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会計を終わらして、今度は庵君の目的の場所に行く。
離れたくないのか分からないが、手を離してくれない。
まるで、絡めとるように指と指の間に、庵君の指が入り込み、やんわりと摑まれる。

怒っているのか分からないが、喋ってくれない事が不安になって口を開く
「庵君?どこに行くの?」
「コンビニですよ。買いたい物を思い出したんです・・・・あった。入りましょう」
目に入ったコンビニに立ち寄る。
「すぐに終わるので、デザートコーナーで待っていて下さい」
「分かった」

庵に言われてデザートコーナーに向かう。
シュークリームやケーキが並ぶのを見ると、ちょっとだけ嬉しくなる。

コンビニに入ってからは、普段と変わらない庵君になっていたが、それでも何か恐いものがある。

少し思い悩んでいると、会計を終わらせた庵がやって来る。
「何か美味しそうなものでもありましたか?」
「・・・・・桜の季節なのかな?この「桜餅シュークリーム」とか美味しそうだなぁ~と思っていたの」
目の前にあった商品を指差す。自分で言ってあれだが、確かに美味しそうな商品の一つである。
「本当ですね。そろそろの時間ですから、買って食べましょうよ」

庵がニッコリして提案してくるので、夜神もつられてニッコリする。
「そんな時間なんだ?じゃ、どこかで食べようか。庵君は何がいい?」
どこか、公園で食べるのかな?なら、お茶も必要になるかな?
軽く考えて、庵の食べたい物も確認する
「えっと~、そのカップに入ったみたらし団子いいですか?」
「これ?これも美味しそうだよね。それじゃ買ってくるね」
「いいんですか?ありがとうございます」
シュークリームとみたらし団子を手にとって、ついでにお茶のペットボトルも摑み会計を済ませる。

「庵君、どこの公園で食べるの?」
「・・・・・そうですね、休憩出来る所で食べましょうか」
さっきと同じ様に指を絡めて握ると、先導するように歩き出す。
やがて、人通りが少ない路地を歩く。そこには前に見た文字が乱立している。
「待って!庵君ここって・・・・・」
「駄目ですか?」

緊張で足が動かなくなる。立ち止まってしまった夜神に対して、絡めていた手をギュッと握りしめて、夜神の顔を見る
「小さい男と笑っても構いません。店で大佐がナンパされていた時、凄くイライラしてしまいました。自分の彼女が目の前で、言い寄られている光景って心配もありますが、相手に対してイライラもするんですね」
こんな気持ち初めてですよ~と笑っているが、その笑いが深淵を思わせるほど暗く、少し背すじがゾワッとした。

「繋ぎ止めたいから、一緒にいたいからなんです。もちろん嫌なら無理強いはしないつもりです。けど、安心させて欲しいんですよ。駄目ですか?」
どうして、そんな悲しそうな顔をするんだろう・・・・不安で不安で仕方ないと、訴えている顔は、先程の暗い顔とは打って変わって違う。
「・・・・・嫌な事しない?」
「もちろん」
「びっくりしたけど、私も一緒にいたい、かな?だめ?」
「嬉しいです」
夜神を抱きしめて安心する様子に、少しだけ恥ずかしかったが、それだけ庵君が大切に思ってくれている事が嬉しかった。

庵に手を引かれて、部屋に入ると一番最初に目に入るのが大きなベッドだった。これから行われることに対して恥ずかしくなり、顔が火照りだす。きっと赤くなっているに違いない。

「先にシャワー浴びてきますね・・・・その間に落ち着くと思いますから」
庵の申し出に有り難く頷いて、椅子に座りバクバクと落ち着かない心臓を落ち着かせることに集中する。

落ち着いてきた頃に、シャワーを終わらした庵がバスローブ姿で出てきたことに対して、落ち着いた心臓がまた、バクバクと言い出した。
「大丈夫ですか?脱衣場にバスローブありましたよ。コンタクト外しても大丈夫なら外しておいた方がいいですよ」
「うん・・・・・・行ってくる・・・・」
きっと変な動きになっていると思う。既に気取られていると思うが、気にせず脱衣場に向かう。

大きな鏡の前でコンタクトを外す。使い捨てだから備え付けのテッシュで包んでゴミ箱に入れる。アメニティの中にクレンジングを見つけると、この前の事を思い出す。

汗と涙で化粧がヨレてしまって、化粧直しでおさまるレベルではなかったので、結局洗い流してしまったのだ。
きっと今回も同じことが起こるかもしれない。いや、確実に起る。なら、先に流していた方が良いかもしれない。

夜神はそう結論づけて、化粧を落として着ているものを脱いで、バスルームに入りシャワーを浴びる。そして、顔や体を洗いさっぱりさせてから脱衣場に行き体を拭いていく。

バスローブを直接身につけることに抵抗を覚え、下着だけ着てバスローブを羽織り、庵の所までいく。

「もう少しゆっくりでも大丈夫でしたよ」
緊張を解こうと穏やかに話しかける庵に、何故か益々緊張してしまう。
「買ってきたデザート食べましょうか。お茶準備してますよ」
テーブルには袋から出されたシュークリームとみたらし団子が置いてあり、コップにはお茶が注がれている。
「うん、食べよう」
椅子に座り、シュークリームの袋から取り出すと一口食べる。庵も団子をフォークでさして食べていく。

無言で食べ終わり、お茶を飲んでやっと一息つくと、庵がこちらをじっと見ていることに気がつく。
「庵君?」
「ここに来て下さい」
自分の太腿を軽く叩く庵に、戸惑ってしまったが、覚悟を決めてここまで来たのだと、自分に言い聞かせて立ち上がり側まで行く。

「座って下さい」
手を広げて座るように促すので横向きになり、庵の太腿の片側に座る。すると腰に手を回して、深く座るように位置を変えられる。

「片側だけはきついので、両足に座って欲しいです」
笑って、いつもとは逆の目線になった夜神を見上げる。
いつもは見上げるのに、この格好だと見下ろす事になり、少しだけ興奮して庵の肩に手を回して頭にすり寄る。

庵は一瞬驚いたが、軽く鼻で笑って片方の手で夜神の頭を優しく撫でていく。
それが気持ち良くて、緊張で肩に力が入っていたものが、徐々に解けていく。

時間をかけてゆっくりと、ゆっくりと。
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