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「抜刀・蒼月!」
刀を抜くと同時に叫び武器の名前を呼ぶ。
刀は青白く仄かにひかり、獣の低く唸る声がどこからか聞こえてくる。
「庵君も同じようにしてみて」
「はい。抜刀・澌尽灰滅!」
構えていた刀の名前を呼んで、武器に意思をもたせる。
けど、夜神のように刀が青白く光ることも、獣の唸り声が聞こえることもない。
「もっと、感情を込めて!」
「はい!抜刀・澌尽灰滅!!」
声を先程よりも大きくして叫ぶ。だが、特に変わったことはなにもない。
「庵君、呼びながら刀を私に向けて振ってちょうだい」
「えっ!真剣ですよ!危ないですよ」
「受け止めるから安心して。それにこのままでは、いつまで経っても埒が明かない」
夜神の顔を見る。そこには「大丈夫」と訴える夜神の表情が見える。
「・・・・・はい!お願いします。抜刀・澌尽灰滅!!」
庵は叫んで、夜神に向かって刀を大きく大上段に振りかぶる。夜神は蒼月を頭上で横にして、もう片方の手を峰に添えて、両手で庵の攻撃を止める。
「吼えよ・蒼月!」
虎の攻撃的な鳴声が聞こえてくる。隅で見学している久慈学生が「キョロキョロ」と辺りを見回すが、動物など一匹も見当たらない。
「庵君。その刀に合いそうな掛け声を叫んでみて。気に入ったものがあれば刀も応えてくれるかもしれないから!」
「はい!輝け、澌尽灰滅!!・・・・・叫べ、澌尽灰滅!」
「腕が止まっているよ!動かして!!」
「はい!」
夜神から言われて刀を何度も振るう。それを夜神は受け止めていく。
「滅せよ、澌尽灰滅!!・・・・・くそっ!澌尽灰滅!!」
焦りが出てくる。どんなに呼びかけても何の返答もない。
初めて見つけた時の、花のような匂いも今はない。
「くっ・・・・・・・今の俺では役不足なのか」
動きが止まる。力を込めても、叫んでも何も起こらないことに苛立ちよりも、物悲しさがひしひしと心を占めていく。
「庵君?初めてその刀を見つけた時、どんなふうに教えてくれた?」
夜神が静かに聞いてくる。
「花の匂いがしました。近づくにつれて強くなって、そして、鞘に触れる温かったです」
見つけた時の事を思い出す。種類は分からないが、どこかで嗅いだ記憶のある花の匂いだった。
「そう・・・・・匂い、匂い・・・・漂う?香?香気・・・」
「あっ・・・・・・」
握っていた柄がわずかだが温かくなる。その不思議な現象に庵は声を出すしかなかった。
それを聞いて夜神は少しだけ考える
「香気?意味は確か・・・よいにおい、におい・・・」
良い匂いと聞いて、庵も少し考える。
「漂う・・・・違う。纏う、纏う・・・・・「香気を纏う?」「纏え?」」
薔薇色の刀身がわずかに光を放つ。それを見て庵は自分の中で考えた事を叫んでいた。
「抜刀・澌尽灰滅!!香気を纏え!」
初めて出会った時の、花の匂いがまた漂う。刀は光ったりはしていないが、確実に何かを委ねるような感覚がする。
「?!庵君!もう一度刀を振るって!」
「はい!」
もう一度刀を振りかぶる。夜神はそれを頭上で受け止めていくが、力で押される。瞬間に危機的状況を察知して、無意識に紅月を抜いていた。
「抜刀・紅月!喰らえ!!」
二刀流で庵の刀の攻撃を受け止める。どこからか鳥の鳴き声がしてくる。
これ程とは・・・・・・軍に回収されてから、一度も使い手が見つからないのも頷ける。この刀は強すぎる。庵君は使いこなすことが出来るのか分からない。夜神は刀の強い力を危惧する。
夜神がいつの間にか二刀流になってしまったと同時に、隅の方で見ていた相澤中佐が突然腰に下げている二丁のデザートイーグルを引き抜いて庵の刀に標準を合わせる。
それは一瞬の事で、隣で見ていた久慈学生は、ただ目を開くだけしか出来なかった。
「相澤中佐・・・・・・」
「っ、すまない。庵二等兵を撃とうとしたわけではない。刀からのとんでもない圧を感じてしまって、無意識に・・・・・あの刀は何なんだ?」
相澤中佐も庵の刀に畏怖の眼差しを向ける。
「庵君!もう一度叫んで!」
「はい!抜刀・澌尽灰滅!香気を纏えっ!!!」
花の匂いがもう一段強くなる。辺りに花びらが舞っている。
「抜刀・蒼月!!紅月!!吼えよ!喰らえ!駆けよ!舞え!」
何かを牽制するような、威嚇するような鳴声と共に、刀から虎と鳥の形をした光が、夜神を包む。
いつの間にか夜神の瞳は赤くなっていた。動いたからか、それともこの辺りを支配する力が、考えられないほどの緊張を与えたからか・・・・それは夜神も分からない。
庵は叫んでもう一度刀を振るう。夜神もそれを受け止めるために構える。
ガキィ━━━ン!!
