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相手と対峙すること数秒、風が吹いて木々を揺らしている。風が止まったときに、お互い動いて刀と剣をぶつけ合う。
何度かの鍔迫り合いをするが、軍の模擬武器ではSクラスに対応しきれないのか、折れてしまった。
「クッ・・・・」
夜神は剣術から体術に切り替える。

折れた刀でもないよりはましだと思いそのまま握る。
相手の腹あたりに回し蹴りをする。その時靴に仕込んでいたナイフをつま先から出して少しでも威力を高める。
だが相手の方が数段上だったのか、かわされて上着を少し切る程度で終わってしまう。
そして、足を戻して構えようとしたときを見計らって、相手が一瞬で懐まで入り込むと、膝蹴りを腹に打ち込まれる。
「ガハッ」
体に痛みの衝撃がくる。一瞬の出来事に握りしめていた刀を落とし、蹴りを打ち込まれた所を庇おうとしたとき、肩に衝撃が走る。

相手の拳が右肩に打ち込まれていたのだ。そのまま地面に膝をついてしまい、首に強い圧迫を感じながら地面に仰向けで倒れ込む。
吸血鬼が首を絞めながら、夜神に馬乗りで被さる。
「ウグッ・・・・ア・・・・」
頭の中を「死」の文字で埋め尽くされる。だか軍人として最後まで足掻らい続けるのであれば、最期は吸血鬼に殺されるより自死を選ぶ。

夜神は奥歯に仕込んである毒を食らおうとしたとき、口の中に首を締めていた吸血鬼の指が無理やり入り込んできた。
「ゔッ・・・・」
「お前達、手と足を押さえつけろ。動いて邪魔だ」
「了解しました」
馬乗りになっている吸血鬼が二人に指示をだし、それぞれ夜神の手と足を抑え込む。
口の中に入っている指は奥歯辺りを確かめるようにして動いていると、やがて目的の物を見つけたのか、その部分を掴み口の中から指を引き抜くと、代わりに剣の柄を口に押し込む。
「グッ・・・・」

「やはりな、軍の人間はすぐに自死を選びたがる。毒を煽るのぐらいお見通しだ」
夜神の口に中に仕込んであった毒を抜き取るために、口の中に指を入れて取り除いたのだ。
「このまま首を締めてもいいのだが、代わりにコレをくらってもらおうか」
そう言って、馬乗りの吸血鬼は夜神の脇腹にスタンガンを押し付ける。
「うゔッ━━━!」

一般的なスタンガンなら、筋肉が収縮して数秒~数分ほど行動不能になったり、怠さを感じたり筋肉痛になった時のように動きづらくなるのだが、このスタンガンは違っていた。
気絶など本来はないのだ。だが夜神は筋肉痛のような動きづらさと一緒に目の前が暗くなっていく。
ブラックアウトだ。そしてそのまま意識を手放してしまった。

「何故、このような事をなさるのですか?「白目の魔女」ですよ。我々貴族を何人殺したと思っているのですか?」
手を押さえつけていた吸血鬼が馬乗りの吸血鬼に殺意のこもった目線を向ける。
馬乗りの吸血鬼は口の中から剣の柄を引き抜くとそのまま鞘におさめる。そして自由になった手で夜神の衿をネクタイごと緩める。
すると左右の首に何かの文様が見えてくる。
「「しるし」?・・・・いや違う。これは「スティグマ」だ!なぜ皇帝陛下のスティグマがあるのだ。我々の世界なら分かるが、ここは餌場だぞ?」
「我々の世界でも皇帝陛下のスティグマを持った人間はいない。それがなぜこんなところに、まして軍の人間だ。」
「いつから気付いていたのですか?」
「戦いの最中に気付いた。しるしを持っている人間を傷つけるのはご法度だ。ましてや皇帝陛下のスティグマなら尚更だ。だから生け捕りにして献上する。こちらも命のやり合いをしていたのだ、すこしでも温情の余地をもらうために何か言い訳でも考えないといけない」

馬乗りの吸血鬼は体を起こすと、二人にそれぞれ指示を出す
「猿ぐつわに適している枝を探してこい。下を噛まれたら終わりだからな」
「たしか、実験の為に連れてきた鳥の柵がヘリにあったな」
「ありますが、どうするのですか?」
「動かないように、柵に固定する」
気絶している夜神を横抱きにして、自分達が乗っていたヘリに向かって歩き出す。

ヘリに着くとWSの一人が運転席に座りヘリを操縦する。残りの二人は猿ぐつわ用の木の枝をクラバットで包んで、固定して夜神の口に押し付けて後ろで結んで固定させて、両腕を万歳のような形にして手首をベルトで固定させる
「念の為、目隠しをしていたほうがいいだろう」
そう言って、もう一人からクラバットをもらい目隠しをする。
「急げ、軍の人間は味方だろうと銃弾を向ける。「白目の魔女」が乗っているのは明白だからな」
「了解しました。スピードを上げますので気をつけて下さい」
夜神を乗せたヘリはスピードを上げて目的の場所に向かう。

吸血鬼と人間の世界をつなぐ扉「ブラッドゲート」に向けて。
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