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寒い・・・・・

背中は温かいのに前は寒い。とくに足はもっと寒い。まるで何も着ていないぐらいだ。
頭はぼーっとするし、体は全体的に痛いし、けど何より痛いのは心だった。

全てを置いてきた
刀も指輪も何もかも・・・・
そして、大好きな人達も
守りたいと願った恋しい人も

「ん・・・・」
起きたくない
このまま、永遠に目が覚めなければいいのに
そうしたら、夢の中ならいつでも会えるから
あの人の笑顔に、真剣な眼差しに、時々意地悪になる顔に、全部大好きなあの人の表情を見れるから・・・

けど、心が寒いと身体まで寒いのか、震えてしまう。起きたくないけど起きないといけない状態まで体が冷えている。
このままではいけないような、けど、全てを捨てたのだからどうでもいいような曖昧な気持ちになってしまう。

「ん・・・・・・」
けど、目を開けたほうがいいような気もしてきて目を開いてみた。
薄暗い、カーテンみたいなもので遮られているせいか全体的に暗くて、けど、天井に赤や白い丸いボヤケた絵が見えて・・・・
だんだんとはっきり見えてくると、それは赤や白い薔薇の花の絵だった。
一年前、涙で視界はボヤケて、動きたくても動けないほど体は疲れていて、仰向けになった状態で何度も、何度も見ていた絵だった。
「あっ・・・・・ぃゃや!」
手に触れる滑らかな肌触りの布も、記憶を呼び起こす要因の一つだった。あの時は体全体をこの布で包まれていた。
その感触は今は足だけにある。
「あ、あっ・・・・・」
「おはよう。起きたんだね凪ちゃん?気分はどうかな?いい気分?おや?・・・・あぁ、懐かしいよね?凪ちゃんがここで毎夜眠っていたベッドだからね?」
起きた気配でベッドに近づいてきたルードヴィッヒを見て、夜神は飛び起きて後退る。
「ぃやぁ!来ないでっ!!」
逃げようと背を向けた途端、一瞬で鎖に捕らわれてしまった。

足に巻き付き動きを止められ、左右の腕にはそれぞれ巻き付き、頭上に持上げられて一纏めにされてしまう。
「あ、ぁぁ、こ、ないで・・・・」
背中に鋭い視線を感じながらガタガタと震えた。
この震えは寒さからなのか、恐怖からなのか分からない。あるいは両方かもしれない。
だからなのか、自分の恰好に目眩がした。シャツと下着以外は全てを剥ぎ取られている。シャツも釦は全て外されて袖を通しているだけだ。
だから寒かったのかもしれない・・・・

「逃げなくてもいいと思うけどね?・・・さて、先ずは何か飲もうか?喉が渇いているだろうからね?」
カチャカチャと食器がぶつかる音を鳴らしてベッドに上がると、鎖で身動きのできない夜神の正面に移動する。
いつもの詰め襟の軍服姿ではなく、シャツとトラウザーズ姿のラフな格好で夜神を見下ろしていた。
「いらない・・・・・」
弱々しい、小さな声で否定する夜神にルードヴィッヒは笑ってしまった。
「紅茶だよ?あぁ、もしかして甘いのが良かったかな?ごめんね。砂糖もミルクも入れてなくて。凪ちゃんは甘いのが好きだもんね?」
ソーサーの上に乗ったカップを持って夜神の唇にカップの縁を当てる。けど、夜神はふぃっ、と横を向く。
「いらない」
「凪ちゃん・・・・・我儘は良くないよ?」
ソーサーをベッドに落として、その手で夜神の白練色の頭を優しく撫でていく。
二度、三度往復した手は突然ぐいっ、と髪を掴んで無理矢理顔を上げさせて、ルードヴィッヒを見るようにする。
「凪ちゃん・・・・ここは吸血鬼の世界だよ?そして、私は皇帝だ。私の命令は絶対だよ。逆らうことは許されない。凪ちゃんはスティグマがあるとはいえ、ただの餌だよ?なら、立場はどちらが上か分かるよね?」
愉悦に満ちた顔をしたルードヴィッヒは紅茶を口に含むと、夜神の唇に自分の唇を合して口移しで紅茶を飲ませていく
「?!うっ・・・・・」
白い喉がゴクと動いて嚥下する。それを聞いたルードヴィッヒはカップの紅茶が無くなるまで何度も繰り返す。
「ふっ・・・・ん、?!ん~~ん、ん!!」
最後の口移が終わったら紅茶ではなく、ルードヴィッヒの舌が夜神の口内に遠慮なしに入ってくる。