力を込めて振るった金属同士が、音をたててぶつかる。
「くっ・・・・・」
「うっ・・・・・」
二人の唸り声が聞こえる。一瞬、淡い光が二人を包み込んだがすぐに消える。
雲散霧消これ程当てはまった言葉はないほど、淡い光は跡形もなく消えた。残ったのは刀を交えた二人だけ。
「ハァーハァーハァー」
「・・・・・・・ハァー」
肩で息をしながら、必死に空気を取り込む庵と、ため息を一つ漏らした夜神は、交えた刀を動かすことは出来なかった。体が動かない、動けない。
「庵君・・・・・・おめでとう。「高位クラス武器」は庵君を使い手として認めて、そしてその力を解放したよ。これで間違いなく澌尽灰滅は庵君のパートナーだね」
庵はハハッと笑いながら、固まった腕に意識を向けていく。意識すると何とか動かせることが出来てきて、抑え込むように交えていた刀を持ち上げる。
抑え込んでいた刀がなくなると、夜神は二本の刀をそれぞれ納刀する。そして今だに刀を握りしめている庵の側に行き、握り込んでいる手にそっと、夜神の両手を添えて固まった指を外していく。
「もう、大丈夫だよ。頑張ったね」
庵に向けて微笑むと、額から汗を滲ませ、荒い息を繰り返す庵は、ぎこちないながらも何とか笑顔を浮べる。
「はい。俺、認められたんですね。澌尽灰滅は力を貸してくれるんですね!」
夜神は庵の指をゆっくりと外して、その手で刀を受け取ると両手で柄を握り、横に向ける。
「庵君の命を守り、助けそして周りを、人々を守る剣となり盾となる。けど忘れないで「高位クラス武器」は大事なパートナーでもある大切な存在。けして疎かにしないで」
夜神は庵の目を見つめる。その様子に庵も夜神の目を見て頷く。
「はい。疎かにしません」
「うん。庵君ならそんな事はしないと思うけどね」
ニッコリと微笑み、庵の手に刀を渡す。庵はしっかりと受け止めて、ベルトに差していた鞘に納刀する。
その顔は自信に満ち溢れた顔だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
なんとか武器も応えてくれました。今度からパートナーとなり庵君を助けてくれるでしょう。
夜神大佐もヒヤヒヤしながらも、武器の力を引き出した功労者です。二人で頑張った共同作業ですね(笑)
刀を抜くと同時に叫び武器の名前を呼ぶ。
刀は青白く仄かにひかり、獣の低く唸る声がどこからか聞こえてくる。
「庵君も同じようにしてみて」
「はい。抜刀・澌尽灰滅!」
構えていた刀の名前を呼んで、武器に意思をもたせる。
けど、夜神のように刀が青白く光ることも、獣の唸り声が聞こえることもない。
「もっと、感情を込めて!」
「はい!抜刀・澌尽灰滅!!」
声を先程よりも大きくして叫ぶ。だが、特に変わったことはなにもない。
「庵君、呼びながら刀を私に向けて振ってちょうだい」
「えっ!真剣ですよ!危ないですよ」
「受け止めるから安心して。それにこのままでは、いつまで経っても埒が明かない」
夜神の顔を見る。そこには「大丈夫」と訴える夜神の表情が見える。
「・・・・・はい!お願いします。抜刀・澌尽灰滅!!」
庵は叫んで、夜神に向かって刀を大きく大上段に振りかぶる。夜神は蒼月を頭上で横にして、もう片方の手を峰に添えて、両手で庵の攻撃を止める。
「吼えよ・蒼月!」
虎の攻撃的な鳴声が聞こえてくる。隅で見学している久慈学生が「キョロキョロ」と辺りを見回すが、動物など一匹も見当たらない。
「庵君。その刀に合いそうな掛け声を叫んでみて。気に入ったものがあれば刀も応えてくれるかもしれないから!」
「はい!輝け、澌尽灰滅!!・・・・・叫べ、澌尽灰滅!」
「腕が止まっているよ!動かして!!」
「はい!」
夜神から言われて刀を何度も振るう。それを夜神は受け止めていく。
「滅せよ、澌尽灰滅!!・・・・・くそっ!澌尽灰滅!!」
焦りが出てくる。どんなに呼びかけても何の返答もない。
初めて見つけた時の、花のような匂いも今はない。
「くっ・・・・・・・今の俺では役不足なのか」
動きが止まる。力を込めても、叫んでも何も起こらないことに苛立ちよりも、物悲しさがひしひしと心を占めていく。
「庵君?初めてその刀を見つけた時、どんなふうに教えてくれた?」
夜神が静かに聞いてくる。
「花の匂いがしました。近づくにつれて強くなって、そして、鞘に触れる温かったです」
見つけた時の事を思い出す。種類は分からないが、どこかで嗅いだ記憶のある花の匂いだった。
「そう・・・・・匂い、匂い・・・・漂う?香?香気・・・」
「あっ・・・・・・」
握っていた柄がわずかだが温かくなる。その不思議な現象に庵は声を出すしかなかった。
