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「お待たせ~庵君は何か必要な物とかある?」
「特にありませんよ」
「うん、分かった。会計お願いします」
夜神は手に持っていた物をカウンターに置く。
「あっ、待って下さい・・・」
慌てて財布を取り出す庵に夜神が「待った」をかける

「お祝いだから私が出すね。これでちゃんと手入れしてね」
微笑んで庵を見る夜神は、凄く嬉しそうにしながら桐の箱を撫でている。それを見た庵も笑顔になって頷く
「ありがとうございます。ちゃんと手入れしますね」
「うん」

会計をすませて店を出ると、時間は昼前だった。混み始める時間だが昼食は食べれる時に食べておきたい。
「お昼どうしょう?何か食べたい物とかある?」
「・・・・・昨日のテレビでオムライスの特集していて、無性にオムライスが食べたいです」
「私も同じもの見た!じゃ決まり!」
「お店はどこがいいですか?」
笑いながら「えー」と悩んで歩いていく夜神の横を、庵も一緒に悩みながら歩く。結果、すぐに店は決まりそこで食事をすることになった。



「美味しかったですね。当たりのお店で良かったです」
「本当に良かった。また、来ようね」
店を出て、しばらく歩くと公園が見えてくる。そこに吸い寄せられるように、中に入り暫く歩いていく。ベンチを見かけて夜神はそこに座る。

「少しだけ、休憩しよう?」
「はい」
二人並んで座る。そこに言葉はなく「無」だけが過ぎていく。
「ねぇ、庵君」
「何でしょうか?」
「「高位クラス武器」に認めてもらって、嬉しい?」
「もちろんです。大佐は違うのですか?」
「もちろん、私も嬉しいよ!けど、増々、危険な任務を任される事になるからちょっとね?」
「心配ですか?」
風が枝の葉っぱを揺らして「ザッザッ」と音がする。少し遠くを見つめている夜神の横顔は何か寂しげでもあった。

「心配?それもあるし、誇らしくもあるし、嬉しくもあるし・・・・・けど、一つだけ約束してね」
少しだけ泣きそうな、困ったような顔で庵を見つめる夜神の顔は、道場で見た顔に似ていた。
「置いていかないでね。もう、一人は嫌だから」

一人は嫌だ。みんな遠くに行ってしまった。思えば思うほど奪われていく。庵君もいつか奪われてしまうのだろうか?
いつの間にか、庵は夜神を抱きしめていた。言葉でも伝えるが、態度でも伝えたいと思ったから。

「安心して下さい。嫌でも引っ張って一緒についてきてもらいます。俺が、置いていくなんてことはありませんから」
華奢な体を包み込むようにして抱きしめる。
庵の突然の行為に驚いたが、それに応えるように夜神も背中に腕を回す。
「うん。その時はお願いね」
「はい」
体が離れる時に、庵は夜神の顎に指を置いて上を向かせる。そして、夜神の唇に自分の唇を乗せる。それ以上は何もしない。一瞬驚いた夜神も、すぐに目を閉じて庵に全てを任せる。

すぐに離れていく。そして、夜神の耳元でこっそりと語りかける。
「・・・・・凪さん?今すぐ抱きたいです。駄目ですか?」
「ふぁ!ん・・・・耳元で喋らないで・・・・」
熱い吐息を吹き掛けながら喋られると、背中がゾクゾクしてしまう。
庵によって色々と教えられた体は、庵から与えられる行為によって変化してしまう。
口で答えるのが恥ずかしくて、何度か頷く。
「正直ですよね?でも言葉でちゃんと言わないと・・・いいですか?」
「フッ・・・・ん、い、いよ」
恥ずかしくてまともに庵の顔を見れない夜神は、赤くなった顔を俯かして小さくなった声で返事をする

それを聞いた庵は夜神の腰に手を回して、立ち上がり目的の場所に歩き出す。夜神は何もわからないまま庵について行くしかなかった。


(鏡の間かぁ~)
所々CLOSEとなっている部屋を見ながら、庵は気になるフレーズを見つけてその部屋を選ぶ。
夜神はいったい庵が何をしているのか全く分からないので、ひたすら床を見たり、壁を見たりとキョロキョロするしかなかった。
部屋を決めた庵はエレベーターに乗り、目的の部屋に行く。

靴を脱いで部屋に行くと、赤いカーテンが印象的な部屋が現れる。
「凪さん・・・・・・七海中佐達からとんでもないものをもらいました」
「虎次郎?何をもらったの?」
「それが、こんな物をもらいました」
庵は鞄の中からピンク色の包装紙に包まれた物を取出して、夜神に手渡す。
「これは野村大尉からです。たしか「天使」とか言ってました」
「天使?開けるね・・・・・・・ひゃ!」
中身を見て、驚いて落としてしまう。その時に同じく中身も落としてしまう。
「落ちましたよ・・・・・・マジか?」
その手にあったのは、白いシフォン生地で出来たベビードールだった。きっと夜神は絶対に着ることはない代物だ。

「これは?庵君!!」
「えっ~と、七海中佐に言われたんです。「あの夜神と付き合うのは、中学生の恋と変わらないんだ!大人になろう庵青年!なのでこれらを贈呈するので大人の恋をするように」と七海中佐、相澤中佐に式部大尉と野村大尉の四人の圧が凄かったです。感想も求められてるので、多分逃げることは出来ないと思います」

「・・・・・・・・はい?」
顔が赤くなる。ついでに耳も赤くなる。絶対楽しんでいるし、私に渡したら、速ゴミ箱行きだと分かっているから、庵君に渡したんだ!!
両手がプルプルと震える。庵も心配そうに見つめる。
「絶対、無理!!着ない!恥ずかしい!」
「お願いです。着てください!!俺は見たいです!!」
「えっ!!なんで見たいの!!おかしいよ!」
「おかしくないです。男はこんな物が好きなんです!」
庵は夜神の手を握る。そしてダークブランのカラコンの瞳を熱ぽく見つめる。

「俺だけの秘密にしときますから。見せて下さい。あっ、シャワー浴びますよね?待ってますよ」
拾ったもの全てを無理やり握らせて、グイグイと庵は夜神を風呂場まで押し込めるように進んで、とうとう、夜神を脱衣場まで連れていくことに成功した。
「ちょ、庵君!」
「はい。待ってますから!ゆっくりで大丈夫ですよ!」
パタンと扉を閉める。きっとこれで大丈夫だろう。
扉の奥で何やら叫んでいるが、それは聞かなかったことにする。

改めて庵は部屋をグルリと見回す。鏡の間と書いていたが肝心の鏡が見当たらない。そして不自然に端によせられたベッドが気になる。
リモコンが纏められている所に、カーテンと書いたラベルと上下の矢印だけのリモコンを手に取りを、ベッドのすぐ隣の赤いドレープカーテンに向けて上の矢印を押す。

すると、ヴゥ~と低い機械音がしてカーテンが上に上がり鏡が現れる
「おっと、たしかに「鏡の間」だ。これは内緒にしとかないと」
庵は下の矢印を押してカーテンを元に戻すと、ポケットにリモコンを隠す。これはいいものを見つけた。
庵の顔は満悦の表情を浮かべた。
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