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建物に入ってから、庵の緊張が一段と増したことに夜神は違和感を覚えた。
何故、休憩するだけなのに緊張しているのかが分からず、聞こうかとも思ったが、そんな事を聞ける雰囲気でもなく仕方なく後を付いていく。
部屋の扉を開けるとすぐに玄関があり、靴を脱ぐ。そしてそのまま進むと大きなベッドがすぐに目に飛び込む。
内装は、ラグジュアリーホテルのような雰囲気だが全体に薄暗い。普通のホテルとは違う雰囲気に夜神は戸惑ったが、庵が普段と変わらない様子でコートを脱いでいるので、聞けるはずもなく、仕方なくテーブルにケーキの箱を置いて、コートを脱ぐ。
庵がすぐに手を伸ばして、コートを受け取ってくれたので「ありがとう」と感謝する。
「今、コーヒー入れますね。それとも紅茶の方がいいですか?」
「コーヒーでいいよ。ケーキ出しとくね」
いつもと変わらないが、やはり何か緊張している庵に、少しだけ戸惑い始める。どうしてそこまで緊張するのかが分からない。
コーヒーの香りが部屋に充満する。白いカップに入れたコーヒーを持って庵がテーブルに置いていく。
「食べましょう。流石、水族館に併設されてるだけあって海の生き物なんですね・・・・・食べるの勿体ないですね」
「そうだね。でも残していてもしょうがないからね」
テーブルには白いドーム型にアザラシの顔が書いてあるケーキと、丸形にチョコでコーティングして、ペンギンの目が貼り付けてあるケーキが置いてある。
二人はそれを食べながらコーヒーを飲んで楽しむ。
「ケーキ、美味しかったですね。形は罪悪感を覚えましたが・・・・・」
「ふふ、もしかして鯛焼きとかも苦手なの?」
「それは大丈夫です。けど食べたケーキみたいに、かわいい感じのものはちょっと・・・・・」
他愛のない会話をしているうちに、緊張がなくなったのか、いつもと変わらない雰囲気になり安堵する。けど、それはすぐに終わる。
庵は立ち上がり、ベッドをソファ代わりに座ると、夜神の顔を見てベッドを軽く叩く。
「隣に来てもらってもいいですか?」
強張った顔で、静かに口を開く。その雰囲気に夜神も、何かを感じ取り黙って従う。
一人ぶん間を開けて座ったが庵がすぐに詰めて密着する。
「フードコートの事ですが、今度から一緒に出掛けているときは何もしないで下さい。すぐに助けますから」
「大丈夫だよ。自分で対処出来るから」
「もし、相手が力でねじ伏せてきたらどうするんですか?」
眉を寄せて聞いてくる庵に、微笑んで見つめる。
「相手は素人でしょう?片手で捩じ伏せられるよ。だから大丈夫だよ?」
実力を知っているのなら、素人相手に臆することもないぐらい知っているはずなのに、どうしてそんな心配するのかが分からず首を傾げる。
「もし、相手が軍人なら?武道経験者なら?」
そう言って、夜神の肩を掴むと、力を込めて後ろに夜神を倒れさせる。
ギシッとベッドが音をたてていく。スプリングが効いているのか痛みはない。
あまりの突然の事に、目を白黒させて、見開く夜神の顔を上から見下ろす庵の目には、色欲の色が見えてくる。
「いおりくん?どうしたの?」
「もし、こんな事されたらどうするんですか?」
そう言って、顔を近づけて夜神の唇に軽く、庵の唇を当てるとすぐに離れる。
「!?」
見開いた目を、更に開く。
「どうするんですか?」
「・・・・・他人ならされる前に、打ちのめすよ?でも庵君ならい、ぅんっ・・・・・・・」
「いいよ」と最後まで言えずに、唇が塞がれる。今度は長く、いつ離れるのか分からない。
夜神の体温が上がっていく。それとおなじく、下腹部が「ッキン」と甘く痛みだす。
唇から熱い温度が離れていく。庵が夜神の顔をジッと見つめてくる。その目から逃げたくて顔を逸らす。
「大佐なら簡単に抜け出せるのではないんですか?どうなんですか?それとも・・・・・」
どうしてそんなに責め立てられるのか理由が分からず、目を瞑る。目頭が熱くなり涙が出そうになる。
何かに耐えようとしていた時に、庵に向けていた耳朶に、熱い吐息がかかったと思ったら、「チュッ」と音がする。そして、滑る物が耳朶を這う。
「ふぅっ・・・・・だ、めぇッ」
それが、庵の舌だと分かったときには、既に遅く、水音が鼓膜を支配する。