それを聞いて夜神は少しだけ考える
「香気?意味は確か・・・よいにおい、におい・・・」
良い匂いと聞いて、庵も少し考える。
「漂う・・・・違う。纏う、纏う・・・・・「香気を纏う?」「纏え?」」
薔薇色の刀身がわずかに光を放つ。それを見て庵は自分の中で考えた事を叫んでいた。
「抜刀・澌尽灰滅!!香気を纏え!」
初めて出会った時の、花の匂いがまた漂う。刀は光ったりはしていないが、確実に何かを委ねるような感覚がする。
「?!庵君!もう一度刀を振るって!」
「はい!」
もう一度刀を振りかぶる。夜神はそれを頭上で受け止めていくが、力で押される。瞬間に危機的状況を察知して、無意識に紅月を抜いていた。
「抜刀・紅月!喰らえ!!」
二刀流で庵の刀の攻撃を受け止める。どこからか鳥の鳴き声がしてくる。
これ程とは・・・・・・軍に回収されてから、一度も使い手が見つからないのも頷ける。この刀は強すぎる。庵君は使いこなすことが出来るのか分からない。夜神は刀の強い力を危惧する。
夜神がいつの間にか二刀流になってしまったと同時に、隅の方で見ていた相澤中佐が突然腰に下げている二丁のデザートイーグルを引き抜いて庵の刀に標準を合わせる。
それは一瞬の事で、隣で見ていた久慈学生は、ただ目を開くだけしか出来なかった。
「相澤中佐・・・・・・」
「っ、すまない。庵二等兵を撃とうとしたわけではない。刀からのとんでもない圧を感じてしまって、無意識に・・・・・あの刀は何なんだ?」
相澤中佐も庵の刀に畏怖の眼差しを向ける。
「庵君!もう一度叫んで!」
「はい!抜刀・澌尽灰滅!香気を纏えっ!!!」
花の匂いがもう一段強くなる。辺りに花びらが舞っている。
「抜刀・蒼月!!紅月!!吼えよ!喰らえ!駆けよ!舞え!」
何かを牽制するような、威嚇するような鳴声と共に、刀から虎と鳥の形をした光が、夜神を包む。
いつの間にか夜神の瞳は赤くなっていた。動いたからか、それともこの辺りを支配する力が、考えられないほどの緊張を与えたからか・・・・それは夜神も分からない。
庵は叫んでもう一度刀を振るう。夜神もそれを受け止めるために構える。
ガキィ━━━ン!!
力を込めて振るった金属同士が、音をたててぶつかる。
「くっ・・・・・」
「うっ・・・・・」
二人の唸り声が聞こえる。一瞬、淡い光が二人を包み込んだがすぐに消える。
雲散霧消これ程当てはまった言葉はないほど、淡い光は跡形もなく消えた。残ったのは刀を交えた二人だけ。
「ハァーハァーハァー」
「・・・・・・・ハァー」
肩で息をしながら、必死に空気を取り込む庵と、ため息を一つ漏らした夜神は、交えた刀を動かすことは出来なかった。体が動かない、動けない。
「庵君・・・・・・おめでとう。「高位クラス武器」は庵君を使い手として認めて、そしてその力を解放したよ。これで間違いなく澌尽灰滅は庵君のパートナーだね」
庵はハハッと笑いながら、固まった腕に意識を向けていく。意識すると何とか動かせることが出来てきて、抑え込むように交えていた刀を持ち上げる。
抑え込んでいた刀がなくなると、夜神は二本の刀をそれぞれ納刀する。そして今だに刀を握りしめている庵の側に行き、握り込んでいる手にそっと、夜神の両手を添えて固まった指を外していく。
「もう、大丈夫だよ。頑張ったね」
庵に向けて微笑むと、額から汗を滲ませ、荒い息を繰り返す庵は、ぎこちないながらも何とか笑顔を浮べる。
「はい。俺、認められたんですね。澌尽灰滅は力を貸してくれるんですね!」
夜神は庵の指をゆっくりと外して、その手で刀を受け取ると両手で柄を握り、横に向ける。
「庵君の命を守り、助けそして周りを、人々を守る剣となり盾となる。けど忘れないで「高位クラス武器」は大事なパートナーでもある大切な存在。けして疎かにしないで」
夜神は庵の目を見つめる。その様子に庵も夜神の目を見て頷く。
「はい。疎かにしません」
「うん。庵君ならそんな事はしないと思うけどね」
ニッコリと微笑み、庵の手に刀を渡す。庵はしっかりと受け止めて、ベルトに差していた鞘に納刀する。
その顔は自信に満ち溢れた顔だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
なんとか武器も応えてくれました。今度からパートナーとなり庵君を助けてくれるでしょう。
夜神大佐もヒヤヒヤしながらも、武器の力を引き出した功労者です。二人で頑張った共同作業ですね(笑)
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