逃げる夜神の舌を絡めたり、擽ったい口腔内を舐めたり、舌の裏を舐めたりしていく。
頭はルードヴィッヒによって動けないため、体を捩って逃げようとするが、鎖のせいで動くことも出来ずジャラジャラと金属音をさせるだけだった。

ちゅくちゅくと水音をさせていた唇がやがて離れて、満足気にルードヴィッヒは顔の赤い夜神を見つめる。
「美味しかったかい?早速で悪いけど凪ちゃんに見てもらいたいものがあるんだ?」
カップや落ちているソーサーを拾って、ルードヴィッヒは一旦ベッドから降りて先程まで座っていたソファに向かう。
夜神は気にする余裕もなく肩で息をしながら、ルードヴィッヒの唇の感触が未だに残る自分の唇を、ゴシゴシと服に擦り付けた。

「傷つくなぁ~そんな事されると・・・・・」
手に持っていたのは夜神の軍服と、布を切る大きな鋏だった。
「何するの?まさか・・・・・やめて!しないで!」
鋏ですることといえば一つしかない
「だって、もう、は必要ないでしょう?今度からは私が用意したドレスを着るのだから。だから・・・・・」
ジョキッ!布が鋏で裁ち切られる音がする。その一つの音を皮切りに軍服の上着がどんどんと裁ち切られていく。
「いや!いや!やめて!やめて・・・・・奪わないで!お願いだから!」
今すぐ止めさせたいのに、その鋏を奪って投捨てたいのに、無惨にも切り刻まれる軍服を返してほしいのに、体に鎖が巻き付いて身動きが出来ない。

悲痛な声を聞きながら上着を切り刻み終わると、次にズボンを持ち上げて同じように刻んでいく。
「はい、おしまい。さて、次は・・・・・」
ずいずいっと、夜神に近づいてきたルードヴィッヒはシャツの裾を掴むと夜神の顔を見た。
これから起こる事に予想が出来た夜神は、目を見張り震えだす。
「いやぁ!やめて、やめて!!」
後退りしたくても足に鎖が巻き付いて動けない。出来るのはその場で体を振って裾を離してもらうことだけだった。
「これも要らないね?」
ジョキッ!裾が切られる。
「いやぁぁ━━━!!」
裾から上に向かって、白いシャツを掴んでは切り取っていく。残ったのは袖と襟回りのわずかな布ぐらいだった。

「だって、これもいらないしね・・・・・」
シャツだった布を見せ付けるようにひらっと、落としながらルードヴィッヒは鋏の刃面を夜神の胸の膨らみにあてる。
「っ!何を・・・・」
悦楽の表情をしたルードヴィッヒは唇を歪ませて、鋏の刃面を当てたまま横に移動させていく。すると薄ピンクのシンプルなブラのカップとストラップの間に鋏を入れ込んでぐいっと、ストラップを鋏で引っ張る。

夜神の顔が引き攣る。皇帝の鋏の餌食になる次のターゲットが分かってしまったからだ。
「やめて!お願いだからやめて!!」
「「やめてください」だよ?言葉使いは間違ってはいけないよ?」
「やめて下さい・・・・お願いします・・・・・」
震える声で、訂正された言葉使いで懇願する。
これ以上、羞恥に耐えられない。もし、このまま鋏を入れられて切り刻まれたら、次に切り刻まれるのは分かっている。

分かっているから、これ以上の暴力的行為を止めてほしくて夜神はひたすらに懇願した。
「お願いします、やめて下さい。・・・・・やめて下さい・・・・」
「・・・・・かわいいね、私の白い小鳥は。愛らしい声でお願いして・・・・けどね?」
ニヤッ、そう笑って手首を動かしてストラップをジャキッ!と断っていく。
「!?」
「お仕置きだから、だーめ」
笑って答えていきながら、もう片方のストラップも断って、フロントに遠慮なく鋏を突っ込み断っていく。

支える役割をなくしたブラジャーを掴み引き抜くと、豊かな胸を問答無用で鷲掴みしていく。
「いやぁ!!」
「さて、私の質問にちゃんと答えてね?拒否権は凪ちゃんにはないからね?」
耳元で囁く声は、興奮と怒りを含んでいるネットリとした重い声だった。

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お仕置きはまず、精神的に虐めて、次に体を虐めていくようでした。
目の前で大事な軍服切り刻まれるのは耐え難いですね。それを分かっているからやるあたりが鬼畜なルードヴィッヒです。
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