舌が全体を舐めたと思ったら、耳たぶを甘噛したり、舌を差し込んだりする。そのたびにビクビクと体が震えて、出したくもない声が漏れてしまう。
「だめ!んん━━い、おりくん・・・やめて!」
「耳弱いんですね?」
庵が感想を述べながら顔を上げていく。だが、夜神は庵の問いかけに答える余裕もなく、体を整えるための空気を必死に取り込む。
そのあいた口に、庵は指を這わすと、細い顎を摑み顔を庵の方に向けさせる。
「だ、っ!!」
もう一度、唇を塞がれる。そして今度は肉厚な熱い舌が、夜神の口の中に入り込む。そして歯列をなぞり、奥に逃げた夜神の舌に自分の舌を絡めていく。
「ふぅ、んんっ、んん━━━━」
背中がゾグゾグと粟立って腰が浮いていく。
ギュッと閉じた目からは涙が落ちていく。
息の仕方も分からなくて、どうしたらいいのかも分からず庵の胸元を掴みながら、力なく押し出していく。
それに気がついた庵は唇を外す。
「ハァ━━ハァ━━ハァ━━」
肩で息をする夜神を見て、その赤くなった頬を撫でながら、息の仕方の解決策を伝える。
「キスの時に鼻で呼吸すればいいんですよ。もう一度練習しましょうか?」
「まっ、ぅん、ん━━━━」
夜神の「待った」を無視して、もう一度唇が塞がれる。
庵の舌がもう一度、口内に入り込んでくる。夜神の舌の上や裏を舐めては快楽を引きずり出す。
言われた通り鼻で呼吸をするが、どれ程の空気を取り込んでいいのか分からず、小刻みに何度も取り込む。
先程の苦しいキスとは違い、息をしているだけでこんなにも違うのかと驚く。
だが、その驚きは別の事で驚く。庵が唾液を送り込んできたのだ。あまりの突然のことに驚いて、コクンと飲んでしまう。
滲む視界で庵を見ると、飲み込んだ事が正解だったのか、目を細めて笑っている。そしてもう一度唾液が送り込まれる。
コクン・・・・・褒めて欲しくてもう一度嚥下する。
口内を楽しんだ庵の唇が外れるときに、透明な橋が互いの唇に架かる。そしてプッと途切れていく。
「上手ですよ大佐。先程も言いましたが、抜け出すなら今のうちですよ?」
最終通告━━━━庵は夜神に逃げ出すのかどうかを聞く。
夜神はわずかに開いた口から「いや」と、今にも消えそうな声を出して、力なく首を振る。
「分りました」
そう言って、倒れている夜神の背中に腕を回してギュッと抱きしめた。
何故、休憩するだけなのに緊張しているのかが分からず、聞こうかとも思ったが、そんな事を聞ける雰囲気でもなく仕方なく後を付いていく。
部屋の扉を開けるとすぐに玄関があり、靴を脱ぐ。そしてそのまま進むと大きなベッドがすぐに目に飛び込む。
内装は、ラグジュアリーホテルのような雰囲気だが全体に薄暗い。普通のホテルとは違う雰囲気に夜神は戸惑ったが、庵が普段と変わらない様子でコートを脱いでいるので、聞けるはずもなく、仕方なくテーブルにケーキの箱を置いて、コートを脱ぐ。
庵がすぐに手を伸ばして、コートを受け取ってくれたので「ありがとう」と感謝する。
「今、コーヒー入れますね。それとも紅茶の方がいいですか?」
「コーヒーでいいよ。ケーキ出しとくね」
いつもと変わらないが、やはり何か緊張している庵に、少しだけ戸惑い始める。どうしてそこまで緊張するのかが分からない。
コーヒーの香りが部屋に充満する。白いカップに入れたコーヒーを持って庵がテーブルに置いていく。
「食べましょう。流石、水族館に併設されてるだけあって海の生き物なんですね・・・・・食べるの勿体ないですね」
「そうだね。でも残していてもしょうがないからね」
テーブルには白いドーム型にアザラシの顔が書いてあるケーキと、丸形にチョコでコーティングして、ペンギンの目が貼り付けてあるケーキが置いてある。
二人はそれを食べながらコーヒーを飲んで楽しむ。
「ケーキ、美味しかったですね。形は罪悪感を覚えましたが・・・・・」
「ふふ、もしかして鯛焼きとかも苦手なの?」
「それは大丈夫です。けど食べたケーキみたいに、かわいい感じのものはちょっと・・・・・」
他愛のない会話をしているうちに、緊張がなくなったのか、いつもと変わらない雰囲気になり安堵する。けど、それはすぐに終わる。
庵は立ち上がり、ベッドをソファ代わりに座ると、夜神の顔を見てベッドを軽く叩く。
「隣に来てもらってもいいですか?」
強張った顔で、静かに口を開く。その雰囲気に夜神も、何かを感じ取り黙って従う。
一人ぶん間を開けて座ったが庵がすぐに詰めて密着する。
