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「?!?今、何と言った??!」
長谷部室長は思いっきり眉間にシワを寄せていた。この顔を見た人は「怒っている!!」と思うかもしれないが、この部屋にいる人間(学生と先生を除く)は皆知っている。物凄く驚いているのだ。心の底から驚いて戸惑っている。

「夜神?お前熱でもあるのか?それとも何か変なものでも食べたか?いや、えー雪でも降る?今は四月だぞ。いや、槍か?」虎次郎も思いっきり驚いている。

相澤と式部は驚いた顔をして、固まっていた。

それもそうだろう。夜神は今まで教育係をしていない。それどころか自分の部下さえいないのだ。一人で吸血鬼と対峙している。
本来なら五~六人で部隊を形成していく。そのほうが確実に吸血鬼と互角に戦えるからだ。人間の数倍の圧倒的身体能力を持つ吸血鬼を一人で対応するのは本来「死」を意味している。
だか、夜神は違う。一人でも対応できる力を持っている。それ故に殲滅部隊最強と言われるのだ

基本一人行動の夜神が教育係に挙手したのだ。それは異例中の異例である。だからだろう部屋に居る人間が驚くのは。
それは庵海斗と引率の先生も驚いていた。教育係もしないし、部下も居ない。一人吸血鬼と戦う軍最強の軍人━━━それが夜神凪中佐なのだ。

大学でも有名人で、あの人の部下になれたら凄いよね。けど、無理だろう。などと言われるぐらい有名な話でもあるのだから。
その夜神が教育係に挙手するなど異例なのだ。虎次郎が「雪か槍が降る」と言うぐらい、今までにないぐらいの、ありえない事なのだ。

「だめでしょうか?私としては庵海斗学生に力をつけてもらい、立派になって大学を卒業してもらいたいのですが?確かに今まで教育係はしてませんが、資格はあります。私が対応していて、もし室長が教育係に相応しくないと判断した場合は速やかに辞退して別の人に任せます。ぜひ、ご配慮頂ければと思います」
迷いない声で室長に告げた。白い瞳は真っ直ぐに室長を真剣に見ている。

━━━━━本気の目だ。

長谷部は夜神が本気で庵海斗学生に力をつけさせようとしているのが分かった。
きっとやり方は他の教育係からしたら「殺す気か!!」と言われるやり方をするだろう。なぜなら夜神の先生も似たような教育で夜神を育てた。それは我々の世代は知っている。夜神は同じことをするだろう。間違いないと断言出来る。

だが、万が一があるとしたら?きっと目の前でおどおどしながら、自分がどうなるのか分からず不安で仕方がないと思っている学生が、実は秘めた実力を持っていたら?

最悪、これ以上は危険と思えば教育係を変えることは出来る。万が一にかけるのも悪くない。学生には悪いが。我々のいる軍は限られた人間しか入隊出来ない。その為、人は少ない。人手不足だ。強い戦力はありがたい。

長谷部はいつもの無表情を取り戻し、夜神と庵を見て、軽くため息をすると
「分かった。今年の教育係は夜神凪中佐に任せる。但し危険と判断したら、すぐに人を変える。それで問題ないな」
「全て了解しました」

庵学生の隣に立ち、敬礼をする。その姿を見て庵も敬礼をした

こうして、今年の前代未聞の配属と教育係で、大注目をし、一波乱あることを全員が知る由もないのであった。
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