゾワと粟立っているし、胃の中は氷を無理矢理詰め込まれたかのように冷たい。
ここで庵君の名前を言ったほうが楽になるのも分かっているが、そんな気は更々ない。

「・・・・・・・・」
目をギュッと瞑って首を横に振る。それは答えることの拒否を表す。
「いいたくないんだ~~・・・・・しょうがないね~凪ちゃんは・・・・・」
耳元で囁いてゆっくりと体を引き離したルードヴィッヒは、切り裂いた軍服の中から、まだ手についてないネクタイを掴み、夜神に見せる。
「これ、なーんだ?」
「・・・・・ネクタイ」
ゆらゆらと揺らしながらネクタイを見せつける
「これも鋏で切ってしまおうか?」
笑ってネクタイを両手で持ってピィン!と、横に延ばす。
「それだけは、それだけは残して下さい。お願い、します・・・」
今にも泣きそうな声で必死に懇願する夜神を、蕩けるような目で見たルードヴィッヒは悦楽に満ちた顔で、そのネクタイを使って夜神の視界を遮った。
「?!!いや!何するの!外して!」
頭を横や縦に振って、遮る行為から逃げようとするがルードヴィッヒの方が一枚上手で、素早く目隠しをされてしまう。
「凪ちゃん知ってるかい?五感のどれか一つが機能しなくなると、他の五感がそれを補おうとするんだよ?例えば視界が封じられると、こうやって・・・・・・触覚の感覚が研ぎ澄まされたりするんだ・・・・・・」

ルードヴィッヒは人差し指で首筋から鎖骨にかけてツゥーと撫でていく。
最初、ビクッと体を震わせた夜神も、その感覚が何かを呼び起こすのか、体を捩って何かを逃がそうとしている。
「っぅ・・・・・・・」
「ほら、研ぎ澄まされてきてる・・・・・ねぇ、凪ちゃん?教えて?ココとかココに赤い跡を付けたのは誰?」
赤い鬱血を指でクイクイと押して聞きだす。けど、夜神は顔を横に振って拒否を続ける。

名前を言いたくない
言ってしまってら全てを奪われそうで嫌だ!
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
言いたくない!言いたくない!

「そう・・・・・なら、いいよ。言いたくなったら教えてね?けど、その跡は醜いから私が綺麗に塗り替えてあげようね。綺麗にしなきゃね?凪ちゃん?まずは、背中から、ね?」
ギシッ・・・ベッドがきしんだ音がすると思ったら、皇帝の気配が背中からする。
降ろしていた髪を一纏めにして前の方に垂らされてしまうと、背中は丸見えだ。
その背中の上あたりに高い体温と、湿った感触がしたと思ったらヂュと吸われる感覚がした。
「いや!やめて!消さないで!やぁ・・・・!?いっ゛!!」
肌を吸われる感覚がしたと思ったたら、ブチッと肌を突き破る痛みが襲う。
皇帝の牙が埋め込まれたのだ。けど、その後ゾクゾクする感覚が埋め込まれた牙から生れる。

いつの間にか皇帝の手が、柔らかい胸を後ろから優しく揉み始めている。
寒さからか、恐怖からか、それとも注ぎ込まれた「色の牙」のせいか、桜色の粒は尖りきっていて、ルードヴィッヒが爪で軽く弾くと、それに連動して腰がビクッと揺れ動く。

「血を吸ったら干乾びてしまうからね・・・・・「色の牙」の成分だけ注いであげるよ。全部の赤い跡を書き換えながら、注いでいったら凪ちゃんどうなるかな?楽しみだね?」
「やぁぁ・・・・うぅぅ・・・ん、ん・・・・」
否定の言葉を言いたいのに、出てくるのは喘ぎ声に似た声ばかりで、夜神は何も言えなくなった。

体の中を甘い痺れが襲う。触れるもの全てが刺激になってしまう。それを逃したくて背中を捩らせたりするけど、更に刺激になって意味がない。
頭もぼーっとしてきて、息も上手く吸えなくて「ハァハァ」と呼吸が荒くなる。
体も熱くなってきて、何故か胸や下半身がムズムズと痒くなる。掻きたいのに両手が塞がってい掻けなくて、さらに痒くなってくる。悪循環だ。
けど、胸のむず痒さを緩和するためなのか、皇帝の手が一番痒いところに触れるたびに、腰から背中にかけてゾクゾクする。
けど、緩和するどころかもっと酷くなって、もっと掻いて欲しくて、大きな手のひらに押さえつけるように、自分の胸を差し出していく。

「くぅぅ~ん、あ・・・・・い゛っ゛!ああぁっ!」
ヂュと再び別の肌が吸われたと思ったら、肌を突き破る感覚が生まれる。
けど、その感覚は既に痛みは取り除かれていた。最初に注ぎ込まれた「色の牙」のせいで痛みは快楽の刺激に塗り替えられている。
「ふぁぁ、あ、ん、いゃぁぁ・・・・」

いつの間にかルードヴィッヒの指が夜神の口内に入り込み、舌を指の腹で擦ったり、歯列をなぞったりしてクチュクチュと粘ついた水音をさせている。
閉じることも出来ず、開いた口からは涎とくぐもった声を出し続けている。

片方の手は、胸の尖りを二本の指で扱いたりしたと思ったら、クイッと軽く引っ張ったりする。
すると、背中を仰け反らしてその刺激に反応する。その隙に、背中の鬱血を強く吸って、再び赤い跡を上書きして「色の牙」を注ぎ込む。
「ふぐぅぅ・・・・ゔぅ゛~~~ん゛っ!」
涙が流れても、視界を遮るネクタイが全てを吸い取っていく。そのせいで目の周りは冷たくなっている。

「背中の跡を全て上書きしたら、今度は前もしなきゃね?そして、足もやらなきゃいけないね・・・・・とっても大変な作業だね。本当に悪い子だよ凪ちゃんは。こんなに私の手を煩わせて・・・・お仕置きが大変だよ?けど、沢山鳴いていいんだよ。私の可愛い白いヴァイセ・クライナー・フォーゲル?」

白いヴァイセ・クライナー・フォーゲル」・・・・これから始まる出口の見当たらない、痛みと快楽の合言葉だったのかもしれない。
それを聞いた夜神は、混濁し始めた意識の中でそう確信した。
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