「フードコートの事ですが、今度から一緒に出掛けているときは何もしないで下さい。すぐに助けますから」
「大丈夫だよ。自分で対処出来るから」
「もし、相手が力でねじ伏せてきたらどうするんですか?」
眉を寄せて聞いてくる庵に、微笑んで見つめる。
「相手は素人でしょう?片手で捩じ伏せられるよ。だから大丈夫だよ?」
実力を知っているのなら、素人相手に臆することもないぐらい知っているはずなのに、どうしてそんな心配するのかが分からず首を傾げる。
「もし、相手が軍人なら?武道経験者なら?」
そう言って、夜神の肩を掴むと、力を込めて後ろに夜神を倒れさせる。
ギシッとベッドが音をたてていく。スプリングが効いているのか痛みはない。
あまりの突然の事に、目を白黒させて、見開く夜神の顔を上から見下ろす庵の目には、色欲の色が見えてくる。
「いおりくん?どうしたの?」
「もし、こんな事されたらどうするんですか?」
そう言って、顔を近づけて夜神の唇に軽く、庵の唇を当てるとすぐに離れる。
「!?」
見開いた目を、更に開く。
「どうするんですか?」
「・・・・・他人ならされる前に、打ちのめすよ?でも庵君ならい、ぅんっ・・・・・・・」
「いいよ」と最後まで言えずに、唇が塞がれる。今度は長く、いつ離れるのか分からない。
夜神の体温が上がっていく。それとおなじく、下腹部が「ッキン」と甘く痛みだす。
唇から熱い温度が離れていく。庵が夜神の顔をジッと見つめてくる。その目から逃げたくて顔を逸らす。
「大佐なら簡単に抜け出せるのではないんですか?どうなんですか?それとも・・・・・」
どうしてそんなに責め立てられるのか理由が分からず、目を瞑る。目頭が熱くなり涙が出そうになる。
何かに耐えようとしていた時に、庵に向けていた耳朶に、熱い吐息がかかったと思ったら、「チュッ」と音がする。そして、滑る物が耳朶を這う。
「ふぅっ・・・・・だ、めぇッ」
それが、庵の舌だと分かったときには、既に遅く、水音が鼓膜を支配する。
舌が全体を舐めたと思ったら、耳たぶを甘噛したり、舌を差し込んだりする。そのたびにビクビクと体が震えて、出したくもない声が漏れてしまう。
「だめ!んん━━い、おりくん・・・やめて!」
「耳弱いんですね?」
庵が感想を述べながら顔を上げていく。だが、夜神は庵の問いかけに答える余裕もなく、体を整えるための空気を必死に取り込む。
そのあいた口に、庵は指を這わすと、細い顎を摑み顔を庵の方に向けさせる。
「だ、っ!!」
もう一度、唇を塞がれる。そして今度は肉厚な熱い舌が、夜神の口の中に入り込む。そして歯列をなぞり、奥に逃げた夜神の舌に自分の舌を絡めていく。
「ふぅ、んんっ、んん━━━━」
背中がゾグゾグと粟立って腰が浮いていく。
ギュッと閉じた目からは涙が落ちていく。
息の仕方も分からなくて、どうしたらいいのかも分からず庵の胸元を掴みながら、力なく押し出していく。
それに気がついた庵は唇を外す。
「ハァ━━ハァ━━ハァ━━」
肩で息をする夜神を見て、その赤くなった頬を撫でながら、息の仕方の解決策を伝える。
「キスの時に鼻で呼吸すればいいんですよ。もう一度練習しましょうか?」
「まっ、ぅん、ん━━━━」
夜神の「待った」を無視して、もう一度唇が塞がれる。
庵の舌がもう一度、口内に入り込んでくる。夜神の舌の上や裏を舐めては快楽を引きずり出す。
言われた通り鼻で呼吸をするが、どれ程の空気を取り込んでいいのか分からず、小刻みに何度も取り込む。
先程の苦しいキスとは違い、息をしているだけでこんなにも違うのかと驚く。
だが、その驚きは別の事で驚く。庵が唾液を送り込んできたのだ。あまりの突然のことに驚いて、コクンと飲んでしまう。
滲む視界で庵を見ると、飲み込んだ事が正解だったのか、目を細めて笑っている。そしてもう一度唾液が送り込まれる。
コクン・・・・・褒めて欲しくてもう一度嚥下する。
口内を楽しんだ庵の唇が外れるときに、透明な橋が互いの唇に架かる。そしてプッと途切れていく。
「上手ですよ大佐。先程も言いましたが、抜け出すなら今のうちですよ?」
最終通告━━━━庵は夜神に逃げ出すのかどうかを聞く。
夜神はわずかに開いた口から「いや」と、今にも消えそうな声を出して、力なく首を振る。
「分りました」
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